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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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493:肉じゃがは汁が染み込んだ後がまた美味しい

 帰ることにした。真っ直ぐ帰っても午後六時ぐらいには戻れる計算になる。


「今日はこんなもんでいいだろ」

「そうですね。索敵しっぱなしでさすがに疲れてきたところですし、急かされてるわけでもないですしね。今日のところは引き揚げますか……帰り道解ります? 」

「大体だけどこっち。索敵でモンスターが少ない方向に進めば多少わかりやすいか。最初のほうに倒した単発モンスターは多分湧きなおしてるだろうけど、それぐらいの戦闘は必要だと思うよ」


 来た道は大体覚えている。本当ならマップそのものに看板みたいな目印でも付けたいところだが手段がないからな。建物の外観を基準に見ていく。ここのはずだ、と見極めて最初に入った側道は道を間違えたが、二回目で目的の道に入る事が出来た。


 ちゃんと曲がるべきところの外観の特徴を地図に描いておこう。階段から広い道へ出る場所の細かい所……建物の高さとか、覗き込んだ部屋の構成とか、そんな感じの物を細かく指示しておけば次回も多分解るだろう。


「ここから先、モンスター湧きなおしてます。一匹ずつ指定していくので順番に狩っていきましょう」

「慣れたとはいえ、一匹ずつ倒していくのはそれなりに面倒だな」

「消耗が無い分楽が出来てると考えましょう。ほら進行方向見えてるあれ」


 来た時も一匹ずつなのだから帰る時も一匹ずつ。当たり前と言えば当たり前だが、毎回方向を確認してパチンコ玉で釣って、という作業も慣れたというよりは少し手間だ。一匹ずつ戦うのに飽きた、とも言える。


 指定された方向にパチンコ玉を打ち出してノコノコとつり出されてきた蜘蛛かゴキを一匹ずつ倒しながら階段まで歩く。ここは必ずドロップをくれるので苦労だけして成果なし、とならない所が素晴らしい。十三層から十六層と同じで、倒せば何らかの報酬が貰える。これに慣れると他の階層でドロップ品が出なかったときに残念がってしまう可能性がある。癖がつかないようにしないとな。


 階段にたどり着くとそのまま二十一層へ上がる。乗ってきたマウンテンバイクは置かれたままだ。今日は誰も来ていないか、それとも二十二層の階段を見つけてそこからマウンテンバイクをくすねてエレベーターに戻るような悪戯坊主が居なかったか。どちらにせよスムーズに戻れる事に違いは無い。


 一旦テントに戻るとそこで荷物整理。今日のドロップ品は割とシンプルだ。魔結晶がほとんどと糸。後はボス戦で拾ったアイテムがいくつか。ボス戦で拾ったヒールポーションは仕分けが面倒くさいので予備にしてしまおう。


 糸と赤い魔結晶と黒い魔結晶で一つずつ、というのが仕分け結果だ。丸一日潜った……いや、ゴブリンキング戦もあるし丸一日潜ったわけではないな。でもなかなかの成果だとは思う。ヒールポーションも九本出た。これだけで二百万円を超える。充分な稼ぎと言えるだろう。


「今日の儲けはどんなもんですか」

「上々よ。ゴブリンキングの相手をしなきゃもうちょっと儲けられたかな」


 そのままエレベーターで一層へ上がって、真っ直ぐ出入口へ向かう。悩み事や考え事があるなら少しばかりスライムに会話相手になってもらう所だが、今日のところは悩みは無い。


 出入口を出て受付へ。


「お帰りなさい、お早いお帰りで」

「ある程度キリが良いところで帰ってきましたよ」

「成果のほうはそこそこ……ってところですか? 」

「そんな所です。でもちゃんと儲けてきましたよ」

「それは何よりです」


 査定カウンターでドサッと荷物を渡す。


「これは……ゴブリンキングのですか。二つあるという事は二回戦ってきた……? 」


 しまった、いきなり二個も持ってきたらそういう事になってしまうな。保管庫から気軽に出すんじゃなかった。芽生さんのほうに目線を送ると、顎でうなずく。そういう事にしておこう。


「ちょっと気晴らしがしたくてですね」

「それならまあ納得ですね。さすがBランクってところですか。他に探索者は居なかったんですね? 」

「居たと思います。ボス戦中に扉が開いたことが有ったので。その後の事まではちょっと解らないですね」

「そうですか。ボス待ちしてる中に混ざったりしてたらちょっとどうかという所でしたがそういう訳でも無さそうですね」


 査定が終わるまでしばらく待ち、今日の金額が出る。百五十五万六千二百十二円。うん、悪くない金額だ。ボス狩りをしなければもうちょっと多く行けたかもしれない。だが欲張ってもよくない。これだけの金額を稼げる実力が付いたという事で納得しておこう。


 芽生さんにレシートを渡し、自分の分を振り込みに指定。二人とも振り込みが終わったところで明日は休みにするからと伝える。


「解りました。せっかく角が増えたんですから私も適当に七層まで潜って気軽に帰ってくることもできるって事ですね」

「そうだな。たまには一人で潜って普段の俺のありがたみを味わうのも有りかもしれない。念のため魔結晶を一往復分渡しておこうか」

「一応預かっておきます」


 予備に持っている魔結晶を渡しておく。エレベーター用の魔結晶の予備は一杯あって困る事はないからな。赤魔結晶を三十個ほどくすねている現状、一個や二個は減ってくれても問題はない。むしろそんなに予備を持ってどうするんですかと言われて怒られるぐらいの量にはなっている。しかし、二十一層までは往復六個使うんだから予備としてはこのぐらい必要だろう。


「さて、真っ直ぐ帰るつもりだけど、どうするね」

「私も真っ直ぐ帰ろうかな。お夕飯は何処で食べましょうかね」

「財布と相談……するような実入りではなくなってしまったな」

「そうですねえ。最近物の値段を一つずつ見てあれこれ工夫するという力が無くなってきたように思えます。これはこれで危険な兆候かもしれません」

「収入が増えても金銭感覚だけは元のままでありたい。大事な事だな」


 探索者を始めてからざっくり計算するだけでもダンジョン収入が四千万円ほど増えている。確かに俺もスーパーでモノの値段をあまりじっくり見なくなった。欲しいものは買う、という感覚に変わってしまっている。いかんいかん、もっと物の価値と値段を考えて使って行かないとな。今日の夕飯は残った肉じゃがに家にあるサラダを刻んで、パックライスで手軽に済ませてしまおう。


 駅で芽生さんと別れ、帰路に就く。今日は二十二層の……どのくらいの距離を回れたのだろう? 二十一層を基準にすれば面積でいえば三分の一ほどは回れたはずだ。細かいところが全然埋められていないので、その細かいところに階段があった場合の発見のしにくさは相当なものだろう。


 次回、次々回で一通り抜けて、その次から細かい道を埋めていくような感じになるか。結構かかりそうだな。まあそれだけ稼げるという事だ、気にせずゴキと蜘蛛を屠っていこう。もしかしたらスキルオーブのドロップもあるかもしれない。どんなスキルが落ちるんだろうな。


 家に着き、まず洗濯、風呂の準備、それから夕食だ。今日はいつもよりちょっと早めにお腹が空いている。早速残り物の肉じゃがを温めなおし、パックライスと適当に刻んだ野菜にごまだれをかけてまとめて夕食とする。


 保管庫の中にずっと居ただけあって、あまり味わいも変わっていない。これが冷蔵庫の中にあったりしたなら汁が具材に染み込んで更に味の濃いものになっていただろうが、作った時間まで遡っても一晩と十分ほどしか経っていない事になる。同じ味わいを実質四回楽しめることになった。また肉じゃがは作ろう。定番レシピに入れておいても良いぐらいの実力を秘めている。


 夕食を終えると洗い物とゴミの片づけをして、洗濯物を干してから風呂に入る。今日も良く働いた。明日は働くための休憩として、丸一日スキルについて考える時間を自分にくれてやろう。具体的に何をするかは決めていないので、まずは何を食べるかから考え始めないといけない。


 いっその事今のうちに食べる物だけコンビニで確保して、全ての時間を保管庫スキルを鍛える方向にもっていってもいいのではないだろうか。そんな手抜きをしてもいいが、とりあえず野菜はとらないとな。次のネタにと考えておいた野菜大盛パスタ、それを作って味見しておくのも大事か。


 休日にやることが無い。割と困る事だが、やることを無理やり見つけて疲弊するよりは確実にやる事だけやって、終わったらふて寝する、というのでもいい。せっかくの時間だし何かこう、もっとこう、なんだ、アレな感じで行こう。


 そういえば保管庫についてもっと調べるんだったな。保管庫の中身の出し入れをひたすらやって、スキルを鍛えることができるかどうか試す一日になってもいいな。明日はそうしようか。調べる物も無いし、布団屋へ行くにはまだちょっと間隔が狭すぎる。明日やることは決めた。さあ寝るか。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
十分稼いだし今後の収入も見込めるんだし、そろそろ投資に回すべき。 ダンジョン関係のベンチャーに投資して儲け度外視でサポートを得るべき。 やはり無職扱いなのが問題なんだろうかw
[一言] 二日目肉じゃがはマヨネーズかけて食べます。 最後の欠片になった肉じゃがはザルで汁を抜き、 オムレツの具に使います。 ケチャップも合うのですよ。
[一言] そこそこ設けているなら飯くらい時間を買うと思ってつかいましょうよ そこまでケチケチするならパックライスやめて自分で炊きましょう200g詰めのレンジ容器もありますし
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