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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第九章:ネタバレ

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612/1253

612:ダンジョン庁にて

ここから新章です。またしばらくよろしくお願いします。

いいね!が合計二十五万件を超えていました。もっといいねしてもいいのよ

「ダンジョン入りたい。現場の空気を肌で感じたい」

「またですか……そんなに書類仕事がいやならもう一人どこかから引っ張ってきたらどうです? 」


 ダンジョン庁長官室。ここで駄々をこねる男が居る。ダンジョン庁長官である真中であった。


「だってさぁ……探索者はみんな楽しく探索しているのに私はいつでもアフターケア専門なんだよ? たまには休みではないけど、直接探索者の声を聴くことも大事じゃないかね? 」

「言い分はごもっともですが、その目の前の書類を片付けてからにしましょうね」

「そういいつつ、片付けた先から書類が増えていくじゃないか」


 目の前に軽く一山できている書類を片っ端から承認、非承認しながら会話は続く。会話しながらでもきっちり目は通しているあたり、真中の能力は職務を遂行するには問題が無い、というところだろうか。


 ダンジョン庁が出来て最初の長官であることと出来て間もない機関であるということを含めて、まだまだ書類のやり取りが洗練されておらず長官の承認でなければできない事リスト、別に他の誰でもやっていい事リストは整理されつつあるが、全国に百ほどあるダンジョン全てについて長官一人の手には少々余る書類量ではあった。


 副長官というポストがあり副長官に任命された人物も居るのだが、長官は書類仕事、副長官は各部署や他官庁との折衝をそれぞれ担当していることでいつも忙しく飛び回っており、その分の書類が全部真中の手元に来ているのが実情である。


「お盆に帰省できただけまだマシというものです。ご実家でゆっくりできたのでしょう? 」

「まあね、帰省できるだけの仕事を終えられたその点だけは自分を褒めたいよ」


 通常ではお盆も関係なく仕事で動いているので盆休みという概念があるのは今のところ真中長官だけである。その点だけでも他部署に比べて少し恵まれているとは言えるものの、ほぼ毎日休みなく仕事をしていることには変わりなく、今も真中は先月の収支報告や各ギルドからの陳情書、報告書等いろんなものが積み重なりつつある。


 最近特に増えたのがエレベーター関連の議題だ。自分のダンジョンで活動している探索者の育成ペースを速めて十五層へ初めて潜らせてダンジョンマスターに謁見、そしてエレベーターを設置してもらえるように交渉を進めたいので水面下でダンジョン庁からの密命という形で十五層を突破させるための手伝いをさせるための予算書……という形で上がってくる書類が多い。


「やっぱり金勘定に強い部下がもう二人ぐらい欲しいなぁ。新人でもいいから一から鍛え上げて望めば座りたい椅子に座らせてあげても良いから欲しい」

「それには賛成ですね。私も仕事の割り振りが楽になりますから」

「やっぱり他所の官庁から引き抜くのはダメかな? 」

「それ前回やろうとして猛抗議が飛んできたやつでしたよね。止めた方が良いかと」


 話を進めつつ、書類の山は四分の一ほどが減っていく。口で言ってる割にかなり速いペースで仕事が進んでいるあたりが真中の優秀さが表れている。むしろ愚痴を言う事で自分のガス抜きをしつつ仕事を円滑に進めるための一つの癖や手段と言えるのだろう。


「そういえば、小西ダンジョンのダンジョンマスターの話はどうなっているんだっけ? 」

「こちらから何も話を振ってませんので、特に情報が無ければ探索者……確か安村氏でしたか。彼の希望通りに報酬を受け取っているはずですけど」

「一度確認を取ってみるか。現状解っているダンジョンマスターの中で小西ダンジョンのダンジョンマスターが一番我々に友好的らしいし、安村氏は色々と話の通じる人に見えた。彼なら自分で好きな望みを言うよりもダンジョン庁に対して貸しを作るために願い事をため込んでいるかもしれない」

「そこまで先を見てる人物にはとても見えませんでしたが」

「なにより、彼は我々に隠している事がある。半分は勘だが、残り半分は確信と言っていい。一度コンタクトを取って見て、彼越しにダンジョンマスターに実際に会談してみたいものだな」


 正直に言えば、ダンジョン庁の建物に封じ込められているよりは多少体を動かす意味でも副長官みたいにあちこちを飛び回ってみたいという思いのほうが強かった。その口実として小西ダンジョンは手持ちの札として使えると考えている。


「ダンジョンマスターとの会談……って希望したらセッティングできると思う? 」

「最近エレベーターが設置されたあそこは難しいでしょうね。まだその奥に潜り始めたばかりで場が落ち着いているとは言えません。その点だと小西ダンジョンのほうが可能性は……そうですね、さっき長官が言われたとおりに安村氏がそういう事もあろうかと会場セッティングは出来ますよ、という流れになる可能性は高いかもしれません」

「よし、早速小西ダンジョンに連絡を取ろう。そして可能なら小西ダンジョンのダンジョンマスターと会談だ。何話そうかな」

「会談というのは普通話す内容があるから会談をセッティングするものです。会談を先に整えてから内容を考えるのは逆です」


 秘書はこめかみを押さえつつ、真中の暴走を抑えようとしている。もしかしたら書類を食わせすぎて壊れてしまったかもしれない。


「だが、いずれ必要な事だろ? 彼らの思いに国としてどこまで要望を通せるか、その分の利益が国に補填できるのか。そこをはっきりさせておくだけでもメリットはある。私も胸を張って仕事をしているんだと言える。ダンジョン庁はダンジョン税取るだけ取って仕事をしていないと言われるのも不満だ」

「ならご自分の子飼いの部隊にそれをさせると良いのでは? 」


 なんならD部隊を本格的に動かしてダンジョンの階層を攻略していく正攻法で行ったらいいとの主張も、真中によってやんわりと否定される。


「現状手持ちのダンジョンと部隊でそれを行えそうなところが無い、というのが実情かな。何処も十五層を突破し終えて二十一層で再会する約束をしないまま進んできてしまっている。つまり次のチャンスは三十層のボスの撃破タイミングでないとそもそもダンジョンマスターと出会う事すら難しいだろう。しかし、三十層のボスの強さから見て、現有戦力で臨むことは非常に厳しいと言わざるを得ない。複数ダンジョンにまたがってそれぞれ潜っている部隊をかき集めて総力戦で行けるかどうか戦力評価の最中だ」

「四小隊一部隊をかき集めても厳しい、と? 」

「報告ではそう上がってきている。スキルを使用した攻撃も想定されているが、そもそもの火力が足りていないのではないかという話だ。三十層のボス、エルダートレントだったか? は自己回復力も高くて生半可な攻撃をし続けても撃破するまでには数時間を見込む必要があるとかで違った切り口からの攻略が出来ないかどうか、前線では相談の最中らしいよ」

「うまく物事は進まないものですね」

「全くだ。どこかに美味しい話は転がってないものかね。ちょっと行って帰ってきてオッケー取ってくるみたいなやつ」

「では、書類仕事ついでにその美味しい話が転がってた時にダンジョンマスターに質問するリストでも作っておいてください。そのほうが気も紛れるでしょうし、頭の休憩にちょうどいいでしょう? 」

「そうだな、そういう気分転換も割と楽しいかもしれんな。何聞こうかなぁ? やっぱり向こうの技術水準とか知りたいな。こっちの近代社会と比べてどういう部分が魔法要素で優れていたかとか、そういうの気になるよなぁ。それに上下水道の仕組みとか農業工業産業、どのくらいまで進歩しているのか、魔法のおかげで我々より進んでる可能性だってあるわけだ。よくある話だと農業レベルが低いけど工業レベルは中々に高かったりとかハーバー・ボッシュ法の無い世界だったり……あぁ、楽しそうだなぁ。それから現代文明の利器があるかどうかも気になるな。微分解析機ぐらいはあったりするんだろうか」


 真中の思想は普段の仕事の延長上ではあるが遥かに逸れた斜め上を突っ走っていく。真中の秘書はその間にコーヒーを淹れなおして机の上にそっと置いておく。これで三十分ぐらいは頭の休憩になるだろうからその後でもう一仕事押し付けるか、ぐらいの事を考えていた。


「そういえば安村さんとはレイン交換してたんだったな……レインじゃなければ気軽に対話できるんだが仕方ない、今のところ機密事項なんだからちゃんと順路を通して坂野課長から連絡を送ってもらうとするか」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
美味しいドライフルーツは転がってますねぇ
[気になる点] >我々より進んでる可能性 保管庫スキルで前方の空間を保管して、後方に射出できれば超光速航行できそう なお、潮干狩りおじさんは死ぬ(´・ω・)
[気になる点] 秘書に書類食べさせ過ぎイクナイ! 山羊か!? [一言] ダンジョン庁長官は退屈した! 安村氏にアプローチした! (*´ω`*)
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