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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

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632:各自所定の流れに従って行動せよ

 宴会はそこそこの時間続けていたが無事に終わった。さすがに数時間も食い続けてだらけるほど我を忘れてはいなかったらしい。全員満足したところでゴミの分別と片づけをしていつもの行動に入る。


「では、我々はひとまず戻って清州ダンジョンに報告と異動準備を進めようと思います」

「どうする、その間に二十層で狩りをして【索敵】が出るかどうか試しておいて、出たら取っておこうか? 」

「いえ、自力でそれはやろうと思います。お金周りでややこしい事になりそうですし、そこまでおんぶにだっこで探索してるんじゃ情けないですからね」

「そうか……とりあえず数日中にこっちに来るということでいいのかな」

「その予定です。ですのでその時は改めてお願いしますね」


 そう言い残すと新浜パーティーはエレベーターで一層に帰って行った。


「さて、残された我々はどう行動しますか? 予定通り二十七層でも行きます? 」

「そうだな……残り時間から考えてそれが一番稼げそうだ……が、ここは二十九層にしておこうかなと」

「理由を聞いても? 」

「せっかく個別で時間を操作できることを教えてもらったんだ。ならやる事はトレントのドライフルーツの量産じゃないかな。いくらあっても困るものでもないし、禁止されてるでも無し。作れる時に作ってきっちり在庫を確保しておこう。それにトレントならだれも手を付けてないからスキルオーブの可能性だってある。色々夢が詰まってる二十九層のほうが良いだろう」

「じゃあ森林地帯を適当に散策して、良いころ合いになったら帰りますか」

「それが良い。とりあえず最初にやる事は……あぁ、細かい片づけはもう家でやるか。今はとにかく潜りたい気分だ」


 いまここでちまちまと分けてしまうのが面倒になった。まとめて保管庫に放り込む。テント以外の物はみんなしまい込んで出立の準備をしたのでエレベーターで二十八層へ。


「楽しかったですね、打ち上げ」

「またすぐにやる事になるだろうさ、今度は引っ越し祝いだ。次は俺もゆっくり食べるほうに回らせてもらおう」

「そういえばミルコ君も居ましたし、作ったり物出したり、誕生日も祝ったし、いろいろ詰め込みましたね」

「来年もまたこうなるのかなあ。誕生日なんてもう長い事祝う必要もなかったからな」

「そういえば前厄ですね。お祓いとか行くんですか? それともあまり気にしないタイプですか? 」

「本厄はお祓いに行こうかなと思ってるが……この先ダンジョンで何か不都合とか不運に見舞われるような事になるなら個人的にお祓いに行く事にするよ」


 二十八層について、早速二十九層に潜る。トレントもケルピーもまだスキルオーブは出してくれていない。ケルピーのほうはなんとなくこれが出るだろうなという予想はあるが、トレントは一体何をくれるんだろう?


「期待したところで出るわけでもない。スキルオーブの事は考えずに純粋に収入だけ考えて戦うか」

「そういいつつ心のどこかで期待してしまう、それがスキルオーブドロップというものなのです」

「変なナレーションを入れると余計に出なくなるから止めようや。可能性を少しでも残しておくのがコツだ」


 雷切の調子は今日も上々だ。トレントにしっかり焼き目をつけながら丁寧に一体ずつ倒していく。まとめて倒す気概も必要だが、一体一体に念を入れて倒す事も忘れずに行く。


 芽生さんもきっちり蔓を切り落として、反撃されないようにしてから顔を狙って潰していく。水魔法が効きづらいとはいえ、蔓を切り落としたりトレントの弱い部分を潰していくのに余念がない。多分今は見た目では解らないだけで、成長はしている。当初は蔓も切り辛そうだったからそれに比べると成長したのは間違いないな。


 今日はトレントをひたすら狩ることにしたので、小道沿いに北東方向に移動しながらその間に出てくるトレントを倒す。だんだんトレント一匹一匹に気合を込めるのが面倒になってきたので、雷切を伸ばして一メートルほどの雷の刃を出現させ、一気に横殴りにして真っ二つにする。トレントは太くても六十センチほど。これで充分な長さが得られている。


「よし、これでトレントもワンパンだ。より楽に抜けられるようになったはずだ」

「いいですねえ。弱点属性は」


 芽生さんは不満顔である。確かにケルピーもそうだが、水属性が効きやすいという感じのマップではない。次は属性に関係なく暴れまわることができるマップだといいね。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 小道に沿って歩いていく。トレントはそこそこの数で出て来てくれるので体が鈍らない程度に運動をしながらだ。さすがに打ち上げで摂取したカロリーをすべて使い切るほどの激戦ではないものの、腹ごなしの運動にはそこそこ良い感じで進めている。


 これと言って目新しさは、無い。しいて言うなら日ごろの行いの影響か、早めにヒールポーションが出てくれたので収入に関しては気にすることはなくなったところだ。


「運が良ければもう一本、というところかな。あまり気にせず行こう。収入としてはもうこれだけでも充分だ。森を抜けきった泉に着いたら後は適当に道を戻って行けばいい時間になるだろうし、時間が余ったら階段周りを掃除してそれから帰ればいい」

「さらに運が良ければスキルオーブですか」

「それは諦めた。森も抜けきらないうちにヒールポーション出てくれたし、もうこれ以上贅沢は言わない」


 小道を真っ直ぐ終点の滝部分まで抜けて、倒したトレント四十本。ヒールポーションのドロップ率は一パーセントぐらいのようなのでかなり運が良い。ここから戻っても三十体ぐらいは相手に出来るだろう。その間にスキルオーブもヒールポーションも出る可能性は確率的にかなり低いと思う。このダンジョンのここまでの傾向だとそういう事になる。なので後はひたすらトレントを倒して魔結晶と枝と樹液を集め、実はそのまま保管庫に放り込んでおく。


 戦闘パターンもだいたい理解した。明日から宿泊で三十一層へ向かう事に問題は無さそうだ。ただ、三十一層以降から戦闘パターンが増える、という可能性はあるのでそれは注意しておくか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 階段まで戻り、ちょうどいい時間。今日はここまでだな。収入はどんなに少なくても百万はあるのだ。元々今日は半休みたいなものだったしオマケみたいなものだな。オマケと言い切るには多い収入ではあるけれど。


 今日は荷物も少ないしリヤカーも持ってきてないので、両手に荷物をぶら下げての帰還となる。トレントおよそ八十匹分の素材だ、重くはない。魔結晶二袋と枝と樹液、ポーションは懐から出す。


 地上まで帰って退ダン手続きをして査定。査定もすぐ終わる。百五十八万四千円。二十層日帰りコースと同じぐらいの収入になった。およそ二時間半でこれだ、バグってるみたいな収入だが社会がこの金額で良いと言っているのだから良いんだろう。


 休憩室で明日の打ち合わせ。考えておくべきことがいくつかあるのでそれを先に相談しておく。


「明日からは宿泊だ。久しぶりだから色々忘れてそうではあるけど、食糧三回分と、仮眠については注意しなきゃいけない事がある。おそらくマップの広さの都合もあるだろうけど、セーフエリアまで戻って仮眠、という形にするのは難しいので森と川の間の比較的安全な所で交互に仮眠をとることになると思う。スライムが寄ってきた場合駆除する必要があるからな。前みたいに時間で区切ってギリギリのところまで進む、ということも出来なくはないだろうけど二十九層が広すぎるのがネックだ」

「交互に数時間ずつ仮眠をとる、みたいな感じで良いんですかね。【索敵】を持ってるから死角から来られる可能性はゼロだから安全でしょうけど、二人とも寝てる間にテントも服も溶かされてましたなんて事にはなりたくないですし」

「もし仮眠で寝足りないと感じたらもう一時間追加かな。仮眠取って胃袋にも物を詰めて出来るだけ万全な状態で進みたいとは思ってる」

「目標は三十二層で良いんですよね。まだ三十一層のマップも解っていませんが」

「最短距離で行きたいから方角と距離と移動時間さえあってればいいかなという感じだ。マップ埋めもそう必要なさそうだし簡素なもので良いと思う」


 早く次のマップに行ってみたいという欲のほうが強い。おそらくこの二十九層から三十二層の間のマップでは、三十層のエルダートレント以外に見物になるようなイベントは無い。後は歩き抜けるだけの階層になるだろう。三十二層が最後の階層だからと複雑だったり、森が分割されていてややこしいマップになっている可能性は捨てきれないが、それならなおさら手早く抜けていきたいマップではある。


 最先端を行く探索者達が次のマップで難儀している事を考えると、森と川マップの広さのせいか、それともその先のマップで厄介なモンスターが出ているのか……それを確認するためにも次は歩みを進めていかないとな。


「とりあえず帰ったら昼食と夕食分の料理を何か考えておかないと。リクエストはある? 」

「そうですね。消化の良いもののほうがいいでしょうし、野菜炒めを何か一品お願いします。後たまには私もダンジョンでデザートを消費したいです」

「はい、デザート」


 保管庫からドライフルーツを出したら芽生さんが不満顔になる。


「確かにこれもデザートですが、そうじゃなくてスイーツとかプリンとかそういう奴がいいです」

「解った、適当に仕入れておこう。アイスバッグに放り込んでおけば傾いたり倒れたりする可能性は低いだろうから大体なんでも行けるぞ。ただアイスクリームは保証できないが」

「適当の解釈に期待しておきます」


 帰り道の途中で、昼食はともかく夕食用には何を作るか悩み始める。朝食はいつもの奴で良いとして、夕食は……たまにはホワイトシチューもいいか。作ってゆっくり寝かせることでコクも出るだろう。早速買い出しにいくことにするか。


 久しぶりの宿泊コースだ。準備は怠らずに家に帰って念入りに準備しよう……と、その前に打ち上げの片付けもしないといけないな。コンロも明日使うから今日の内に綺麗にしておきたい。後は皿とかゴミとか……やる事が結構あるな。


 家に帰り洗濯をしてから材料の買い出し、帰ってきて材料を鍋にぶち込んで調理をしている横で洗い物とゴミ出し、それから洗濯物を干して買ってきたコーラとビールを冷やして。やる事が……やる事がそれなりに多い。


 全部終わらせたところで風呂に入って、何とか家事を全部こなしたところで体力の限界が来たらしい。出来上がったシチューを保管庫で冷めないようにしたところで精神的にも疲れたのか、そのままベッドにぶっ倒れることにした。今日はぐっすり眠れそうだ。ここまで疲れを感じたのは久しぶりだ。茂君達の香りに包まれながら明日の朝また気持ちよく目覚められると思うのでそれを存分に体感させてもらおう。

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― 新着の感想 ―
一晩かけてドライ果実にするより 水制御で洗濯物同様に果実の水分抜く方が早いのでは? 同様にドライアドの蔓から水分抜けばシオシオになって使いものにならないの? 芽生ちゃんしっかりー!!
[一言] > まとめて保管庫に放り込む 打ち上げの残骸×1 > 雷切を伸ばして一メートルほどの雷の刃 > 一気に横殴りにして真っ二つにする もう新技なんよ > 芽生さんは不満顔である ぷくー >…
[気になる点] 買い出してきたコーラとビールをまた追加で買った来たので冷やして。 コーラとビール買い出しで買ったのに更に買ったという事でしょうか?
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