490:ゴブリンキング・リターンズ
ひとまずお客さんはおいといてゴブリンキングと正対する。
「芽生さんはこっちが動いたタイミングで後ろに回って。まず一手仕掛ける」
雷を直刀に纏わせ雷切の状態にする。保管庫無しという手抜きはしても……いや、保管庫射出のほうがよほど手抜きのような気がするがまあどっちでもいい。ある程度の出し惜しみは無しって事にしとこう。
ピカピカ光る直刀を振りかぶったままじりじりとゴブリンキングに近づいて行く。ゴブリンキングのほうも他のゴブリンとは違って知能があるのか、ある程度ゆっくり近づいてきた後ピタッと止まる。どうやらこっちの得物を見て、こっちの得物の射程に入らないようにしているようだ。
元々俺の直刀とゴブリンキングの持っている剣では大きさに違いがある。あっちのほうが得物は大きい。多分ある程度近寄ったところで振りぬいてくることだろう。
この直刀で相手の剣を受け止めきれるかどうか。いや、受け止めてどうするんだ? 避けるべきではないのか? それともこの帯電した直刀の切れ味を確かめるためにも一度受けてみるべきか?
色んなパターンを考えながら、相手の動きを待つ。これはしばらくかかりそうだな。待ちに構えて初手を取られるのはあまりいいパターンではない。ここはスキルから始めよう。
雷玉を発生させてゴブリンキングのほうに飛ばす。するとゴブリンキングは雷玉を切る。切れるんだなこれ。そして切った後返す刀でこちらに向けて二歩三歩と素早く駆けよってくる。それを待ってた。
「ガァァァッ! 」
俺の体に向かって水平に突きにかかってくる。ステータスブーストのおかげで若干ゆっくりにみえる。ここまで鍛えた甲斐があったな。突きを弾くのは難しい、ここは左か右に避けて……避けた後そのまま避けた方向に切りかかってくることも考えると体と相手の間に直刀を滑らせて先端が通り抜けた後……弾く。
やはり体格差がある分剣に乗った重みも向こうの方が上。しかし、ステータスブーストでその力をうまく受け流し相手の剣を弾い……た。こちらは剣を握ったままでまだ重心は腰の上にある。そのまま体重を足先に移動させつつ、相手の腹に切り込みを入れる。
「ウグッ! 」
よし、うまくいった。腹を押さえつつゴブリンキングは二歩、後ずさる。が、その後ろから芽生さんが背中に切り込みを入れる。こっちが一つ切り結んでいる間に全力で後ろに回ってくれたらしい。
思わず後ろを振り向くゴブリンキングだが、前に居る俺にも気を向けなければならない。立ち位置的に左右にそれぞれ俺と芽生さんを置くようにし、思わずゴブリンキングは後ずさる。傷口からは徐々に黒い粒子が溢れている。共に一撃ずつだけ加えた段階だが、ダメージは入ってるようだ。
芽生さんと目が合う。お互い頷いてタイミング同時にゴブリンキングに切りかかる。ゴブリンキングはこちらの攻撃のほうが厄介と見たか、俺のほうに向き片手で剣を操る。左手で芽生さんの槍を掴み、押し出して同時に攻撃している事に対して時間差をつけて対応するつもりらしい。
腕力に負けて押し戻される芽生さん。その間に俺のほうへ全力集中するようだ。こっちの直刀をゴブリンキングが剣で受ける。ガチンという音と共に剣と剣がぶつかり合い、力が爆ぜる。
段々押し負けて来た。純粋な腕力で勝とうとするのは無理らしい。ならばと、一瞬力を抜いてその後別方向へ力を逸らす。その間に体勢を立て直した芽生さんが後ろから再び突きにかかった模様。ゴブリンキングの動きが鈍くなる。その瞬間に刀を返して一刀、腕に攻撃を加えて切り傷をつけていったん離れる。
「水! 濡らしてビリビリ! 」
「了解! ついでに呼吸も止まれ! 」
芽生さんがゴブリンキングの頭部を覆うように水魔法を発動させる。ダメージを受けたところに呼吸を止められ、ゴブリンキングは顔にまとわりついた水分を無理やり剥がそうとしている。その隙があれば十分だ。全力で雷撃を撃ちこむとゴブリンキングの頭部を中心に全身を雷撃が駆け巡る。
「ゴハァッ……ハァッ……」
呼吸を乱しその場に片膝を着くゴブリンキング。顔にまとわりついた水は雷撃の熱量で蒸発していったが肩で息をしている。力を振り絞り立ち上がったようだが、最初持っていた力強さのようなものは感じられない。
かなりダメージを与えられたか。直刀に帯電させたままもう一刀殴りにかかる。ゴブリンキングは自分の剣で受け止める。しかし、こちらに気を回したという事は芽生さんはフリーなわけで……
後ろからプスプスと連続で突きを繰り出し、次々にゴブリンキングに穴をあけていく。背中から黒い粒子が漏れる量がだんだん増えていく。こちらは力づくで相手の姿勢を変えないように牽制し続ける。
「ガァッ!」
我慢できなくなったのか、おそらく全力であろう力で思い切り剣を振り回し、俺を弾き飛ばそうとする。全体重が乗っているであろう一撃を直刀で受け切り、その場にゴブリンキングを足止めする。いわゆるつばぜり合いの状態だ。そうなると背中はがら空きになる。そのがら空きになった背中を芽生さんが槍先で切り傷をつけていく。傷が付けばつくほどゴブリンキングから黒い粒子が出始め、傷口も塞がらず満身創痍といった感じだ。
やがて芽生さんが全体重をかけてか、全力でゴブリンキングの体を突き切る。後ろから前まで貫かれ、ゴブリンキングは口から黒い粒子を吐く。このぐらいでトドメか。
もはや戦闘態勢すら維持できないゴブリンキングに近寄り、首を刎ね落とす。ゴブリンキングの首から大量の黒い粒子が噴出し、やがて全身が黒い粒子となって空気中に漂う。刎ね落とした首も同様に黒い粒子に還っていった。
ゴブリンキングの体のすべてが黒い粒子に還って行った後、ドロップ品が落ちる。魔結晶と、角だ。これでボス再戦は無事に完了した。後は散らばるドロップを拾って、それで終わり。
さっきのお客さんが見ているかもしれないので一つ一つ丁寧にドロップ品の回収に入る。それなりに散らばったが、初回ほどではない。ゴブリンシャーマンのドロップも無事回収できたし、ゴブリンたちのドロップはある程度まとまった箇所にドロップしていたため、拾うのにそう時間はかからなかった。
「レアドロップは無しか。出るまで頑張ってみるのも手だが……まあ必要になった時、だな」
「そうですねえ。とりあえず出ますか。ちょっとでもボスリポップを早くしないといけませんし」
「とりあえずこれ、戦利品」
ゴブリンキングの角を渡す。芽生さんは片手でゴブリンキングの角を頭の上に掲げる。
「芽生はゴブリンキングの角を手に入れた! 」
「わーおめでとー」
ぱちぱちと気持ちの籠ってない拍手をしておく。ちゃんとトロフィーとして実用品が手元にあるのはやはりうれしいらしい。これで芽生さんも俺の都合が悪い時でも二十一層まではエレベーターで行けるようになったわけだ。
「ちなみにその角、使う予定は? 」
「今のところ無いですね。でも記念品として飾っておきます。それなりに価値のあるものですし、モンスタードロップで今のところ自慢できる物ってこれぐらいですし」
俺が二本とも持っててもあまり意味はないしな。さて、もう拾い忘れは……無さそうだな。とっとと帰って二十二層の続きをやろう。箸休めではないが、気晴らしには良い戦いだった。また気が向いたらやろう。さすがに小西産ゴブリンキングの角だからって転売するつもりはないが、予備が一本出来たと思えばいい。
あれぐらいの戦いだったらもう一回と言われても難しくないし、一人で戦えと言われても多分やりようはある。保管庫が無くても勝てることは解ったので、誰も見てない間に保管庫フル使用で戦ってしまってもいい。
この先再確保手段がいくらでもできたという事が確認できただけでも戦っただけの価値はあったと言えるだろう。さあ、二十二層に戻ろうか。
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