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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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532:今日こそは二十四層へ 2/2

 ダンジョンの二十一層という深いが近い階層で、のどかな昼休憩を挟んだ。休憩の間に胃袋は大方落ち着き、体の調子も整えてほぼ万全といった体調をキープ。


 本来なら体調が悪くてもある程度探索を続けられるように立ち振る舞うべきなのだろうが、そこまで命を懸けて探索者をしている訳ではないし、意図的にバッドコンディションに追い込んでダンジョンに潜るのは危険極まりない。何しろたった二人のパーティーだ。片方が体調を崩せばパーティーは文字通り半壊する。


 危険な兆候はいくつかあるが、いくらでも先へ進めそうと感じるときはステータスブーストの過剰反応であることが多い。その場合大人しくその場でON/OFFをして、体感時間と体調を再認識する事でほぼ回復できる。


 試しにON/OFFを試みるが今のところ問題は無さそうだ。というわけで改めて、二十四層の階段を見つける作業に取り掛かろう。


 芽生さんに視線を送ると、芽生さんは了解と言う前に立ち上がり、膝とお尻をパッパッと払って装備を抱えなおしてこちらへ駆け寄ってくる。準備は良いらしい。


「じゃ、行こうか。目的は階段探索。次に狩り。二十四層の階段を見つけたらチラッと覗いてから帰る。そういう行程で一つ」

「了解でーす。ちゃっちゃと行って稼いで帰りましょう」


 早速マウンテンバイクにまたがり二十二層の階段へ。ここからはモンスターの数よりも進行速度のほうが大事だ。


 索敵で一匹だけで存在するモンスターをテンポよく引き寄せては倒す。ここで慎重になりすぎると時間を食うからな。ケチれる時間はケチっていこう。一匹だけなら今のところ苦戦はしない。蜘蛛に糸を吐かれて動けなくなった場合は芽生さんが居る。ゴキが来ても雷撃で寝かせておいて止めを刺せば手順に問題はない。


 一匹エリアを抜けて最短距離で二十三層の階段へ急ぐ。急ぐが、道中のモンスターは索敵に引っかかる分は確実に仕留めていく。索敵で進行方向に進むとエンカウントするモンスターは物陰に居るものは近いうちにパチンコ玉で引き付けて狩る。見えている場合は普通に進んで倒す。


 このマップ索敵が無かったらどうやって進んでいたんだろう。いろんな隙間にパチンコ玉を当てながら進むというのは同じだが、もっと多くのモンスターと同時に戦いながら進んでいた可能性が高いな。索敵の重要性がさらに増したように感じられる。世の中にBランク探索者が増えたら【索敵】の価格はもっと高騰してくる可能性は高い。芽生さんは本当に良い貰い物をしたな。


 一億二千万の女の価値がさらに高まっていく。本人に言うと調子に乗るから心の中だけで褒めておこう。モンスターのグループは広い道に出ると三匹グループも増えてくる。索敵を使いながら戦うのも慣れてきた芽生さんも徐々に戦闘に参加する比率が増えつつある。


 次々と手早くモンスターを倒していくと、二十分ほどで二十三層への階段にたどりつく。これでまた少し二十三層で活動できる時間が増えたな。


 二十三層へ下り、下りたところにいる蜘蛛三匹を問題なく処理したところで前回のおさらい。階段周辺の階段捜索は一通り回り終わっている。


 今から取れるのは二パターン。ドローンで確認した範囲の広い道をメインに探すか、細かい所を探していくかだ。どちらのほうが可能性が高いかと言われると、精神的には広い道のほうが存在しそうな気はするので、今回は広い道を探していこうと思っている。マップ全体を把握する事は大事だからな。


「とりあえず、前回ドローンで撮影した範囲をメインにして、広い道から探していこうと思う。結構広い範囲撮影できてるから時間目いっぱい使ったら広い道は全部探し終えられると思う」

「付いて行きます。ちなみにどの辺にありそうか目途は付いてるんですか? 」

「全く。なので解りやすい所から詰めていくことにする。地図の外側適当に埋めに行っても迷うだけだから、もう地図が出来ていてまだ確認してない場所から順番に埋めていこう」


 とりあえず、広い道に出てから道沿いに進む。この道の手前のほうは既に建物の確認がしてあるのでひたすらモンスターを倒しながら前へ進んでいく時間が二十分ほど過ぎ、それから道沿いの建物の確認が始まる。戦う場面と捜索の場面がきっちり分けて時間を取れるのはやはり大きいな。


 暫く背の高い建物が続いた後、低い建物と潰れた建物のエリアにたどり着く。さっきまでが駅前というか繁華街、そこから少し離れていくと個人商店や一戸建てが並んでいるようなイメージ。モンスターが居ない事を芽生さんに確認しつつ、並びの建物を一つ一つ調べていく。


 ここも違う。ここもダメ。ここは半地下。一つ一つ確実に建物を探り、描き込んでいく。探すのは下行きの階段なのでわざわざ数階建ての建物に上ったりする事は無い。その分だけ時間を短くすることが出来ているが、嫌がらせのために高い建物の中途半端な階に階段が有ったりしたら発狂すると思う。そんな意地悪というか面倒くさい作りはミルコはしないと信じておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 更に三十分ほどかけて建物を探ると、広い道沿いに階段があるのを発見した。この深さと角度は間違いなく階段だろう。時間的な距離で戦いながら歩いて四十分ぐらいの距離だろうか。これで細い道を記録する手間は省けた事になる。


「思ったよりは早く見つかってくれたかな? という感じだな。解ってる範囲に有ってよかった」

「広い道に沿って設置してくれてたのは助かる出来事ですねえ。このまま未到達の地域をグルグル回って細い路地も全部通って……とならなくて一安心です」


 全くその通りだ。全体の三分の一ほどのマップしか捜索してないのに階段が見つかるのはひとえに普段の行いの良さに起因するものであることを信じて疑わない。


 周囲の安全と階層最後の戦いを終えた後、索敵網にモンスターが引っかかっていない事を確認し、階段を下りる。


 二十四層の様子を見るだけ見て帰る、という事になっているからな。さて、潜ったその先には何があるかな……


「な、なんだアレは」


 俺達の目に映ったのは天井を這う巨大な蜘蛛の姿だった。巨大な蜘蛛の巣の真ん中に陣取るダンジョンスパイダーの親玉……クイーンスパイダーとでも名付ければいいのだろうか。そいつの周りに目でかろうじて追えるサイズの小さい蜘蛛が屯っている。多分あの小さい粒一つ一つがダンジョンスパイダーだと考えると、クイーンスパイダーの大きさが目に見て取れる。


「でっかい蜘蛛……いや大きすぎませんかアレ」

「戦う……いやボス階層は十五層おきのはずだからただのダンジョンギミックなのか? 二十四層にあるって事はもしかしたら十二層にも同じようなものがある可能性はあるかも? いや、二十四層おきなのかもしれないな。とにかく、あれと戦う可能性は低いと思う……って周りのモンスターは! 」


 思わず見入ってしまった後、戦闘に入るかどうかを確認する。もし目の前にモンスターが居たら先手を取られていたかもしれない。


「索敵範囲に敵なし。しばらくは大丈夫ですね。もうちょっと眺めています? それとも戻ります? 」

「うーん……試しに攻撃できるかやってみるか。もしかしたら天井で区切られていて一方的に見えてるだけかもしれないし。とりあえずスマホで写真だけ数枚取っておこうかな。何かの記念になるかもしれないし、ギルドから進捗報告を求められた時の証拠にもなるだろうし」

「あ、私も私もー」


 適当に角度と大きさを調節し、巨大さを再確認させるような画角で写真撮影。ついでに自分も写り込んでパシャ。これで仕事をしてるという証拠は充分だろう。


 芽生さんも写真を撮ったところで真面目モードに戻る。七層でゴブ剣を飛ばして自分に当たりそうになったことを思い出し、同じことをやらないようにパチンコ玉で、斜め方向に向けて射出する。パチンコ玉は天井らしき部分に跳ね返った後何処かへ行ってしまった。


「どうやらこっちから攻撃を仕掛けるのは無理らしいな。なら向こうから攻撃してくることも今のところ無いだろう。とりあえず周りを確認するだけ確認して帰ろう。一回ぐらいは戦って帰っても問題は無さそうだし」

「そうですねえ……ちょうど三時方向に隠れてる四匹のパーティーが居ますよ。どうですか」

「そいつを叩いて帰ろう。ちょっと早い帰りになるがキリとしては悪くない」


 言われたとおり三時方向にパチンコ玉を射出。すると隙間から湧いて出てくるダンジョンスパイダー。狭いところ好きなのかな。


 縦に並んで向かってきた二匹に対して、先日試した太い雷撃を打ち込んでそのまま蒸発させる。こいつは燃費が悪いが出力は充分だということが今確認された。しいて言うなら一列に並んでくれていたらまとめて倒せた可能性が高い。使いどころによっては良い感じに使えるかもしれない。


 残り二匹を近接で仕留めて、この階層での戦闘を終えておく。二十四層まで潜ることが出来た。今日のところはそこで満足しておこう。まだまだ休みは長いし今日は泊まりで来たわけでも無い。もっと時間的に余裕がある時に詳細を調べるようにしよう。


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[良い点] 毎日の更新有難うございます m(_ _)m [気になる点] デカイ大蜘蛛は 何をドロップするのかなぁ(*´ω`*) [一言] 作者様頑張れマス(`・ω・´)ゞ
[一言] 安村、文月組による旅打ちならぬ旅ダンに期待。 とりあえず、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンにでも行ってほしい。
[良い点] クイーンGじゃなくてよかった。GのB面のキモさは異常。
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