表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十章 ギルド外でもお仕事はする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

676/1250

676:昼食のポトフと切り開かれた二十九層

 軽く走って七層まで戻ってきた。リヤカーにいたずらはされていない。よし、そのままエレベーターで二十八層に戻って昼食にしよう。


 早速エレベーターにリヤカーを積み込み、角を嵌めて魔結晶を入れて二十八層までポチ。そのまま十五分ほど静かな時間が流れる。


 そこそこ時間が空いたので今のうちにダーククロウの羽根をエコバッグから保管庫へしまっておく。これでまた五キログラムほど溜まったことになる。今日全部まとめて卸しても良かったのだが、五キロ、十キロとキリの良い金額で納品するほうがお互い煩わしい端数の話をする必要が無いのが大きい。


 それに、ある日突然布団の効果が無くなってしまったらと思うと、打ちなおしのお願いをするために手ぶらで出かける、ということは出来るだけ避けたい。自分で材料取ってきたんで打ちなおしお願いします。余った材料はそちらで存分にお使いください、といった風な流れに持っていきたい。その為にも予備の羽根は必要なのだ。


 今日も早めにトレント狩りを切り上げて帰り道でもう一狩りしてさらに在庫を溜めておく。芽生さんが居ないソロの間はこのルーティンで行こう。純粋に金を稼ぐ時間で考えると、その二回の往復の間にざっと二百万は稼ぐことができる。その考えで行けば、今更ダーククロウの羽根を取りに行くのは無駄な時間とバッサリと切り落とす事は出来る。が、あの睡眠に代えられる物は無いし、それを一日二時間ちょっとの時間で確実に確保できるなら安いものだ。


 快眠は金銭に勝る。それに全くの無収入という訳でもないし、芽生さんも布団のありがたみはよく解っているはずだ。ソロで巡っている間に多少階層の浅すぎる所で戦っていても文句は言わないだろう。芽生さんにも分け前あるしな。


 二十八層に着くと、エレベーターのすぐ近くにリヤカーを置き去りにする。まだ誰も来てないはずだから邪魔にはならない。もしかしたらチームTWYSあたりが到着し始めているかもしれないが、彼らも俺が既に潜っているのは了承済みのはずだ。ここのリヤカーがあることに違和感を覚えず、逆にこのへんにエレベーターが有るんだなという目印にするかもしれない。誰も不幸にならない最良の選択である。


 さて、二十八層にたどり着いたところで多少の空腹を感じる。これはポトフの出番だな。その場に机と椅子を出すとゆったりと腰かけ、机の上にまだアツアツのポトフを取り出す。いつも三人分作るので今日も三人分ぐらいになってしまったが、余った分は夕飯に回す。これを味変して更に野菜を取るという寸法だ。健康にはたまには留意しないとな。


 よく煮込まれたポトフをダンジョンの奥地で味わう。ブロッコリーもホロホロになっており、箸で簡単に割れる。煮込みすぎ、というほどジャガイモも崩れてはおらず、原形をとどめている。よく味がしみていて美味しい。たまには肉っ気無しの食事もいいもんだ。


 人参はちゃんと箸が通り、玉ねぎの食感も失われていない。そして蕩けたチーズが全体にアクセントを出してくれている。今日のダンジョン飯もうまくいった。次は何を作ろうか? ひき肉を……作るのはいいや、あれはダンジョン肉専用マシーンにしよう。牛鶏ひき肉とキャベツがメインのトマト煮でも作って引き続き野菜を摂取していこうかな。


 トマト煮のレシピは雑誌で見た覚えが有る。それを参考に……あったあった。胡椒を少し多めに入れてピリッとさせるほうがダンジョン探索にも気合が入るというもの、らしい。確かに胡椒辛さなら喉もそれほど渇かないし、そもそもほとんどが水分で出来ているので水分補給にも一役買う。ちょっと胃袋には物足りないかもしれないが、栄養バランス的にはとても体に良さそうだ。早速家に帰ったら試作品を作ってみるか。


 汁も野菜の味が出ていてコンソメを濃いめにしたおかげもあってか最後まで美味しく頂ける。しいて言えば濃いめなので少し喉が渇くぐらいか。ちゃんと別で水分は取っておこう。


 今更だが、待機所兼ノート書き込み用として置いてある椅子と机の場所に置いたミネラルウォーター、二リットルサイズじゃなくて五百ミリリットルサイズのほうが取り回しも気軽さも上だな。今度買いなおして取り換えておこう。余った分は……七層にでもまとめて置いておくか。 ちょっと喉が渇いたのでと二リットルを飲み干すパーティーは居ないだろうしな。パスタを茹でるときにでも使ってもらおう。


 腹も膨れ喉の渇きも癒され、まだ残っているポトフは夕飯だな。今日は夕食を作る手間も省けたらしい。少し腹が落ち着くまで休憩すると、二十九層の階段を下りる。


 降り立った二十九層は、階段の周りが大きく伐り開かれ、半径二百メートルほどの範囲の木の間伐が完了していた。犯人はもちろん俺達である。スキル多重化によって有り余るほどの火力を得たのが楽しくて、トレントごと周囲の木を伐採ないし焼き切って、保管庫でしまい込んで並べて森の隅っこに積み上げる、という作業を行った。


 結果としてまだ木が再生しない場所にポツーンと木が立っている状態になる。言わなくても解る通り、その場に立っている木は全部トレントだ。索敵を使わなくても目視で確認できる。さすがにトレントにも、木が伐採された時の行動ルーティンというものは設計されていないらしい。隠れる物陰も無く、周囲に紛れて擬態出来るでもなく、トレントはただその場に立ち尽くしていた。


 もしかしたら二、三本ぐらい本物の木がリポップしているかもしれないが、伐って黒い粒子に還ったらトレント、そうじゃなかったらただの木だ。ちなみに切り落として保管庫に収納した木は「森の木」とだけ書かれていた。


 どうやら珍しいものでもないらしいし、黒檀のように明らかな堅さがあるとかトレントの木のように良い香りがするとかそういうことも無かった。もしそんな特殊そうな特徴が有ったら表面の枝木を落として木ごと持ち帰り、小西ダンジョンの隅っこに積み上げておいて専門家の鑑定を行うべきだっただろうがそういう訳じゃないらしいのでとりあえず森の隅っこに積み上げてある。


 おそらく、この積み上げた木はいずれスライムの集団が消化しに現れ、全てをスライムの胃に収めた後またどこかへ集団行動しに行くのだろう。スライムがいつこの惨状を目にするかは解らないが、それまではここにあり続けるはずだ。


 さて、手近な所からゆっくりトレント退治と行こう。トレントどこー? 等と探す必要はない。既に視界にトレントは何本か乱立しているのでそれを順番に倒していけば良いだけだ。一人でもあるし焦ったり真剣にならなければいけないほど強い相手でもない。


 いつも通り柄を持ち、雷切でトレントに駆け寄り一閃。それで倒れてくれるようになった。ここもシンプルな狩場になったな。時々こっちの攻撃より先に相手の蔓が向かってくる事が有るが、難なく雷切で切り落としたり、触れられたところから逆に電撃を流して粒子に還すか蔓を短くしてさしあげた後で倒す。


 囲まれるほどに多い場所でもない。仮に囲まれたとして、雷撃で討ち果たせばそれでも倒すことができる。今はもう少し、雷切の使い心地や刃の長さ、密度等々を微調整しながら戦っている。トレントならこのぐらいの出力で十分対応できるだろう、というギリギリのラインをまだ探っている最中だ。索敵に引っかかるトレントを根こそぎ倒した後、まだ切り倒されていない森のほうへ向かう。


 迷わないようにまだ跡が残る小道に沿って移動する事にした。これなら最悪滝までアクセスする事が出来るので迷わず進むことができるし、もし心配なら小道沿いに木を倒しながら行く事で数日分、リポップするまでの間目印にすることも可能だ。しかし、全部伐ってしまうのは味が無さすぎる。世の中には整地しないと精神に異常をきたす部類の人も居るらしいが、木を根元から引っこ抜くのはこのダンジョンでは【採掘】スキルを持っていないと不可能だ。よって、伐り倒した木も根元からではなく、膝上ぐらいの高さで残っている。目印にするにはちょうどいい。


 そのままのんびりとトレントの伐採を続けながら二十九層を歩く。索敵は常にON。視界に入ったトレントは優先的に伐っていく。索敵に引っかかったトレントも、こちらにそっと寄ってくるようなら倒すし逆に逃げていくようなそぶりをするなら追いかけずにそっとしておく。芽生さんが気づいたら追いかけてウォーターカッターで薙ぎ倒してドロップ品をもぎ取りこちらへ手渡してくるようなところだが、今日は俺一人。執念を燃やして金策に勤しむ必要はない。


 今日は今日の糧、明日は明日の糧を求めてダンジョンに潜れば良いし、明日は芽生さんも来る。今日張り切りすぎて明日気抜けになるぐらいなら明日しっかり稼ぐ方が美味しい。というわけで今日は鼻歌も交えながらののんきな一人作業ではあるが、その稼ぐ金額は他の探索者と圧倒的に差がついてしまう事は言うまでもない。本気にならずに気軽に一振り、雷撃の一浴びで倒せるこのトレントから期待できる金額はレアドロップであるヒールポーションを抜いても二万円を超えているのだ。ヒールポーションでも落ちればさらに儲けものである。今日も一本落ちればいいなあという気持ちを抱えたまま、滝つぼにつながる小道へそのまま歩き続けた。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] エレベーターとか保管庫で感覚バグってるけど本来ならこの普通の木材は燃料なんかに使う想定なんだろうね セーフゾーンにガッツリ家作って休息したり何ならエルダー相手にカタパルト作っても良い つま…
[一言] もうお散歩感覚でトレント伐採出来るようになっちゃいましたねー 見分けも今なら簡単につきますしトレントの実の収穫が捗りそうだ
[一言] > 予備の羽根」 予備の布団という概念は無かった > たまには留意」 ピンポイント留意 > 肉っ気無し」 ソーセージどこ > パスタを茹でるとき」 茹でないと思う > ポツーンと木が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ