508:ダンジョンピクニック 1/11
七人揃って受付に行くと、受付嬢は何かに気が付いたようなそぶりを見せる。
「宿泊で。ちょっと合同で潜ってきます」
「あら、お久しぶりですね。安村さんがついてるので大丈夫だとは思いますがご安全に」
「どうもお久しぶりです。行ってきます」
受付嬢は結衣さんの顔を完全に覚えているらしい。人の顔を覚えるのは仕事でもあるが流石だ。
「Bランクになったんですね。おめでとうございます」
結衣さんにはちらっと探索者証が見えたらしい。一挙一動を観察されてる気分だ。
「おぉ、小西ダンジョンでしかもBランクという事は間違いなくダンジョンの顔ですね。我々は一歩置いていかれましたか」
祝いの言葉を伝えられる。悪い気分ではない。
「まあ、Bランクになってもやることはあまり変わりないですよ」
「それでも国内有数……多分五百本の指ぐらいには入るって事ですな」
羅漢みたいな表現をされても困る。
一層を抜け、エレベーターに行くまではみんな方向を覚えているらしく、俺が先導せずともみんなぞろぞろと歩いていく。ただ、スライムと出会うたびに結衣さんがこちらをうかがうような表情をしているのが気になる所だ。どうやら、スライムを見かけたら潮干狩りをするんじゃないかという考えに汚染されているに違いない。それは改めてもらわないと。
「今日は探索優先なので潮干狩りはしませんよ。考え事も無いですし」
「そうですか……それは残念」
本当に残念がっているあたりガチの気配を感じる。深くは考えない事にしよう。それにもしかしたら帰りに時間が空いてガッツリやるかもしれないからな。明日に期待してもらおう。
エレベーターに着くと、結衣さんと俺が角を掲げて順番に乗り込む。全員乗ったが荷物過剰のアラームが鳴ったりはしない。そもそもそんな機能がついている可能性は無いとは思う。
「そういえば十六層に来るのも久しぶりの気がする。戦闘手順忘れてたらどうしよ」
「言われてみればそうですね。スケルトンの倒し方ちゃんと覚えてます? 」
「肋骨を外して核を割る。もしくは肩口から全力で殴って核ごと潰す。よし、覚えてるな。後は体がちゃんと動くかどうかだけだ」
覚えてる覚えてる。後は流れでなんとかなる。
「そういえば今日の収入って完全に割り勘で良いんですかね」
横田さんが確認を入れる。そういえば分配の事すっかり忘れてたな。う~ん……二パーティーとして等分割するか、それとも人数割りするか。
「そうですね……完全頭割り、七等分でどうでしょう」
「それだと私たちのパーティーの取り分が人数的に多くなってしまいますが良いんですか? 」
「もしも、の場合ですがスキルオーブが出た場合です。どっちかのパーティーが引き取るのか売りに出すのか、売却の場合どうやって配分するか、そのあたりを考えるとダンジョン税周りがかなりややこしくなると思います。なので人数割のほうが解りやすいと思います」
「なるほど、そこまでは考えてませんでした」
「それに、人数の都合上戦闘回数もそちらのほうが多く戦う事になるでしょうし、その点で見ても人数で均等割りするのが適切だと思います。後はなにより、査定カウンターで分割をお願いする時に、ややこしい割り方をお願いせずに済みます」
「スキルオーブが出るかどうかまでは解んないけど、異論ある人は居る? 」
結衣さんが見回しながら全員に確認を取る。
「それでいいですよ。計算が楽なのは大事です」
「賛成、ややこしくなるのはゴメンですわ」
「リーダーに従うよ」
「普段から五等分なんだし七等分になったとしてもそう変わらないと思うし、二十層で狩りが出来るなら収入はそれなりに期待できそうだし、言う事はない」
「文月ちゃんもそれでいい? 」
「いいですよー。それより久しぶりのお泊まりのほうが楽しみです」
全員良いらしい。事前に金の話を終わらせておいて仕事に集中するのはプロとして大事な事だって誰かが言ってたって聞いたって言ってた。人づての人づての人づてだが、おそらく大体あってると思う。いざとなった時に事前合意を棚上げしてドロップしたからこれは俺の物だって言い張って喧嘩になることだってあるだろうが、このメンバーでそんなことはしたくないからな。
「スキルオーブの話が出るって事は、十六層以降でスキルオーブドロップの話はまだ聞いたことはないって事でええんですか? 」
平田さんが当然の疑問を口にする。
「少なくとも十六層以降のドロップは聞いてないですね。以前ご一緒した時から結構時間は経ってますし、人の入れ替わりが激しいダンジョンになってしまいましたから網羅できてるとはとても言えないんですが」
「清州ダンジョンから河岸を変えたパーティー結構おりますからな。前にギルマスがダンジョン税が減りつつあるってぼやいてたのを聞いたと言われた覚えがありますわ」
「でしょうね。エレベーターの情報が流れた当日を思い返しても、あれだけの人がごった返した上に私もかなりの人数十五層に送り込みましたから」
今日についても、一時間遅れてダンジョンに入った分、既に他のパーティーが潜り込んでいると考えるのが自然だ。久しぶりとはいえどの階層で一時間働けばどのくらい収入が得られるか……というのはメモって参考として置いてあるが、あてにはならないだろう。
◇◆◇◆◇◆◇
十五層に着いた。開いたドアからはスケルトンがこんにちは。スケルトンを見るや否や新浜パーティーはそれぞれの得物を持ってスケルトンに襲い掛かり、あっという間に倒してしまう。流石に戦いなれている。こっちはしばらくゆっくりさせてもらおうかな。骨ネクロダッシュですら出番がないかもしれない。
落ち着いて忘れ物を確認すると十五層での探索……と言っても十六層の階段までの短い間だが、それでも確実な収入を得られる相手なので拾い零しの無いように全部ぶちのめしていく事にしよう。
「肩慣らしにもならないな。準備運動代わりにサクサク行きましょうか」
「本番は十七層以降ですからね。清州ダンジョンではあまり御縁の無い場所でもあります」
ポーターとして後方配置の俺と横田さんが会話を交わしながら他のメンバーの後ろをついていく。後ろだからって背後に意識を向けることは忘れない。
「さすがに二十一層まで潜りこむにはインフラが不足していると」
「そんなところです。ここから全部が狩りの時間に当てられると考えれば人数割りでも収入の面では心配が無さそうでいいですね。普段これを二人でやってるんでしょうから、さぞ儲かってる事でしょうね」
「そうですね。エレベーターの使用料金がかすむぐらいには、ってとこですかね」
具体的な金額は後のお楽しみって事にしておいてもらおう。そのほうが多分やりがいがあるだろうからな。
「羨ましい限りです。今日の成果によっては私たちも小西ダンジョンに移籍するのを考えるかもしれません」
「小西ダンジョンに潜るために適当な空き部屋をパーティー拠点として借り上げているのも居るって聞きました。そちらも検討されては」
「なるほど、そういう手段も有りですね。時刻表と少ないバスの本数に翻弄されずに済みますか」
「おーいてーくぞー」
前衛からもっと早く着いてこいという合図が飛んでくる。横田さんと顔を合わせ苦笑いすると、ペースを上げて前へ進む。骨ネクロダッシュも前の五人で終わらせてしまった。後からついていきながら散らばるドロップ品を回収。とりあえずこっちのほうが荷物が多く持てるので魔結晶はこっちで、真珠とポーションが出たら横田さんに、と荷物持ちの区分けを済ませてそのまま十六層階段へ進む。
階段前で一休憩入れてる前衛五人の息は合っているらしい。臨時パーティーでもお互い邪魔しないような動きが出来てるようだ。ついていける芽生さんが凄いのか、それとも合わせてくれている他の四人が凄いのかは解らないが、問題が無い事は何よりだ。疲れを見せている様子はないのでそのまま十六層への階段を下りることにした。
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