572:今日のところは既存の地へ
Palworldたーのしー
駅で芽生さんと別れ、先に小西ダンジョンへ向かう。三十分ぐらい遅れてくるのを予想しておく。三十分暇ではないか? とは思うが、最近小西ダンジョン前に出来たコンビニのおかげでその点は抜かりない。
バスを降りて少し歩いてコンビニへ。相変わらず探索者向けにカスタマイズされた内装と品ぞろえ。雑誌は……あったな。月刊探索ライフの最新号を購入しておく。これでどうやら俺の趣味らしい料理が一段と捗ると嬉しい。
買い物を済ませると、芽生さんに建物で待つと連絡をしておく。これでゆっくり本を読んでいられるな。内容を見ると月刊探索ライフでも小西ダンジョンの続報について記されている。
エレベーターの開通以来小西ダンジョン周りの土地事情がかなり変化し、周辺住民や地主にとっても塩漬けになっているだけだった土地を大急ぎで駐車場として貸しに出したり、どこかの住宅メーカーが広めに土地を買い足して少人数向けの賃貸住宅を……この辺は他のニュースでも見たな。これを買ったコンビニも周辺変化の一つだろう。
これでダンジョン近くにダンジョンアイテム専門店でもできれば完璧なんだろうが、さすがにそこまで冒険をする企業は今のところいないらしい。
小西ダンジョンが他のダンジョンの探索者を刺激してある程度の強さの人口を引き付けたことにより、Cランク相当の階層の人口が減り快適に探索が出来るようになった。その分一人当たりの査定金額が増え、もともと混みすぎていた清州ダンジョンはその傾向が出始めているらしい。やはり人口は多すぎても少なすぎても良くないらしいな。
清州ダンジョンとしては高ランク探索者が小西ダンジョンにとられた事で一時的に収入が減ったものの、育ってきた探索者がより上位の狩場に向かったのと、人口が減って狩場が空いた分リポップが早くなったらしく、もう少ししたら以前の収入水準に戻るのではないか、という予測がされている。
この小西ダンジョンをベースで考えると、人口は清州の四分の一も居れば満員になってしまう程度には狭い。今度は狭さのおかげで稼ぎにくい、という状況に陥るのはそう遠くない話になるだろう。そうなった場合、小西ダンジョンを民間ダンジョンとしては珍しいBランク探索者向けに開放されていく流れにもなるんだろうか。民間初のBランク探索許可ダンジョン。二十四時間ではないのが残念ではあるが、そのウリはエレベーターと相まって更なるうまみをもたらせること請け合いだろう。
ちょっとどころじゃなく人口が増えた分ギルドのほうは忙しいらしく、更に人を増やして対応しているらしい。査定カウンターには常に二人配置し、カウンターこそ一つしかないものの二馬力で運用する分以前より素早い査定がおこなわれるようになった。もしかしたらその内カウンターも二つに増えるかもしれない。
今はカウンターは一つのままで後ろで動かす数を増やすという形で一応の決着を得ているようだが、今後更に人口が増えたりするならば対応は変わってくるだろう。
ギルドの人間を増やすにしても、ギルドが便利になるにしても、必要なのはダンジョン税の納付だ。その為には俺たち先行探索者がいくら持ち帰ってくるかで決まる。そう思うとより気合が入るな。ダンジョンを背負って進んでいる感じがする。
一晩でダンジョン税を二百万稼いで帰ってくることができる今の段階を考えるに、稼ぎ頭なのは間違いない。素材の種類に関してはあまりでかい顔こそできないものの、魔結晶の数とキュアポーションの質と数については今のところ取りに行けないアイテムを供給できているという自信を持っている。そりゃBランクで探索許可が下りているのが俺達だけなんだから当たり前ではある。
二十一層までしか潜れなくても、一日四百万ぐらいは稼ぐことができるはずなので公式な小西ダンジョンのトップ層から換算すると四倍弱。なんだか最近指数関数的に収入が上昇している気がする。本当にこんなに貰っていいのかとも自問自答するが、くれるものはもらっておくのが自分のスタンスだという事を思い出し、素直に報酬を受け取ることにしている。
今日も一晩……実質的には半日だが、リハビリを兼ねてしっかりと潜る予定なので収入はそれなりに多いはずだ。ちゃんと稼いで帰ってギルドを栄えさせる助力をしよう。
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さて、月刊探索ライフの売りである料理コーナーだ。どれも目移りするな。基本的にパーティー単位で作ることを考えているのか、四人前が基本になっていることが多い。俺たちは二人なのでその半分の量で済む。何か面白いものあるかな……現地で温かいメシを食うための下準備については前号に詳しく載っていた。
使わない部分は出来るだけ自宅で前処理をしておく、外装は剥いでおく、省ける作業は省いておく、調味しておくものは先に調味して小瓶に分けておく等々、キャンプで使うようなテクニックが随所にちりばめられていた。
自家用車でキャンプ場に行ってバーベキューならそこまで細かくやっておく必要はないが、持ち込める量や体積に制限があるダンジョンだからこそ生きてくるテクニックが詰まっている。
今月の一押しはタコライスらしい。肉は事前に一度焼き、調味料と馴染ませた状態でダンジョンに持ち込み、野菜類はカットしてチャック袋へまとめて収納。後は現地で温めつつ混ぜて終わりというお手軽手抜きレシピが掲載されている。タコライスいいな、なんか急に食いたくなってきた。今度作るか。
うんうん唸っていると芽生さんが現れた。もう準備万端らしい。
「新しい雑誌ですか。何か気になるものでもありましたか」
「飯のレシピが一つ二つ増えたかな。その内作るから精々楽しみにしててくれ」
「たまには私も作ったほうがいいですかね? いつも作ってもらってばっかりですし」
「それは楽しみにしておこうかな。普段芽生さんが何食べて生活しているのかは少し気になる。俺の飯だけで食事を切り詰めているという事もなさそうだし」
「最近はお金もありますしね。自分で作るのと出来合いを食べるのと半々ってところですね。疲れてなかったり心に余裕が有る時はちゃんと自炊してますよ」
雑誌をバッグに放り込むと伸びをして、軽く全身を動かす。時刻は午後五時。今から入場するのは一泊コースの探索者がほとんどだろう。
「さて、睡眠サイクルを元に戻すための探索に出かけるとするか。忘れ物は無いし飯もある。最悪スキレットとコンロで味付けした肉だけは確保できる。肉も色々集めたし、しばらくたんぱく質で困ることはないな。しいて言うならそろそろパックライスの箱買いが必要なことぐらいか」
「じゃあ探索から戻ったら買い出しですね。今度はどんな食事が出てくるか楽しみにしています」
「今日の夜食はもうできているからな。心配なく潜れるぞ」
「では早速行きましょー」
入ダン手続きをすると不思議がられた。
「こんな時間から潜るのは珍しいですね。一泊でしょうけどご安全に」
「ありがとう、今日はちょっくら稼いで帰ってくるだけなのでご心配なく」
「安村さん達がちょっくらと言っても他の探索者さん達と比べたら十分な稼ぎになるとは思いますが、ごゆっくり」
一層をゆっくり抜け、エレベーターで二十八層へ。到着すると相変わらず埃っぽく砂岩に覆われ、休憩する環境としては少々厳しい階層ではあるが、それでも休憩スペースを確保できているのは問題ない。一応キャンプに戻って何も変化がない事を確認すると、一路二十七層へ。今回の目的はリハビリと【物理耐性】狙いだ。物欲センサーは出来るだけ切って戦いに身を投じることにしよう。
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