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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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529:ドローンは踊る、されど探索は進まず

 さて、また地図埋めと描きこみに戻る。色々見回ってみたが、ある一区画に差し掛かる。ラブホテルの遺構だったりカジノの遺構だったり、そういうものがあれば盛り上がるようなものもあったかもしれないが、同じような建物が続く。まとめて建設された地区なのだろうか。


 見た目の違いがあまりない、同じ建物が並ぶところまで来た。物陰には時々モンスター。パチンコ玉で釣って誘い出し、確実に止めを刺す。


 団地みたいなものかな。だとすると団地妻が本来居るはずだが、廃墟だから団地妻も居ないだろう。階段が出来ている可能性は低……いや、こういう所に案外あったりするからな。見た目で差別するのは良くないだろう。一つ一つ確認してはバツをつけていく。


「この辺は期待薄ですかねえ。似た建物ばかりですよ」

「念には念を、だ。もしかしたらこの中から探し出せるかもしれないし……とはいうものの、同じ建物が並ぶとちょっとなぁ。違いを見つけ出すにも難しい。それぞれ何号棟とか書いてあればいいのに。いや、書いてあったとしても日本語で書いてある可能性は低そうだ。どっちにせよ区別つけられずか」

「パパっと終わらせてもうちょっと見どころのある方へ行きましょう。五十メートル先二時方向蜘蛛三。多分向こうから寄ってきます」


 向こうから寄ってくるという事はもう赤く見えてるって事か。やはり索敵は優秀だな。


「了解。とっとと散らして続きを描こう」


 蜘蛛三匹が寄ってくる。出来るだけ射線を切って糸が飛んでこないような動きを試してみる。建物の残骸に半身を隠しつつ、近寄ってくるのを待つ。うまく誘導できたのか、近づくまで糸は吐いてこなかった。近接戦闘なら糸が飛んでこない分楽に戦える。雷撃二発で蜘蛛を動けなくした後元気な一匹を直刀で斬り裂く。残り二匹も同様に撃破。魔結晶と糸を手に入れる。


 結局似たような建物群から得られるものは、何もなかったという地図埋めの結果だった。これはこれで同じところを探索しなくてよくなったので良い。ここを二十三層団地と名付けよう。そして何もないという成果を記録。


 ここまでの地図を見るに、この広い道は一本ではなく曲がって見えない方向へ続いている。このマップを囲う城壁とまだ未踏破の地域の方向や面積を考えるにループしていると気が楽でいいな。だがその場合は似たような風景が続いた場合迷子になる可能性も同時にある。面倒くさいな。二十二層のほうがその辺は素直で良かった。


 団地の調査を終えると再び広い道に出る。ここからは道なりに行ってまず全体を見極めよう。団地みたいに気になったところはチェックを随時入れていく。


 モンスターも道すがら、そして建物の隙間、開けた空間等好き放題な所に陣取っている。普段の稼ぎも込みで来ているので見えてる奴、それから索敵範囲から得られる情報内で真っ直ぐ行くとこっちに襲ってくる奴を優先してパチンコ玉で釣って呼び寄せて叩く。慣れて来た。そして飽きて来た。良い感じに体に馴染んできた証拠だ。


 戦い方もパターン化出来ている。後は四匹相手にする時にどうするかだけだ。四匹の時はとりあえず今は全力を込めた雷撃で行動不能にしておくことができる。この手が通じる相手だからこそうまくいっているが、スケルトンみたいに魔法耐性が高い奴やそもそも魔法が効きにくそうな相手、それから非生物っぽい相手には通用しないだろう。そうなった場合はまた考えなければいけないな。


 ゴキを四匹倒しヒールポーションを手に入れたところで周囲のモンスターが居なくなったことを確認し、再びドローンを飛ばす。見える範囲をまた撮影、写真を保存して後で地図を作り上げる準備を調えておく。


 流石にこの一回の探索で階段まで見つかるとは思っていないが、そのためには少しでも広くマップを把握しておくことに損はない。誰かにマップを教えるにせよ、マップを完成させるにせよ、中途半端に階段までだけの情報で抑えておくことにせよ、広い範囲が知れる事に損はない。


 曲がり角に居る蜘蛛を倒すと、広い道を曲がる。曲がった先はまた真っ直ぐな広い道。周囲を確認してまずはドローンの飛ぶ範囲に引っかかりそうなモンスターを釣りだしてあらかじめ静かにさせておく。そしてドローンを飛ばし、周囲三百メートルほどの情報を得る。脇道になるあたりは碁盤の目状というわけではないらしいが、それでもそれに近い形をしている。


 京都や札幌ほどはっきりしている訳ではない。しかし古い城下町筋が残る地域では現代でも時々見られるような形で道が続いている。これは道をブロック単位で覚えておいても損はない構造だな。ここから戻るには……なるほど、大体どのくらい戻ればいいか解ってきたぞ。


「解りにくいようで解りやすい構造みたいだ。ここまでの範囲だけなら碁盤の目状に広がってる。もしかしたら全体がそうかもしれない。わき道にそれても迷う可能性は低そうだ」

「迷う事が無さそうなのは良い事ですが、わき道で四匹出てきたときに上手く戦闘スペースが取れるかどうかが問題ですかねえ」


 ドローンを覗き込みながら芽生さんが指摘してくる。


「あんまり細い道のことまでは考えないほうが良いって事か。まだ時間はあるし折り返すにも早すぎる。もう少し広い道と目立ったオブジェクトが見つかるか時間が来るまでこのまま広い道を歩き続けようか」

「それが良いと思います。気になる所は節々に出てくるでしょうけど最初の目的を忘れないようにしましょう。洋一さん結構気が散るタイプですし」


 言われてみればそうかもしれない。よし、気を取り直してこのまま道なりだな。


 索敵しながら広い道を進む。脇道に差し掛かると見えているモンスターが居るかどうか確認し、索敵でそのほかにグループが居ない事を確認。確認したらパチンコ玉で釣りだす。ここまで効果的にパチンコ玉を利用しているのは多分このマップが初めてだろう。貯めててよかったパチンコ玉。無くなり始めたらまた鬼ころしに行って買い集めてこよう。


 ……と、また考えが明後日の方向に向かっているな。今はこの道すがらに階段があるかどうかをチェックするのが優先だ。索敵をかけてもらいながら広い道沿いの建物を見ていって、怪しいところがあればチェック。チェック済みの部分は薄めに塗りつぶすか、階層と地下の有無を記入していく。その調子を続けよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一時間半ほどかけておそらくマップの三分の一ほどの範囲を調べ終わった。今のところ階段のありかのメドはたっていない。既に探索した範囲に階段がないか?と言われると無いとは言い切れない程度でしかない。


 そろそろ日帰りで調査するには限界時間だろう。帰り道はモンスターのリポップ具合にもよるが、来た時よりも早く帰れるのは間違いない。


「そろそろ折り返し時間かな。三分の一ぐらいしか調べられてないけど、実際に見た範囲はもう少し広いし細かいところは調べてない。次来た時は細かい部分を調べていこう。細い道に面した建物に階段がある可能性だってあるし……あぁ、でも逆側の広い道を捜索するという手もある。迷うなあ」

「また明日来ればいいだけですから気楽に行きましょう。それより今日の稼ぎのほうが大事です」


 ブレない芽生さんに安心感を覚える。


「今日は……ここまでと同じかちょっと少ないぐらいかな。ここまで移動してくる時間分ロスはあるけど、二十三層のほうがモンスター密度は高かった。その分で帳消しになる感じかも」

「儲かってるなら良いです。さあ帰りましょう。ちょっと早めのほうが査定も終わり際に負担がかからなくて楽でしょうし」

「特訓の時間もあるしな。真っ直ぐ帰ろうか」


 二十三層の来た道を戻る。真っ直ぐ後ろに帰るので道中のモンスターがリポップしきっていないのもそうだが、建物を覗いたりあれこれ調べたりする時間が無かった分、あっさりと二十二層まで戻ってくることが出来た。その代わり二十二層のモンスターは綺麗に湧きなおしていたので、その分は収入としてキッチリ頂いていく。


 気を抜いて帰ることはせず、警戒は怠らず索敵をフルに生かして出来るだけ多くのモンスターを戦闘に参加するように工夫しつつ、同時に来ないようにしながら帰り道をゆったりと歩く。


 二十三層の密度を考えたら二十二層はかなり気楽な行程だ。これも慣れとか飽きとかいう奴だな。新しい攻撃方法を生み出したりする余地が出来てくると良いが、今のところこれで上手くいってるのでより簡単かつ消耗が無い戦い方を思いついたら提案して実行してみようと思う。


 特に問題なく二十一層にたどり着いた。ここからはホームに戻って全力でスキルを打ち放った後で軽く休憩し、荷物を整理して上へ戻る。小寺さん達は無事に荷物を回収して上層に戻ったんだろうか。


 とりあえずいつも目標にしている建物の中を覗き、誰もキャンプを張っていない事を確認する。まだしばらくはこれを目標にできるな。


 建物からテントに戻ってきて、安心して全力でスキルを打ち放つ。今日は趣向を変えていつもの雷撃ではなく、イメージを変えて人間大ぐらいの太い打ちっぱなし雷撃みたいなイメージをして放つ。極太雷撃と仮称しておこう。


 俺の手から放たれた太い雷撃は建物を光らせ続け、いつものようにバツンバツンという効果音ではなく、バババババババ……と連続してダメージを与え続けるような形で建物を光らせ続けた。


 いつもと違ったイメージのおかげか、それともスキルの魔力使用量が高いのか、いつもより早めに眩暈が来る。どうしようもなく硬い敵が出てきたときにこれは使えるか。もしかしたらこの間みたいにモンスターに囲まれた時に後ろにいるモンスターごと吹き飛ばすイメージで撃てれば使いまわしがきくか。


 芽生さんも足元がふらついたところで休憩。カロリーと水分を取る。そして休憩の間に荷物整理だ。今日は……うん、ここ数日と同じぐらいの稼ぎか。昼休憩で一旦上に戻るような事をしなければもうちょっと稼げたかな。だが無理にこれ以上稼ぐのはひたすら時間を費やす以外に見当たら無さそうだ。


「明日は午前は二十二層、午後から二十三層探索で良いかな」

「中途半端に二十三層に潜るよりははっきりしてていいと思います。それに早めに午前を切り上げてお昼にすればその分二十三層を回る時間も増えますし」


 ちゃんとその辺を考えてくれているようだ。何より何より。


「さて、明日の予定も決まった事だし、荷物整理も終わったし、帰るか」

「今日の収入はいかほどですか。一昨日より多いですか、少ないですか」


 芽生さんはウキウキしている、といった表現がふさわしい口調と態度で今日の稼ぎを聞いてくる。


「あんまり変わらない量は稼げてるから心配しなさんな。労働に見合った分のおちんぎんは稼げているはずだ」


 エレベーターに向かい、そのままエレベーターに乗る。魔結晶を投入して一層へボタンをポチ。あらかじめ荷物の仕分けをしておいたのでお互いやることなく十五分が流れる。たまには自分の成果物を観察しようとしているのか、芽生さんがエコバッグの中をごそごそと漁ってドロップの糸を伸ばして引きちぎろうとしたり色々していた。一層に着くとスライムを片手間で爆散させつつ出入口に向かい、退ダン手続きをする。


「お帰りなさい、今日はどうでしたか」

「ただいま。今日もバッチリですよ」


 なんて事は無いいつもの会話を挟んでとっとと査定に向かう。長々と話し込んで遅くなってもいけないからな。査定にかけた今日の金額は二百五万八千七百五十円。安定して二百万円稼いでいるここ十日で言えば平均的な金額になった。そしてまた俺の通帳の中身が増える。


 一日でこれだけ稼げるなら本当に一部屋借りて探索用の拠点にしてしまうのは何ら不思議はないな。俺より探索慣れしてる人の中にはそうしてる人もいるらしいのでフットワークの軽さに尊敬のまなざしを送る所だ。ところで、探索のために家を借りたら家賃は経費に含まれるのだろうか? 事務所扱いとして経費に出来そうな気がする。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 建物はあっても特徴がない建物ばかりというのは戦闘こなしてる間に現在地とか見失いそうで嫌ですねー 特徴的な記号なり看板なりのある街の再現だったら良かったのに
[気になる点] ぼちぼちいいものが出てくるかな。
[良い点] めーちゃんがしっかりしてて安心w [気になる点] 蜘蛛かGの団地妻はいるかも…想像して自爆した… [一言] 今日も更新ありがとうございます
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