表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十章 ギルド外でもお仕事はする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

677/1253

677:トレント狩り・三時間三百九十八万円

 歩き慣れた密かに草も木も生えていない、明らかに道だと設定されているが、道と呼ぶにはあまりに狭すぎる、ちょうど二人分の肩幅ぐらいになろうかという道を歩く。道の途中には時々トレントがこんにちは。道を外れればトレントがいらっしゃいと出迎えてくれるこの小道を大変気に入っている。


 一番は迷う心配がないということ。二番は道を切り開いたり足場を考えたりしなくて済む事。そして、ここを歩いているだけでトレントが密かに寄ってきてくれる事だ。


 小道を外れて戦ったこともあるが、小道の上を歩いている方がモンスターとの遭遇率は高く感じる。もしかしたら意図的にそういう仕組みになっているのかもしれないが、ただ単に歩くだけよりも戦いながらのほうが気がまぎれる。やはり適度に忙しくないと人間暇を持て余してかえって悪い方向に行くように、少なくとも俺はなっているらしい。


 森の中にはトレントと木しか居ない。これが地上の森なら小鳥のささやきや虫のさえずりなんかも聞こえてくるだろうが、風もないのでトレントが動くときにかすかに聞こえるカサカサと葉を揺らす音ぐらいだ。聞こえたら周囲にトレントが居る。【索敵】がまだまだ鍛え足りないので、ステータスブーストで強化された耳に聞こえる範囲に居ても索敵外であることも時々ある。その時はこちらから歩み寄って正面から戦いあう事にしている。


 トレントの実も徐々に溜まってきた。ドロップ率はおよそ三十%ぐらいなので十体叩き切って三つ。ドライフルーツ換算で三十枚分。一人で狩るペースを考えているととてもじゃないけど足りない。もっと大量に確保する手段が欲しい所だが、こればっかりは確率なのでペースを上げてトレントを叩きまわるぐらいしか解決方法が無い。地道にいこう、地道に。


 結衣さん達を本気でスキルアップさせていくことを考えたら一晩かけてゆっくりトレントを狩り続けるような日が有っても良い感じだ。その間に溜まるもんは溜まるだろう。金にもなるしちゃんと探索はしてるし、ミルコもしばらくマップを作り込む作業に入っているだろうし、三者三様に忙しい。その間にゆっくり一人で狩りをしておくのも悪くない。ダーククロウの羽根も溜めたいしな。


 ……考えることが段々なくなってきた。何考えよう? よりトレントを楽に倒す手段でも考えてみるか。が、今のところ雷切一発で始末できる以上、雷撃で始末するか雷切で始末するかの違いだ。スキル多重化で魔力貯蔵量の最大値もあがったのか、最近は意図的に消耗させないと眩暈が来なくなってきた。おそらくだが、今四層爆破チャレンジしても、魔力が尽きる前に体のほうの持久力が持たないだろう、というぐらい体感での魔力持久力が増えている。


 前は難しかった雷切の維持も高いレベルで安定してきている。戦っている間ずっと出しっぱなしにも出来ている。出しっぱなしにして何時間持つか試してみるのも悪くないな。今後はそうやって魔力最大貯蔵量を高める訓練をしていこう。


 ズバッとトレントを伐って、シュッとドロップを拾って、テクテク歩く。


 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。

 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。


 ここでのテンポが決まった。このテンポを乱さない限り気持ちよく狩りが継続出来て、意識は遥か彼方へ向かう。あー体が勝手に動くわー。これは楽だわー……


 ◇◆◇◆◇◆◇


 階段から数えて六十三ほどのトレントを伐り倒したころ、滝までたどり着いた。改めて来るとここは景色がいいな。とりあえず一枚撮っとくか。写真で撮って残してみようという意識がある分、前に来た時よりも心に余裕があるらしい。あまり泉というか滝つぼに当たる部分に近づかないようにしておかないと、ここにもケルピーは居る。


 そう考えていたら向こうからこっちを見つけたらしく、ケルピーが二体滝つぼの底の泉から踊りだしてきた。せっかくなので狩ってはいくが、ドロップにはあまり期待していない。最近他の階層のケルピーから【水魔法】のスキルオーブをもらったばかりだ。階層が違うからこっちは普通にスキルオーブドロップに期待できるとは言え、しばらくは出ないような気がしている。出たら暫く出ないだろう、というのは否定されており、実際には心理的な障壁の問題だと誰かが言っていたな。もしかしたら出るかも、程度に思っておこう。


 尾ひれを馬の形に変えて真っ直ぐこっちへ駆け寄ってくるケルピー二体を相手に両方を同時に雷撃で黒い粒子に還す。【雷魔法】もパワーアップしたおかげでケルピーも一発だ。おそらく、今の最大火力で雷撃を撃ちこんだとして耐えられるのはワイバーンとボスたちぐらいのものだろう。


 そのうちゴブリンキングで試し打ちするかもしれないな。ただ三本目のゴブリンキングの角に何の価値があるのかはまた別の話だが、耐久力テストとしては悪くない相手だ。


 今のところ一人でケルピー複数を相手する事は難しくはないと考えている。が、流石に連戦は無理。だから橋にはいかない。そして、ケルピーのドロップである馬肉は充分手元にある。売るぐらいある。なのでケルピーを意図的に攻撃する理由は今のところ無い。


 滝のマイナスイオンを浴びて気持ちよくなったところで道沿いに帰ることにする。帰りもトレントを倒しながら行く。少し逗留した事で湧き直している数もそこそこ居るはずだ。行き程の数は倒せないだろうがそれでもまた六十体ぐらい倒せればトレントの実が良い感じに出たとして三十六個。ドライフルーツにして三百六十枚分。悪い枚数ではないが、消費量を考えると常に四桁の残高を確保しておきたいな。


 今の手持ちを考えるともう少し増やしておくことが肝要だ。今日だけではなく、明後日明々後日と確実にトレントを仕留めてトレントの実の在庫数を増やしていこう。


 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。

 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。


 明日はどういう行程で行こうかな。まだドロップ品が査定不能だが、その価格に期待は出来る三十六層を回るか、トレントの実を集めに二十九層三十層あたりを回るか。どっちでもいけるというのが今のところの感想だ。二人そろえば既知の部分については油断しない限り問題なく回る事が出来る。両方、という贅沢だってできる。午前中に三十六層を往復して帰ってきて、その後昼食にしてそれから二十九層、三十層を回る。悪くない周回の仕方だ。手ぶらでダンジョンから帰ってくることも無く、それなりの稼ぎをもってして帰ってギルドに恵みをもたらすことができる。


 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。

 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。


 いくらぐらいまでため込んでおいても文句を言われないか、悩みどころではある。ギルドとしては出来るだけ金になる所を回ってもらいたいだろうし、こっちも金になる所を回りたいのは山々だ。だが、いずれ値段が決まるであろう高山帯のドロップ品の価格が決まれば楽になれるのだが。


 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。

 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。


 いや、でも値段が決まってない今だからこそまだ値段の決まってないドロップ品をため込みつつ、トレントの実を確保していける最良の状態ではないか? 値段まだ決まってないので下の階層で頑張ってます、と言い訳することもできる。むしろそのほうがかなり都合がいいな。そういう事にしておこう。


 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。

 ズバッ、シュッ、テクテク。ズバッ、シュッ、テクテク。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 階段まで真っ直ぐ戻ってきた。階段周りにトレントはまだ見えているので目で見える範囲のトレントは倒してしまって、その後で二十八層に上がろう。眩暈も体力的疲労もほとんどない。多重化スキルとはここまで劇薬となるのか。この状態で地上でスキルを放ったらどれだけの出力を得ることができるのか考えるとちょっと恐ろしいものになってきた。トレントの実による強制的なスキルトレーニングを併用する事で半年で育成できる人間兵器。これは新しい傭兵稼業の誕生を目で見ているのかもしれん。


 とりあえず、サンプルとして二名既にそう呼べる人材が存在する。そこから更に……少なくとも二人か。結衣さんと横田さんがスキルブートキャンプを今頃一生懸命やりながら【索敵】のスキルオーブを出そうとして頑張っている。渡したドライフルーツでどこまで頑張れるかは解らないが、二人ともそれなりにスキルを扱えてはいた。これが更にD部隊に広まれば日本の探索者の層はより厚くなるだろう。その為にもこうしてトレントを叩いては木の実を落とす作業に従事する事にも大きい意味が出てくる。


 階段周りのトレントをひとしきり掃除し終わると、二十八層に戻ってリヤカーを引いて七層へ向かう。到着待ちの時間の間にドロップ品をエコバッグに詰め替えていく。トレントの実は査定に出さないのでそのままだ。ちょっと早めになるが、茂君にもう一度会いに行くのでその分の時間調節と、今から再度トレントを探しにうろうろする時間を考えるとまっすぐ帰ってその時間をドライフルーツ作りに当てたほうがいいだろうという判断をした。


 七層へ到着する前に一旦リヤカーごと保管庫へ。さすがに七層で治安がいいとはいえ、リヤカーをドロップ品を積んだままで放置して茂君に向かえる度胸は無い。誰も取らないにしても、誰かが見てない間なら……と邪な心を刺激してしまうかもしれない。そんな事をするよりは素直にリヤカーを仕舞って、誰も見てないときに出す方がより治安が良い事になるだろう。


 茂君して帰ってくると、ちょうど階段の裏には誰も居ないしこっちを見ていない。その間にリヤカーを出して無事にミッション完了。後は地上まで戻って査定にかけるだけだ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あの小西の蟻の群れというか巣の中心部にいくくらいしないといけないのかもなぁw
[一言] 実際多重化した状態でのダンジョン外スキル減衰率ってどんなモンなんやろ 正直今の雷撃なら全力出さずとも殺傷力あるぐらいには出力でちゃう気がするけど
[良い点] 昔はトレントに結構苦戦してたのに、今や片手間…安村さんも本当に強くなりましたなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ