594:対トレント考察
前回のタイトル、曲を知ったのはハッチポッチステーション。またやらねえかなあれ
とりあえず小道沿いに一時間、トレントを倒しながら進む。暇つぶしになる程度にトレントを呼び寄せたりしながら戦っているので、そこまで多くは無いが少ないとも言えない程度の規模のトレントとの戦闘は続けて来た。
トレントはこっちを見つけると、普通の木のふりをしてもそもそとこっそり移動しながら近づいてくる。こっちは二人とも索敵持ちなので丸見えだから問題はない。ある一定距離およそ二十メートルほどの距離に近づくといきなり蔓を放って攻撃を仕掛けてくる。それまでは様子見、という事らしい。知能はそれなりにある。やっぱりこいつらは擬態をするつもりはあるんかな。
近づいて蔓が飛んで来たら雷撃で蔓をさっさと焦がし落として、相手の攻撃力を失わせる。しばらく放っておくと蔓は再生はするが三十秒から二分ほど時間がかかるようで、その間はほぼ無抵抗。実際に蔓を使って殴られる以外の攻撃パターンはまだ見ていないが、きっと縛り付けたり同時に二体で攻撃してくることにより四肢を固定して引っ張ってきたり、いろいろ攻撃手段はあるのだろうが、こっちの攻撃で先に蔓が無効化させられるため攻撃に転じていられないのだろう。
トレントを深く知るためには一度全パターン攻撃されてみる、というのも一つの手だが、それをやってると芽生さんがまた渋い顔をするだろうからほどほどにとどめておき、蔓で縛ったり殴ったり絡み付けたり色々してくるんだろう、というあたりで納得をしておく。
芽生さんも伸ばしてきた蔓に対してはウォーターカッターで切れるようで、本体に攻撃は通じないが蔓には通じるらしい。蔓を何とかした後攻撃する、というパターンはあっちも同じらしい。
「やはりステータスを上げて物理で攻撃するのが一番楽なんでしょうかね」
「今のところそういう事になってしまっているな。なんなら雷撃出力を上げてから物理で殴るのでもいい」
ワンパターンで確実に倒せるならそれが一番だ。二番目は……今のところ使う様子は無いな。もっと密度が濃い所に来た時がその機会に当たるだろう。何か手を考えておこう。
小道沿いにまっすぐ進むと出てくるトレントは多くても二体。これは森の中をさまようほうが稼ぐ効率は良さそうだな。とおもったら道をふさぐように三体のトレントが立っている。
早速二対多の戦いだ。さてどうするかな。
「一体は雷撃で無効化させて残りを一対一。それが終わったら最後という事で」
「了解、任せました」
とりあえずのいつもの手口、一体を完全に無力化させて正面戦力を減らして一対一の形に持ち込む。安村パーティーの常套手段であり一番手数が少なく済み、そして楽なパターンだ。
一番近くにいるトレントを射程に収めると、相手の強さを測る上でも重要な最大出力の雷撃を加えて、どのぐらいのダメージが与えられているかを見る。雷撃を受けたトレントはそのまま一気に樹皮がはがれ蔓が消滅し、黒い粒子をまき散らす。一撃死、という訳では無いようだが致命傷を与えたことは確実だと見ていいだろう。
その瀕死のトレントを脇目に奥に居るトレントを狙う。早速蔓が飛んできたが合わせるように雷撃を撃ちこみ蔓を炭化、いや粒子化だな、ともかく吹き飛ばす。攻撃手段を失ったトレントは頭を振りかざしロケンロールな感じでクネクネと動いている。音に反応して動く花のおもちゃがあったがそんな感じだ。痛みに耐えているのか必死の抵抗を試みているかは解らないが、とりあえず物理的に攻撃して顔を潰す。
直刀で木こりのように木を折る事は何度か考えたが、そもそもこの直刀はバトニングに耐えれるのかどうかは解らない。確実に木を折りたければ少し大きめの斧を保管庫に入れておくべきだろう。そんなわけで直刀を雷切モードで顔を潰す。鼻をそぎ落としたり目をつぶしたりして、ほーら次は何処を殴りましょうかね~と煽りながら何度か顔を斬り刻んでいる間にトレントは黒い粒子に変わった。
確かにトレントをスマートに倒すやり方はもっと学習しなければならないな。一度直刀で顔面を一気にぶち割ってみるか。最悪予備のグラディウスは保管庫に入っている。一発を強く打ちこんでみるのではなく、雷を纏わせた刃を当てて雷撃で焦がしていくイメージを想像する。早速、瀕死になっているトレントで試そう。
雷を纏わせたまま瀕死のトレントに近づき、直刀を無理のない速さでコーンと当てそのままゆっくり力を込めて何度か打ち込んでいくと、徐々に刃が入り始めた。バターのようにスルッと切れる、という訳にはいかないが、ちょっとずつ、木を無理やり割っていくような感じで刃が入る。
もうちょっとで落ちそうだ、という当たりで力を込めて刃を入れると、スパッと切ることが出来た。そして切り落としきると、トレントは黒い粒子に還った。どうやら根と本体の間を切り落とすとトレントには致命傷らしい。
やはり斧みたいな武器があれば楽に斬り落とせる事が出来るような気がしてきた。いやその前に、雷切なら何とかできそうな気もしてきた。打ち込んだ先から炭化していくなら、連続して同じところを叩き続けられるなら確実にとは言えないが継続的にダメージを与えられるだろう。もし折れたらその時はしょげて帰るしかないが……まぁ雷撃があればなんとかなるかな。
しかし、同じところにダメージを与え続けるというのはそれなりに技術力が要求されるな。俺に出来るかどうか……次のトレントでやってみよう。
◇◆◇◆◇◆◇
更に三十分ほど小道なりに進んで、倒したトレントはざっと三十体。スライムは潮干狩らず、今のところ見逃している。トレントに集中したいところだし、スライムの価値はここまでのスライムと比較すれば大きい実りだとは言えるが、トレントに比べれば安いものだ。何も居なくて暇だから潮干狩るというかたちにはなるかもしれないが優先順位は低め。俺にしては珍しく低めである。
トレントだが、顔以外の同じところを傷つけ続けるというのは中々に難しい作業だった。結論から言うと諦めた。それよりも顔を狙った後複数個所に傷をつけ続けて蓄積ダメージで倒す方が楽だという事になった。刀に雷を帯びさせて斬る、というのもかなり慣れて来た。後は直刀の使い過ぎで壊れたりしない事を祈るだけだが、流石にモンスター素材、スキルを纏わせて戦う、という点においてある程度親和性があると言われているだけある。
今でいえばそこそこ安いと言えるが、当時としては充分高めのお値段だったのでもうしばらく持ってほしい、もしくは新作が出てたらそれが気になるなあと思うぐらいだ。今度鬼ころしへ行った時に似たような奴で最新作が有ったら使い心地を試した後買ってみるのも一興だな。
「後三十分ほど歩けば前回来たところまで来たことになりますね」
「方角的には……北東方面へ向かっている事になるのかな。あと一時間半道なりに進むか、森の切れ目っぽいものが見えたらそっちに舵を切ろう」
「森の切れ目……あぁ、川と並行して移動してる可能性を消すためですか」
「そう。真面目に道だけをたどって、実はすぐそばを通っているだけでしたーとかあまりにも抜けてるからな」
トレントだけ相手にするのに不都合はないが、いい加減ケルピーというモンスターにも会ってみたいし、川がどのくらいの川なのかも見ておきたい。用水路レベルなのか河川レベルなのか。そもそも用水路レベルならケルピーが詰まっているというのはどういう状態なのか。さすがに長江や黄河のようなとてつもないレベルの広さである可能性は薄いと思う。
トレントはモンスターとしては耐久力が高いほうに入ると思われる。ゴーレムほどではないがタフな樹皮と素早い蔓、そして愛嬌の微妙に足りてない顔。もうちょっとデフォルメされていれば可愛さもあったのだろうが、残念ながら禍々しいというほうがより適切な風貌をしている。個人的にはもうちょっと可愛いほうがいたぶりがいがあっていいのだが……まぁ個人的な趣向はおいておこう。
さらに三十分。倒したトレントは五十二体。これは魔結晶を数えればいいだけだから間違いない。今回はヒールポーションにはまだ出会っていない。極稀に、というぐらいだから百匹に一本ぐらい出ればいいかぐらいに思おう。小道はまだ続いている。この小道が途切れて川に出たら、一息ついてそれからケルピー君との御対面となるかな。
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