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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

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622:仕込み

 二十八層に移動すると、テントまで戻る時間が勿体ないのでその場に机と椅子を出して食事の準備にする。人の目が無い所だからこそできる保管庫の強みだ。そんなところで保管庫を使わなくても……と思われるかもしれないが、テントで休んでもその辺で休んでも同様の回復が見込めるならわざわざテントまで戻る必要はないと考える。要は体力が回復出来ればそれでいい。


 休むために十分な物は保管庫に入っている。食事と水分と暇つぶし。ダンジョンではこれだけあれば贅沢というもの。特に遊ぶネタとしての暇つぶしは重要だ。それを持ち込むだけでコストが上がる。雑誌類は重さもあるし量もある。持ち込んでるだけで数十冊あるので選ぶこともできるし気分で変えることもできる。


 はぐはぐと一生懸命食べている芽生さんを横目に、俺も馬肉カレーを食べる。今日はシンプルに決めて来たので隠し味どうのこうのはやってない。純粋に野菜を切って入れて肉を焼いて、まとめて煮つつカレールーでまとめた本当にシンプルなカレーライスだ。それでも美味しさを感じることができるのは馬肉のうまみのおかげか、俺の腕が上がったのか。


「馬肉と人参がいい味出してますね。人参はちょっとお高い甘みの強い奴のような気がします」

「よく解るな。いつもより高い人参を使ってみた。甘みが良く出てて食感もいい感じの……そういえばいい人参を使ったんだった。俺の腕のおかげで美味しいんじゃなかったな」

「後はそうですね……ジャガイモがとろけなくてもちゃんと煮えているのがまたいいですね」

「レンジで蒸かしたあと冷ましてから放り込んだからかな。そのほうが早く出来るからな」

「玉ねぎもちゃんと蕩けるまで炒めてありますね」

「そっちもレンジで温めて熱を通してから炒めたからかなり時短したな」

「時短で同じ料理が出来るなら腕前は上がっているのでは? 」

「そうかもしれない。自分を褒めておこう。よしよし」


 どうやら芽生さんからは色々と高得点らしい。元々人が作った飯には百点をつける娘だがさらに加点がされたようだ。加点されて悪いことなんて何もない。言われたそのままを受け入れて次回に活かしていこう。今度は何カレーを作ろうかな。キーマダルカレーとかどうかな。ひき肉製造機もあることだし、今なら気軽にダンジョン肉のひき肉を作れるんだから多少手間がかかっても好きに料理が作れるというのは悪くないな。


 食事を終えて小休止。椅子に座って目を閉じて、アラームが鳴り終わるまでしばし横になる。ドライフルーツで無理やり体を起こしてやってもいいが、こうやって自然回復させることで伸びるパラメーターもあるはずだ。いまはゆっくりと体を休めよう。


 スキルはともかく体は適度に労わってやらないと、そろそろあちこちに急にガタがきたりする年齢でもあるんだ。男は八の倍数で体に変化が訪れる……みたいな説もあることだし、今日ぐらいはしっかり休憩しよう。ここから小休止を挟みながら三往復だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 昼食と休憩を満足に取ったところで午前中の続きをする。一日金稼ぎだけに費やすというのはとても健康的な話である。頑張れば頑張っただけ成果が得らえるダンジョン業界。無理をせずとも成果が出せるなら出来るだけ楽をしたいというのが人というもの。


「昨日までと違って人が居ないのがストレスフリーで良いですね。ザクザク狩ってザクザクドロップが出ます。このまましっかりグルグル回って稼ぎを積み重ねていきましょう。目標は休み中に収入三億円です」


 芽生さんもご満悦だ。やはりダンジョンは人の出入りはほどほどのほうが実入りが良い。打ち上げで全部肉を使い果たすことも無いだろうから、しばらくは二十一層より浅い階層で活動をする事はないだろう。後はそうだな、パックライスとか麺類とかそこそこ使いそうなものと、野菜をいくらか保管庫に放り込んでおくか。二十一層のクーラーボックスに放り込んでおきましたって体で装えばごまかせるだろう。


 コンロも二個必要だな。一個はあるがもう一つは小型のバーナーだ。とてもじゃないが七人分の胃袋を満たすためには火力が足りないだろう。戦闘の合間に必要そうなものをメモっていく。コンロ、お野菜、麺、米……はまだあるからいいか。ビールは今家で冷えてる。


 おっと、ゴーレム三体か。ちょっと真面目にやろう。ゴーレム二体の同時パンチを縫うように回避して向かって左側のゴーレムの腕に飛び乗り、そのまま雷切でゴーレムの目を潰し一体目。そのままジャンプで二体目のゴーレムの姿勢が整う前に目を潰す。残りの一体はまだこちらに向かって走ってくる最中だ。


 近づいていただくのも時間が勿体ないのでこちらからお迎えに行く。ゴーレムが腕を引き絞ってパンチを繰り出そうとする前にゴーレムの懐に入ると、パンチの落としどころが見つからないゴーレムは挙動が止まる。その隙に目を破壊する。ゴーレム処理終わり。


 雷切も安定して稼働するようになってきた。無理やりドライフルーツを咥えて雷撃打ちっぱなしの特訓している成果があっての事だ。保管庫も同じように寝ながらパチンコ玉を一発ずつ出しては仕舞ってを繰り返して気絶ギリギリまで使い続けることでスキルの使用時間がより長く使えるようになる事が解っている。


 芽生さんも同じように訓練をしているので、より多くの枚数のウォーターカッターを、長時間運用できるようになってきた。二十九層以降ではそれほど出番はない、というかケルピー相手ではほとんど効果がないものの、トレントをスパスパ切れるようにはなってきた。これも成長だな。


 カメレオンはもともとスパスパ切れているのでここでの芽生さんの貢献度はかなり高い。俺が楽をさせてもらってるぐらいだ。その分二十九層以降で俺がドライフルーツを食べながらでも長時間稼働できるようになっているのはお互いさまという所だな。


 戦い慣れて戦闘時間が短くなった分、二十七層の移動速度も増したおかげで、同じぐらいの数のモンスターを倒しながらでも五十分ほどで片道を進めるようになってきた。この調子でどんどん短くより密度の濃い戦闘が行えているのは確実な成長と呼べるものだろう。


 そのまま一往復、休憩、二往復、休憩、三往復、休憩とどんどん金稼ぎを続けて、午後五時四十分。ここからエレベーターで一層に向かって一層を抜けていけば、時間までにはダンジョンを抜けることができるだろう。今日は結構ギリギリの時間になった。最近では珍しい事だな。


 帰りのエレベーターの中でドロップ品の仕分け、リヤカーへの積み込み、休憩を済ませる。今日は一日濃密な狩りを楽しめたな。


 一層に戻ってリヤカーをちょっと速めに引きながら出入口まで出た。時刻は午後六時半。結構ギリギリの時間だ。ここから査定をしてもらって振り込みを依頼して、ちょうど午後七時という所だろう。


 退ダン手続きで戦果のほどを褒められたところで査定カウンターへ。ギリギリでこの量はしんどいと言われながらもニコニコ査定を行ってくれる査定嬢には感謝しかない。十分ほどかかって査定を受けた金額は一人当たり五百五十七万千円。一日としては良い額だ。支払いカウンターで振り込みを済ませると呼び止められる。


「ギルマスから伝言です。四日後の土曜日朝から、だそうです」

「思ったより早いですね。了解したと伝えておいてください」

「解りました。四日後何かあるんですか? 」

「ダンジョン庁の長官が視察に来るそうです。我々は一応護衛ということで呼ばれてまして」

「そういうのはギルド内部で共有してほしい所なんですが……まあいいです。ギルマスには伝えたと報告しておきます」

「お願いします」


 四日後か。結構早いな。もっと一ヶ月ぐらいかかるかとも思っていたが、よほど焦る理由でもあるのだろうか。もしくは我慢が出来ずにスケジュールを詰めて来たのか。こっちの準備は出来ているので後は結衣さんに情報共有して……よし、送ったぞ。


 後は四日後まで大人しく探索するなり休むなりしておこうかな。さすがに前日は休みにするか。昨日の無理がたたって万全に仕事をこなせない、では意味がない。最近通い詰めでもあったし、ここらでちょいと休憩するのも悪くないかもしれん。


帰りのバスに乗る。ギリギリまで粘った人がそれなりに居たらしく、バスは混雑している。


「さて……三日目は休みにするとして、残り二日も二十七層か。しばらくは代わり映え無さそうだな」

「それを言ったら同じマップを回り続ける以上、代わり映えをする事なんてないと思いますよ」

「それもそうだな。三十二層までは代わり映えは無し……と。早く次のマップを見てみたいな」

「情報はあるから先取りしてみておけば良いんじゃないですか? 」

「それはそうなんだが、あまり早く見過ぎても楽しみが薄まる。直前まで見ずに居て、そこからなるほどそう来たかーって落差を楽しみたいんだ」


 映画館で言えば、無駄に長い見たくもない予告の間にパンフレットを読むかのようなそういう感覚だ。細かい所はともかく、事前情報を仕入れておいてそれから見る。そういう点では、二十四層のクイーンスパイダーとも呼べるあのデカさはびっくりの一言だった。ああいうアクシデントは大歓迎だ。


「今なら三十二層まで降りて階段のところでノートパソコン開いて……って出来るから楽しみをギリギリまで引き延ばすこともできますね」

「楽しみだなぁ三十三層。その前に三十一層と三十二層巡らなきゃいけないけど」

「五日後以降ですかね。泊まりで三十一層三十二層と探索するのを優先していきましょう」

「まぁ、無理に三日で行き道を踏み固めていくよりも、三日間適当に力を溜めていく、という方向で行くか。打ち上げが終わったら三十一層に向けて行こう。とりあえず二日給料をもらって三日目は休み。打ち上げの準備も万全にしておきたいしな」

「じゃ、二日潜って三日目休み、ということで」


駅に着いたので芽生さんと別れる。さて、明日のお昼は何にしようかな……ボア肉の……ボア肉は止めとくか。ウルフ肉で何か作ろう。久々にシーズニングの出番かもしれん。色々買い足してはあるからな。打ち上げの日にも活躍するかもしれない。


……会談が上手くいくかよりも打ち上げで不満が出ないようにするほうに比重を置いてしまっている気がする。良いのだろうか?

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミルコもうち上げに参加しそう。
[気になる点] 三十二層の話しを 混み合ったバス内でお話し~! (^o^) [一言] 打ち上げ楽しみですね (*´∀`*)
[気になる点] 混雑してるバスの中で32層とかノートパソコン開いてとか言っちゃって大丈夫なのかしら? [一言] もうすぐ会談か どうなるのか楽しみだ
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