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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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539:深ければ深いなりに儲けは増えるけど戦わなければそんなもん

 二十三層へ上がって真っ直ぐ戻る。道は解っている、モンスターの出る場所もだいたいわかって来た。おそらく三十分かからずに二十二層へ上がれるだろう。道に慣れるという事はそれだけ時短が出来るという事だ。時短してもモンスターをしっかり倒していくことで稼いでいくことも大事だ。


 そのまま真っ直ぐ戦いながら二十二層へ抜ける事が出来た。サクサク行ける所はサクサク行かないとな。二十二層に上がってもペースは変わらず、パチンコ玉を飛ばし陰からモンスターを呼び寄せては撃破。二十二層は完全に通り道になったな。モンスター数も他の階層に比べて少ない分消耗もほとんどない。


 二十二層を完全制覇した気分になって来た。そのままのノリで順番に撃破しつつ階段へたどり着く。二十五分で二十一層への階段へ着いた。タイムスケジュール的には十五分から二十分早く二十一層に辿りつけたことになる。


「結構早くたどり着いたな。空いた時間ははいつもの修錬に回そう」

「時期的にもう一つ二つパーティー増えそうな感じがしますね。小西ダンジョンに前からいたパーティーじゃなく、最近小西ダンジョンに来たパーティーがたどり着きそうな予感がします」

「そうなったらいつもの修錬もやり辛くなるかな? 」

「まあ騒音公害ではありますね。それまでの短期修行だと割り切りましょう。普段探索で使うのでもレベルアップは出来ますし」


 修行はここまでか……いや、二十一層に上がる直前で二十二層にぶっ放せばいいか。河岸を変えればやりようはある。


「次回からは場所変更だな。眩暈起こしながら二十一層に戻れば比較的静かに練習ができる」

「階段でやるんですか、それならまだ静かで済むかもしれません」


 マウンテンバイクを漕ぎつつ今後の二十一層の利用方針について考える。他のセーフエリアと同じように共用スペースになるのだから一人だけ音を出してドカドカ騒ぎ立てるのは止めたほうが良いな。好き放題使うのは今日までにしよう。


 それ以外は静かに生活をしているから問題はないだろう。今まで通り細々と探索を進めていくか。しかし、キリのいい感じで探索を終わらせられないのはちょっと不満点か。とりあえずテントまで戻り、荷物を整理する。


 今日はヒールポーションを二つ、へそくりに放り込んでおこう。まさかの大けがを見越してだ。軽い欠損ぐらいなら治るらしいのでうっかり指を飛ばしてしまってもくっつけてポーションをかければ治る可能性がある。そうならないように努めるのが探索者の仕事だが、備えておいて損はないし、お金はまた後でその分稼げばいい。


「ヒールポーション二本へそくりに回すけどいいよね? 」

「いいですよー。いざ使いたいときに無かったら困りますから」


 芽生さんは理解が早くて助かる。一本当たり二十万ほど今日の収入が減るのだが、毎日二百万ほど稼いでいるので誤差の範囲に入れてしまってもいいらしい。魔結晶二つ、糸一つ、ポーション一つと仕分けを終えると、スキル打ちっぱなしの日課に入る。今日が最後の日課だ。この訓練は短期間ながら中々の熟練度を我々に与えたもうた。


 最後に一発でかいのをぶっ放して終わりにするか。太い雷撃をさらに太くして、極太雷撃発射だ。同時に撃った芽生さんのウォーターカッターの残滓の水分を雷撃がなぞって、ものすごい勢いで蒸発させていく。【雷魔法】現状最大威力はこれかな。手数がまたもう一つ増えたぞ。こいつを一瞬放つだけならゴキや蜘蛛でも一発で落とせる。長時間垂れ流す継続攻撃ではなく、単発攻撃として使えるように腕を磨いていこう。


 と、もう眩暈が来た。これは消耗が早すぎるな。でももうちょっと絞り出そう。いつもの出力の雷撃をその場で数発撃つと、眩暈が限界に来たのかその場にへたり込む。


「ちょっと使い過ぎじゃないですか? ちゃんと上まで帰れます? 」

「そこまで使い切ってはいないから大丈夫。まだ時間もあるし少し水分取って目をつぶればすぐに治るさ」


 そう言って軽くその場で横になる。五分ほどもすれば問題ないはずだ。芽生さんも、眩暈を覚えたらしくその場で軽く座り込む。


 頭がボーっとして耳がキーンとする。結構脳に疲れが来てるらしいことが解る。スキルは脳を酷使するのか、それとも全身の不調が脳にまで達しているのか。スキルの行使による負荷のかかりやすい部位なんかに違いはあるんだろうか。それを確かめるという検証内容が一つできたな。


 少なくとも全身にだるさが表れているので何処かの部位に集中して負荷がかかっている訳ではないのか、それとも脳の一部に負荷がかかっていて全身のだるさとして誤認しているのか。


 しばらくそのまま寝転がっていると体調が回復しだす。脳も耳もモヤが取れ、無音の空間が広がっていることが再認識できた。これでもう大丈夫だろう。


 芽生さんは先に復活して帰り支度を済ませていた。保管庫から机にせんべいと冷えたお茶を取り出すと、パンパン。するとミルコは取りに来たらしく供え物は消えた。日課完了、ヨシ。


 やることは一通りやり終えたのでエレベーターで一層へ向かう。十分短縮してこの時間だという事は解っているが、この十五分間は話題が無いとお互い静かになってしまう。


「なんか私も新技欲しいですね。ウォーターカッター以外の技が」


 今日は芽生さんの新技の話になった。俺が太い雷撃を打ち始めたのに刺激を受けたのだろう。


「相手の動きが素早くても、呼吸器をふさげるような奴とか、ウォーターカッターの形を変えてみるとかそういう奴? 」

「【雷魔法】よりも精密な操作が要求されている気がします」

「水が生み出せるだけでも充分有用な魔法だからな。戦闘に応用出来てるだけでも充分な仕事が出来ていると思うが。より薄く圧縮して扱う方向に行くだけでもまだ伸びしろはあると思うが……俺の頭ではちょっと思い浮かばないな。でかくするか薄くするか違う形を取らせてみるか……糸みたいに細く切れ味を良くして、俺の投網みたいに切断させてみるとか? 」

「あ、なんかそれ面白そうですね。触れれば斬れる水の網、今度やってみましょう」


 一つ目標が出来たらしい。さすがにエレベーターの中で試すような事はしないだろうが、しばらく新技を編み出すために色々するかもしれない、ちょっと注意深く観察しよう。


 一層に着く。ある程度決めた時間通りに行動するという今日の目的はほぼ達成された。これはこれで中々に楽しい。明日以降はいかにして二十四層で戦う時間を増やすかを考えていこう。二十四層で周辺のモンスターを片付けた後で、索敵警戒をしながらお昼ご飯を広げるのも悪くないかもしれないな。


 出入口で退ダン手続きを行う。


「今日もお疲れ様でした。成果は……充分みたいですね」

「ここんとここんなものですよ。これ以上稼ぐのは日帰りだとちょっと難しいかもしれません」

「それはまた楽しみが増えますね」

「中での食事の事を考えないで良い分日帰りのほうが楽なんですけどね」


 査定カウンターへ行くと丁度空いていたのでスムーズに査定を行ってもらった。


「いつも通り分けてもらってますねー、助かりますねー」


 査定は五分かからず終わり、結果が出た。二百五万四千二百五十円。ヒールポーションを二本抜いたので、実際はもう二十一万ほど多い稼ぎになっている。


 結果を芽生さんに渡すと、ちょっと疑問顔だった。


「頑張ったけどその割にちょっと少ない……? 」

「二十四層で本腰入れて戦ってないのと、ヒールポーションを在庫に回した分かな」

「なるほど、納得しました。というかいけませんね。充分これで多いはずなのに少ないと思うという事はいよいよ感覚がマヒしてきたのかもしれません」


 自分の顔をピタピタと張りながら一人芽生さんが納得している。確かに俺もだいぶマヒしてきた気はする。


「うっかり飲みに出かけたりしたら一日分使って帰ってきそうだな」

「探索者やってるのは周りの人は知ってますけど、いくら稼いでるかを吹聴する趣味は無いですからね。貯金は一人で通帳眺めてニンマリしてるぐらいがちょうどいいんですよ。儲けて奢って後には何も残らない、なんてのは愚の骨頂です」


 貯金をするために必要なことはむやみに生活レベルを上げようとしない事と、黙々と貯金していく事と、派手な株に手を出さない事だと聞いたことがある。それを実行しているんだろうな。


「身を持ち崩してない事に一安心かな。もっとこう、派手に遊びに行ったりブランド品買いあさったりしないか心配だった」

「欲しくないと言えば嘘になるんですが、ブランド品でいくら自分を固めても、スキルオーブの値段にはそうそう追いついてきそうにないんですよね。そう考えると馬鹿らしくなっちゃって」

「【索敵】【水魔法】【魔法耐性】で一億二千万ほどになるそうだ。高級スポーツカーでも乗りまわさないと釣り合いは取れそうにないな」

「そんな高級品の私を自由にこき使える洋一さんも中々の物ですよ。洋一さん自身も額面上で言えば七千万プラスアルファぐらいの男ですから」

「二人合わせてほぼ二億か。もしどこかのダンジョンから専属探索者にならないかと打診を受けたら基準にしやすい価格だな。移籍金は二億」

「高いか安いかで言われたら高いですけど、今ならそれ以上に稼げそうですからね。出すだけの価値は十分にありそうです」


 帰りのバスに揺られながら明日のお昼は何にしようか考える。やはりサンドイッチがいいかな……コッペパンを使ってホットドッグを作るというのも有りだな。だがサンドイッチとの区別があまりつかない。同じレシピを使わないという拘りがあるわけではないけど、何か新しいものを生み出さなければいけないような気持ちが後ろから襲い来る。世の中のオカンたちはこういう焦燥感と戦いながら子供のお弁当を作っていたりするのだろうか。


「うむ……明日のお昼何がいい? どこで食べるかも含めて」

「カレーライスでも良いですよ。机を広げずとも食べられるようにタッパー容器にまとめて放り込んでおくような形で問題ないです。それなら二十四層でも手軽に食事できるじゃないですか」

「そこまで考えておいてくれるならレシピの幅は狭まった。チーズカレーにするか、チーズは体の疲労も取るらしいし、ちょっと多めにドサッと入れてチーズでカレーを食べるぐらいの奴を試してみよう」

「そこまでチーズ尽くしのカレーは食べた事ないですね。期待してます」


 家にチーズあったかな……無かったら買いに行こう。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[良い点] 毎日の更新有難う御座います m(_ _)m [気になる点] お供えの中身 [一言] チーズカレーは美味い!
[一言] やったりやらなかったりしてるからその日の気分っぽいけれど、帰りのエレベーターでの移動中に取得アイテムの仕分けをするのを固定したら少し時間が出来るんじゃないだろうか。
[気になる点] カレーに飽きる、味変する、ごちゃごちゃしたのに嫌気がさす、シンプルイズベスト、飽きる、を永遠に繰り返す私です。 [一言] 水のいいところは質量があるところだと思っているので、単純に塊に…
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