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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十章 ギルド外でもお仕事はする

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678:時短

この度ユニークアクセス数が一千万人を突破いたしました。

皆さまのご愛顧のおかげでございます。

 エレベーターで一層に戻り、リヤカーを含めて自分の周りに雷を纏わせ、スライムが近寄ろうものなら一瞬で蒸発する程度の雷撃で出来た防御膜を張りながら進む。これはこれで中々の訓練になるので悪い事じゃない。


 しいて問題点を挙げるなら気が付かずにこっちに近づいてきた人にビリッとやってしまう事だが、すれ違う人が見えたら雷撃膜を消してすれ違い、通り過ぎたらまた雷撃膜を張る。こうしてドロップ品は無事に守られながら一層を抜けた。また新しい技が出来たな。こいつを広げたり狭めたりして一層を歩けば……いや、むしろ八層ぐらいまでなら何とかなるのではないか。


 入口に戻り退ダン手続きをする。一人分なのでリヤカー目いっぱいという訳にはいかないが、それなりの量を持ち帰ったことに受付嬢も満足らしい。


「お帰りなさい。今日は無事に収入があるんですね」

「明日は……どうだろう?明日も今日と同じかもしれませんが」


 リヤカーをガタっと揺らして今日の分はしっかり稼いできたぞアピールをしておく。


「あら、地図作りでもするんですか」

「まあ似たような事はするかなと」

「明日も頑張ってくださいね」


 仕事終わりに元気づけられ意気揚々と査定カウンターへ戻る。今日はいつもの子じゃないな。いつも支払いカウンターに座っている子が査定担当らしい。いつもの語尾を伸ばす査定担当の子は公休かな。


「あ、安村さんお疲れ様です。手早く済ませるのでどんどん出しちゃってください」

「いつも通りある程度分けてありますのでよろしく頼みます」

「解りました、ご丁寧にありがとうございます」


 五分ほどで査定は終わり、金額が出てくる。三百六十一万三千九百五十円。一人で潜るなら充分な金額だ。頑張ればもっと稼げはした。具体的には茂君とケルピー相手にせず、もっと森をうろうろしていたら更に収入は増えたであろう。ただ、明日は芽生さんとの狩りだからな。そちらでしっかり金は稼ぐので納得しておくことにした。それでも結衣さん達が六時間みっちり狩りをして稼ぐ金額の七割ほどを稼ぎ出しているのだ。やはり階層が深ければ深いほど儲けの差はでかい。結衣さん達の踏ん張りに期待をしておこう。


 支払いカウンターで振り込みを依頼すると、いつも通り冷たい水を一杯飲んで頭からつま先までリフレッシュする。この冷たさは俺の保管庫でも出すことはできない唯一無二と言える一杯だ。


 小西ダンジョンの稼ぎ頭としては今日も明日も明後日も一杯稼いできて欲しいというのがギルドの本音だろうが、俺も俺でしたいこと、仕掛けてみたいこと、他の人にしてもらいたいことというものもある。羽根集めもドライフルーツ作りもその中には含まれている。この後ちょっと寄りたいところが有るのでその寄り道分の時間も込みで今日は早く上がった。別に飯を食いに行こうという訳ではない。ホームセンターにちょっとした用事だ。


 ドライフルーツを作っていて思ったのだが、毎回手で薄切りにするのでは疲れる。そこで、リンゴでも薄切りに出来るスライサーの導入を思いついた。さすがにスライサーを使ったかどうかで効力が変わるわけではないだろうから、楽をできるところは楽をしたいし、輪切りにする時間を短く出来るならそれに越したことはない。要は時短をしたいのだ。


 早速まっすぐ家に帰って車を出すと、二軒ほどホームセンターをはしごしてそこそこいい値段のするスライサーを購入。厚みが変えられて安全装置もついている奴を二種類購入した。使ってみて使い心地の良いほうを採用していこうと思う。ついでに芯抜きも購入しておいた。トレントの実に芯の部分は無いんだが、トレントの実以外のドライフルーツを作りたくなった時に威力を発揮するだろう。


 明日は……どうするかな。三十六層を一往復してからエレベーターで二十八層に上がって昼。昼休憩を終わらせてから二十九層に下りてその日の稼ぎを得る、という流れにするか。一泊とは聞いてないし、日帰りコースならいつものこの流れにしておくのがいいだろう。その日の稼ぎも出せるし後で査定金額が出た時にたっぷり稼げるし、何より肉の在庫が大量に出来る。値段が決まったところで中華屋の爺さんのところに持って行って、一案考えてもらうというのも悪くないし、新しい肉を試してもらう事も出来る。


 さて明日のご飯は何にしようかな……俺的には明日もポトフで良いな。野菜は取らにゃならん。それも意識的に取らないと、毎日が肉になってしまうのは探索者あるあるだ。確かにパワーを求められる探索者には肉は大事だし、その場で入手出来て焼くぐらいならフライパンとバーナーを持ち歩く、もしくはテントに置いておくだけで食べられるお手軽食品だ。カロリーも申し分ないし腹も満ちる。


 だが、保管庫が使える以上色んな料理をその場で食べられる贅沢が出来るんだ。その贅沢を享受するためにも新鮮な野菜で作った料理というのはやる気の意味でも腹を膨らます意味でも、そして栄養バランス的な意味でも大事だ。コンビニでサラダを買ってきてそのまま持ち込むでも問題ないが、それだけでは味気が無い。せっかくだから美味しいものを作ろう。


 さて、改めて何作るかな。よし、時期的にそろそろ美味しくなってきているだろうからカボチャを買って帰ろう。カボチャと、後は肉よりも魚だ、ツナ缶とカボチャでポタージュ風スープにしよう。人参とジャガイモとボア肉をいれて、言いなおし。肉じゃが風カボチャスープ。味付けを洋風にすれば良い感じにごまかせるだろう。買うものを決めると隣のスーパーで早速キャベツと卵と食パンと共に購入。


 後はミルコ用にお菓子を仕入れておこう。毎回コンビニお菓子では飽きるだろうから、コンビニでは売らない系のお菓子……主に米菓子あたりを仕入れておくか。そう思いながらお菓子のコーナーに来ると、特売の訳あり大袋せんべいがあった。どう見ても洋風のミルコがちゃぶ台に座りせんべいを齧りながら茶を飲む光景が想像できた。これだな。これを二種類ぐらい買っておこう。


 無事に家に帰ってきて、洗濯をしてから夕食。今日の夕食はポトフの残りだ。パックライスも添えてしっかり今日動いた分だけの栄養は補給しておこうと思う。今日は野菜たっぷりの一日だった。これでしばらくは肉が続いても体は持ってくれるはずだ。


 そして昼食との区別をつけるためにカレー粉を少し入れて味変。スパイスの香りが立ち込めるとてもいい一品にしあがった。このポトフはまた作ろう。今度はチーズじゃなくて牛乳とバターを入れてミルク仕立てにするのも良い。


 さすが万能調味料カレー粉。というかそもそもカレーが好きなので料理にカレー粉やオールスパイスを仕込むだけで大体なんでも食べることはできる。ただし限度はある。あー……カレールーを一個入れてとろみをつけてから食べるのも良いな。そうするか。


 食べ始める前で良かった。カレールーを入れてとろみが出始める前に速度百倍保管庫に入れて一分放置。放置したところで再度火を入れてとろみを出す。後はパックライスを放り込めば野菜モリモリカレーライスの出来上がりだ。カレー粉を先に少し入れた分カレー成分がいつもより多めだが、これはこれで美味しく頂ける。


 昼間食べきれなかった分は夕食として全て美味しく頂いた。これでまた明日からしっかり働けるな。片づけをしたところで今日買ってきたスライサーの出番が早速出来た。


 念のため熱湯消毒をしておくと、皮をむかずにスライサーでそのまま削っていく。厚みは……うん、ちょうどいい具合に削れるし、包丁で一枚一枚作るよりもよほど楽に薄切りが出来る。もっと早く導入していればより時短が出来ただろうに。だが今まで思いつかなかった俺の灰色の脳みそが悪い。今後は楽が出来るのでどんどん楽をしていこう。


 二つ買ったもう一つのスライサーも試してみるが、先に使い始めたスライサーのほうがうまく力を入れずに綺麗に切れる事が解った。こっちは予備ということにしておこう。出来れば予備の出番が出てこない事を祈る。お値段分は活躍してほしいものだ。


 スライスされたトレントの実を一枚ずつ皿に並べて百倍加速させた保管庫の中へ次々と放り込んでいく。今日のノルマは三百枚。あと二百回ぐらい繰り返せば終わる。スライスの手間も省けて手を切るギリギリのラインを攻めていた昨日までの俺とはさようならだ。これで朝起きた時に収穫すれば新しくドライフルーツを確保できる。


 全てスライスを終えると丁寧に洗って熱湯消毒して保管庫に仕舞っておく。常温でその辺に放置するよりもこのほうが衛生的だろう。一通り今日の仕事を終えたところで洗濯が終わったので今度は俺自身の洗濯に入る。


 風呂の湯船に浸かりながら、日々の充実を確認する。収入、ヨシ。生活、ヨシ。睡眠時間、ヨシ。明日の飯、ヨシ。好いてくれる相手、贅沢だが二人も居てヨシ。


 二人も好いてくれている状況に甘えて流されてしまっている。だが、若い子の中ではどういう性的嗜好が流行っているのかどうか解らない。俺以外にもキープ君が居るのか、それとも純粋に二人とも好いてくれているのか。そもそも同じ相手を好きでいるというのはどういう状況なのか。


 頭の中に相関図を浮かべてみるが、もしかしたら俺の知らない所で芽生さんも結衣さんも本命が居るのかもしれない。むしろ俺としてはそのほうが安心できるような気がする。俺のほうが二十ほど年上なのだから、ボケるのも俺のほうが先だし、ボケだしたらポーンと放り出されて一人になる可能性だってある。二人はそこまで先を見据えて付き合ってくれるのだろうか。


 俺が悩んでいる間に若い大事な時期を二人に消費させるのも悪いと思っている。一度、三人で話し合う時間が必要だな。今度タイミングが合うときに、ここでしっかり話し合おう。俺の取り合いの配分時間についてじゃなく、人として、大人として、どういう付き合いをしていくのか。割と真面目な話だ。なんせ俺も四十一。結婚を考えるならほぼ最後のタイミングになる。どちらと結婚するのか、結婚した後も付き合いが切れることは無いだろうが、どういう接し方をしていくのか。


片方ずつ話を聞いているのではきっと収拾が付かないだろうから、これは同時に二人に話を聞く必要がある。よし、決めた。三人で話し合う時間を取ろう。そして落としどころを探そう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
42層到達報酬で主人公を2分割してもらおうw
[一言] こ・・・これは3ピー(警告音)フラグか!?
[一言] ポイっとでもお金あるから介護施設にポイやな
感想一覧
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