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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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536:定刻発車

 予定より数分早く二十二層に着く。疲れてるとかそういう物理的な障害が無ければ行程は早ければ早いほどいい。その点で言えば今日はかなり高得点だ。ここからしっかり疲れて稼いで行こう。


「ここからはいつも通りですか」

「いつも通りです。細かいのをとっとと排除して広い道に出て、グループの多いのを片っ端から狩っていこう。上手くいけば……もう一歩前で戦えるようになるかもしれない。そうすればもう一本指が立つようになるかも」

「それは実に楽しみですねえ。日帰りで指三本。それだけ稼げばもう就職しなくてもいいかもしれません」


 細い道から広い道へ出ながら、順番に狩り尽くしていく。倒すたびにツヤッツヤになる芽生さんを横目に、本当に働かなくて済むのかな……と軽く考えてみる。


 蜘蛛が来た。お一人様だ。お一人様で生活するなら年間いくら必要なのか。三百万もあれば細々と生活するには足るだろうか。だとすると寿命まで生きて……後四十年少々。多めにも見積もっても五十年は生きるだろう。


 次はゴキ。ゴキもお一人様なら怖くない。雷撃で痺れているうちに倒す。五十年で三百万だから一億五千万か。ざっくり計算して三億円稼げば老後は安泰という計算になるな。


 それとは別に災害やなんかで家が破損した場合に備えて予備の貯金が欲しい。それを含めると……四億円稼げばそれ以後の収入を気にする事は一切無いと考えられる。今のこの毎日の狩りを二百日続けることが出来れば達成できるな。そう難しい話では無さそうだ。


 もしこれ以上深くに潜ることが難しくなっても、数年かければ充分に達成できそうな目標だ、気楽に行けるな。考え事を終えたあたりで広い道へ出る。さぁ、次は何処にモンスターが居るかな。


「次どっち? 」

「あっち。八時方向」


 指差された方向にはモンスターの陰は見えないのでパチンコ玉をバン。音に惹かれてごそごそと出てくる蜘蛛。今回は三匹か。一匹を率先して芽生さんがウォーターカッターで切り裂く。蜘蛛なら一発で行けるらしい。その後一匹ずつを近接で対処。いつもの流れに持っていけている。調子はいいぞ。


「よしこの調子で二時間きばっていこー」

「おー」


 メンタル的にも問題は無さそうだ。サクサク行こうサクサク。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 そのまま順調に狩りは続き、気が付けば時刻は午前十一時四十五分。そろそろ戻り始める時間としてはちょうどいい。ここから二十一層の階段までちょうど十五分ぐらいで到着する距離だ。


「うん、そろそろ一旦戻る時間だ」

「もうそんな時間ですか。午前中は過ぎるのが速いですね」

「定刻で戻り発車しまーす」

「ついていきまーす」


 ここから階段まで戻る十五分の内五分ぐらいはモンスターのソロパートが続く。その負荷の軽さが体を探索からクールダウンさせるのにちょうどいい感じになってくれる。


 階段を上がり、マウンテンバイクが移動されてない事を確認する。誰も二十二層には潜ったりしてない、誰かが二十層に行くために移動させてもいない。つまり二十一層をフラフラしてるパーティーは誰も居ないと考えることができる。仮眠していたらその限りではないが、時間的に昼食を取っている可能性だってある。二十一層まで直接来れるパーティーなら二十層を一往復して帰ってきてちょうどいい感じの時間のはずだからな。自分たち以外にも何処かのパーティーがいる前提で行動しよう。


 マウンテンバイクをエレベーターのある建物まで転がすと、その場に適当に停めて階段を上がり、エレベーターホールの上にある自分たちのスペースに到着。新浜パーティーが立てたまま放置してあるテントもあるが、今度いつ来るんだろう? 立てっぱなしという事は近いうちにまた来るって事だよな。


 細かい事はまた来た時にでも聞けばいいか。とりあえずご飯の準備だ。保管庫からまだ充分に温かいタッパー容器に詰められた煮物とパックライスを出す。


「今日はボア肉の野菜多めの煮物になりまーす。肉追加が欲しかったら何か出すから言ってね」

「はーい、いただきまーす」


 もにゅもにゅと食べ始める芽生さん。どうやら好き嫌いは……無いらしい。どれかを選別することなく取り皿に移動させては食べていく。今日の食べ物に嫌いなものなし、と。メモっておこう。メモったところで自分も食べ始める。


 人参と大根に味がしみてて特に良い。こんにゃくもちゃんと味を吸っている。蓮根も浸かり切らずにシャキシャキとしているのは良い所を持ってこれたと思う。


 さやえんどうもあって彩りは完璧に近い。そしてそれらすべてに脂を行きわたらせているボア肉の煮え具合もいい。硬くなるまで煮ずにほどほどをキープ。これは俺的にもかなりの高得点だ。レシピを覚えておいてまた何かの際に再現しよう。


 食事に満足したら片づけをしてしばし消化タイム。コーヒーを淹れていつもの休憩時間だ。休憩は休憩でしっかり取らないと後でガタが来ても困るからな。きっちりと取る。もし体調の悪化なんかが有ったら休む時間を伸ばすか、ヒールポーション・キュアポーションを飲むなりして体調の回復に努め、それでも難しそうならきっぱりと帰る。


 バッドコンディションと向き合う事も大事だが、明日また頑張っても問題ない行為に今日必ず付き合う必要はない。きちんと休憩する事でそこに気づけるかどうかも探索の大事な要素だと思っている。


 しっかりと休憩を取るためにまた雑誌を読む。ちょっとずつ読んでいるのでまだ読み終わってないコラムや投稿記事、それから広告がたくさん。コラムのほうは次回は小西ダンジョンの様子をお届け! という内容でいくつかの記者の言葉が締めくくられている。前号の発売時期からしてもう小西ダンジョンへ来てるのかな? いらっしゃい、小西ダンジョンは他所と比べてどうだろうか。何か面白いものはあるだろうか。


 七層に普通にエレベーターが止まるようになった今となっては、自転車が置いてあることは別に不思議でもなんでもないだろう。小西ダンジョンに前から居なかった人にとっては、あぁ誰かがエレベーター経由で運んできたんだな、ぐらいの認識しか持たれない可能性が高い。


 あの特殊な空間はエレベーターが無かったからこそ生み出されていたかもしれない。ここ十数日七層には立ち寄ってない。もしかしたら外部の探索者によって劇的に変化しているかもしれない。今度の休みの日は七層で茂君しながらのんびりするのも悪くないかもしれない。休みとは一体何だっけ。


 料理のコーナーを眺める。簡単手軽なシーズニング特集というのをやっていた。俺にぴったりだな。普段使っているメーカーとは違う新しいメーカーの物を紹介している。オリーブオイルとシーズニングで簡単肉料理、というダンジョンらしいラインナップが数種類紹介されている。誰でもマネできる、というかこれはメーカーから金貰って書いてる案件だろうな。今度スーパーで見かけたらネタが被らない範囲で気にしておこう。メーカー名と種類をメモっておく。


 さて、そろそろかな。胃も落ち着いてきた。疲れは取れた。動かしっぱなしの目は目薬を点眼してジーンとさせる。目全体に目薬が行きわたるように目頭をしっかり押さえる。この瞬間がまた気持ちいい。立ち上がると、軽い準備運動。休んでる間に固まってしまったところをほぐす運動を始める。


 芽生さんも俺が稼働準備に入ったことに気づくと俺に合わせ体を動かし始めた。そのまま二人一組で背中とかいろんなところを軽くグリグリといじめ始める。


 ストレッチが終わると、それぞれ探索の準備を始める。保管庫に入れるものは全部入れて、ゴミとか使い終わった食器とか、立つ鳥跡を濁さないようにテント以外を綺麗にすると、出かけることにする。時刻は……午後一時。ジャストタイムだ。


 急に動いてお腹が痛くならない限りは問題ないだろう。それならさっきのストレッチでキているはずだ。さぁ午後の探索を楽しもう。マウンテンバイクを再び転がし二十二層の階段を下りる。後半戦スタートだ。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
>五十年で三百万だから一億五千万か。ざっくり計算して三億円稼げば老後は安泰という計算になるな。 いやいや・・・3億もあったら配当利回りだけで、もっといい暮らしできるだろw
[良い点] 毎日の更新有難う御座います m(_ _)m [気になる点] お供え [一言] 煮込は二日目が美味い!
[一言] 雑誌の小西ダンジョンの特集は何を書かれるのかなあ エレベーターは勿論ですが名物?の潮干狩りおじさんはどうするんだろか
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