535:本人達は気づいてないだろうけど結構ヘビーな探索をしている
アラームの三十秒前に目が覚める。体調は良いみたいだ。気分も悪くない。これもダーククロウのおかげだ、ありがとう。毎日ありがとう。
今日は何層に潜ろうか、と考えながら朝食を作る。午前中は二十二層、午後は二十四層をメインにしていくかな。やはり途中休憩とはいえ、昼食はゆっくり食べたいからな。午前に二十二層で軽めに慣らしたあと、午後は二十四層を周りながらゆっくりと地図を描き加えていく。こうだな。
階層を二つまたぐ分移動する間の戦闘量が気になるが、体感上そうモンスター量が変わるわけでは無さそうなので日帰りでも二十四層で活動する時間を作れる。しばらくはこの時間をフルに使って探し物をしていこう。それでもし足りないような行動範囲になったら、その時は宿泊で道を探していく事になる。
いつものゴキゲンな朝食が出来たので食べつつ、タイムスケジュールを確認。午前九時に開場、九時半にエレベーター前に到着。そこから十五分かけてエレベーターを降り、十五分ほどで二十二層への階段に到着。ここで十時だ。そこから二時間二十二層で活動をして、二十一層へ戻って十二時十五分から午後一時まで昼食休憩。
そこから十五分でまた二十二層に戻り、三十分かけて二十三層へ。そこからまた三十分で二十四層なので、二十四層に到着する予想時刻は午後二時十五分。帰り道にも同じだけの時間がかかると仮定し、十八時には二十一層を出発したい。そうなると午後四時四十五分には二十三層へもどらなければいけない。
ギッチギチのタイムスケジュールを組むとこうなる。勿論道中手間取れば手間取るだけ二十四層での活動時間は短くなる。二十四層では活動できても二時間が限界という所だな。
本音を言えばとっとと二十四層を抜けて次の階層がどんなマップになっているか気になる所だ。そういえば調べるのを忘れていたな。調べずに楽しみに取っておくのも有りっちゃ有りか。今日が終わるまでに忘れなければ後で調べよう。忘れたら次に思い出すまでそのままにしておこう。
食事を終えると片づけをして、一晩寝かせておいた煮物を温める。一回煮た後寝かせたことでより味を吸った美味しいものになっているはずだ。温まったところでとりあえずニンジンを一つ味見。甘みとつゆがしっかりと伝わってくる。今日は煮物の調理に成功したな。
温めて再びタッパー容器に詰め込んだところで保管庫へ。これで温かいまま食える。パックライスもレンジでチンして保管庫へ。二品しかないが、煮物の量は結構ある。食事量に文句が出る事は無いだろう。しいて言えば具の好き嫌いがあるぐらいか。
芽生さんは作った料理に文句は言わないと言っていたものの、好きなもの嫌いなものはあるはずだ。どの品物を食べないかで少しずつ好みを理解していこう。さて……
万能熊手二つ、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
インナースーツ、ヨシ!
防刃ツナギ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
食事の用意、ヨシ!
冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
枕、お泊まりセット、ヨシ!
ドローン、ヨシ!
バッテリー類、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。さぁ今日も気合入れてダンジョンに挑もう。
◇◆◇◆◇◆◇
開場時間に一番近く到着するバスに乗って現地に向かう。芽生さんからレインで連絡、もう着いたとの事。やる気に満ち溢れているな。一本早いバスに乗ったようだ。さすがにバスの時間を短縮する事は難しいからな。申し訳ないがしばらく向こうで暇をしててもらおう。
まだかなー、まだかなーと思いながらバスに揺られる。最近この辺に新築の家が建ち始めた。誰かが土地を手放してどこかの会社が買って、建売住宅として販売するようだ。似たような基礎が打ち込まれ始めている。これもダンジョン効果なのだろうか。普通ダンジョンなんて近くに出来たら資産価値が下がりそうなもんだが、このあたりで下がり切ったと見てパパっと立てて格安で提供する腹積もりなのかもしれない。
新築の家か……俺にはなじまないだろうが、パーティーのたまり場として家を買うという選択肢は確かにある。もしかしたら内何軒かは小西ダンジョンに通うために探索者が買うのかもしれないな。
バスが到着すると開場待ちの列にちゃっかり並んでいる芽生さんを発見。
「ついたよー、おはよう」
「おはよ~、ご飯何? 」
もう昼食の事を気にしているようだ。先の見通しを考えているという点では良い事だな。
「今日は煮物。色々野菜の煮物。ボア肉も入れてある」
「楽しみにしておきます。今日はどういう流れで行きますか」
「基本は昨日と同じで、一番深いところで二時間ぐらい活動できればいいなと思ってる」
一応周りの耳もあるため、具体的な階層はボカす。スキルオーブドロップの時とは違い今回は確実に潜っている層を確定されてしまうからな。スレでも薄々二十一層にはエレベーターがあると考えられているらしいし、あまり耳目の多いところで細かい事を話すことは控えたほうが良いだろう。
やがて開場時間になり、いつも通り二枚セットの探索者証の片方を受付に提出。探索者証に異変がないことを確認された後で一言。
「おはようございます。今日もご安全に」
「ご安全に」
「ご安全に~」
安全な探索……という訳にはいかないだろうがそれでもできるだけ安全マージンを取っての探索だ。命がけで最前線を巡っていくのも探索だが、自力で無理しない範囲で巡り続けてドロップ品を持ち帰るのも立派な探索だ。ダンジョンの存在理由を考えるとドロップ品を多く、つまり黒い粒子の密度を高くした状態で持ち帰るほうが目的に適っている。
いつも通り一層からエレベーターホールまでスライムをバチバチさせながら歩く。やはりエレベーターホールももっと入口に近いところに設置してもらうべきだったな。みんなが使うんだから動線について考えておくべきだったと考える。だがそのおかげで二十一層では解りやすい位置に設置できた。これは二十八層の時にも活かしていこう。
エレベーターホールに到着し、エレベーターで二十一層へ。ここまではタイムスケジュール通りに進むことが出来ている。いいぞいいぞ、この調子だ。
「ようし、良いタイムだ。これで効率よく探索が出来る」
「タイム計ってたんですか。ちなみに午前中の予定は? 」
「今更だが、お昼まで二十二層、お昼食べたら二十四層を探りたい。二十三層と二十四層の違いとか色々見てみたい」
今の俺は人から見れば鼻息をフンスフンスさせながら語っている感じに見えるのかもしれないな。
「なんか目がキラキラしてきましたね。お昼途中の階段で取るならもっと長い時間稼働できますけど、そうしないんですか? 」
「休憩は休憩でしっかり取るほうが安全なのが一つと、同じマップとは言えまだ慣れない階層に向かうのにあまり慣れない休憩の取り方するのは不慮の事故につながる可能性が高まるからな。今は無理をする時じゃない」
ろくろを回しながら語る。ろくろをグルグルと回している間に二十一層に着いた。マウンテンバイクに乗り換え、二十二層の階段まで漕ぐ。急いで漕げばもっとタイムは縮められるが、変に体力を使う必要もないだろう。
「ここは頑張ってタイムを縮める所じゃないんですか? 」
「無駄に疲れて探索に支障をきたしたくないのでここは普通に漕ぐ。時間も大事だが体力も大事だからな」
「時間に厳しい割には体力も考えるんですね」
予定より十分早く二十二層の階段に着く。本来歩いて到着する時間でマウンテンバイクに乗ってきたために時間に余裕がある。これも織り込み済みだ。
「さあ、まずは二十二層で好きなだけ暴れよう。二時間ぐらい。その後で昼食にしよう」
「なんか観光ツアーガイドを受けてる気分になってきました。安全に戦ってるあたり似たようなものかもしれませんけど」
言われてみればそんな感じだな。なら俺は今日一日集団観光のバスガイドさんの気持ちになるか。
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