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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

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619:馬肉を貼り付けて冷やして治療するってあったよな

 森の中を一時間かけてトレントをシバきつつ階段方面へ。方向感覚がかなり良くなってきたので、直で階段に向かえるようになった。進歩だ。五分から十分ぐらい時短が出来る。


 時短が出来るようになったからその分トレントと戦う機会が数回失われたが、たいてい通り道か帰り道の出来事なので細かく気にする必要はない。


 今回も無事に階段へ真っ直ぐたどり着くことが出来た。これも普段の行いが良いおかげだな。


「今日の収入はちょっと少な目って考えていいんですよね? 」

「入ったのが遅かったからな。何ならギリギリまで二十七層で稼いで行くか? 」

「うーん、ギルドから即座に連絡が入る可能性もありますから、あんまりギリギリまで働くのも都合が悪いかもしれません。しばらくは時短業務のほうがいいんじゃないですか? 」

「そうだな……そうかもしれん。肉集めが終わったら二十七層を往復するぐらいでお茶を濁しておくか? 」

「収入的な面からすればそれで十分ですね。時間が取れない以上深く潜れないですし、同じ潜るなら収入の多い所を潜るのが一番いいです」


 二十七層をぐるりと回るよりも効率よく稼げるところは今のところは見つかってないからな。橋をひたすら往復するということでも達成は出来るが、疲れるし飽きるのも同じならより効率的に金稼ぎできる場所のほうが建設的だ。それに帰り道の都合上、二十七層をうろついてるほうが早く帰れる。橋の上でうろうろしていたら、そこから更に一時間森を抜ける必要がある。その点、三往復で行って帰ってくるというわかりやすい指標がある分にも二十七層に軍配が上がる。


 ただ、個人的にカメレオンの革の価格が高すぎるように感じられることと、それについて今のところ社会的な使いどころが無さそうなこと、収入のメインが魔結晶とキュアポーションであることが気になる。自己満足の範疇だが、出来るなら社会に貢献できるドロップ品を、という俺の望みはしばしお預けらしい。


 今日もエレベーター内で仕分け作業だ。馬肉とトレントの実は全部保管庫に仕舞っておくので、いつもより袋の数は少ない。なんならリヤカーも必要なかったかもしれないな。魔結晶で三袋、トレントの枝と樹液で一袋。ポーションは二本しかないので直接バッグから出す形で見せよう。


 エレベーターの帰り道で唐突に芽生さんが話を切り出す。エレベーターの昇降中の時間はちょっと暇なんだ。


「例えばなんですが、もし三十四層あたりにこのダンジョンの最下層があったらどうします? 」

「三十六層まで作ってもらってそこにダンジョンコアを置いてもらおうかな。三十五層までエレベーターでつないで気楽に三十四層で探索が出来るようにしてもらう。貸しを使ってでも良いからそうしてもらう」

「贅沢なのか欲張りなのか……そんなんでいいんですか」

「小西ダンジョンが何層まであるかはあえて聞かなかったからなあ。それも楽しみの内だし? ここ三年で見れば三十階層越えも充分深い階層なんだろうけど、この先の人類の進歩と優秀な探索者の確保が出来ればこのぐらいなら浅いって思われるだろうし。エルダートレントも一人で屠れるような凄い奴が出てくるかもしれない。そうなった場合、小西ダンジョンは初心者向けのダンジョンという感じになっていくんだろうな」

「テンプレートがどこまで続いているのかも気になりますね。もしかしたら予想外に深いかもしれませんし」

「人類にはほぼ到達不可能な環境が整備されている可能性だってある。灼熱地獄とか極寒地獄とか。そうなれば身動きも取り辛いし荷物も多くなる。出来るだけ過ごしやすい環境が続いて欲しいなあ」


 極寒マップと灼熱マップが連続して続いているような状態だと、マップの切れ目で着替えて挑むとなれば荷物も多くなる。俺は保管庫があるからなんとかなるが、そうじゃない人にとってはドロップ品を持ち帰る量が減ってダンジョン的にも不都合が多いだろう。


 しかし、俺の浅く少ない知識量ではどんなダンジョンを作り上げてくるのか、というものにはあまり予想は付かない。二十九層から三十二層にかけても、森マップと大きな違いがあるか? と言われればマップの広さと構造、それから川があるかどうかぐらいしか違いが無いと言えばそうだ。もちろん、川でとれとれぴちぴちのケルピー料理を披露するかどうかという大きな差はあるが。


 そう考えるとこの先は既存のマップの組み合わせで来るのか、それとも俺の想像の範疇外のマップが来るのか。楽しみではあるな。


 一層に着き、リヤカーを引きながら頭上に居てリヤカーに落ちてきそうなスライムだけを丁寧に処理しつつそのまま退ダン手続き。


「今日は入るのが遅かったのでいまいちですよ」

「おかえりなさい、安村さんのいまいちは他の人に比べたらずいぶん稼いでいる範疇だと思いますよ」

「確かにそうかも……いやそうですね。自覚しておくことにします」


 言われてみれば、春頃は数万稼いでイエーイってやっていた気がする。今では森と川の階層で橋を片道歩くだけで一人あたり五十万は稼げてしまう。今日は二往復したので少なくとも二百万は稼いでいるということだ。他の探索者からすれば十分な収入になるだろう。


 査定カウンターに並んでしばし待つ。現在午後五時。この時間でも待ち行列が出来るようになったのか、人がずいぶん増えたな。もうちょっと遅い時間に来ていたらもっと待たされてた可能性はあるな。


「お疲れ様ですー。いつも通り分けて貰ってあるんでちゃちゃっとやっちゃいますねー」


 査定カウンターは忙しそうだが、楽しそうに査定してくれているので忙しすぎて辛い、というほどでもないようだ。品目数が少ないので五分かからず査定が終わって結果が出た。


 三百七十二万八千二百五十円。結構時短した割に売り上げが高い。きっとヒールポーションが思ったより一本多めに出たとかそんな理由だろう。一本二百万の大物収入は出るか出ないかで大きく収入が変わる、レアドロップも考え物だな。でない時は出ないから今回は運が良かったということにしておこう。


 芽生さんにレシートを渡して支払いカウンターで振り込み。今日も十二分に稼いだ、ということにしておこう。また口座の金額がガタッと増えたことになる。あまり使うような予定も趣味も無いので溜まる一方だ。どこかで使ってもいいかもしれないが……思いつかないな、まだしばらく溜めておこう。


「さて、明日はオーク、明後日はカウ肉でしたね」

「その予定、全部日帰りだ。ボア肉はさておき、オーク肉は……あれ、そろそろ一人でもオーク肉取りに行けるんじゃないか? 」

「じゃあそのテストもかねて行きましょう。今後はソロ活動ももっと深いところで出来るようになるかもしれませんね」

「昼食何がいい? いつも通りサンドイッチ系で攻めるか、それともゆっくり休憩できるように鍋ものみたいなものにするか? 」

「他人の目があるでしょうし、タッパー容器に入る程度の量で何か……そうですね、丼ものとか食べたくなってきましたね」


 丼ものか……揚げものがセオリーだが、揚げ物に限定するのは芸がないな。ステーキ丼とかもあるんだからそっちにシフトして考えていこう。


「揚げ物以外で何か考えておく。ローカロリーハイテンションな奴を何か探そう」

「楽しみにしておきます」


 流石に昨日の今日で予定が決まるとは思っていないのでしばらくは日帰りだな。肉は早めに集めておいて……後は打ち上げやるって言うんだから酒もそれなりに入れておいたほうが良いだろう。多少ぬるくてもビールがあると無いとでは宴会にも身が入ろうというものだろう。今のうちに買い物に行っておくか。


 駅で芽生さんと別れて自宅へ。スーパーへ車を回すと、宴会で使いそうなものを補給。ビールはちゃんと本生を用意しておこう。二十四缶もあれば足りるだろう。事前に二十一層へクーラーボックスを移動させておいてそこに入れておけばとられない限り冷え続けてくれているだろう。


 ……いやまて、そもそもクーラーボックスごと持ち歩いて、テントの中に入れておいたふりをしておけばより長い間冷やし続けることができるな。今度二十八層へ行った時……少なくとも三日後か、クーラーボックスを回収しに出かけよう。


 後は……多村さんはウィスキー呑んでいたな。せっかくの打ち上げだし五桁円する程度のウィスキーを仕入れておくか。いくら飲むとしても角瓶やペットボトルのウィスキーをドンと置くよりもアルコールを楽しめるはずだ。


 弁当・総菜コーナーを見て回ると、ローストビーフ丼が目に入った。これだな。明日はローストホース丼にしよう。適当な野菜と一緒に焼いた後ホイルで包んで蒸らしてできあがり。失敗したら後日に活かす。大事なのは料理しようという勢いと美味しそうな味の組み合わせだ。ニンニク醤油でもいいが、シンプルに生姜醤油で行こうと思う。匂うしなニンニク。打ち上げの予行演習にも使える。


 とりあえず夕食は出来合いのローストビーフ丼ということにして、家に帰ったら早速ローストホースの試し焼きをしてみよう。味が足りなかったら随時足していく感じでまず一回。上手く出来たらその分をそのままパックライスの上に乗せていく感じで朝詰めればいい。


 必要なものを買いそろえて、新しいメモ帳も買って追加しておいた。最近あまりメモを取らなくなったな、物忘れが改善してきたのか、メモするほどでもない情報が多いのかは解らないが、今気づいたので最近メモを取ってない、とメモしておく。


 買い物を終えて家に着くとまずはビールを冷やすところから始める。野菜室が最近空き気味だったので冷やしておくにはちょうどいい。このまましばらく冷えていてもらおう。


 夕食を食べると早速調理開始だ。ローストビーフと同じように塩コショウを軽く振って下味をつけておく。油をひいてニンニクでなく生姜を炒めて香りをつけてほどほどに熱が通り良い感じになったところで肉を塊のまま投入。赤ワインを軽くかけて全面を強火で焼いたらアルミホイルに包んで冷やす。


 常温で冷やしてる間に洗濯と風呂を済ませて、パンツ一枚のまま出来上がりの様子を確認、端っこを切って味を確認。……うん、これでお醤油があったら充分だな。気分的にはカツオのたたきを作っているのと同じだ。だから上手く出来ているだろう。


 明日、明後日はただの肉集めだ、これと言って問題も起きないだろう。明後日はダンジョンで何を食べようかな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 五桁万円のウィスキー \(^o^)/ [気になる点] クーラーBOX、買い足せば良いのに . . . (´・ω・`) [一言] ビールは500ml缶だよね! (๑•̀ㅂ•́)و✧
[一言] 小西が初心者の登竜門になる時代かあ 何年後くらいにそうなるんだろなー
[一言] ダンジョンの拡張申請なんてなかなか聞かないなあ。
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