547:スキルオーブの種類出現条件
ダンジョンに入るとズザザザっとまっすぐ二十四層と二十五層の間の階段まで来た。道中特筆すべきことも無く、時間通りに到着したと言える。エレベーター十五分、一層エレベーターまで三十分、二十二、二十三、二十四層の各移動三十分、合計二時間十五分ほど消費して現在時刻は十二時半。周りの安全を確保して、早速お昼ご飯だ。
今日の昼食はボア肉の味噌カツサンドのみ。シンプルに食べてシンプルに探索をする。今日はそういう行程だ。早速芽生さんがかぶりついては、歯で無理やり味噌カツを噛み破っては食感を楽しんでいるようだ。あっという間に一つ目を食べ終わり、二つ目にかかり始める。
「カツサンドのみですが充分お腹に溜まりますね。コーラくださいコーラ。揚げ物と言えばコーラです」
芽生さんも解っているな。まだ冷えているコーラを取り出し渡す。右手にカツサンド、左手にコーラ。足元には武器。何時索敵にモンスターが引っかかっても対応できるように気を抜かずにおいてくれている。
念のため階段に座っているため視界は切られているが、ここのモンスターは視界が切れていてもなんとなくでこっちを探知して襲ってくるためあまり効果はないかもしれないが、芽生さんの索敵でどこにいるかはおおよそ把握できるため、芽生さんが食事に夢中になってない限りは安全は保証されている。
手軽さを重視したため今日は量はあまり用意していない。足りないと言われたらいつものカロリーバーをお出ししようと思っていたが、カツサンド二つで満足したらしい。量が足りていて何よりだ。
そう考えている間に二人とも食べ終わり、コーラを飲みほしスタイリッシュにゲップ。お互い音は聞かなかったことにする。
「もうちょっと休憩したら行きますか、二十五層」
「必要なら取ろう。さすがに食べ過ぎて動けないという量ではなかったはずだが、足りなかったらカロリーバー出すぞ」
「いえ、カロリーは充分取ったと思います。胃を働かせて消化に集中したいところですね。索敵は続けてますから何か雑誌ください」
適当に雑誌を出して読みふけりだす。
「そういえば、雑誌適当に持ってくるから保管庫に入れておいてくださいって自分で頼んでおいて、結局持ってくるのを忘れてますね」
「そんな話もしたな。何時でも良いからね」
「探索者関連ばっかりじゃ飽きますからね……と、面白い記事ありましたよ。階層とドロップするスキルオーブの関係性について、らしいです」
どれどれ……基本的に次の階層で必要になりそうなスキルオーブがドロップする傾向があるとみられる。一層から六層にかけては九層以降で必要な攻撃スキル、そして十一層以降では深層で生活するために便利なスキル、そして十三層ではそれ以降に登場するスキルを放ってくる……骨弓の事か。そいつに対応するための耐性スキルが落ちやすい。全く関係がないスキルが落ちる事もあるが、この傾向はもっとスキルオーブの数がドロップしてその報告がされてより母数の多いものになれば顕著になるであろう、と。
という事は、二十四層で【毒耐性】がドロップしたのも、今後毒属性の攻撃をしてくるモンスターが出てくる可能性が高いって事か。もしくは落としたゴキ自体が攻撃をしてくるからか。筋は通っているような気がする。【魔法耐性】だって十三層と十五層でドロップして、おかげで十六層の骨弓がただそこにいる骨になってしまったことからもそれを補強する材料になっているな。
「母数が十分にあるとは言い切れない現在ではまだ仮説の仮説という段階でしかないが、今後の集合知に期待するところ大である……か。ミルコに聞いたら一発で終わりそうな話だな」
「そんな台無しなことせずにもうちょっと夢を見せてあげましょうよ……というか、ダンジョンマスターに聞いたって公言できないので無意味では」
「確かに。でもまだ見ぬ鉱山に夢を見てつるはしを振る時間は短縮できるな」
「そんな洋一さんに質問です。カメレオンとゴーレム、何を落としそうですか? 」
二十五層以降のオーブドロップの話か。カメレオンのほうはもう解っている。もう片方は何を落とすのか。
「カメレオンは【索敵】を落とすことは前に調べた。この【索敵】はダンジョンハイエナも落とすことが解っている。後はゴーレムだが……見た目からして【物理耐性】をかなり高確率で落としてくれそうな予感がする。【物理耐性】は相場価格一億だからな。拾えばそれだけでFIREできそうだ」
「【物理耐性】って値段も高いですけど、そもそも二十五層からまともに持ち帰ってギルドで売りにかけられるもんなんですかね? 」
「そもそも十層ぐらいから出始める物みたいだし、預ける時間をオーバーする事は無いと思うよ。それにD部隊ならリレー方式で全力ダッシュすれば間に合うのかもしれない」
「D部隊……たしかダンジョン庁のダンジョン攻略部隊ですよね。出会ったことあるんですか? 」
芽生さんは知らないんだったな。情報共有しておくか。
「一回、結衣さん経由で小西ダンジョンで出会わされたことがある。長官に問いただしたら派遣したことを認めてたよ。ほら、Bランクにさせられた時に」
「そういえばそんなことを言っていたような? あんまり関わりが無さそうだったので覚えてないですねえ」
あの時はそれどころじゃなかっただろうしな。覚えてなくても仕方ないか。
「まあいいか。この際小西ダンジョンではあまり考えなくてもいい事だ。しいて言うなら【物理耐性】が出ちゃった場合覚えるかどうかかな。金額が金額だし」
「覚えちゃっていいんじゃないですかねえ。この先進むにしても物理攻撃を受けないなんて事はないでしょうし」
「じゃあまた頑張って二つ出すか。しかし、ゴーレムが本当に落とすなら良いけどあくまで落としそうって段階だからな。本当に落ちるのはもっと奥かもしれない」
「これ以上奥だと、小西ダンジョン以外ではドロップしても取引に出せないでしょうから金額が確定することも無いはずです。なので少なくとも現時点の位置よりも上で出ると考えられないでしょうか? 」
そういう視点もあるか。なら、この階層より深いスキルオーブはそもそも取引に出されてないか、情報自体が流れてこないという可能性が非常に高いな。
「考え事をしていたらお腹がこなれて来たな。そろそろお仕事の時間にするか」
「そうですね。後でもできる考え事は後に回しましょう。今は目の前の二十五層……と、その前に四匹、ゴキが湧いてます」
「それを倒したら二十五層でゆっくり探索を楽しむとするか。さすがに昨日の今日でそうそう簡単に出るもんでもないしな」
「今日は階段探しながら気楽な探索と行きましょう」
二十四層最後の戦闘になるゴキ四匹を食後の運動がてらたおし、二十五層の階段を下りる。階段の途中からまた乾燥した空気に切り替わっていく。
「化粧水持ってくればよかったですかね。いきなり乾燥した環境に入るにはお肌に悪い気がします」
「保管庫に入れとこうか? 渡してくれればここに入るたびにぬりぬりする時間を取れると思うよ」
「そうしてもらいましょうかねー。せっかくお金もある事ですし、自宅用と探索用で二本確保しておきましょう」
昨日入った通り、砂岩で作られた通路を……さて、どっちに行こうかな。いきなりの三叉路だ。昨日は右側に行ったから今日は左側に行く事にするか。昨日よりも少しだけ余分に時間が取れる。どうせ見えない敵とゴーレムしかいないんだ。索敵は任せてゴーレムが出て来るまでは地図作りに専念しよう。
索敵しながら芽生さんはカメレオンを見つけてはウォーターカッターでスパッと切り裂いていく。ゴーレムが出て来るまでは俺の出番はないぐらいだ。そしてここは二十四層と比べてモンスターの数が少ない。索敵しなければ見つけられない分モンスターの数が少ないように調整されているのかもしれない。だとしたら、二十六層への階段を見つけられたらもうちょっと良い感じに戦える密度になるかな。
カメレオンも一発で仕留めてはいるものの、実際にはもっと耐久力や素早さは持ち合わせているのだろう。ただ、こっちに一方的にやられているのを見ると、自分が姿が見えない事を自覚していて油断しているのか、それとも見えない事が最大の武器で他に何もないのか。
あまりにやることが無いので時々索敵した相手を回してもらうが、俺の雷撃でも一撃だった。もしかしたらこいつは結構攻撃力が強かったりするのかもしれないな。今のところゴーレムと一緒に現れるというパターンに出会っていないが、二十六層以降だとそれもありうる。とりあえずこの階層は楽させてもらおう。
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