表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

512/1248

512:ダンジョンピクニック 5/11

 十九層に下りた。ここからは俺と芽生さんにとっては若干のボーナスステージ性を帯びる。スキル一発で倒せる敵が増えて、そいつが中々美味しいからである。


「ダンジョンハイエナはとにかく素早く、噛みつく力が強いらしいのが特徴です。強いらしいってのは、まだ噛みつかせたことが無いからですね。スキルは効きやすいのでスキル威力を十分高められていたら遠距離から一発で倒すことができます」

「それはお二人とも可能ってことでいいんですよね」

「そうですね。近づかれる前にバチッとやってしまって残ったやつを近接戦闘でなんとかする、というのがいつもの流れでやってます」


 階段を下りたすぐのところにモンスターは居なかったので解説する時間も取れた。後はどっちへ進むかの話だな。ドローンを飛ばして周囲の状況を確認する。


「この通り、この階層はオブジェクトが多いです。モンスターもそこそこ。で、どっちへ行くかですが……」

「どっちに行ってもオブジェクト。これは迷いがいがありそうですな」

「どれどれ……なるほど、四方共に目標物有りですか。でも地図と見比べると……一発で正解引いたクチですか」

「です。大岩探していくんだから岩のある方向に行ってみるかってことで岩をたどって行ったら当たりを引いた感じで」

「結構モンスターいますねえ。……あ、これがダンジョンハイエナですか。なんか喧嘩中ですけど」


 ドローンにはバトルゴートを襲っているダンジョンハイエナの姿が映し出されている。さすがに走って駆け寄って弱ったところにトドメだけもらうといういつもの漁夫の利を取れる距離でもないし、その間にもモンスターは居る。これは諦めるしかなさそうだな。


「ちなみに、モンスター同士が争ってモンスターが死んだ場合でもドロップ品は出るんですか? 」

「観察してみた限りだと出ませんね。人類側が止めを刺すというのがドロップの条件になってるみたいで。ただ、ダンジョンハイエナにしろバトルゴートにしろ、戦って勝ったほうが強くなったりというのは今のところなさそうです。飼いならして何十匹と狩り続ければ結果は変わるかもしれませんが、それをのんびり観察するほど暇ではないので」


 ……と、そろそろドローンのバッテリーが切れるな。交換しないと。ドローンを手元に寄せて電池交換。後ちょっとでドローンを使う範囲が終わってしまうが、いつでも使えるようにしておいたほうが良いだろう。スマホも予備バッテリーから充電しながら行く事にする。途中で切れてあたふたしたくないしな。


「で、ここでは西の岩に到着してから岩伝いに南に向かうと階段があるわけですが」

「とりあえずそっちへ行きましょう。うろうろするのは二十一層についてからでもできますし、地図を完成させに来たわけでも無いですし」


 とりあえず西へ向かって歩く。バトルゴートとレッドカウを狩りつつ、しばらくするとお待ちかねのダンジョンハイエナの登場だ。三匹いる。とりあえず見本として雷撃をぶっ放し、まず一匹に黒い粒子に還ってもらう。


 残り二匹を一匹ずつ、近接で俺と芽生さんが仕留める。危なげない動作で倒せたと思う。模範演技にはなったはずだ。


「この通り、スキルでなら一蹴出来るんですが近接となると適確に急所を狙って噛みつきに来るんで気を付けてください」

「思ったより素早いですね。私はともかくとして、二人で一匹にかかっていくぐらいで丁度いいかも」

「そうだなあ。追いつけないとまではいかないけど確実に一発で仕留める自信はないかなあ」


 村田さんはちょっと自信なさげだ。


「やってみるだけやってみて、ダメだったら他の手を探す、で良いんじゃないかな。ヒールポーションの在庫はあるので致命傷さえ喰らわなければやりようはある。まずは戦ってみるというので行ってみよう」


 多村さんがフォローを入れる。


「一応私たちもヒールポーションの在庫はあるんで、もし怪我したら即時手当てするって事で」

「今の自分だと技量不足な気がします。スキルのほうはリーダーと合わせて使って何とかなりそうな感じでしょうか。でもこれをこなせないと二十一層へ自力で挑むのは自殺行為に近いかもしれません」


 ちょこちょこと予備として溜めこんでいるヒールポーションはこの階層を抜けるためには充分な数を用意してある。なので怪我で動けなくて潜り抜けるのは不可能……となる可能性は低い。最悪俺と芽生さんでダンジョンハイエナを抑え込んで他を任せるという形にもできる。


「とりあえずやってみますか。次のハイエナが来るまではさっきまでと同じ感じで行きましょう」


 ハイエナの話題はハイエナが来るまで置いといて、他のモンスターは今までの流れで倒していく。さすがに慣れて来たのか、それぞれのタイミング、それぞれの手数と動きで問題なく処理していく。ダンジョンハイエナが出てくるまでは大丈夫だろうという流れになったところで、ダンジョンハイエナが三匹出て来た。


「さて、どう戦いますか? 」

「とりあえずこっちのパーティーで二匹試してみます。一匹はお願いします」


 五人で二匹、という形で挑んでみるらしい。チャレンジから始めるのは大事だな。


「解りました。私たちで一匹ですね。二匹任せます」


 一匹と言っても俺がスキルで焼いて終わりだ。こちらは気楽なもんである。


 新浜パーティーが二人と三人に分かれる。結衣さんと多村さんペア、村田さん平田さん横田さんトリオだ。田トリオと呼ぼう。


 結衣さんがまず相手の鼻先にエアスラスト……【風魔法】を当てて威力のほどを見てみる。ハイエナの鼻先をかすめて傷をつけるが、ダメージこそあるものの相手の勢いを少しばかり削ぐだけで終わる。多村さんが前に出て噛みついてくる口に剣を噛ませて噛みつきを防止、その間に結衣さんが側面から槍を突き刺して行動不能にする。


 田トリオのほうは平田さんが噛みついてくる顔面を殴り飛ばしてる間に横田さんが【水魔法】でダンジョンハイエナの顔に水球をまとわりつかせる。横田さん、芽生さんより器用に扱っているような気がするな。精密さについては横田さんのほうが上かもしれない。


 突然呼吸が出来なくなって混乱している間に平田さんがもう一発殴り、村田さんがトドメの一撃でダンジョンハイエナを大きく切り裂いて終了。どっちも問題なく倒せたと言えるだろう。


「こんな感じでしばらくは戦ってみようか。この階層だと三匹が最大みたいだし」

「そうですね、四匹出るのは二十層からですから。その場合俺と芽生さんが一匹ずつ相手して、残りをさっきの感じでお願いしますよ」


 そのまま西側に有ったオブジェクトまで危なげなく移動し、ここから南に行く。南にはまた岩が見えている。その岩にたどり着くとその先に階段が見えてくるはずだ。


「このマップの曲率ってどのぐらいなんでしょう? 」

「多分視界内六百メートルぐらいじゃないでしょうか。サバンナマップもそのぐらいだったと思います。ただ、それより早くマップがループするので、実際の地面の球体の大きさとはまた違ってきてると思います」


 移動の合間にふと思いついたのか結衣さんが質問をしてきたので解ってる範囲で答える。


「天井の高さとも関係してくるんですかね? 」

「天井がどこまでも続くと、どこかで合わせ鏡みたいな現象が起こるのでそのつじつま合わせなんじゃないかなあって思ってます。いずれにせよ、ここがループしているかどうか確かめるにはもっと多くのパーティーの協力が必要になるでしょうね」


 マップの全部を埋めることで何かしらのアチーブメントが発生するなら別だが……いや、ちゃんとした地図を提供する事は探索者にとってプラスポイントにはなるか。ただそれを俺がしてしまうのは功績独り占めみたいな感じがするので他のパーティーに任せるんだったな。


 ハイエナを交えてそれぞれ戦い方に慣れながら二十層への階段へ進んでいく。肉が出るたびに騒ぐのは止めないらしい。ここまでに十個以上出ているので、食べる分を確保するのは問題ない。その分取り分は減るが、食べておくのは体験としても自分の成果を確かめるでも大事な事ではあるかもしれないな。


 何より新浜パーティーはみんな食べるのが好きである。お高級な肉がある以上食欲には勝てないだろう。二十一層まで我慢してもらう必要はあるが、その食欲をバネにして頑張ってもらいたいところだ。


 岩を越え、次の階段である大岩が見えて来た。一同次の階層に向けて、残りの距離に居るモンスターに注意を払いながら慎重にかつ手早く戦闘をこなしていく。


 レッドカウにお礼を言い、バトルゴートの毛に阻まれ、ハイエナがモンスターを襲っている時はじっと待ってどちらかが力尽きそうになってから止めを刺しに行く。漁夫の利は美味しく活用していこう。


「消耗したところを狙うとか中々にずるいですね、参考にします」

「労少なくして功多しで行きたいからね。スライムにせよ、グレイウルフにせよ、ダンジョンハイエナにせよ、楽に倒して儲かる方法があるならそれでいいかなって」


 多少ダンジョンハイエナに慣れたところで階段まで到着する。ここでちょっと小休止。二十層にある最後の直線に入る所で休憩だ。


 水分を取り、おやつをつまんでカロリーを取り、体を軽く休ませる。この後は連戦で行くからここでの休憩はちょっと真面目に休むことにする。休憩も探索の内、しっかり休んでから行こう。


「あと一階層で二十一層ですか。今は時間は……午後四時ですか。二十一層まで抜けたらちょっと早めの夕食って感じですかね」


 結衣さんが時間と進捗を確認する。大体そんなもん、と相槌を打っておく。


「夕食はお肉にしたいなー……いいよね? 」

「止めても食べますよね? このノリ。二十一層にちゃんとたどり着けたらいいですよ。それまでは真面目に戦ってくださいね」

「みんなー許可でたよー」


 結衣さんが肉の了解が下りたとメンバーに触れ回る。それぞれやる気が増したらしく両手を挙げて歓迎している。まあ今からそこそこ密度の高い戦闘になるんだからそのぐらいやる気を出してくれるなら問題ないだろう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日の更新有難う御座います m(_ _)m [一言] お肉パワー!\(^o^)/
[一言] ダンジョンハイエナみたいに群れてるモンスターは寄ってくるまでに数を減らせるかどうかで難易度大きく変わりそうですねー 遠距離攻撃のできるスキル大事だなあ
[気になる点] やっぱり安村さんとめーちゃんは、ゆいさんとこのメンバーよりだいぶ強いのね。 自分達だけの力で21層まで行けないっぽいのに(地図があっても)、二人にフォローしてもらって21層まで行くのは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ