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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第八章:関係前進

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573:出ないときは出ない

PalWorldたーのしー

 二十七層は相変わらずの様相。何も居ないように見えるが、芽生さんにはバッチリ見えてるらしく、早速ウォーターカッターを乱射して俺の目にはまだ見ることができないカメレオンを処理していく。四匹いたようでこれで収入は最低でも四万円。燃料の往復費用はこれでもう稼いでしまった。後はボーナスステージだが、今日はボーナスステージに用事がある。


 ゴーレムをいかに楽に倒すか。そしていかに複数狩れるか。そこに重点を置いて探索する事にしよう。地図はある、飯もある。迷う心配はないので気楽に芽生さんに先陣を任せ、ゴーレムが出てきた時は優先的に対処。この砂岩マップでの基本行動だ。


 時々ゴーレムが三体連れで来るが、三体相手に回避行動を取ってる間に芽生さんに後ろから弱点を突いてもらい、数が減ったところで逆に攻撃に転じる。一対一なら素早さでゴーレムの攻撃はこらえきれる。落ち着いて攻撃を避けてスキが出来たところで一気に詰め寄って目を破壊。ゴーレムは黒い粒子へ還る。


 今のところこれを超える方法で危なげなく倒す方法はまだ思いついていない。という事になるとやはり【物理耐性】を得てからどのぐらいまでなら殴られても問題ないかの実地試験をしてから新戦術を試す、ということになるだろうな。今はうまくいってるのでこのままでいい。今は物事を進めると言う段階じゃない。ひたすらスキルオーブが出るまで狩り続ける稼ぎの時間だ。


 芽生さんが索敵してカメレオンを吹き飛ばしながら、時々俺にも戦わせつつゴーレムまでの時間を潰し、ゴーレムが出たら俺が優先的に倒す。この階層、というより二十一層以降は【索敵】があってなんぼの階層だ。芽生さんにかなりの負担がかかっているのは自覚している。もしかすると色々と追い抜かれるかもしれないな、という危機感もある。


 例えばカメレオンが意外と硬くて、ダメージを受けると擬態を解除して襲ってくるとかならもうちょっと俺の出番もあったに違いない。中々勿体ない、もう芽生さん一人で良いんじゃないかな状態になっている。


 なんか居づらいなぁ、という気持ちを心にグッと抑えながらの探索だ。せめてポーターとしての役割は十全に果たして、芽生さんが心地よく探索を続けられるように尽力しよう。少なくとも足手まといではないのだから拾って拾って拾いまくろう。ゴーレムがもうちょっと多く出てくれれば俺の出番もあるんだが。


 ここ二十七層では三対一ぐらいの確率でカメレオンかゴーレムが出てくる。もちろんゴーレムが一のほう。なのでモンスターを相手にする回数は必然的に芽生さんのほうが多くなる。とはいえ浅い層のように十匹を超えるようなモンスターがうろうろと出てくるようなことも無い。打ちこんでいるウォーターカッターの枚数を考えるに、ゴーレム込みで六匹が最大という所だろう。


 普通のパーティーならゴーレム担当班とカメレオン担当班で別れて行動するか、カメレオンを速攻で撃破してゴーレムに全力を注ぐ、という形になるだろう。俺たちは後者だ。


「ゴーレムがもっと出て来てくれたらその分スキルオーブも出やすそうなんだが……上に行ってもゴーレム少ないからなあ」


 指折り数えながら、ここまでで何体倒したかを数える。


「だいたい一時間で十五匹ぐらいか。ただそれだけでも三十万円確定だから美味しい事に違いは無いと思うし、それに加えてカメレオンが……何匹ぐらい? 」

「この階層だとざっと五十ってところですかね」

「だとすると八十万にプラスして革とキュアポーションってとこか。やはりキュアポーションの価格でガッツリ稼いでる感じだな」

「サクサク行きましょう。この階層を独占できているうちに頑張って数倒してスキルオーブを出すんですよ」

「物欲センサー、物欲センサー」

「おっと」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 四時間ほど物欲センサーをうまく働かないようにしつつグルグルと回ったが、さすがにそのぐらいで簡単に出てくれるほど甘くはなく、一度休憩を取ることにした。


 二十八層に下りてキャンプへ戻り、食事と仮眠にする。


「当たり前ですが出ませんでしたね」


 ウルフ丼を片手に芽生さんがポツリと感想を漏らす。


「そりゃあ何千匹と倒して出るのが普通のスキルオーブなんだし、ここまで倒してきたすべてのカメレオンとゴーレムを足して……千匹に手が届くかどうかだ。まだまだ時間もかかるし、毎回出なかったとしょんぼりするよりも毎回いくら持って帰ってこれたかを考えよう」

「じゃあ、今のところいくらぐらい稼いでますか? 」


 ここまでか。四時間の間障害もなくちょこちょこと休憩は入れているとはいえほぼ潜りっぱなしだったのでかなりの収入になっているはずだ。


「カメレオンの魔結晶が百九十二個、ゴーレムの魔結晶が五十八、革が二十八、キュアポーションが十一ってところだな」


 スマホを取り出してそれぞれの価格を入れて計算を始める。その内、スマホ用アプリでダンジョン探索者向けの収入計算ソフトがでてもいいかもしれないな。


「税込み約千二百万か。税抜きにして五百四十万だな。仮眠とってもう四時間粘ればさらに倍。なんかもう金銭感覚が無茶苦茶だな。一晩潜るだけで一千万か」

「どうですか、お勤めの間と比べて。満足してますか……って聞くまでもないですよねえ」


 お勤めのころの収入が欲しければ今すぐ帰って寝ればもうそれで一年間充分すぎるほどの収入が得られている。どれだけ今までの給料が安かったのか、それとも俺に向いてなかったのか。


「あと二十年ダンジョンが早く出来ていてくれたら俺は今頃探索者を引退してひたすらダーククロウの羽毛布団に絡まりながら一日をただ寝るだけの時間として過ごしていると思うよ」

「そんな早くにFIRE決め込まなくても……まだまだ人生楽しむことがあるんじゃないですか? お金が出来たからこそ出来るようになることだってあるはずですよ」

「うーん……下手な投資に手を出して靴磨きの少年になるつもりはないんだよなあ。それならまだ魔結晶を査定にかけずに保管庫に放り込んでおいて、値上がりのタイミングを見計らって徐々に嵩増しして査定にかけていくとかそういう投資のほうが割に合ってる気がするし、相場の上下に一喜一憂するのはドキドキして落ち着かないし」


 そうなると俺に向いている資金運用というのは限られてくるな。株式配当だけをあてにして長期的に株式保有をして、ほとぼりが冷めたころに現金に換えるというまっとうな方法ぐらいになるだろう。それぐらいしか思いつかん。


 何にせよ、急いで手を付けることはないだろう。今年一年で本当にどのくらいの収入を得ることができるのか。税金を引かれていくら残るのか。そこまでが解れば貯金以外の投資にいくらかけることができるのかが解るはずだ。それまでは焦って金を動かす必要もあるまい。


 芽生さんはウルフ丼をぺろりと食べ終わってまだ物足りない感じだったので追加でウルフ肉を焼く。タルタルソースの小袋があったはずだな。タルタルウルフ肉と行こう。


「とりあえずあり得なかった現在に思いをはせるよりこの少しだけ先の未来を考えよう。ゆっくり落ち着いて物欲センサーに引っかからないように【物理耐性】を拾う。できれば二個。まずはそこからだな」

「最悪ギルドを通して買う事も視野に入れる感じですかね? 」

「そのために共用口座でも持つか? 片方は手に入れてもう片方は買ってしまうという可能性だってあるしな。その場合経費を半分ずつにする方法あるんかな」

「そもそもスキルってどういう理由で経費になるんでしょうね。減価償却とかどうなっているんでしょう」

「調べなきゃいけない話が増えてきたな。気が向いたらまた調べよう」


 お代わりのウルフ肉に齧り付きつつ頭を巡らせている。美味しそうに食べているのでヨシ。


「ベストは自力で出す。ベターは片方買い付ける、という事で良いですかね」

「ベストを尽くせるよう頑張らないとな」


 ウルフ丼を食べ終わり腹は満足した。ちょっと横になるか。


「軽く三時間ぐらい仮眠とって、それからまた四時間探索しようか。その後はその後決めるって事で」

「いいですよー。一緒に寝ます? 」

「ダンジョン内だと確実にミルコに見られることになるけどそれはいいの? 他のダンジョンのも含めてダンジョンマスターに仲の良さをアピールする事になるけど」

「それは……その趣味はちょっとないのでやめときます」


 うん、それが良いと思うよ。俺も公開するようなものでもないと思ってるし、何ならこの会話も聞かれてそうだからな。ただ、見せびらかしてお礼にスキルオーブドロップがあるんだとしたら……悩むな。


 悩む頭を抱えながら食事の後片付けをして、眠りの態勢。いつも通り三時間アラームをしかけると横になり枕を出す。三時間の仮眠で最大限体力の回復に努めよう。起きたら飽きがきたゴーレム退治に邁進だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 稼ぎどき [気になる点] ゆいさんのパーティーの動向 [一言] ゆいさんたちいくら稼いでるの?
[気になる点] すり抜けドロップ [一言] > 時々ゴーレムが三体連れで来るが その場合、芽生さんが2匹倒しているのかな > それならまだ魔結晶を査定にかけずに保管庫に放り込んでおいて 無申告で年度…
[良い点] >見せびらかして云々 なんだろう…『人間はそういうことする』的な知識はあるかもだけど、「何でわざわざそんな事してるんだろうこの人達は?」みたいな反応しそうなイメージですねミルコ…というかダ…
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