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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

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623/1251

623:ダンジョンマスター・ダンジョン庁長官秘密会合当日

 あっという間に時間が過ぎ、今日はダンジョン庁長官真中氏と小西ダンジョンマスターであるミルコ氏の会談当日である。異世界異文化異次元交流という意味ではこれほど歴史的な一ページはない……というところだろう。


 だが、あらかじめミルコと誼を通じていたり会食したりおやつを食べながらだべったりしていた俺としてはそれほど感傷的な思いは無い。


 ポップコーンとコーラをお供に気楽な会談……という感じでセッティングをしようと思ったりもするが、あくまで真面目な会談にする予定らしく、そういう気遣いは要らないらしい。ミルコ的にはそのほうが気楽でいいような気もするが、あくまで日本国政府という体面を整えたいというのが本音の所だろう。


 極秘事項でなければここにマスコミも招待し、ダンジョンマスターと握手する一面を撮影されて長官もミルコもにっこり、というのが新聞一面に載る。そんな様子しか思い浮かばない。むしろ、極秘会談だからこそ、型にはまったような形ではなくそういう気楽さがあってもいいような気がする。


 会場は小西ダンジョン第一層。一層に入って奥のほう、いつもはスライムが百匹以上固まって住み着いている俺が良く利用している小部屋と呼ばれるタイプの部屋。そこに簡素な椅子と机をセッティングして会談をする、という内容になっている。


 会談内容は知らされていないが、おおよそは以前調査した内容の再確認や、よその文明についてどのくらい知りえることができるのか、ダンジョンマスターがどのくらいの権能を持ち合わせているのか、多分そのあたりを相談するような内容になるだろう。


 ミルコを呼んだ時点で、おそらく会場周辺にはモンスター……というかスライムは寄り付かないようになるはずだが、念のためともしもの事があった場合に備えての警備、というのが本日のお仕事の名目になっている。なので俺と芽生さん、新浜パーティー、そしてD部隊から手の空いている一分隊が配備されるという話になっている。


 先に会場入りした俺と芽生さんはギルド建物内で時間まで休憩をしながらお菓子をつまんでいる、というところだ。本日はダンジョン庁の査察が入るという名目で事前に予告をした上で小西ダンジョンそのものが封鎖されている。


 七層に住んでいる田中君も含めそこまでは話が伝わっているらしいので、小西ダンジョンの中が空になっている可能性は非常に高い。仮に中に人が入っていたとしてもミルコが隠蔽みたいなスキルを行使して一定範囲に居る人は見えなくすることも可能なのだろうが、こちらもそれ相応の態度を以て敬意を表す……といった所だろうか。


「やっほー安村さん」


 新浜パーティー勢ぞろいでご到着。我々より一本後のバスで到着したらしい。割とギリギリの時間でのご到着だ。結衣さんの機嫌は悪くないように見える。


「宮仕えご苦労様です」


 結衣さんが敬礼をしてこちらに挨拶。


「そちらこそ。こっちは宮仕えというよりダンジョン仕えという感じですけどね。こちらのやる事はダンジョンマスターに話を通して日付を合わせて、とそこまでが主な仕事だからここから先はまあオマケみたいなもんですよ」


 そんなに気負ってませんよアピールをしておく。俺がガチガチに緊張してたら感染するかもしれないからな。あくまで肩の力を抜いておこう。


「気楽ですね。国の方針すら揺るがしかねない世紀の一瞬なのに」

「それなら、初めてダンジョンマスターと出会ったダンジョンそのものが世紀の一瞬だったとおもいますよ。ここは延長戦みたいなものです」

「延長戦ですか……多分、今日の話題次第ではダンジョンマスターが世間に公開されるかもしれないのに? 」

「大手を振って王様の耳はロバの耳と叫べるようになる事を考えたら気が楽にならない? 」

「なるほど、たしかに。あ、そういえば安村さん、これこれ」


 結衣さんが探索者証を見せびらかしに来る。そこにはちゃんとBランクと書かれていた。


「おめでとう。これでまた肩を並べられますね」

「ありがとう。で、Bランクになるための基準になるとはおもうんだけどやっぱり……」

「現状はダンジョンマスターについての知識が有る事、でしょうね。これでダンジョンマスターについて一般に公開されるような事になれば、判断基準が緩和されるか、もしくは納めるダンジョン税の金額に変更があるかどうか、あたりですか」

「多分ね。後はダンジョン税で一定額を納める、あたりになるのかな。つまりBランク探索者はみんなダンジョンマスターについて知識が有ると判別できるね」


 暫くすると自動車の乗り込んできた音が聞こえて来た。どうやらご到着かな?


 入口の方を見ると黒塗りの高級車が停まったのがちょうど見えた。SPに引率されて……ってあのSPに見覚えがあるな。たしかここで会った高橋さん達だったか。ダンジョンでの警護なのでD部隊が出張してきたとかそんな感じだろう。それ以外には以前ビデオ通話越しで出会った真中長官とその秘書らしき人、そして……あれ、もう一人見たことのある人が居る。


 たしか、俺の記憶に間違いなければこの国で一番偉いという立場に居る人のはずだ。なぜ小西ダンジョンに?


 建物に入ってくるとギルド職員がざわつく。職員が急いで二階へ行き、どうやらギルマスを呼びに行ったようだ。休憩コーナーに居る俺達を見つけると、真中長官はこちらに近づいてきた。勿論お連れ様も一緒だ。


「安村さんですね。お久しぶりです、長官の真中です」

「真中の秘書をしている多田野です」

「ご無沙汰しています。それと……」

「どうも、内閣総理大臣というしがない役職をやっています、森本です」


 やはり、内閣総理大臣だった。階段からダッシュで下りて来た坂野ギルマスが突然の総理訪問にあたふたしている。


「本日は長官のみのご来訪だと思ったのですが、なぜ総理まで? 」

「丁度、タイミングよく、幸運なことに、予定していた会談がキャンセルになりまして。それで今話題のダンジョンの管理者に会う事が出来ると聞いたものですから、真中さんにご随伴させていただくことになったのですよ。なので私はオマケですオマケ」

「はあ……フットワーク軽いですね」

「それにほら、内政的な面でも外交的な面でも、ダンジョンマスターと会えるということ自体が貴重なカードになりえますからね。その一端を知っておこうと思ったんですよ」

「今まで森本さんはダンジョンの事については私に投げっぱなしでしたからね。その分の成果報告、いわば私の通信簿の受け取りが今日ということになりますかね」


 総理と真中長官は割と仲がいいらしい。年齢にはそこそこ差があったはずだが、それを感じさせない。それがフリなのかどうかはわからないが、表向きそう見せないのも総理の人のよさなのか、それともお互いそういう風に見せつけているのか。


「今日の会談、録音いいんだっけ」

「ダンジョンマスター側の許可を取ればよしって事になると思いますが。ただ、ファンタジーやSFでありがちなネタだと録音してるはずなのにダンジョンマスターの発言だけ記録されてなかったり、謎の音声で出力されたりってあたりが考えられもしますね」

「なるほどねえ。我々には普通に聞こえていても、実は魔法的なフィルターを通して耳に聞こえているだけで実際は別の言語で会話している可能性もある、ということか」


 総理もファンタジーの嗜みは少しあるらしい。そういえば二十一層の時にボイスレコーダーの類は提出を願われなかったが、その辺を見越しての事だったのだろうか。それともあくまで非公式な会談なのでそこまで重要だとは思われなかったのか。あの後ギルドマスター会議で証言させられたのを考えると、そこまで期待されなかったというほうが正しいように思われる。


「移動時間がかかって申し訳ないのですが、会談場所はダンジョン一層の奥の方になります。皆さん揃ったことですし移動を始めてもよろしいのでは。会話は歩きながらでもできますし」


 あえて口を挟んでこの場で雑談を続けようというほうから気を逸らせる事にする。実際出入口から二十分ほど歩く必要がある。入口すぐ辺りにそれらしい場所があれば良かったのだが、残念ながら小西一層にそんな場所は無い。


「それもそうだね。打ち合わせは車で終えたし、私もダンジョンには一度入ってみたかったんだよ。是非探索者の腕前という奴も見せていってほしいね」

「ご期待に応えられるかはさておき、安全はお約束しますよ」

「我々も居ますし、過剰戦力といった所でしょう」


 D部隊の以前会ったチームTWYS、高橋さんも横から意見を添える。


「我々民間人が警護では少々ご心配かもしれませんが微力を尽くしますので」

「話によると君たちは二十八層まで潜ったことがあるんだろう? ダンジョンの急激な変化でもなければ君ら以上の戦力はそうそうおらんと思うよ。心強い探索者が民間にも居ると安心しておくさ」


 思った以上に信頼されているらしい。これはすんなりと会談場所まではいけそうだ。


 受付で入ダン手続きをしようとすると、今日はダンジョン入場してなにかするわけではないので手続きは要らないと言われる。確かに、探索者証を持ってない人を三人も連れていくことだし要らないのか。


 持ち込む荷物はキャンプ用の椅子と簡素な机。椅子の一脚は俺が持つ。残りを芽生さんと新浜パーティーでそれぞれ。机は平田さんが持ち歩くことになった。チームTWYSは四方を固めるような形で警護に着く。


 そういえば【索敵】を持っていることを伝え忘れたな。それを先に言っておけば怪しい動きは探知できると確約できるところだったが言いそびれたのは失策だったか。


「【索敵】の事伝えておけば、こんなに物々しくならなかったんじゃ? 」


 芽生さんがそっと耳打ちに来る。


「俺も今それを考えてたところ。後で思いついたんだから仕方ない、今から伝えて妙に変な動きになるよりはこのまま黙って進もう。どうやら移動速度から考えて索敵範囲にスライム以外の物は居ないようだし」

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― 新着の感想 ―
[良い点] とうとう、”実務的な”№1が登場し、主人公とダンジョンマスターとの交流も相俟って安泰な立場を確保しつつあること。 [気になる点] ありえないと分かってはいたが、ご皇室の何方かがダンジョンに…
[一言] まあ陛下が来訪されなかっただけまだマシと思っておこう……飛び込みで総理が来るのも割と大事ではあるのですけれども
[一言] まさかのオマケが偉過ぎるw 内閣総理大臣まで来るとはマジで歴史的な会談になりそうですねえ
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