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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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516:ダンジョンピクニック 9/11 特別訓練

 聞きなれたアラームが鳴る。おはようございます、安村です。現在午後十時。当然ながらダンジョンの営業時間は過ぎている。元々一泊の予定で潜っているのでそれは問題ない。そして仮眠を取った分疲れも取れ、胃もたれをする事も無く快調な目覚めだ。ありがとうダーククロウ、と言わんばかりに枕をポンポンと叩く。


 若干の汗をかいていたのでタオルで……今なら保管庫使っても大丈夫だな。ツナギを脱ぎ水を保管庫から出すとタオルを濡らして拭く。サッパリしたところで着直し、テントから出る。テントの外では既に新浜パーティーが行動を開始していた。


「おはようございます、安村さん」


 いそいそとコーヒーを淹れる準備をしていた平田さんが声をかけてくる。


「おはようございます。充分休めましたか」

「バッチリですわ。これからコーヒー飲んで完全に眠気を抜いてまた二十層で狩り……という行程でよろしいんで? 」

「その予定です。みんな起きてくるまで少し待ちますか」


 こっちもこっちで水を二杯分沸かし、芽生さんのテントをゆっさゆっさと揺すってタオルを投げ込む。中から起きてますよーと声がするので問題は無さそうだ。どうやら女子会はあまり長くは続かずに早々と寝てしまったらしい。


 一つ安心すると、沸いた湯でコーヒーを淹れて落ち着く。目だけじゃなくて脳までもが冴えてきているような感覚を覚える。


 暫くすると芽生さんと結衣さんはそろって出て来た。おそらく【水魔法】で軽く身だしなみを整えてから出てきたのだろう。ほんのりと湿ったようなにおいがする。


「おはようございます。バッチリ起きれました」

「それは何よりです。コーヒーの準備は調ってるみたいですよ」

「お、流石我がパーティー、気が利いてる」

「こっちもコーヒー沸いてるよ、インスタントだけど」

「いただきまーす」


 一同七人揃ってコーヒーを飲んで目を覚ます。コーヒーを飲み終えるとラジオ体操簡易版の開始だ。寝ている間に固まった身体を解し、寝る前の状態に近づける。


 俺の動きを見てか、他のメンバーも同様に体を動かし始めた。ラジオ体操第一の音源が手元にあったらかけているところだったな。


「おいっちにーさんしー」

「ごーろくしちはち」


 掛け声に合わせて体の筋を伸ばす。うん、良い感じにほぐれてきた気がする。これならこれからの狩りも捗るな。


 俺の掛け声でみんなが二人一組になってあちこちのエンジンのかかり具合を確かめている。今七人居る。つまり俺はぼっちである。悲しい。ここは気持ちを切り替えて、俺が見本でみんなが二人一組になっている、そういう事にした。だったら一人でもおかしくは無いな、よし。寂しくない寂しくない。


 一通りのストレッチを終えると、みんなそれぞれのテントに戻り自分の装備を取りに戻った。俺もテントに戻って同様にする。全員が揃ったところで出発だ。


「じゃ、二十層探索兼特訓に行きますか。さっきと同じで二人三人一組でこっちは一人一殺。体とステータスブーストが慣れてきたら一人で一体ずつ相手に出来るようになりましょう。とりあえずここに来るまでの分のドロップはテントに置いていきます」

「はーい先生。おやつはなんですか」


 ノリの軽い平田さんが茶々を入れてくる。


「常温ですがチョコがあります。お腹が空いてきたら適宜食べましょう。とりあえず、階段間を一往復戦闘してみて、改善点はおいおい考えましょう」

「お世話になりまーす」


 ノリが軽いまま二十層の階段まで出かける。マウンテンバイクを使って一部だけが移動でも良かったが、全員が階段の位置を把握している訳ではないので歩いていくことになった。


「しっかり稼いで帰れるなら、夜食朝食に肉でもいけそうだな」

「その分稼ぎは落ちますけど、テンションを維持するには大事ですね」


 横田さんも冷静を装ってはいるが、結構食べる人だ。結衣さんの腕がいいのか、それともまだまだ成長期なのかは解らない。しかし食欲があるのは良い事だから突っ込まずにおく。


 腹ごなし兼寝起きの運動にはちょうどいい具合だった二十層への階段までを歩き、二十層へ上がる。相沢パーティーは今日は居ないらしく、綺麗に湧き切ったモンスターたちが見て取れる。真っ直ぐ往復する分帰りのモンスターは少し少なめになるが、ここは他に比べてリポップまでの時間が短い。


「さあザクザクと狩りに出かけるぞ。まずは……早速喧嘩してるあの辺りかな」


 指さす先にはバトルゴートと喧嘩しているダンジョンハイエナが居る。手負いのバトルゴート三匹とダンジョンハイエナ三匹だ。ダンジョンハイエナはこっちで担当するか。


「ハイエナは俺と芽生さんで、残りよろしく」


 言い出すが早いか打ち出すが早いか、雷撃を浴びせてダンジョンハイエナに止めを刺す。動きが素早く厄介なダンジョンハイエナだが、ノータイムで着弾させられる俺にとっては一種のボーナスゲームなので数を確実に減らせる雷撃は大きなアドバンテージになっている。


 保管庫を使わない前提での最大火力がこれだ。出来ればバトルゴートやレッドカウもワンパンチダウンさせたいところだが、今のところそこまでの火力は得られていない。まだまだ修行が足りないか。また一人で潜る時に今度はジャイアントアントで試していくか。


 バトルゴートのほうに視線を移す。ダンジョンハイエナと戦っていた所に乱入したため、本来持っているはずの突進力や力は出せないらしい。これ幸いと二人一組でかかっていく。結衣さんは三人組から一人離れ、一対一でバトルゴートと戦おうとしている。危なそうなら支援に入ろうと思ったが、【風魔法】を織り交ぜながらバトルゴートの突進力を奪いつつ槍を突き立てて倒し切った。


 残りの二匹も無事対応しきり、初戦はまずまず、という結果になった。運のいい事にヒールポーションも出た。


「このポーションはヒールポーションですか? 見た事ないんですが」

「です、ランク3になります。一本二十四万円なので税抜きだと二十一万六千円になりますね。一人当たりの取り分は三万とちょっと」

「高いですね。ダンジョンハイエナの耐久力を考えるとかなり美味しいのでは? ただ素早いのさえなんとかできれば……あれ、じゃあ【雷魔法】で仕留められる安村さんにとっては」

「美味しい餌ですね。何ならこの階層全部ダンジョンハイエナでもいいぐらいですね」


 笑顔で返す。実際美味しいのでしょうがない。モンスター単価は一万五千円ぐらい。今の戦闘で四万五千円ぐらいの期待値だ。ちなみにバトルゴートは八千円ちょいぐらい。合わせて約七万円の戦闘だ。モンスター六匹で七万円。スライムで同じ金額を稼ぐには七千匹倒す必要がある。


「さあどんどん行きましょう。狩り放題の今なら収入も得放題ですし経験も積み放題です」

「よし、いっちょ稼ぎに行きますか。ここまで気楽に探索できるのも小西ダンジョンに居る間だけだし」

「怪我だけは気を付けてね。無理をした分だけ収入が減るから」

「魔法を撃ってくるモンスターも居ないし、最悪一人一体相手にしつつ援護をもらう形で良いですか」


 新浜パーティーから念のため全体を見ていて欲しいとお願いが来る。


「解りました。こっちは出来るだけ手早く倒せるよう心掛けますね」

「任せといてー」


 お互いの了解が取れたところで十九層への階段へ向かって真っすぐ歩き通す。左右の木にはそれぞれモンスターが湧いていて順番に倒していくにはちょうど良い感じにポップしてくれている。これは慣らし運転にはちょうどいいな。


 調子を気合の入りようを崩さないまま次に近いバトルゴートへ向かい、三匹だったので俺と芽生さんで一、残りを一つずつ任せるような形で戦い、問題なく終わらせる。少々スパルタになっているかもしれないが、ここでしっかり慣れていってもらおう。


 新浜パーティーには色々なことを教わってきたが、今度がこちらが教える番になってしまった。上下関係とか先輩後輩とか思い浮かぶことは色々あるが、同じダンジョンを潜る仲間として出来る限りのサポートはしたい。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 持ちつ持たれつ仲良く~交友関係はこれに限る
[一言] スライム換算するとものすごい数になるなあ やはりハイエナ美味しい
[気になる点] 至れり尽くせりですなぁ… まぁ安村さんとめーちゃんが良いならそれでいいんだけどさ〜 [一言] 今日も更新ありがとうございます
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