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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十章 ギルド外でもお仕事はする

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681:三十七層チラ見 3/4

「中々の強敵でしたね」

「雷撃をまともに喰らって直進されたのは意外だった。もしかしたら魔力の流れを読む力でもあるのかもしれない」

「極太雷撃の出番が増えて良かったですね」

「次出たら芽生さんにも戦ってもらうから、頑張って」


 ドロップ品は緑色の魔結晶だけだった。が、何となく確実に魔結晶をくれそうな気がする。数を倒せば儲かるのでそれ自体は嬉しい事である。せっかく奥深くまで入り込んだのに収穫ゼロ……といった可能性が低くなるのはダンジョンとしても探索者としてもうれしい事だろう。


 魔結晶をとりあえず保管庫に放り込む。さて、何と表示されるか……


 ダンジョンフクロウ(仮称)の魔結晶 x 一


 その場に膝をつく。正式名称はどうやらまだついていないようだ。俺の考えた通りの名前になっている。


「どうしたんですかそんな所でガックリの顔文字みたいなポーズを始めて」

「魔結晶を保管庫に入れたら脳内で考えた仮称のまま魔結晶として表示された。どうやら国際的に認知されないと保管庫も名前の付け方には困るらしいな」

「まあ洋一さんの脳内の話なので私にあまり関係は無さそうですね。安心して探索できます」

「さっきのモンスターにダンジョンフクロウという名前を頭の中で付けて保管庫に魔結晶を入れたら、ダンジョンフクロウカッコ仮称カッコトジの魔結晶と表示された」

「ぉぅ……それはちょっと」


 大体察してくれたらしい。手に当たる雪が解けて冷たい。体勢を元に戻すと、ダンジョンフクロウというそれっぽい名前を思いついて本当に良かったと思う。ここでモゲゲトリスとか名前を付けてしまったらモゲゲトリスという意味の解らないモンスターが誕生していた事だろう。


 気を取り直して周囲の様子をうかがう。目に見える範囲で木が何本かあり、木にはそれぞれ上のほうにしっかりとした枝が張り葉がついている。


 ツンドラって事は亜寒帯気候だろ? この木がシラカバに見立てられていたとして、ここまで葉が生い茂っているのは少し不自然な気もする。これは……もしかして木に一本ずつダンジョンフクロウ(仮称)が居ると見ていいのか?


 ダンジョンフクロウ(仮称)以外のモンスターが見当たらない事を確認すると、次に近い木に向かって歩みを進める。指向性を持たせた索敵で調査すると、やはり居た。ダーククロウのように葉の代わりに存在する、とかではなく、完全に葉に隠れた形で生息しているのが見える。きっと、そこから音もなく飛び立ち、こちらに鋭い爪で攻撃を加えに来るのだろう。人間は頭の上からの攻撃に上手く対処できないようになってしまっている。かなりの握力があるだろう。もしかすると不思議パワーで持ち上げられるかもしれない。


 そうならないうちに先制攻撃を仕掛ける。パチンコ玉で釣り出すのだ。遠距離過ぎてハッキリ姿が見えないので、また木の中にいくつかを打ち込んで相手が飛び出てくるのを観察するしかない。相手の目視確認距離も測っておきたいが、今は芽生さんがどう対処するかを考える番だ。


「じゃ、対応よろしく。マズイと思ったら言ってね」

「りょ」


 パチンコ玉に驚いて飛び出してきたダンジョンフクロウ(仮称)はそのままこちらを見つけると急接近してくる。くちばしでつつくか、もしくは足で獲物を捕らえるようにするんだろう。芽生さんは落ち着いてウォーターカッターを三枚、順番に打ち込み、相手の動きのパターンを絞っていく。三枚とも回避されてしまったが、その回避した先に狙いをつけた槍先が触れる。そのまま貫き、ダンジョンフクロウ(仮称)は黒い粒子に還った。どうやら上手くいったらしい。


「うーん、囮とはいえ三枚もスキルを消費するのは燃費が悪いですね、もっと上手い戦い方があるはずです」

「次の木で見つけたら次は相手がどのくらい近づけば攻撃してくるか、を見ようか。こっちの射程の都合もあるし、毎回遠距離からパチンコ玉で応戦しててはパチンコ玉の無駄遣いになるし」

「索敵の使い方の応用は解りましたから、今から調べるのはすべての木にモンスターが居るかどうかと、相手がこっちを見つける射程距離、この二点ですね」

「それ以外にもモンスターは居るだろう。さすがにこのダンジョンフクロウ(仮称)だけということはないはずだ、もう一種類か二種類居てもおかしくない。雪に紛れて隠れているのかもしれないし、まだ出会ってないだけかもしれない。探すのはちょっと面倒だがとりあえず次の木には向かおう」


 そこそこの木が乱立しているので、一本一本の間はそう距離が離れている訳ではない。森というより林に近いポイントも見つけている。アレに全部居たらそれはそれで嫌だなあと思いつつ、そちらには近づかずに離れている木を一本一本確認していく。


 どうやら一本だけで立ち尽くしている木にはそれぞれ一羽ずつ居るのは間違いないようだ。そうなると、遠くに見えている林にはよほどの数のダンジョンフクロウ(仮称)が居る可能性があるって事だ。必勝パターンを見つけておかないと一斉に襲い掛かられてかなりのダメージを負う事にもなりかねない。慎重に行こう、慎重に。


 次の木にもダンジョンフクロウ(仮称)が居る事が確認できたのでゆっくり近づく。目算で百メートルほどまで来た時、かすかな葉の揺らめく音が聞こえた。どうやらこの辺が近づく限界距離らしいな。


「来るぞ。多分音はしないから目で追いかけて」


 一歩踏み出すと、木から一直線にこちらへ突っ込んでくる影。雷撃を撃ちこもうとしたが回避された事を思い出した。なら網だ。雷撃を網状に組み込む、投網漁の強い奴をイメージ。そのまま包み込んで地面にキスしてもらおう。


 網にかかったダンジョンフクロウ(仮称)は雷撃の威力が充分に発揮できたのか、そのまま網と共に地面に落ちてくる。網目もちゃんと相手のサイズより細かいものをイメージ出来たらしい。やはり対空兵器として投網は使えるな。下手に一羽ずつ雷撃するよりも消耗も少なくて済みそうだ。何よりも、ここなら木ごと焼き切ってしまっても周りから文句が出ない。これからちょくちょく使って行こう。


「百メートルはさすがに遠いですねえ。飛んでくるスピードもそうですが、身軽さも中々の物です。まだダメージを受けていないので強さという意味では解りませんが、耐久力が高いのも困りものですねえ」

「一羽相手なら無傷で確保できる。それが分かっただけでもヨシとしよう……さて、問題はドロップだが、魔結晶以外に何か落とすのかなこいつ」


 今回も前回もだが、まだ魔結晶しか落としている場面を見ていない。他のドロップも調べてはダンジョン庁にサンプルとして献上し、いくらで買い取ってもらえるのかを調べてもらう必要がある。


「もう少し様子を見ようか。木の上にはこいつが居る前提で動けば問題ない。それより他のモンスターも探そう。こいつだけが相手ということは今までの法則上ないはずだ。必ず二種類以上のモンスターが生息している。ワイバーンみたいに出現数がレアなだけかもしれないが、探せばいるはずなんだ。そして、両方とも魔結晶しか落とさないというパターンは今のところ見たことが無い。もう一つのモンスターが確認できればそいつが複数のドロップ品を落とす。その法則は体験上確実だと言って良いと思う」


 ろくろを回しながら芽生さんに説明する。


「じゃあ、フクロウの処置は任せます。私は索敵しながら移動するので何か異変を感じたら報告する形で行きましょう」

「後、遠くに見えるあの林にはまだ近づかない。複数一気に来ても確実に対処できる方法が編み出されるまではあの木全部にダンジョンフクロウ(仮称)が存在する前提で考えると、今の雷撃のイメージでは対処しきれない」


 ろくろを回しつつ、林を指さしながら答える。とても手が忙しい。


「他のモンスター……見当たらないですねえ……あ、なんか反応ありました。何もない所ですけど」

「上空じゃなくてか。だとしたら地面に潜ってるのか? 先にそっち行こう」


 芽生さんが言う方向に指向性を持たせた索敵をかけてみると、確かに反応がある。上空を観察するが、こっそり飛行しているダンジョンフクロウ(仮称)は居ない。とするとこれは別モンスターだな。地表に見えていないが、小柄なモンスターではないらしい。索敵の表示がそう小さくはないぞ、ということを示している。だとしたらそれなりに大柄なモンスターが隠れているということか。


 暫く近づくと、土饅頭みたいにこんもりしている地面を確認する事が出来た。これだろう。これじゃなかったら……これじゃなかったら一体何なんだ? というぐらいに怪しい。


「とりあえず一発入れてみて、後は流れでいくか。危なくなったらよろしく」


 まず引き寄せるための雷撃一発。するとこんもりした雪の地面が跳ね上がり、中から出てきたのは熊。今のうちにダンジョンベア(仮称)と名付けておこう。見た目は二メートルから三メートル。よくこんなデカいのが寝そべっていたなと感心こそするものの油断せずにいこう、相手はこっちの通常の雷撃程度ではスタンしないぐらいの耐久力だ。


 そのまま熊の足の速さで駆け寄ってくる。マツコデラックスがウサインボルトの速さで迫ってくるのがヒグマだと何かで聞いたが、こいつはそれより速く硬いはずだ。予想通り、ダンジョンウィーゼルと同等かそれ以上のスピードでデカい塊が駆け寄ってくる。これは物理耐性があっても抜かれる可能性が高い。一発全力雷撃しつつ、回避の姿勢を崩さずに肩透かしをさせるつもりで立ち向かう。


 ダンジョンベア(仮称)は全力雷撃を受けて姿勢を少し崩してスピードこそ落ちたものの、その質量とまだ落ちきっていないスピードで俺に近接する。ダンジョンベア(仮称)の前脚の横薙ぎの一撃を冷静に屈んで避けると、柄から雷切を出してその前脚の片方を切り落とす。ダンジョンベア(仮称)は怯まずにそのままもう片方の前脚で再度攻撃を仕掛けようとする姿勢に入った。


 今がチャンスだと雷切でがら空きになった頭めがけて振り上げる。完全に入った雷切はダンジョンベア(仮称)の頭部を半分切り飛ばし、黒い粒子に還していく。しかし、ダンジョンベア(仮称)の残った勢いが俺の体を軽く弾き飛ばす。頭を半分飛ばしておいたのと前脚を切っておいたおかげでそこまでの威力にはならなかったらしい。万全だったらかなりヤバかったな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] . . .シロクマかな(・・; [一言] 熊の手って 美味しいらしいですね (*´﹃`*)ジュルリ…
[一言] 梟……まさかダーククロウの上位素材が???
[一言] フクロウからの熊かあ 熊肉はドロップしてくれるんだろか
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