545:千三百五十万
タイトルとは関係ありませんが5000万PV達成しました。
皆さんありがとうございます。良いクリスマスプレゼントを頂きました。
ギルドを出て、寄り道もせずに真っ直ぐ清州ダンジョンへ向かう。時間的にそろそろ電車も混雑してくる時間帯だ。できれば避けて通りたいがそういうわけにもいかないので多少窮屈な車内を芽生さんと二人じっと何も話さず向かう。
が、段々耐え切れなくなってきた。この入金を何に使うかぼそぼそと話し始めることにする。
「せっかくの高額取引だし、何か良い物でも食って帰ろうか……いやでもこの格好ではな」
「装備は片づけるにしてもツナギではちょっと入り辛い店のほうが多そうですね」
「今度にするか……何するにしても、無事取引が終了するまでは落ち着かないな」
清州駅に着くとそのままギルドの建物へ。建物の総合受付へお話をしに行く。
「小西ダンジョンから取引の件で来ました。十九番会議室を使わせてもらう事になっていると思いますが」
「少々お待ちください。ただいま確認いたします」
奥で確認を取った後、もう一人職員を連れて来た。この人が今回の見届け役かな。
「お待たせいたしました。安村様と文月様で間違いございませんか? 」
「はい、間違いございません」
「今回スキル取引の立ち合いをいたします水谷です。会議室までご案内いたします」
そのまま案内に従って会議室に向かう。会議室にはいつでも取り外せるプレートで十九番と書かれていた。どうやら、特定の会議室を十九番とするわけではなく、ランダムに番号付けを出来るようにしてあるようだ。これもなりすまし対策かな? きっと会議室の番号が符丁になっているのだろう。
「こちらで取引されるお相手が来るまでお待ちください」
水谷さんは出ていった。中に入ってしばらく待つと、ノックの音がする。
「入ってます」
「失礼します。取引のお相手様がご到着されました」
入ってきたのは……ホストか? スーツをぴっちりと着こなし髪型もバッチリ決めた若いイケメンの兄ちゃんが今回の取引相手らしい。
「では、お手数ですが探索者証をご提示ください」
水谷さんに促され、三人分の探索者証が机の上に出される。俺と芽生さんがB、ホストみたいな兄ちゃんがDランクとの事だ。こんな格好をしててもちゃんと探索者してるんだな。
「Bランク探索者ですか。初めて見ました」
見た目に応じて丁寧な言葉遣いだ。気遣い痛み入ります。
「では、次にスキルオーブの提示をお願いします」
バッグからスキルオーブを取り出す。まず水谷さんがスキルオーブが取引内容と同じものかを確認する。その後、俺、芽生さん、取引相手の順番でスキルオーブを確認し、三者で取引予定の物かどうかを確認した。
「お間違えの無いようですので、振り込みのほうをお願いいたします」
「解りました……はい、今振り込みました」
取引相手がギルドの指定口座へ振り込み操作を行う。
「振り込みが確認されました。では、スキルのほうをお使いください」
「解りました……イエス! 」
バッチリとポージングしたホスト風の取引相手。様になってていいな……
「これで覚えた……はずですが、なんだか実感がわきませんね」
取引相手は困惑している。
「耐性系のスキルは覚えても感覚が変わりませんからね。他の魔法系のスキルと違って頭の中に使い方が流れ込んできたりはしないんですよ」
助け舟の一言を伝えておく。
「お詳しいですね。もしかして、いくつかスキルをお持ちなんですか? 」
「まぁ、一応は。本業ですので」
「さすがにBランクにもなると複数のスキルをお使いになられるんですね。勉強になります」
「あの……失礼な質問かもしれませんが、本業は何を? 」
取引相手にびしっと聞いてみる。
「あぁ、私ですか。見ての通りホストやってます。ゲストで探索者やってるって人が時々来るので付き合いで潜ってる間にDランクにまでなってしまいまして」
「そうでしたか。では、今回【毒耐性】を入手されたのは……」
「タバコもやりますし酒もやりますからね。このスキルで体への負担が小さくなるならそれを踏み台にしてもっと稼げるし、ゲストにも満足してもらえるかなって思ってます。あ、これ名刺です。もし興味あったら是非お声がけください」
俺と芽生さんに名刺を渡してくる……え、俺も? 源氏名は純也というらしい。
「男性客もいらっしゃるんですよ。友飲みする相手が欲しいけど女の子相手じゃ吐けない愚痴もあるとかで、結構需要はあるんです」
「なるほど……知りませんでした」
「あはは、あまり知らないほうが良いかもしれませんね。ちなみにお酒は結構いけるほうで? 」
「いや、私は全然飲めないほうでして。なので名刺のほうは有り難く頂戴いたしますが、お店のほうに行くのはちょっと」
「ではそちらのお嬢さんは、もし機会があれば是非いらしてください」
「ああ、はい……参考にさせていただきます」
口では言うものの興味はあまりなさそうだ。営業スマイルで今度絶対行きます~なんてことを言いだすかとも思ったがそういう訳ではないらしい。これは本気で興味がない奴だな。
「では、私はお仕事があるので失礼させてもらいます。本日はお取引ありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
源氏名純也さんは去って行った。
「お話も終わったところですし、振込先の確認をお願いします」
あぶね、忘れる所だった。通帳を渡し、振込先を指定する。
「取引額三千万円からダンジョン税が引かれまして、等分割されるとの事ですので、それぞれ千三百五十万円、後日振り込みになりますが行われる事になります。それでは取引を終了いたします。本日はお疲れ様でした」
水谷さんに促され会議室を出る。すると、会議室の十九番の札を外して持っていった、やはり、会議室番号は符丁らしい。ギルドの仕組みをまた一つ知った。
「さて、明日はどうするね? 今日しっかり稼いだことを祝って休みにするも良し、稼ぐのも良しだ」
「二十五層に籠ってひたすら稼ぐってのが一番美味しそうではあります。あそこモンスターもそう多くない割にうま味は多そうですから」
「しかし、酒の耐性つけるために三千万をポンと出せるのか。やっぱりホストは稼げるのかねえ」
「どれどれ……あぁ、さっきの人お店のナンバーワンホストらしいですよ。お店のブログにでかでかと載ってます」
芽生さんがスマホで調べてこっちへ見せてくる。確かにさっきの彼だ。やっぱりホストって稼げるんだな。
「お酒が飲めなくてもタバコが吸えなくてもナンバーワンホストぐらいに稼げると考えれば、探索者も今に限って言えばいい商売ですよね」
確かに。なら今のうちに稼いでしまうのが最も効率的だな。具体的には……少なくともあと半年は稼ぎ頭になれるだろう。この次の価格改定がどうなるか解らないからな。その頃には発電炉の具体的な費用対効果等が発表され、魔結晶の価格がその水準に対して値下げされるか値上げされるか。多分値下げの方向に走るだろうな。その分一般家庭や工場向けの電気代が下がって利益をみんなで享受する、みたいな話に落ち着きそうではある。
「魔結晶、高く売るなら、今の内」
「それですね。上がる可能性もありますが下がる可能性がある限り、今が一番売り時です。気合入れて明日も探索頑張っていきましょう」
帰りの電車に揺られながら今から何をするか考える。かけられる時間はいつもよりちょっとだけ多い。
「よし、家に帰ったらちょっとお高いレトルト角煮でも開けるか」
「私も今日はちょっとだけ贅沢します。ちなみに明日のご飯は何予定ですか? さすがに二日続けてカレーとかじゃないですよね」
「明日かぁ……カレーと煮物は最近作ったからな。ボア肉サンドイッチとかでどう? 」
「味噌で是非」
「よし承った。ボア味噌カツだな」
明日のお昼は決まった。今から食べるものも決まった。後は家に帰るだけだ。途中の駅で芽生さんと別れ、そのまま電車に乗り続ける。混んでいるので荷物が大きい分少々居づらいが家に着くまでなので勘弁してほしい。
家に着くと着替え洗濯、そして冷蔵庫の中に万能甘味噌があることを確認。後はパン粉と卵と小麦粉が有れば……どれもある、よしボアカツいけるな。
夕食に、この間こっそり買ったオーク角煮を開けるとレンジでチン。パックライスも温めて今日の夕食は価格だけなら相当お高いラインナップになっている。昼に食べきらなかった生野菜も追加して、俺なりに贅沢な時間を過ごした。
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





