548:稼ぎやすい通り道
そのまま道なりにまっすぐ歩く。迷宮マップみたいに各所に小部屋があるという訳ではなく、割と直線系の地図だ。作るのは楽だが、少々退屈もする。
お肌が乾いて仕方がないので時々水を出しては顔に振りかけ、乾燥を抑止する。最近めっきり使ってない化粧水を持ち歩いておけばよかった。家に帰ったら保管庫に放り込もう。
と、ここでゴーレムとエンカウント。真剣勝負の始まりだ。こいつは鈍いからと油断して一発ぶん殴られた時、どれだけのダメージを受けるかが未知数だ。骨の二、三本持っていかれるかもしれない。蝶のように舞い蜂のように刺すがモットーのこの二人組にはその一撃が重い。出来るだけ避けてダメージをそもそも受けない事が大前提だ。
そう考えている間にもゴーレムは振りかぶってこちらにパンチを繰り出してくる。バックステップとサイドステップを駆使して避け、地面に手がついたところでその手の上に乗り、肘から肩にかけてよじ登る。そのまま肩から顔までたどり着くと、顔にある核を攻撃。一発で割れるときと割れない時があるのでワンパンあれば充分とまでは言えない。一回で割り切れなかったら今度はスキルで攻撃を加えて核を破壊するか、もう一度同じ攻撃を仕掛けて今度こそ完全に破壊するか、だ。
と、腕を振り回して攻撃してきた。パンチと違って避ける先のスペースが少なくなるのでこの攻撃は要注意。周りを即時に見回して避ける方向を見つけるとそっちへ逃げる。上手く避けたらもう一度核にスキルで攻撃。命中。核は……よし、割れたな。しばらくするとゴーレムは力を失ったようにその場に鎮座し、徐々に黒い粒子に還っていく。後には魔結晶が残された。
キュアポーションは無しか。苦労したら必ずドロップするわけではないからな。質よりも数で攻めて確実に本数を稼いで行きたいところだ。
「やっぱりゴーレムは数が少ないですね。何か理由でもあるんでしょうか」
「でかい分スペースを取るからじゃないかな。いくら空間が広めのマップとはいえゴーレムがわさわさ来たら対応しきれない。二匹出てくるだけでもかなりつらい。その前にもう一段階強くなりたいところだな」
ステータスブーストがもう一段階上がれば相手の攻撃モーションの間に懐に潜り込んで一撃加えてそのまま離脱……という戦法が取れるようになると思う。そろそろ来てもいいんじゃないかなーという所だ。
あのステータスブーストが一段階上がる瞬間はとても心地いい。急に視界が晴れたような感覚、世界がぐっと小さく、そして自分が大きくなったような、今なら何でもできそうという気分になれる。何回味わっても気持ちがいい。もしこの世界にレベルという概念があるなら、あれがレベルアップという現象になるんだろうな。ちょっとずつだが確実に強くなったことを実感できる。
「ゴーレム抜きで戦えると完全な餌場ですね。なんかシューティングゲームやってるみたいで楽しいです」
「楽しんでもらえてるなら何よりだ。こっちとしてはほとんどの負担を任せてるような形になってるのでちょっと申し訳ないような気持ちが大きめなんだが」
「いいですよー、便利に扱っていただけるように索敵を覚えたようなものですから」
そういう事なら気負わずにいていいか。こっちは地図確認をしっかりしていこう。この階層は五層ほどではないが、モンスター密度が低い。その分一匹当たりの収入は多そうだ。ポーションドロップ率も極端に低いわけではない。他のポーションと同等、二十二層から二十四層にかけては別だが、一時間に一本ぐらいのペースで落としてくれることが解り始めた。つまり、一時間で七十二万と落とした魔結晶の分は確実に確保できている。カメレオンは革も落とす上に芽生さんの一撃でほぼトドメを刺せているので更に美味しい。
と、またゴーレムだ。カメレオン五匹の間にゴーレムが一匹ぐらいの割合でゴーレムは出てくる。ゴーレムの魔結晶は大きいのでキュアポーションを落とさなくても充分な収入をもたらしてくれる。一発喰らわなければ大丈夫、というところだ。
モンスターが出てくる頻度が低いという事はその分スキルオーブに期待する事もない。出たら超ラッキーぐらいの気持ちで立ち向かうのが気が楽でいい。
ゴーレムの攻撃を避ける、避ける、避ける。中々反撃する機会が見つからない。あっちにスキを作らせるような攻撃を誘発する動きが出来るように努める。
と、芽生さんから支援のウォーターカッターがゴーレムの目に入る。一瞬ゴーレムがたじろぐ。チャンスだ。力を入れてジャンプするとゴーレムの目に接近、そのまま直刀を突き刺して目を破壊。ゴーレムは黒い粒子に徐々に還っていく。
よし、今回もうまくゴーレムを撃破出来た。もっと戦って相手の動きに関する情報を蓄積していきたい。しいて言うならカメレオンもそうしたいところだが、またうっかりダメージを受けるような事をして芽生さんに呆れられるのもアレだ。被弾無しで済ませられるならそれに越したことはない。
ただ……なんか物足りない。いつもほど手ごたえがない。緊張感もない。このままこの層に居ていいんだろうかという、これは焦りなのかな? さっさと二十五層を抜け出してもう少し手ごたえのありそうな二十六層に行きたいものだ。
しかし願い叶わず選んだ道は行き止まり、ほぼ一本道だったのでそのまま真っ直ぐ来た道を戻る。二十四層への階段前まで往復して戻ってきて、一時間経過。
「さて、最後の道を通るか、それとも昨日一回通った道を細かく探すか。最後の道を探すか」
「素直に最後の道をたどるのでいいんじゃないですかね。同じ道をたどってもモンスターが湧きなおすまで時間かかりますし、昨日だって道を探さなかったわけではないですし。やはり最後の道に次への希望が待ち構えているんじゃないでしょうか」
「じゃ、あまり深く考えずに残りの道を行こう。どうせやることは変わらないんだからもう一時間、もしかしたらそこまでかからないかもしれないけど行くだけ行ってみよう」
三叉路最後の道へ行く。どの道へ行っても何もない。何もないように見える、といった方が正しい。視覚情報から何も得ることはできないが、ここに芽生さんの索敵をかけるとあら不思議。背景に擬態しているカメレオンダンジョンリザード、舌を噛みそうなのでカメレオンという事にしておく。このダンジョンにカメレオンは今のところ一種類しかいないのでカメレオンでいいのだ。
そのカメレオンを芽生さんが見つける度にウォーターカッターで切り刻んでいく。おかげで地図作りに専念できる。分かれ道も少なく、迷宮マップのような小部屋も少ない。しいて言うなら小部屋に詰め込まれているゴーレムが少しかわいそうだと思うぐらいか。
小部屋の出入口が人間サイズのため、小部屋にリポップしてしまったゴーレムは部屋から通路に出てくることができない。通路から一方的に攻撃する事も可能なため、戦闘の安全性は確実だ。
しいて言えばここの通行の安全は芽生さんにかかっていると言って過言ではない。常に体調には気を使って行かないとな。芽生さんの索敵が切れた時、目に見えないトラップに埋め尽くされたマップに早変わりだ。
「しかしこのヌルさも芽生さん様様だなぁ。【索敵】が有って本当に助かるよ」
「もっと褒めても良いんですよ。褒めて伸びる子ですから」
「よーしよしよしよしよし。お菓子食べるか? それともコーラが良いか? 」
「この道調べ終わったら両方貰います。なので楽しみにしておきます」
コーラとお菓子で機嫌と体調を直してくれるなら安いものだ。一番冷えてそうなコーラをチョイスしておこう。ランダムだから難しいけど。
道なりにまっすぐ進む。階段が見つかればそれに越したことはないが、見つからないなら見つからないでその間に稼いだお金で成果は出る。二十四層よりモンスターは少なく楽に倒せて美味しく頂ける。
と、二十四層への階段から二十分ほど進んだところで階段を見つけた。割と近かったな、もっと奥の方にあると思っていたが意外な近さだ。とりあえず水分を補給して軽く休みを取る。さてこのまま地図を作ってしまうか、二十六層をチラ見していくか。
「どうする? 下りる? それとも帰る? もしくは奥まで見に行く? 」
「今日のところは奥まで見に行って地図を作って万全にしておくのがいいのでは。もしかしたら奥にもっと稼げるゾーンがあるかもしれません」
「じゃあ今日のところは二十五層巡りだけで済ませるか」
地図に階段を描き加えるとそのまま階段をスルーして奥へ行く。奥へ向かってもだだっ広い道が広がり、所々に小部屋。そして何も居ないように見える小部屋にはカメレオンが潜んでいて、やはりそれも索敵で丸裸にされて芽生さんのウォーターカッターの餌食となり収入となり果てていく。
行き止まりを確認したところで今日の二十五層探索は終了。少し早いが昨日以上の収入の見込みはある。明日は休みだが、明後日には二十六層の探索も視野に入れられるだろう。まだまだ小西ダンジョンの楽しみは尽きないな。
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