531:今日こそは二十四層へ 1/2
アラームと共にパッと目が覚め、心地よいまま起きる。ありがとうダーククロウ。この挨拶も飽きが来ているが飽きるほど感謝しても毎朝の体調の良さに比べれば何の事は無い。冷房も壊れずに居てくれてありがとう。今故障したら最悪冬まで直せない可能性があるから気張って耐えてほしい。君らの努力に俺の毎日の稼ぎがかかっている。
いつもの目覚め、いつもの朝食、いつもの着替えを終える。さて、お昼ご飯に何を持っていこうかな。特に思いつかなかったのでシーズニングから適当にレシピを決める。まずは野菜。適当に千切ったキャベツにシーズニングとごま油を和えて一品。キャベツがちょっと多めになったがしっかり味は付いているのでヨシ。
主食はウルフ肉の香草焼きと行こう、これもなじませて焼くだけで簡単にできる。鶏肉用のレシピだがウルフ肉にも応用してみる。キノコと少量の野菜を混ぜ込んでこれで二品目、ヨシ。パックライスを温めて三品目。昼食はこのぐらいで良いか、今日は手早く決まったな、ヨシ。まだ時間があるので冷凍唐揚げをレンジで温めて添えておこう。
万能熊手二つ、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
インナースーツ、ヨシ!
防刃ツナギ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
食事の用意、ヨシ!
冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
枕、お泊まりセット、ヨシ!
ドローン、ヨシ!
バッテリー類、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。準備が意外と早く終わったのでコンビニで軽く時間を潰しつつお菓子の補充。今日はミルコにお土産を持っていこう。まだ持っていったことのない味と飲み物をチョイス。炭酸は好みだったはずだ。エナジードリンクの缶の奴も持って行ってみよう。後はいつものコーラとグレープの奴とをチョイス。菓子は個包装の奴を三種類ぐらい選んだ。ちびちびと食べるにはちょうど良いだろう。
買い物を済ませるとそのまま小西ダンジョンへ向かう。そういえば最近めっきり清州ダンジョンに行かなくなったな。日帰りエレベーターのおかげで一般探索者のフリをする機会が少なくなり、自分を鍛えることを忘れているのかもしれない。夏が終わったらまた行くか。それまでにはもしかしたらエレベーターも設置されるようになるかもしれないしな。
ダンジョンについたが早めに家を出たのでまだ開場時間ではない。建物は開いているので開場時間まで涼みながら雑誌を読んで寛ぐ。しばらくすると芽生さんが現れ、隣で一緒に雑誌を読み始めては広告に興味を示す。
「そういえばパチンコ玉の在庫は充分ですか。最近結構使うので残量がちゃんとあるか確認したいです」
「まだ千発以上あるし、足りなくなったらバードショット弾もある。心配はしなくていいと思うよ」
保管庫の在庫を確認しながら伝えておく。まだ一週間ぐらいは余裕が有ると考えられる。次の休みに鬼ころしに行って補充すれば間に合うだろう。
開場時間になった。今日も小西ダンジョンのエレベーターと難易度の高さとウルフ肉を求めて探索者の列が出来上がる。入場待ち時間ができるなんて小西ダンジョンも成長したもんだ。
さて、遅れて入るとその分ロスだぞ、とさっさと列に並ぶ。列に並ぶと言っても三十分待たなくてはいけないとかそういう訳ではない。五分ほどで入場する事が出来た。後ろに待つ人もいるので入ダン手続きはスムーズに、必要な事だけ話す。
「今日もご安全に」
「ご安全に。行ってきます」
一層に入るとエレベーターエリアを目指す一行と早速わき道にそれておそらくスライムを倒しに行く人と、階段へ向かう人とおおよそ三種類に分けられる。
俺達はエレベーターホールへ向かうので、周りとはちょっと空気の違う探索者の後ろをついていく。明らかに地元の人間ではない、エレベーターが出来てからこっちに移住してきたな? という雰囲気を漂わせている。いらっしゃい、田舎のダンジョンへ。
エレベーターホールに着くと前を歩いていた探索者から話しかけられる。
「何層まで行かれますか? もしよければ燃料費を折半しませんか」
ここで燃料費をけちろうという算段らしい。前のパーティーの人数をみて、自分たちを見て、乗るスペースに余裕があることを確認する。
「あー……良いですよ。そちらは十五層までですよね」
「そうです。こちらで七層分までの燃料を都合しますから残りはそちらで、という事でよろしいでしょうか」
「構いませんよ。角はこちらの物を使いますね」
先に乗り込むと角を嵌め込み、七層分までの燃料を入れてもらう。その後こちらも燃料を入れ、十五層のボタンを押す。
無言の時間が流れる。やがて十五層にたどり着いた後、彼らは下りる。その隙に燃料をさらに追加し、二十一層までのボタンを押してとっとと扉の閉ボタンを押す。扉の向こうでは驚く姿が見えたが、すぐに扉がその視線を遮った。
「二十一層まで行くって言わなくてよかったんですか」
「連れていけと言われた時が面倒だし、しばらく会う事もないだろうからあえて無言で対応してみた。また出会った時には何か言い訳を考えておくよ」
いつも通り二十一層へたどり着くと、早速行動の時間だ。時間は午前九時四十五分。十五分で二十二層にたどり着けば二時間は戦闘が続けられる。その後昼食休みを挟んで四時間、実質二十三層では三時間の時間をかけて二十四層の階段を探す旅に出かける予定だ。
「さぁ、まずはお昼ご飯まで二十二層で頑張りますか」
「その後は二十三層探索な。今日こそ階段を見つけてみせるぞ」
早速二十二層に下りて、ちまちまと一匹ずつ出てくるモンスターをさっさと処理し、ここは手早く済ませて広い道へ出る。道へ出た先はいろんな隙間からモンスターを引っ張り出すことができるため索敵とパチンコ玉をフル活用して無理のない範囲で出来るだけ多くのモンスターと戦っておく。二十三層に比べて密度は薄いとはいえ、素早く行動する事で出来るだけの利益が上がるように手を尽くすよう心掛ける。
「やはりサクサク進めてサクサク食べられるのは財布の健康にも心の健康にも良いですね」
「あんまり頑張りすぎて昼からの分を使い果たさないようにしてくれよ。メインはそっちなんだから」
「昼食挟めば回復するから大丈夫ですよ。今日のお昼は何ですか? 」
ここでお昼の話で茶々を入れるぐらいには体も心も慣れていると考えていいんかな。
「お昼はウルフ肉の香草焼きそれとちぎりキャベツ和えだ。結構シンプルだぞ」
「あっさりしてて良いんじゃないですか? 楽しみにしておきます」
◇◆◇◆◇◆◇
あっという間に午前が終わり、一時間半ほどかなりの密度の戦闘を行った。二十三層の準備運動としてはちょっと重めだが、二十三層では階段探しがメインだ。体力的には昼休憩を取れば余裕が出来るだろう。
タイミングを合わせるように昼になるあたりで二十一層への階段まで戻ってくる。時間を見ながらスムーズに移動経路を考えていくのも手慣れた探索者としての大事なポイントだと思っている。
今日は良い感じに戦っていい感じに戻ってこれた。このペースを午後も維持できるなら、二十三層でもう三十分余分に活動する事が出来るだろう。
早速テントに戻り、保管庫から取り出したまだ暖かな昼食を取る。こんな所であっても温かい食事は大事だ。出来上がってから三分ほど経った、ほぼ出来たてアツアツのウルフ肉の香草焼きと塩とごま油のたれ和えキャベツ。普通なら酒が進む組み合わせだが、ここに酔っぱらいは居ない。酒に合うならご飯にも合うだろう。実際美味しい。
うめ……うめ……と自画自賛しながら食べているが、ほとんどはシーズニングのおかげなので俺の食品チョイスを自画自賛しておく。パックライスがどんどん進む。
「もう一パック行く? 」
「はんぶんこしましょう。これはご飯がもうちょっとほしくなる味です」
おかずを食べきる前にパックライスをその場で温めはんぶんこ。再びがつがつと食べなおす。塩だれキャベツと香草焼きウルフ肉が相乗効果でどんどん胃袋に入っていく。ほどほどにしたほうが良いのは解っているが、止められない止まらない。このコンボはメモに書いておいても良いぐらいだ。是非メモってダンジョン飯黄金コンボとして名を連ねておこう。
食べ終えたところで食休み。食べた分きちんと消化して、午後の激戦に備える。淹れたてのコーヒー片手に優雅に読書。読んでいるのは月刊探索ライフ。新たなレシピが有ったらそれを採用してみようという腹積もりだ。
腹が一杯でコーヒーの覚醒作用がまだ働いていないため頭もぼんやりしているおかげか、これといったレシピを見つけることは出来なかったが、また別のタイミングで読んだら参考になるかもしれないからまた後でやろう。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





