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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第七章:マイペース・マイライフ

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526/1241

526:大きな変化なし、ヨシ。

 二十三層へ下りた。想像通りというか法則通りというか、同じ廃墟が広がる。予定ではこの次の二十四層も同じマップである可能性はほぼ百パーセントだろう。


 階段を下りてすぐのところで戦闘になった。蜘蛛三匹、さっと片付けてお小遣いになってもらう。この蜘蛛一匹でスライム二千匹分の価値が有るとされている。金額は時に残酷である。ゴブリン換算でも四十匹だ。ゴブリン四十匹倒す手間を考えれば今の自分からすれば蜘蛛を一匹倒すほうが労力がかからない所まで力をつけることが出来た、素直に自分を褒めよう。


「変化は……特に無さそうですねえ。ただモンスター密度はこっちのほうが高そうではあります」


 早速【索敵】でモンスターの分布状況を把握しているんであろう芽生さんから第一印象を教えてもらう。


「具体的に何割増しぐらいかわかる? 」

「そうですねえ……二割増、ってところかもしれません。実際に何匹セットで来るかまではちょっと判断しかねます。そのぐらい散らばってはいます」


 固まって数匹が存在する、というほどの密度ではないらしい。九層みたいにまとめて六匹くるとかそういう話じゃないなら今のところ問題はない。


「とりあえず周りを制圧してから状況確認するか。ドローンも飛ばしたいし、蜘蛛がうっかり飛びついて壊されるような事故は防ぎたい」

「じゃぁ次、あっちに向けて牽制弾を」

「了解パシュッとな」


 パチンコ玉を飛ばして近くに居るとされているモンスターを音で呼び出して戦闘態勢になる。物の隙間に挟まっていることが多いこのマップのモンスターにはてきめんに効果がある。


 早速、音に釣られて出て来た蜘蛛がこっちを確認して糸を飛ばしながら近寄ってくる。軽く回避するとそのまま近接して蜘蛛の頭に一発直刀をめり込ませる。硬くない頭を突き切り、蜘蛛は黒い粒子に還った。連続で二匹目、三匹目、四匹目が出てくる。二十三層だと四匹出てくるんだな。覚悟と手順の再確認が必要だな。


 どうやら一匹先に倒した後は三匹同時に来てもお互いがカバーリングし合うことで対応は出来るらしい。ゴキがどうなるかわからないが、蜘蛛は四匹セットで来る。それだけは確実だ。


「四匹か……二十四層で来ると思ったんだがな」

「思ったより早く出てきましたね。これは二十四層では五匹来るかもしれませんよ」

「五匹はちょっと手数が足りなくなるかもしれないな。ともかく二十三層を巡る準備をしよう。後近くのモンスターは? 」

「後は……結構遠いですね。今ならドローン飛ばしても大丈夫じゃないですかね」


 索敵の結果距離があるから大丈夫だと太鼓判をもらったところでドローンを飛ばしてみる。相変わらずこの廃墟マップの天井は低めだ。視界を取れる範囲は狭い。ドローンで出来る範囲を撮影して、道だけでも書き記していく。


 これは撮影できるだけしておいて、後で印刷してつなぎ合わせて全体マップを作る感じになるか。今日一日で作り切れるとは思ってないのでパソコンでちょちょっと広い道だけつなげて印刷、細かいところは手作業で入力していくという方法が良さそうだ。


 とりあえず半径三百メートルぐらいの範囲で広い道は把握できただろう。これぐらいでドローンをいったん戻し、モンスター退治に専念する事にする。


「さて、ざっくりと地図は解った。細かいところを埋めつつ広い道側へ進もう。こっちへ行けば広い道に出られるぞ」

「ではそっちへ行きますか……大体百メートルぐらいはモンスターには会いそうにないですね」


 貴重な時間で前へ進む。また三百メートル位進んだらドローンで撮影して地図を作る事にしよう。しばらく進むと広い道に出る前にモンスターとぶつかりそうだということで、いつも通りパチンコ玉で誘い出す。出てきたのはゴキが三匹。三匹なら心配する事は無い、手慣れた手順で追い込んで倒すと一区切り。ヒールポーションも手に入れることが出来た。


 そこから更に三連戦。蜘蛛、蜘蛛、ゴキ。どれも三匹。どうやら四匹セットはたまに出てくる程度らしい。そのたまに、でうっかりする可能性があるが、そうならないように気を引き締めていこう。


 広い道に出る。ここから広い道沿いに順番に地図を作っていきたいところだが、目で見えている範囲にまだモンスターが居る。建物の陰にも居るだろう。それらを倒してからになるな。


 手始めに目に見えている場所に居るモンスターを指さして芽生さんに確認してみると、首を振っている。どうやらもっと近くにいるらしい。芽生さんは逆の方向の建物の陰を指さす。そちらに向けてパチンコ玉を飛ばす。……おっ、出てきた出て来た。これ面白いぐらいに釣れるな。蜘蛛四匹が建物の陰からぞろぞろと姿を現す。


 四匹同時に糸を吐き出してきたので、回避しつつ、スケ剣を射出して同時に二匹倒す。まずは二匹分の糸を消滅させて残りの糸は回避できたことで完全に狙いから外れていった。その間に近寄り一閃。蜘蛛を一撃で倒せるのは大きい。ダンジョンハイエナと同じぐらいの労力でそれ以上のドロップの可能性を秘めている。このひたすら金を稼いだ時間は無駄じゃなかった、その分経験値もしっかり稼いでいたな。


 誰も見てないなら一人で四匹ぐらいは何とかなる。それが解っただけでも収穫だ。芽生さんは俺が一人で対応しきったのを見ると、次の方向を指さす。スケ剣を無事回収した後息を整えてそっちに向けてまたパチンコ玉を打つ。今度はゴキが三匹出て来た。文字通りこのマップなら何処にでもいるな。


 芽生さんがウォーターカッターで一匹を完全に沈黙させる。ウォーターカッターの威力も充分上がり、ゴキの頭を切り裂くことができるようになった。ここ十日で良く仕上げたと思う。そのまま任せてみると、無言で残りのゴキもさっさと処理していく。


 おそらく今の芽生さんは、無。無の心でゴキに対応していると思う。でなければあれだけ最初騒いでいた娘が一ヶ月もかからず対応できるとは考えが思い至らない。芽生さんが鋼の心を持っているなら別だが、それなら最初から戦えたと思うし、精神的な成長もしてくれてるんだなと涙すら出そうだ。


 戦い終わった芽生さんは次を探す。次までは少し距離があるらしい。こっちへ近づいてきた。


「もうちょっと進まないと次は遠いです。その前にドローンで確認していきませんか」


 もう一回ドローンを飛ばす作業をここで入れると良いらしい。そうしよう。


 前回の撮影に継ぎ足すようにドローンを飛ばし、写真を撮っていく。どれだけ広いかは城壁の部分までで見当がつくので、今は迷わないように目印を途中に見つけながらの移動作業だ。曲がり角の建物の高さと大きさ、見れるなら内部に何があるか、なんかを地図に描き込み目印にしている。


 ここに来るまでの道筋は確実に作れているので、戻る時は問題ない。それ以外の部分については写真で撮ったのでスマホを割ったり無くしたりしない限りはこの作業も無駄にはならない。


 必要分ドローンで撮り終わるとドローンを回収する。そういえばこのドローンも結構な音が鳴るけど、モンスターがそれに誘われて寄ってきたりはしないだろうか。一応注意しながら飛ばしてはいるが、うっかり階層中のモンスターを呼び寄せる可能性だってある。次はより注意して飛ばそう。


 まだドローンで全てを見終わったわけではないので注意は必要だが、ここも何回か時間をかけて階段を見つけ出そう。


「……そろそろいい時間だ。一旦戻ってお昼休憩にしようか」

「はーい。帰り道は……今ならまだ混んでませんね。さっさと退散しますか」


 どうやらまだ後ろはそれほど湧いてないらしい。行きは丁寧に、帰りは確実に。急いで怪我をしては目も当てられないからな。周辺を警戒しつつ、元の階段のあった場所まで戻り、二十二層へ上がる。


 二十二層は探索者が全くいなかったおかげでそれなりに湧きなおしている。ただ、索敵した限りだとやはり二十三層のほうがモンスター密度は高いらしい。二十一層へ戻る道を最短で必要数だけ倒しながら戻る。ある程度離れていてエンカウントしそうにない奴は除外していく。戦っても一向にかまわないんだが、放っておいてとっとと戻ったほうが午後からの探索に多く時間を割ける。必要分だけ倒せればそれでいいのだ。


 必要な戦闘だけをこなすと二十二層を三十分ほどで通過し、二十一層に戻ることができた。休憩して気力を回復させたらまた二十三層の続きを巡ろう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[気になる点] 当てなくても良いパチンコ玉はスリングショットで撃つ習慣をつけておいた方が良いのでは? 1フロアで何百発も消費する訳でもなさそうですし、芽生が自分で撃つ方がおそらく早くて不自然さも無い様…
[良い点] 芽生ちゃん頑張ったんだな… 無もそうだし525話だとまたゴキや蜘蛛は魔法一発では倒せないような言い回しだったが倒せるようになっている モンスターの湧きも二十二層では一匹か二匹だったのが二十…
[良い点] めーちゃんの精神が強くなっていってる事。 Gへの心持ちがベテラン主婦の域に! [気になる点] 25層はどんな階層か楽しみになって参りました〜 [一言] 今日も更新ありがとうございます!
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