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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第一章:四十代から入れるダンジョン

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68/1246

68:帰り道

三百万PV越えてました。みなさんありがとうございます。

 三層へ戻ってきた。


 ギルドの門が閉まる時間まであと二時間半ぐらいだ。


「一時間三層で狩りをしながら二層の階段へ向かって、それからまっすぐ帰るルートでいいですかね」

「そうですね、時間的にそれがいいかと。査定の女の子には悪いけどね」

「まぁ、この時間一番忙しいでしょうし」

「ギルド職員が一番忙しいのは十九時過ぎてからですよ」

「そうなの? てっきり査定時間的に十九時頃だと思ってました」


 小寺さんは内情を知っているようだ。


「小西ダンジョンだと、一日に何をどれだけ査定していくら払ったか、ダンジョンを閉めた後にみんなで数えるという作業があるんですよ。一円単位で揃えないと帰れないとか」

「スライムが大増殖した日、俺一人で二千個ぐらい納品したことがあるんですが」

「大変だったでしょうねえ」


 後日何かの形で恩返ししよう。きっとしよう。そうしないと俺の印象がやばい。スライムのおかげでもう手遅れかもしれないが。


「それも仕事の内ですし、昼間は暇でしょうから一部の時間だけ忙しい、という所じゃないですかね」

「持ち帰って朝一で提出するとかそういうのもアリなんかな」

「それは一旦持ち帰る我々の負荷が増えるだけで問題解決にはならないかと。数を狩らずに儲かるドロップ品を供給すればいいんじゃないでしょうか」

「たとえばポーションばっかり卸すとか」

「そんな感じで」


 魔結晶はスライム以外は重さ査定らしいからな。そっちを重点的に攻めるか。となると……


「やっぱりゴブリンが安定しちゃいますよね」

「五層以降のほうがもっとわかりやすいんじゃないですかね」

「肉・革・魔結晶」

「そうそう。魔結晶とポーションのゴブリンも解りやすいですが、ソードゴブリンが倒せるならワイルドボアも倒せると思います」

「ちなみに突進以外にはどんな攻撃してくるんです? 」

「噛みつきですかね。突進は原付にぶつかられたぐらいの衝撃が来るらしいですよ」

「原付かぁ」


 皮算用をしつつ、ゴブリンとグレイウルフの下処理をしていく。二人とも手慣れたもので、全く関係ない会話をしながらの戦闘対応で間に合っている。四層もこう楽に行ければいいんだが。


「精神的慣れ、ですね」

「慣れ、ですか」

「一度詰まっちゃったイメージがある分、慣れるまで時間がかかってしまっているんですよ多分」


 なるほど、言われてみればそうかもしれない。実際ダメージを受けてはいない。盾やグラディウスに少し傷が残る程度で、体のほうはノーダメージで戦いきることが出来た。

 つまり必要なのはとにかく回数戦う事か。


「慣れ、だな」


 わざと言葉にして確認する。ゴブリンだって数百匹を倒してきた積み重ねがあるわけで、ならソードゴブリンも百や二百倒せば心が体に追いついていくはずだ。いわゆる度胸試しだ。

 そのために四層に潜ってみるのもありかもしれないな。


 考え事のついでに倒されて行くグレイウルフとゴブリンには可哀想としか言えないが、戦っているときのほうが考えが浮かびやすい気がする。おそらく一種のゾーン状態に突入しているんだと考えられる。


「何か考え事ですか?」

「解ります?度胸試しに四層潜り続けるのもアリかもしれないとか考えてました」

「探索者らしい考えですね。一人で五体同時に相手する時のことを考えてればですが」

「一人じゃまだちょっと手に余るかもしれません」

「まぁ、お互い焦らずやっていきましょう。ダンジョンは逃げませんし」

「そうですね」


 と、一時間経った。そろそろお家へ帰る時間だ。


「帰りますか」

「帰りましょう」


 そういう事になった。


 三層から一層まで駆け足で退場していく。モンスタートレインにならないように道中のモンスターはきちんと処理していく。もっとも、擦り付ける相手がダンジョン内に居ない可能性のほうが高いのだが。


 みんな帰る時間で他にいた人がすべて処理していったのか、それとも偶々いなかっただけなのか、帰り道の道中に出会ったのはグレイウルフ二匹だけで、ドロップも無かった。

 小寺さんと無事に地上へ帰還する。


「帰ってこれましたね~」

「今日はお世話になりました」

「いやいや、こちらこそ中々楽しい一日でした」

「お陰様を持ちまして四層から無事に帰ってこれました」

「安村さん、もっと自信持っていいですよ。あなたは結構お強い」


 褒められた。素直に受け取っておこう。


「では、お待ちかねの査定タイムに入りますか」

「今日の戦果が楽しみですな」


 二人仲良く退ダン手続きを済ませて査定カウンターに並ぶ。お互いどうぞお先にをやる前に、小寺さんから先に査定カウンターへ向かうよう仕向ける。俺がトイレを済ませてから並ぶことで順番を先に譲る作戦だ。


 五分ほどたってから俺の番になった。


「今日はスライムですか?」

「スライムはちょっとです」


 と言いながらバッグからザラザラと魔結晶とゼリーを出す。

 一瞬査定カウンターのお姉さんがたじろいだが、思ったほどの量じゃないと安心したんだろう。

 今日の戦果は五本のヒールポーション、四十個のゴブリン魔結晶、八個のソードゴブリンの魔結晶、ウルフ肉六パック、ウルフ魔結晶四十二個、三十六個のスライムゼリー、七個のスライム魔結晶だった。


 暫く待って計算結果が出る。七万三千六百二円。十分な成果だ。昨日と比べてはいけない。


 これらとは別に、ゴブリンソードが一本あるが、これは後日試運転がてら使う予定があるので後で保管庫に放り込んでおこう。試す日が楽しみだ。


「どうでした?」

「十分な戦果でした」

「そうですか、それは何より」


 小寺さんとそのまま別れる。お互い今日はまっすぐ帰るらしい。


 俺は家に帰って、食いそびれた昼飯を温めなおして食べるというイベントが待っている。時間が百分の一とはいえ、十時間ほっとけば六分放置した程度には冷めてしまっているはずだ。あれ、意外と持つな。


 どうせならもうちょっと食い物を足して朝飯も豪華にしてしまうか。帰り道にスーパーで食材を買い足す。何を食べようかな。焼き豚とか食いたいな、あるかな。


 ワイルドボア肉……ぜひ食してみたいもんだな。中華屋の爺さんのところに持っていったら作ってくれたりしねえかな。


 まだ見ぬ肉に思いをはせつつ、総菜の唐揚げと先日も買ったシャキシャキゴボウと人参のマヨ和えをチョイス。さらに鶏の唐揚げを籠に入れた。


 家に着いた。レンジで朝から放っておいた昼飯予定だったペペロンチーノを温める。

 キャベツを千切りにし、添え物とした。御機嫌な夕食だ。栄養バランスはトマジューでごまかす。


 飯を食ったらすぐ眠気が来た。まだ寝るには早い時間だったが、眠い時に寝るのは健康にいい。このまま寝てしまおう。




作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンソードを保管庫に放り込んだ後、 小寺さんと会話している時に、保管庫の存在がバレなくて良かったな。
[良い点] 面白くて最新話までイッキ読みしました。今書籍化していない、現代ダンジョンもので一番面白いです。 [気になる点] 職員がドロップアイテムのカウントで大変なのは55回に聞いているはずなので、初…
[一言] スライム成分の補給が欲しいです…
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