表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

652/1245

652:査定不能

 エレベーターは無事一層に戻ってきた。今後は片道二万五千円分の燃料が必要。でもダンジョンウィーゼルの魔結晶一つで足りるならそれで対応済ということにもできるが、しばらくは両方の魔結晶を持ち歩くことにしよう。


 一層を急いで出入口へ戻る。時間にはまだ余裕があるとはいえ人が増えた小西ダンジョン、査定待ちの行列に並ぶということにはなりがちだし、いわゆる帰宅ラッシュの探索者で多少混雑する最近の事情がある。前はもっと気楽にやれてたんだが、この調子が続くと査定カウンターも一か所増えることになるんだろうか。


 最近スライムにもかまってやれてないな。芽生さんに付き合ってひたすら潜ってるおかげでお金は溜まったが精神的に安らいでいるかと言われれば、ちょっともにょるところがある。あぁ、でも二十九層三十層と、謎のスライムの集団移動では確かに安らぎを得ていた。完全に休めてないというのは嘘だろうな。


 芽生さんの夏季休暇ももうすぐ終わる。そうなれば普段はソロで、二人の時は三十四層へ、と階層を使い分けて戦う事が出来るだろう。今回ミルコのおかげで終わった火力強化策で、多分ソロでも二十七層では戦い抜くことはできる。お金の心配はほぼなくなったと言っていいだろう。後は……防具だな。スーツか、あればより強靭なツナギか。


「買い物明日でも良いですか? どうせ今日はこの通りですし、明日もこのまま……という訳にもいかないですから」

「そうだなあ。俺は予備が有るからまだいいけど、同じ結果になるぐらいなら早めに相談しに行く方がいいかもな。鬼ころしへは荷物が当日増えるわけでもないけど車で行こうかな」


 他に補充するものが無かったかどうかを頭の中と保管庫で整理しつつ、三十五層に置いた分の水分と明日の食糧ぐらいは仕入れておかないといけないな、と算段をつけ始める。


 出入口から退ダン手続き。


「お帰りなさい。宿泊のご予定ではなかったんですね」


 やはり指摘された。適当に濁しておこう。


「進捗が良すぎたんで帰ってきたんです。荷物もそれなりに一杯ですし」


 退ダン手続きを抜けて査定カウンターへ。査定の順番待ちは思ったほど長くはなかった。きっと、もっとギリギリに駆け込んでくる奴がいるんだろう。それに比べたらまだ若干の余裕がある。急いだ分の効果はあったようだ。


 査定の順番になると、荷物を下ろす前に一声聞いてみる。


「思ったより査定空いてるね。もっと混んでる時間帯だと思ってたよ」

「あー、それはですねー。荷物が一杯になっちゃったんで昼頃に一回査定に来て、外で休憩してからまた入る、という探索者の人が結構多いからですねー。多分十五層近辺で探索してる人に多いんじゃないでしょうかねー」


 なるほど、普通は保管庫を持たないからそこで荷物が一杯になるのか。リヤカー引いてる上に探索している姿を見られることが無いので見た目上は誤魔化せているが、実際はもっと早く荷物の限界が来るらしい。ひとつ勉強になったな。


 査定を待っていると、途中で呼び出される。なんだろう。


「持ってきてもらったドロップアイテムの中にですねー、まだ価格が決まってない物があるんですよー。具体的にはこの色の魔結晶とー、それからこちらの袋にまとめて入っていた分ですねー」


 それは三十三層以降のドロップ品全般だった。まだ価格が未定らしい。俺たち以外の人はなんだ、そんなに奥まで潜れるのか? と不思議がっている。そして査定待ちの列が長くなっていく。


「解りました。こっちのほうは一旦持ち帰って、後日値段が決まり次第査定をお願いします。今は価格が決まっている物だけお願いします。袋は分けておいてあるのでこの二袋以外をお願いします」

「じゃあもうちょっとだけ待っててくださいねー」


 三十三層以降はまだドロップ品価格が決まっていない。それだけ市場にも流れていない商品……いや、ドロップ品だということか。そうなると、三十四層で狩りをしてもしばらくは金にならないって事だな。ギルマスに相談しなければならない案件がまた一つ増えたということになる。


 ギルマスと言えば、倉庫に保管されているであろう買い取れないから捨てておいてと言われて隅っこで邪魔になっているゴブ剣とか、まだ売りに出されていないスケ剣なんかがあれば引き取れないかそれも相談しよう。エルダートレント撃破以来、手持ちの射出武器が心許ないんだ。


 ひとまず三十三層以降のドロップは引き取るとして、そのままバッグに詰め込もう。そんなに質量は無いから袋ごと入れても違和感はないはずだ。ズボッと中に入れ込むと、ほかのドロップ品の査定が終わるまで待つ。


 五分ほどで結果が出て来た。九百八十万六千四百円。うん、良い値段だ。ギリギリまで粘った甲斐があったというもの。ミルコには話の途中で帰ってきてしまい悪い事をしたと思っているので、また今度ちょっとお高い……そうだな、羊羹でも差し入れに持っていくことにするか。一本丸ごとモリモリ食べている姿が想像つく。カステラは……底に敷いてある紙ごと食べてしまいそうだ。


 さてもう一つのお願いと、仕事の話をしにギルマスの所に行ってこよう。特に三十三層以降のドロップ品に関しては早めに対応をお願いしないといけない。その分こっちの収入が滞って……滞ってしまってもあまり問題ないか。今年中に算段付けてくれればそれでいいが保管庫の中身と一回での査定量が大変なことになるぞ。よし、この件をダシにしてちょっと譲歩してもらうか。


「ギルマスまだ居ますよね? ちょっとお話というか質問があるんですが」

「えぇ、今日はまだ居ますよ。多分査定の件ですよね? 」

「そうです。相談というか話し合いというか御用伺いというか、そのようなものです」


 勝手知ったるギルドの二階、上がったすぐの扉を三回ノック、扉を開ければそこは応接室。用事があるのはその奥にあるギルマスルーム。


「安村です、失礼しますよ」

「おや、こんな時間に。今上がりかな? 」

「えぇ、ちょっと問題が発生しましてね、それに関して解決に向けてのお願いと、それとは別に一つ提案があってきました」

「じゃあまずお願いのほうから聞こうかな。手短に行けるならよろしく。今日は早く帰るって家内に連絡しちゃったんだ」


 早く帰りたいからもっと早く来るか、それか明日にしてくれよ、という空気が全力で出ている。これは本当に手短に話しておくのが良いな。


「まずは報告です。三十五層まで行って帰ってきました」

「おぉ、それはそれは。国内最奥タイ記録かな。で、エレベーターで帰ってきた訳かな? 」

「そうです。そこで問題が発生しまして、三十三層以降のドロップ品……具体的にはこれらになるんですが、査定のほうに価格表がまだ用意されてなくて査定をお断りされまして」


 ギルマスがあらら……という顔をする。つまりギルマス自身も把握してなかったって事だな。


「なるほどね。査定金額の決定の早期解決要請がお願い、ということですか」

「ご存じの通り保管庫があるんでこいつは無限に仕舞っておくことができるので当面上の問題はありませんし、財布には若干の余裕がありますので急いでもらわないと困る、という訳ではありませんがいずれ問題になるとは思いますので早めに連絡をしておこうと思いまして」

「なるほど……念のため、サンプルとして一つずつ預かってみてもいいかな? 市場としてどれくらいの期待が出来る物品なのかを調査する時間も必要だ。手早くやっても一週間そこらで結果が出るかどうかは怪しいが、他のダンジョンからの産出品で同じものが出ていたらそちらと連絡を取り合って、はっきりした価格を決められるようになると思うよ」

「解りました。一品ずつお預けします。順番に、ダンジョンウィーゼルの魔結晶、ワイバーンの魔結晶、ワイバーンの肉、ワイバーンの鱗、これは三枚セットでドロップしました、そしてワイバーンの爪です。後は低確率でヒールポーションのランク4を落としますがこれは既に査定してもらうことが出来ますので問題はありません。ちなみにダンジョンウィーゼルの魔結晶ですが、これ一つで一層から三十五層まで直通でエレベーターの動作が確認できたので、査定金額換算で二万五千円以上の価値はあると推測されます。ワイバーンのほうはそれの二倍ぐらいの大きさですから、それがある程度の金額の目安になると思います」

「解りました、稼ぎ頭にはどんどん稼いでもらわないとね。出来るだけ急いでもらうよ。で、次に提案って方を聞こうか」


 さて、ギルドに在庫がどのくらいあるか、話を聞いておいて損は無いだろう。


「ゴブリンソードがギルドの在庫としていくらか保有していたと思うのですが」

「そうだね、査定拒否物品だが持ち帰るのもアレなので、とギルドの倉庫に放りっぱなしのがかなりの数あるね」

「あれを引き取らせてもらいたいんですが構いませんか? いくらか必要ならこちらから出します」

「ゴブリンソードをか……理由を聞いても? 」

「単純に攻撃手段の矢弾として、ですね。こんな感じで射出する事が出来ますので、速度さえ設定してしまえばかなりの威力になるんですよ、これ」


 と、保管庫からポロンとスケ剣を取り出して見せる。速度は一メートルも無いぐらいゆっくり出したので、その場でコロンと転がる。


「なるほど。その残弾数を増やしたいので、倉庫の肥やしになるぐらいなら引き取りたい……ということで良いかな」

「ええ、ここになら何本かあると思いましたので尋ねてみたところです。どうですか」

「ふむ……そういうことなら倉庫の邪魔になるよりは安村さんに有効活用してもらうほうが良さそうだね。金物屋に引き取ってもらうという手もあるが、帳簿上存在しない事になっている在庫だから、ここで変な金が発生するのもまずいし……この間のあれ、ドライフルーツがあったら分けてもらおうかな。あれ結構気持ちよかったから」


 袖の下として実弾を渡すわけにもいかないので、お互いに足のつかない所で取引、という所だろう。十数枚チャック袋に入れて渡すと喜んで受け取ってくれた。


「じゃあ倉庫に行こうか。念のため言うけど、保管してある物には触らないでね」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
他のダンジョンからの算出品…産出品かな?
[気になる点] 「なるほど……念のため、サンプルとして一つずつ預かってみてもいいかな? 」 事務手続き上、きちんと預かり証を発行して欲しいね。
[一言] 金物屋って事はゴブ剣やスケ剣って溶かせるんですね。 そーなるとスキル乗せやすいって前言ってた気がするので武器の素材に混ぜるとかしないんでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ