519:ダンジョンピクニック 12/11 終
半地下に下りてエレベーターを起動。一層までの燃料を入れるとエレベーターはいつも通り動き出した。
「これで私たちも二十一層へ気軽に移動できるようになった、という事でいいんですか」
「それで間違いないとは思います。結局二十一層へ来たという証明する物品が無いので信頼性は乏しいですが。後、二十一層まで行ったことない人と一緒に行動して二十一層まで下りられるかどうかはチェックしてないので解りませんね」
「まだまだ謎が一杯ですね。二十八層まで行けばまたそこにもエレベーターが出来るんでしょうか」
「何がトリガーになるんでしょう? ここの空気を吸う事? それとも仮眠している間に何かいたずらとかされてるんでしょうか? 」
「どうでしょうね……たしかに初めて二十一層に来た時、疲れて仮眠を取りましたが……どうやって判別しているやら」
ミルコに今度聞いてみるか。明確な答えが出るかどうかまでは解らないけどふわっとした答えは返ってきそうだ。どういう仕組みでエレベーターのボタンが見えるようになるのか。これも鬼殺しみたいな感じで特定の階層ではその階層でしか判定できない魔素が充満してたりするんだろうか。
細かい事は今考えても仕方ないか。二十一層までエレベーターでいける。その事実を認識しておけばそれで充分じゃないか。
「この重さはいくらぐらいになるんでしょうねえ」
芽生さんが呟く。それは全員が知りたいところだ。予想額は俺にも解らない。今回は横田さんとそれぞれ品物毎に分別してドロップ品を拾っていたため、全体の量を把握していない。
「さっきエコバッグに詰め込む時カウントしておけば良かった? 」
「後一時間ぐらいで結果が出るんですからそれまでの楽しみで良いんじゃないですかね」
横田さんも全体は把握してないみたいだ。楽しみではあるが、同時に一人当たりで計算するとそこまで多くは無いんだろうなあという見当はついている。だが一回まとめての金額としての査定金額としてはかなりの物だという確信がある。査定嬢が金額に驚くかどうか楽しみである。
一層に着き、時間を確認すると八時半。ちょうど良い感じに出入口が開くな。真っ直ぐゆっくり移動して開場一番で査定してもらおう。
出入口に着くと、開場一番という訳にはいかなかった。俺達より先に出入口が開くのを待つパーティーが二つ。片方は知り合いだった。小寺パーティーだ。
「小寺さん達ですね」
「むこうは十五層から戻ったのかな。開場一番は取られてしまったな。とりあえず開いたらリヤカーの準備よろしく。多分持ちきれない」
「了解です隊長」
「やあ安村さん。出会わなかったという事は二十一層からですか? それとその方たちは? 」
小寺さんから質問が飛ぶ。十五層で出会わなかったんだから二十一層から上がって来た、と考えるほうが自然か。
「えぇ、二十一層からです。彼らは清州ダンジョンメインで潜ってる探索パーティーで、今日は一晩かけて二十一層まで潜って帰ってきたところですよ」
「荷物を見る限り、お互いしっかり稼げたみたいですね」
小寺パーティーもかなりの量のドロップ品を運んでいる。こっちもリヤカーを使いたいんだけどな……
「リヤカーが二台に増えててよかったですね。他のダンジョンからの探索者が増えた影響でリヤカーも増設したらしいです」
「そうだったんですか。最近出番が無かったんで知りませんでした」
「他のダンジョンから来る探索者達も結構リヤカー使って査定に来るので、一台では足りないと判断したようです」
リヤカーが二つあるなら俺も使えそうだ。話し込んでいるうちに開場時間になった。芽生さんは率先してリヤカーを取りに行く。到着を待って荷物を乗せ、退ダン手続きだ。
「お帰りなさい……大漁ですね」
「大漁ですよ。久しぶりに宿泊で頑張った甲斐がありました」
二、三話をかわすとリヤカーを引いたまま査定カウンターに並ぶ。小寺さん達が先に査定を受けるのでしばし待つ。十五分ほど待って、自分たちの番になる。
「これはまた大量に稼いできましたねー。査定のし甲斐がありますー」
「いつも通り分けてあるのでパパっとやっちゃってください」
「解りましたー。ではこちらにー」
リヤカーから一つ一つ種類ごとに渡していく。魔結晶も赤と黒を分けてあるので重量を測るのも楽だろう。魔結晶、毛、肉、ポーションと順番に渡していくことで円滑な査定を行っていく。
いつもより量が多い分時間がかかり、十分ほど待つことになったが、査定が終わった。
「今日は七等分でお願いします。七人で潜っていたので」
「解りましたー。この金額は小西ダンジョンでは過去最高だと思いますよー」
一人当たりの金額は八十四万六千七十七円。七等分なので、実際に査定にかけた金額は税抜きで五百九十万といった所だろうか。一気に稼いだ金額としては大きい。芽生さんと二人で潜っても二日がかりで稼ぐ金額だ。
皆にレシートを配ると、みんな金額を見て笑顔を浮かばせる。人によってはガッツポーズすら決めている。どうやら新浜パーティーとしてもこの金額はかなり多いらしい。
「これはまた……こんなに稼いだのは初めてかもしれません」
「総額としては私たちも初めてですね。頑張った甲斐がありました」
「という事は二人で潜ってる時はもっと稼いでいる? 」
「まあ、そういう事になります。日帰りでも急ぎで三往復ぐらいは出来ますから」
二十二層に潜っている事は今のところ伏せておく。Bランクとはいえ二十二層以降に潜っているというのは一応秘密事項に当たるからな。
皆順番に振り込みで対応していく。俺の財布には八十万も入るほど余裕がないので振り込みだ。財布にはこれ以上詰め込むスペースがない程度に現金が溜まっている。きっと結衣さん達もこの金額を基にして次の探索の準備や二十一層に運び込む物資を調達に行くんだろう。
「とりあえず今日一日お疲れ様でした。機会があればまた潜りましょう」
結衣さんが握手を求めて来たのでぎゅっと握っておいた。
「安村さんこの後の予定は? 」
「とりあえず家に帰って、それから買い出しですかね。いろいろ買いたいものも増えましたからその補充ですね。後さすがに汗をかいたので身支度もしたいところです。それから……ちょっと副業があるのでそっちにも顔を出しておきたいですね」
そろそろダーククロウの羽根を納品しても良い頃だろう。値段が上がった分価格交渉もしなきゃいけないしな。やることは山積みとまではいかないがそれなりに多い。今の所十キロほど羽根が溜まっているが、いつも通り五キロ分の羽根を納品しに行こう。
「そうですか。私たちはとりあえず清州ダンジョンに戻って報告があるのでここでお別れですね」
「またいつでも来れるんですから会う事もあるでしょう。またバッチリ稼ぎに来てください」
「ええ、それ以外にも安村さんの顔を見に来るかもしれません」
結衣さんはちょくちょく来るよう予定を立てているらしい。清州ダンジョンから苦情が飛んでこないかどうかだけが心配だな。
「仕事とプライベートはちゃんと分けてくださいね。俺にかまけてパーティー解散とかそんなのはダメですよ」
「そこはもちろん。仕事を続ける気力を充実させるためにも是非お付き合いお願いしますよ」
にぎにぎしながらブンブン腕を振られる。周りから口笛が飛んでくるが無視。
「じゃ、また」
新浜パーティーはそろって小西ダンジョンを去って行った。これはまた近いうちに来るな。間違いない。その間に探索を進めながらまた特訓に付き合う。そういう流れになりそうだ。
「ふー、一晩にしては少ないが、まとめて考えると中々の豊作だったな」
「新浜さん達がもっと動けるようになればより多く持って帰れるでしょうけど、本人たちの前では言えないとはいえ普段からすれば少ない収入でした」
さすが収入については細かいな。知り合いといえど厳しい目線だ。今の言葉は聞かなかったことにしておこう。
「じゃ、俺達も帰るか。俺もダーククロウの羽根を卸しに行きたいしな」
「そういえば、価格改定してから初めての取引ですね。頑張って値段交渉してきてください」
「そうなるように努力するよ。自分の財布も厚くなるしな」
「頑張ってきてくださいね。細かい事ですがちゃんとした収入ですから」
「また一人で潜る時にぼちぼち集めないとな」
二人そろってギルドを出る。結局バス停で新浜さん達と再合流した。
「さっき別れた意味がありませんでしたね」
「仕方ないですよ、駅まではご一緒ですね」
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





