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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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537:早着

 二十二層に下りたその場にモンスターは居ない。陰に隠れている。それが解っているので陰から釣り出して丁寧に処理する。料理は下処理が大切だからな。


 いつもよりテンポよくお一人様を倒していき、広い道へ出て複数グループとの戦闘になる。腹ごなしの運動はここからが本番だ。三匹か二匹で出てくるゴキと蜘蛛。二匹なら相手にならず、三匹でも問題はなく。四匹でも今の芽生さんなら二匹同時に相手取ることは可能だろう。ここの所通い詰めている成果は確実に見えている。


「目標は二十四層なので、道中のモンスターも片っ端から倒していくのではなく、行き道の邪魔になる奴を適切に排除していく形にしよう。当然その分収入は落ちるけど、二十二層より二十三層のほうがモンスター密度は確実に高い。二十三層で動ける時間が長くなる方が結果的に高収入につながると考える」

「では、進行方向で邪魔になりそうな奴だけピックアップしていく形で良いですか」

「そのほうがいいね。そうしよう」

「では五十メートル先進路上にゴキ」

「お、あれか」


 見えてる敵にはバードショット弾。こっちもかなりの残弾が残っているのでちゃんと使っていく。バードショット弾を当てられたことに気づいたゴキはこっちへ向かって猛突進を仕掛けて来る。ステータスブーストのおかげで猛突進がただの突進ぐらいの感覚になっているが、それでも全力走りである可能性は高い。


 ひらっと避けつつ頭から二つに分かれてもらい、黒い粒子に還る。直刀の調子も良い。ステータスブーストの恩恵をきちんと受けているだけ切れ味が上がっている。最初は頭で受け止められていたもんだが、ダンジョン物質産の刃物はステータスブーストも加味されてくれるらしい。今後はこれがスタンダードな武器ラインナップになっていくんだろうな。


「次、正面の前に三時方向建物の隙間ゴキ三」

「あいさ」


 芽生さんの距離感覚とモンスターは今のところ的確だ。戦闘中に乱入されそうなところを先に潰して、その後で目の前の敵を処理する形で進む。おそらく芽生さんには、モンスターとの距離以外にモンスターとの接敵範囲やこちらを確認して戦闘に入るまでの距離、それから順番などが見えているんだろう。言うとおりにして失敗したことが無い。信頼できる相棒を持てて幸せだな。


 ゴキ三匹を処理したところで正面の蜘蛛三匹をバードショットで呼ぶ。ん? なんか居るのか? お、探索者だ! みたいな反応をされたイメージでもって蜘蛛がこちらに向かってくる。


 雷撃で一匹静かにさせた後近接で一匹ずつ対処。終わったところで静かになってもらっていた蜘蛛を倒す。ヒールポーションが出た。ゴチになります。


 順調に進んだところで二十三層への階段前に蜘蛛三匹。これでこの階層はラストかな。手早く処理すると二十三層へそのまま下りる。大体時間通りだ。このペースでどんどん探索を進めていこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 side:文月芽生(ふづきめお)


 今日の洋一さんは若干挙動不審ではないけどなんだろう、時間に厳しい。普段も似たようなものではあるけど、今日は特に時間に厳しい。まるで公共交通機関のようだ。今日は時間通りに探索をする事を主眼に置いている様子。何かの心境の変化か、それとも暇つぶしか。よく解らない事をするのは……いつもの事だった。


 時間通りに動いて時間通りに休んで時間通りに……義務教育でも大学でも時間通りに生活する事は大事だが、探索でもそこまで時間通りにする必要があるんでしょうか。何か考えがあっての事か、今日はそういうノリで行こうと考えているかは解らないけど、とりあえず飽きが来るような内容ではないので付き合おうと思う。


 なんだか観光ツアーのバスガイドみたいに見えて来た。これはこれで楽しいのかもしれない。全体の運行を洋一さんに任せているので、私は探索に集中できる。探索に集中できるということは効率的に狩りが出来て、効率的におちんぎんを稼げるということになるんでしょうか。


 とりあえず飽きるまで付き合おうと思う。明日も明後日も同じだったら……ちょっと考えものかもしれないケド。


 おかげで他の事は気にせずにフル稼働できるんだし、その間に精々稼がせてもらわないとね。一日二百万円稼ぐことを維持できてるのも洋一さんのおかげ。多分他のパーティーでは同じことは出来ない。ここでだって、私の【索敵】でモンスターを探知する事は出来ても、釣り出すためにジャラジャラと何発もパチンコ玉を持ち歩くことはできない。


 現状無限の保管庫とセットで運用することでこれだけ楽が出来ていて、その収入を維持できている。とりあえず後ろから拝んでおこう。ははー。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 二十三層に下りて二十四層へ向かう。時間通りなら三十分ほどで抜けることができるはずだ。その間にどれぐらいモンスターが寄ってくるかにもよるが、ほどほどの数なら三十分少なければ二十分、多ければ四十分という所だろう。


 ここから先は三匹セット四匹セットが増える。今の芽生さんと俺なら四匹でも対応は可能だ。二十四層に入って戦闘パターンが増えたりしない限りは五匹来ても大丈夫だろう。


「三時方向、物陰、ゴキ四」

「ほい」

「正面、ゴキ三」

「あいよ」

「九時方向、蜘蛛三」

「ほいきた」


 テンポよく戦闘を進める。おかげでどんどん先に進める。先に進んだ分二十四層で戦う時間が増える。二十四層のモンスター密度がどのくらいかはまだ解っていないが、二十三層より楽であったとしたら探索が捗るし厳しかったらそれだけ収入になる。どちらであっても美味しい事になる。


 ここで手早く戦闘を終えるのは今に限っては問題ない。二十五層へ向かう事になったらまたタイムスケジュールは変わってくるだろうが、しばらくはこの感じで進めていこう。


「そろそろ半分ってところですか。まっすぐ進むと意外と早いですね」

「建物巡らない分移動だけだからなー。ついでに細かい所にいる蜘蛛もゴキも無視してるし。二十三層では思ったより戦わないかも」

「ではその分二十四層に期待を上乗せしておきましょう」


 広い道に沿って歩く。見えているモンスターがほとんどなので合図を送ってから呼び寄せて狩る。二グループ居そうなところは注意深く動きを観察し、最悪二グループとも相手にすることを覚悟して呼ぶ。ここでは最悪八匹と同時に戦う事になるが、その時はさすがに保管庫の力を借りる。


 今回は運よく片方ずつ釣り上げることが出来た。蜘蛛四匹とはいえ油断せず、二匹をきっちり雷撃で行動不能にして、おちついて止めを刺す。芽生さんもほぼ同様の行為をウォーターカッターで行い、蜘蛛の足と口を切り裂いて糸も飛ばせず近寄れず、といったいわゆる達磨にして置いておく。その間に一匹を倒し、達磨にしておいた蜘蛛に止めを刺す。


 大体のモンスターで人数を超える複数体を相手にする時の手段がほぼこれになってしまったような気がする。効果的なので止める気は無いが、代わり映えしないと言えばそうだ。だが、マニュアル操作としてこの形を取り入れられたのは探索の効率を上げるためには大事な事だ。これも慣れの一種だ。慣れきってしまうとマニュアル外の行動……特殊行動って奴だな。オークが棍棒を投げてきた時のような対応に手間取ってしまう可能性が高まることはデメリットだ。


 続いてもう一つのグループ。ちょっと面倒くさく感じて来たので芽生さんを手で制止し、太い雷撃でまとめてビビビーっと打ち込んで殲滅する。纏まっていてくれたからか眩暈がするほど消耗はしなかったものの、それなりに体に負担はかかったと思う。しばらくちょっと控えめに行こう。


 そのままの調子でトントン進み、予定より十五分早く二十四層に到達する事が出来た。往復分と考えると七分間余分に探索が出来る。モンスター狩りなら二回分、建物調査なら二軒分ぐらいの余裕だ。大事に使っていこう。


「さぁ、新しい層の探索だ。ウキウキするな」

「例外を除いては同じ景色ですけどね」


 例外……つまりクイーンスパイダーだな。確かにあれは例外だ。


「あれ、時間で動き出して天井のこっち側に来て襲ってくるとか無いよね」

「無い事を祈りましょう。今はまだ倒せないようなそんな風格が漂ってました」

「まあそんなギミックはないとミルコも言っていたし、嘘をつく理由はないはずだから信じよう」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日の更新有難う御座います m(_ _)m [気になる点] 油断大敵 [一言] 効率坊の先は.... (*´ω`*)
[良い点] 面白くて1話から一気見してしまいました。 何と言っても主人公の安村の描写が素晴らしくて、多くの長所を持ちながら、ちゃんと人から大きく嫌われないが、少しずつ嫌われる嫌な要素を沢山持っており、…
[一言] こんな深い階層で探索ツアーは流石にないだろうけども2人なら余裕もって人を案内できるだろうなー
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