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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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497/1244

497:この廃墟にまともな地図を 2/4

 広めの道……幅が三十メートルほどあるであろう表通りといった感じだ、その道に出たら方向を確認し、まだ行っていない方向に進む。本来なら通る建物を一つずつ綿密に調べてそこに階段があるかどうかを確かめるのが正しく進む手段だろう。


 ただ、我々はまだこのマップ全体の広さを知らない。マップの広さを理解するためには細かいところを見ていくよりも広く回って目立つ建物にはマーキング、大まかな高さと地下があるかどうかを確認するだけに留めて、小道があるごとにその区域を一ブロックと考えて地図に描き加えながら進む。


 たまにドローンを飛ばして確認し、いわゆる隅っこに当たるかどうか、どこまでの高さならドローンの進行が許容されるか……要するに見えない天井を探してみたり、あの手この手をそれなりに使ってはいる。


 上から見ると、建物の隙間や道にカサカサしているモンスターが目に見えているため苦手な人にはダメだろうな映像が撮れる。これは芽生さんに見せるにはまだダメージがでかいだろう。


「どうですか上からの眺めは」


 思ってるそばからのぞき込もうとする娘が一人。


「見ないほうが良いと思うぞ、人によってはグロい。なので説明もしないでおく」

「止めときます」


 あっさり引き下がった。ドローンの高さからみる映像では、小さくなったゴキや蜘蛛がカサカサと集まっているようにしか見えないだろう。あれだけ嫌悪してたのを克服したのに追い打ちをかける訳にはいかないからな。


 とりあえずこの広めの道はちょっと先で曲がるようだ。ここが一種の行き止まりということか。たどり着いたら建物も調べておこう。


 道すがらには前後左右含めてちらほらとモンスターの影と気配。索敵で飽きない程度に釣りだして、雷撃と近接攻撃で確実に止めを刺しながら前進を阻まない程度の敵にはむやみに攻撃を加えない探索優先行動で進んでいく。


「ここも慣れてきましたね。一発当てて後は流れでいけそうな感じです」

「ドロップを確実にくれるから心がくじけなくて済むのもポイントだ。見た目は相変わらずだが精神的ダメージ分だと思って有り難く拾っていこう」


 広い道が曲がるポイントまで来ると、突きあたりに位置する建物を確認する。二階建て、半地下有り。モンスター反応なし。生活感はあんまりない、ガランとした内装。まるで一家そろって夜逃げした後のようなそんな空気を感じさせる。


 中を覗き終わって表に出ると、さっき倒したはずの場所にもう湧き直していた。どうやらリポップタイミングとうまく被ったらしい。引っ張り寄せるためにパチンコ玉を撃ち出し、一番手前の蜘蛛に当てる。


 なんか当たったか? みたいな感じで蜘蛛が振り向く。おそらく、この瞬間芽生さんの頭の中では黄色から赤色に光が変わったのだろうな。味わってみたいがそれを体感する為だけに六千万円払えるか? と言われると躊躇するな。


 こっちに近寄っては来ているが糸を吐いてこないのでこちらも近寄って頭を切り裂く。ついでに雷撃も加えておくと、蜘蛛はあッさりと黒い粒子に還った……と、その後ろから糸が同時に二本飛んできていた。一本は回避して一本は受ける事にする。盾に糸が絡みつく。迂闊に糸に触ると粘りに負けて両手とも使えなくなる可能性があるので、落ち着いて直刀で糸を切り離す。糸はぷっつりと簡単に切れる。


 その間に片方の蜘蛛を芽生さんが迎撃に向かう。ウォーターカッターで機先を制するとそのままダメ押しのぶん殴りによって黒い粒子に還る。残り一匹。


 もう一度糸を吐いてきたが、その前に俺の雷撃が蜘蛛に直撃。糸は途中で力なく垂れさがっていく。吐いてる途中なら本体にも糸にもダメージは入る。近寄って胴体にブッスリと穴をあけると、蜘蛛は黒い粒子に還り、俺の盾にへばりついていた糸も黒い粒子になって消える。


「なんか湧き速かったですね」

「そういう事もある。ノーダメージで倒せたからヨシだ。ちゃんとドロップもくれるしな」


 三匹分のドロップを回収する。今回は魔結晶だけだった。次は是非ヒールポーションを頼むよ。


 そのまま曲がってまっすぐ進む。すると見えてる範囲で道が途切れている。広い行き止まりか、それともロータリーになるのかは解らないが、とにかくこの先は無いらしい。先が無いという事を知ることが出来たので収穫は充分にある。


 その行き止まりにゴキが三匹たむろっている。何かゴミでも落ちているのか、それともモンスターとしての本能がそうさせているのか。必死に地面をなめるような仕草。おそらく意味も無ければその行動によって何かが変わるというわけでも無いのだろう。だが、その姿だけを見ていると可愛く……はないな。でかいゴキが嘗め回しているだけだ、普通に気持ち悪い。


 一匹に向かってパチンコ玉を射出。一匹ずつ順番にこっちへ向かってくる。地面をなめるのに必死で対応が遅れたんだろう。時間をずらしてこっちへ寄ってきてくれるのは都合がいい。


 最初の一匹目を雷撃でスタンさせると二匹目に向かって直刀を光らせながら立ち向かう。時間差を利用して直刀に帯電させる時間が生まれた。おかげで二匹目は頭から尻までスッパリと両断する事が出来た。


 芽生さんは一匹目に止めを刺しているのでその間に最後に来た三匹目をそのままもう一度スッパリ両断。ゴキは動きは早くキモイがその分動きが単調で解りやすい。素早さが少し上がって単調になったダンジョンハイエナというイメージだ。もっともあっちの方が耐久力はずいぶん低い。


 ゴキはヒールポーションをくれた。ゴキに、いやゴチになります。しかし、ゴキがくれた回復薬にありがたみはあるものの、使ってみて効果があるのだろうか? という疑問は多分ドロップしてる自分たちにしか体感できないのではなかろうか。


 行き止まりに来てしまったので、行き止まりであることを確認して地図の道を閉じる。後は念のために行き止まり部分の建物の構造を確認し……あ、階段あった。


「階段有ったぞー。道のどん詰まりでとても分かりやすい位置で助かるな」

「後は最短ルートを探せば地図としては機能しますね」

「午後からはルート探索に回せそうだな。キリが良いし午前中はここまでにするか。さて……どうやって帰るか。解っている道沿いに戻るか、ショートカットを探しながら行くか」

「時間はありますけど変に迷いたくはないですし、解ってる道を進みましょう。午後からはゆっくりショートカットなり他の道なりを探していけばいいと思います」

「せっかく索敵があるんだし、近くにモンスターが居ない時にドローン飛ばして先を見ながら行くなら迷わない気がするけど、冒険をするなら腹ごしらえをしてからのほうが気合も入るか。そうしよう」


 焦って探索をする必要はないんだ。地図をじっくり作りながら探索するのでも収入は充分得られる。階段を見つけるまでで既にヒールポーションを三本手に入れられている。これだけで、俺が一人で丸一日集中して狩りをするだけの金額は稼げている。それだけでも美味しい。更に午後は今の倍の時間を探索に当てることができる。


 これは一日の稼ぎの更新は確実だな。まだリポップしきっていない戻りの道を行く。ちらほらと見かけるモンスターは居るものの、ここのモンスターは索敵範囲は狭いらしい。おかげで道中もあまり戦わずに戻ってこれている。


「目に入った分を全部戦わなくていいのは有り難いのか勿体ない事をしてるのか、若干悩ましいところではあるが……帰り道だし襲ってこない限りは問題ないとみるべきか。せっかくの戦闘の機会を逃していると悔しがるべきか」

「お楽しみは後でという事にしておけば良いんじゃないですか」

「俺の中のけちんぼがそこに収入が落ちていると教えてくれているような気がするんだ。これはこれで何やらもどかしい」

「せっかくだし堂々と真ん中を歩いて……あれ、多分来ますよ」


 指さす先には蜘蛛が二匹。こちらの行く先をふさぐようにリポップしている。確かにこれは進路上不可避だな。ならこちらから呼び寄せよう。パチンコ玉をてい。蜘蛛にパチン。こっちを向いて戦闘開始。


 こっちからゆっくり近づいてから戦闘開始でも良かったが、近づいたときにさらに近くのモンスターが横からリンクする可能性を考えると出来るだけ自分の周りが安全なうちに仕掛けておきたい。蜘蛛が寄ってくると雷撃、動きを鈍らせておくと、痺れながらも糸を吐きだそうとしているので追加で雷撃。


 二発の雷撃を受けた蜘蛛はそのまま黒い粒子に還る。全力雷撃で二発か。今の余裕なら雷撃だけで終わらせても問題は無いな。


 残り一匹を二人で倒すとドロップを拾って先へ進む。階段のあった場所から二十一層への階段まで残り三分の一といった所。マークアップしてある建物まで帰って来たので、広い道から細路地に入る。ここからは道幅も建物との距離も近いので、索敵範囲に入って来たモンスターは倒していかないとまとめて襲い掛かってくる可能性が上がる。


 一々呼ぶのは手間でもあるが進みやすくはなるので一匹二匹ずつ釣って倒す。やはり広い道のほうが戦いやすくはあるな。


 ここまで戦って見た雑感だが蜘蛛やゴキの足をわざわざ狙う必要はない。足を狙って動けなくなるのと雷撃撃って動きを制限する事を比べると雷撃一発撃つほうが手間が無い。消耗もそれほど考える必要が無いので気楽だ。


 等と考えていたらタイミングと湧いた場所が悪かったらしく、細い道での蜘蛛三匹との戦闘になってしまった。もうすぐ階段だし、力を使い切ってしまうつもりで戦っても問題ないだろう。三匹全てに雷撃を撃ちこんでしまう。


 雷撃を受けた蜘蛛が上から降ってくる。落下地点に合わせて芽生さんが槍を構える。そのままブスッと槍に刺された蜘蛛が黒い粒子に還る。残り二匹は片方は雷撃で、もう片方は近接で仕留めた。ドロップ品には糸もヒールポーションもあった。


 この糸の用途って何だろうな。引張強度は充分あるので玉掛け用のワイヤーの代わりに使われたりするんだろうか。糸を撚り合わせて太さを確保出来たら……どのくらいの強度になるんだろう。パっと思い浮かんだ使い道がワイヤーぐらいしかないが、研究者にとってはもっと有意義な使い方が思い浮かぶだろう。


 中々高い値段で取引されているのも、まだ研究途中である事の証かもしれない。研究結果が出て使い道がはっきりした時、値段が下がるか上がるかハッキリするだろう。すくなくともこの細さで俺が引っ張ってもちぎれないんだから、かなりの張力だ。繊維業界では欲しがる手はたくさんあるだろう。これも先行者利益って奴かもしれない。今のうちに精々稼がせてもらおう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴキ産ヒールポーション、効果に差はないにしても使うの一瞬躊躇しちゃいそう
[一言] > この糸の用途 軌道エレベーター 本日の昼ご飯: エビのパスタサラダ 他
[一言] ピレスロイド入りスプレー撒いたらゴキ専門結界になるんでしょうか。
2023/11/09 08:22 退会済み
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