499:この廃墟にまともな地図を 3/4
休憩を終えたところで再び二十二層に舞い戻る。今からは最短距離で階段を目指す道を探す。なので広い道に出る回数は格段に減るはずだ。
その分狭い場所での戦闘が続く可能性が高い。索敵スキルには頑張ってもらいたいところだ。まずは階段を下りてすぐ、いつもの単発モンスターを一通り駆除すると、階段の方へ向けてゆっくり進軍していく。車一台通って擦れ違いは無理だろうなぁというぐらい細い道を通り抜けていく。
細かい地図になる可能性が高いため新しい紙を用意した。階段から階段までの間これを記録し、午前中まで使っていた地図とは別にする。最短距離が解ったところで地図をマージして完成品に近づけていく。
細い道ではモンスターもまとまって行動がしづらいのか、モンスター密度は低めだ。ただ目視出来ない所に居るモンスターが多いため、ちょっと進むたびに芽生さんから釣り出しの指示が飛んでくる。
戦闘回数は距離の割りに多い。モンスター数がそれほど多くないのは、救いかそれとも肩の力を抜いていいところかまだ判断は付かない。しかし危なげなく対処できているあたり比較的安全に探索出来ていると言っても良いだろう。
「戦闘は楽ですがこう細かいとちょっと忙しいですね」
「広いマップは広いなりに困りごとがあるが、細かいマップは細かいマップで面倒……と、こっちも行き止まりか。戻って他の道を探そう」
袋小路が結構多い。細かくても碁盤の目状にマップが広がってくれていればいいんだが、そうはなってないらしい。どうやらこのマップのモデルになった町は最初から計画にそって作られた町ではないらしいことが窺える。徐々に拡大していって無秩序に建物が立ち並んでいった、そういうイメージだ。
「ややこしいですね。どこかの裏道歩いてる気分です」
「目印も無いからなぁ。モンスターが居ない場所に出たらドローンでちょっと周りを確認してみるか」
また行き止まりに着く。これでは迷宮マップと大差ないな、テクスチャと建物内がある分迷宮マップより迷宮してるかもしれん。
索敵で周りを監視してもらい、モンスターが居ない事を確認するとドローンで上空から視界確保。ドローンは例の見えない天井のおかげで高さ制限こそあるものの、ある程度の範囲の画面を見せてくれている。
スマホ越しに撮影した映像を基に地図とすり合わせて確認。やっとドローンを使いこなせるようになってきた感覚をつかむ。予想以上に便利だなこいつ。もっといろんなところで使い倒していこう。
ドローンからの画像を基に地図作りはさらに加速する。行き止まりを行き止まりと確認できているのでわざわざどん詰まりまで行かなくなった分の歩く距離が稼げている。この先で広い道へつながる。そこから二回折れたら階段へたどり着くらしい。戦闘回数も少ないので索敵がある以上この細い道をたどる通路は最短の道と言えるのではないか。
広い道へ出て何回か戦闘を終わらせると、さっきの階段の行き止まりまで来た。行き止まりにはまたゴキが三匹。ここは固定リポップらしい。エレベーターホール前のスケルトンと同じなんだろう。
ゴキを難なく処理すると、周りのモンスターが居ない事を確認して再びドローンを飛ばす。さっき通って来た道より更に近い道を探す。
結果、細い道はあったが人一人が通れるギリギリの道らしい。道というより連絡通路に近いな。細すぎて荷物込みで通り抜けるのは少し難しいだろう。
この道は使わないとして「狭すぎて通れない」と記録しておく。無理に通り抜けようとして途中でモンスターに襲われて対応できないでは意味がない。
全体マップの広さから言えばここで半分以上回る事が出来たんじゃないだろか。なら残りも埋めるつもりでもう一度二十一層側の階段まで戻って、さらに回ってない地域を埋めていくとしよう。
さてどこから手を付けるか……階段とは真逆の方向から回るか、それとも今の場所から近いほうを巡るか。時間を無駄にしないという意味では今のところから周辺を巡るほうが楽だな。そっちにしよう。最短距離を切り開いた道から広い道へ出る道を……ドローンで見つけながら地図を描きこんでいく。
モンスターが近づいたら戦闘、近くに居なくなればドローンで周辺探索。道を探すだけならドローンで周囲を確認できれば充分なので役立つ。階段探しをするにはドローンでは細かいところまで見えないが、マップ全体を見渡すだけならドローンでも事足りる。
ドローンの視界から、側道が徐々に書き加えられていく。現地を確かめなくていい分オートマッピングより便利かもしれない。
「あ、近くに湧きなおしましたね。一旦回収したほうが良いかも」
芽生さんから警告が飛ぶ。急いでドローンを戻すと戦闘準備。ちょっと忙しないが隅々まで歩く事を考えたら許容範囲だな。
湧いたのは蜘蛛二匹。サクッと倒して再び索敵してもらってモンスターの近さを確認。安全を確保次第またドローンを飛ばして撮影。撮影した範囲を地図に描き込む。
上空から撮影して……今思えばこれで捜索していけば十七層から十九層も楽に探索出来たんじゃないだろうか。今更だが、もっとちゃんと練習しておけばよかった。普段写真撮ったり動画取ったりするという考えが頭からすっぽりと抜けていた。今後はもっと使って行こう。
半径百メートルずつぐらいだが、確実に地図は出来てきている。この調子でどんどん進んでいこう。ひとまずこの周辺の撮影は終わったから次のほうへ……広い道を歩きつつ道から細い道へ抜けていく場所があれば周辺のモンスターをあらかた倒してドローン発進。上空から細道探索。地図への描きこみ。この手順でどんどん探索を続けていこう。
◇◆◇◆◇◆◇
モンスターに慣れてきたのでドローンを使う余裕が増えた。地図がかなりの速さで埋まっていく。今は二十一層側の階段へ戻ってきたところだ。二十三層への階段へ向かう最短経路は確保できた。二十三層を探索する準備はこれで出来たと言えるだろう。
これからは残りの未踏破地域を埋めるべく、第二次探索のお時間だ。ちょっと時間に余裕をもって、午後四時ぐらいには帰り道に戻れるようにしよう。今が午後二時だから残り二時間精一杯の範囲をドローン探索とモンスター狩りで地図を埋めていく。
どうやら広い道はマップを半周するような形になっているらしい。ということはまだ未踏破の先でも行き止まりになっているのだろうか。それを確かめるためにもまずは進まないとな。
いつもとは反対側に目を向けて徐々に地図を埋めていく。モンスターは当然現れるが、索敵の事前察知のおかげで奇襲される可能性はほぼ無い。しいて言えば前から来ると思ったら上から来る、ぐらいのものだろうか。
「こっち側、埋める理由あるんですかね。階段までの場所が記入されている以上使わないと思うんですが」
芽生さんが下の層へ向かうわけでも無い作業に疑問を呈する。
「金稼ぎで使えそうな場所が有ったらそこを知っておきたいからかな。密度がそこそこ高くてリポップしやすい場所。そういうのが有るととても捗るじゃない」
「狩場探しですか。確かにお金稼ぎだけを考えるとその場所は知っておきたいですね」
「それに地図を提出するにしても、半分攻略して階段と階段の間は解ってますがそれ以外の場所は解りません、とかだとどうも格好がつかない。探索者ランクが高いなら高いなりの成果を要求されるはずだし、埋められる部分は埋めてしまいたい」
「一応色々考えてるんですねえ……っと、三十メートル先、多分蜘蛛三匹」
「あいよ。種類も解るようになってきた? 」
「なんとなく、表示されるアイコンと動きで区別が付くような気がします」
徐々に索敵を使いこなしてきているらしい。どっちもカサカサ動いてるように感じるんだが、そのカサカサ感を見分けつつあるらしい。索敵凄い。
確かに、進んでみると建物の陰に蜘蛛が居る。パチンコ玉で呼び寄せると蜘蛛三匹が姿を現す。三匹とも糸を飛ばしてきたので二匹に同時雷撃で糸の勢いを無くし、手前にポトンと落とす。一匹の糸は回避する。無傷な蜘蛛はそのまま歩みを進めてこちらへ来たので普通に近接攻撃で処理。残りの二匹は芽生さんが順番に殴り倒して終わった。
「しばらくモンスターが多いのでドローンを飛ばすのは待ったほうが良いですね」
どうやら連戦になるらしい、気張っていくか。
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