表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

488/1219

488:二十二層での戦い方

 side:文月芽生


 大分慣れて来た気がする。もう怖くないと言えば嘘になるけど、最初に感じた嫌悪感は無くなってきている。これが慣れってことですかねえ。この大きさで驚くことが無いなら家に出るようなゴキなら戦えそうな気がしてきた。


 これで足を引っ張るって気持ちは少し薄れた。それほど強く無理をさせずに徐々に慣らさせてくれた洋一さんには重ねて感謝しないといけませんね。何かお礼をする方法を考えておかないと。


 索敵できるようになったから、と言ってそれだけで貢献できているとは思ってない。むしろ【索敵】があったからかろうじて戦力として見ていてくれているのかもしれないし……いや、そもそも【索敵】があるからこそこうやって一匹ずつ倒すことが出来ているという事になる。


 私も中々いい選択をしましたねえ。センスが感じられます。これからもこのスキルは有用なスキルとして使い続けて行かなくちゃ。とりあえず次はモンスターの種類や強さを表示できるようになるまで頑張りますか。もうちょっともうちょっと……


 ◇◆◇◆◇◆◇



 その後も蜘蛛、ゴキ、ゴキ、蜘蛛とある程度順番に倒していった。ゴキと戦うのも慣れてきたようなので、完全に一匹任せる形で芽生さんのほうに送る。芽生さんは挙動不審になりながらも水魔法を弱点になりそうなところに打ち込みつつ、ちゃんと倒せる形まで持ってくることが出来ていた。


 水魔法でもゴキの頭部は硬いらしく、頭からスッパリ行く事は出来ないようだが、水魔法が入れる切込みと与える衝撃で動きを鈍らせつつ槍で止めを刺しにいく。


「その調子その調子。ちゃんとできてるぞ」

「もうちょっと……できれば同時に二匹対応できるようになりたい」


 やる気は充分みたいだ。しかし、やる気になってくれている間に周辺のモンスターを狩り尽くしてしまったみたいだ。周辺で一匹ずつ釣れるモンスターが枯渇し、二匹か三匹の集団しか残っていないようだと報告を受ける。


「慣れてきたようだし、意図的に二匹ずつ戦ってみるか」

「ゴキと一対一で……という訳ですか。努力してみます。少し時間がかかるかもしれませんが」

「前向きで結構。さあ次はどっちだ」


 索敵で二匹セットを探しながらついでに地図も作り始める。索敵の都合上少し歩くことになるから帰り道の階段が解らないという事にはならないようにしなければ。


 下り階段はともかくとしても、上り階段も建物にへばりついているという形だ。建物が上につながっていないのに階段を上ると上の階層につながっている謎空間となっている。エレベーターもそうだが、空間的にねじれているとしか言いようがない。


 しかし、どこにもつながっていないが特定の階層につながっているエレベーターを要求した俺が謎を深めている気がしないでもないが。……よし、気にしないでおこう。ダンジョン二十四の不思議に加えられている事項でもあるし「まあダンジョンだし」で済ませる事にしておこう。


 ゆっくり進みながら地図を片手に探索。索敵に引っかかったらパチンコ玉を弾いて呼び出す。上手く音が反響するとこちらに向けてコソコソと出て来てはこちらを見かけ、そのタイミングで索敵レーダーの表示も黄色から赤に変わるそうだ。


「次、路上二十メートル先。蜘蛛二匹……見えてますね。近くにもう一グループ居るので近づかずに釣り出しましょう」

「了解。直接当ててみるか」


 パチンコ玉を射出して直接蜘蛛に当てる。なんか当たったか? ぐらいの気持ちだろうか。蜘蛛がこっちを向いて目が合う。どの目が合ったかまでは解らない。なんせ相手の目は複数ある。ただどれかの目と合ったという事だけは認識できた。


 蜘蛛がこちらへ向かって進撃してくる。隣の蜘蛛も同様にこちらへ来る。どうやら二匹だけで済んだみたいだ。相手が攻撃モーションに入る直前に雷撃を入れることで怪我せずに蜘蛛と戦える。予定通り、蜘蛛が痺れて動けなくなっている間に頭を潰して終わり。


 一方的に戦える場面を用意してやってそのままこちらの攻撃だけで仕留められるのがより良い戦いになる。このマップではスキルを一当てして動けなくなってから戦うのがもっと楽ができると感じている。そこまで密度が高いわけでも無さそうなので、毎回スキルを使いながらでも問題なく戦えるだけの持久力は得たと思う。


 芽生さんの方はウォーターカッターでスパッと切れる蜘蛛はウォーターカッターで一発で始末し、ゴキの場合はウォーターカッターを一当てしてから嫌がりつつも殴りにかかっていく。外装がそれなりに硬いゴキは槍で殴るだけではダメージ量が足りないらしい。槍で突き抜いて倒すのが基本手順のようだ。


「倒す手順は確立した感じ? 」

「形には何とか。でもゴキには慣れましたよ」

「じゃあ今日の分の目的は達したな。後はボーナスステージだ。精々稼いで帰ろう」

「その前にお昼にしません? さすがにお腹が空いてきました」


 時計を見ると午後一時。確かに飯にはいい時間というか少し過ぎてしまったな。


「気が付かなかったな。それだけ集中していたという事か。結構な数も倒せたし休憩にしよう」

「肉じゃが楽しみですねえ」


 階段からあまり離れて戦っていなかったので、戦闘という戦闘も無く階段までたどり着いた。索敵のおかげでもある。モンスター側の索敵能力に引っかかれば芽生さんからアクションがある。無かったという事はモンスターが湧いていなかったか、それとも索敵範囲を通らなかったか。


 何にせよ出会わなかった結果楽に二十一層に戻る事が出来た。マウンテンバイクでエレベーターのある建物へ。階段をあがって上階にあるテントまで戻ってくる。テントまで戻る必要があったかと言えば無かったのだが、やはり休憩という気分を出すためには自分のテントまで戻ってきたほうが精神的にも休めるのでいい。


 テントに戻ると保管庫から肉じゃがとパックライスを出す。実時間では六時間ほど経っているが、保管庫内では四分弱しか経っていない。温かいというよりまだアツアツというほうが実感に近い。


 こういう時こそ温かい食事は大事、軍隊でも良く言われる言葉だ。温めなおすではなく温めたまま持ってこれるというという所がポイントだ、ピザ屋のバイトでもすれば温かいまま配達してくれるとして重宝してくれるかな。


 さあ、さっきまでの気分は何処かにやってしまって今は食事の時間だ。味しみ肉じゃがを存分に楽しもう。


「おーいい味。これはご飯が進みますねえ」


 どうやらお気に召したようだ、何より何より。多めに作ったから全部食べつくされる心配もないし、そこまでは食べるにはご飯が足りないだろう。ご飯のお代わりを要求された時は……まあそれでも三人分近くあるんだ。食べ過ぎて動けなくなるような事はしないだろう。


「うめ、うめ、うめ」


 芽生さんはガツガツと肉じゃがを味わっている。


「おかわりもいいぞ」

「ご飯おかわ……いや、止めときます。動けなくなるかもしれません」


 流石に食べ過ぎを危惧したのか、ご飯のお代わりはしない模様だ。俺もご飯は一杯だけにしておこう。残った肉じゃがは帰って俺の夕食にするのだ。


「お食事の途中ですが一つ意見具申したいことがありまして」


 芽生さんが妙に形式ばった質問をする。


「急に改まってなんだ? いつもの調子で良いのに」

「ゴブリンキング、そろそろ正面からぶちのめしてみませんか? 」

「そういえばそんなタスクも残っていたな、すっかり忘れていた」

「私も鬼殺しの記念品みたいなのが欲しくなってきまして。角一本あればちょうどいいかなと」

「良いんじゃないかな、いずれ再戦はするつもりだったんだ。いつ行く? 今? 」


 何時でも良いと先延ばしにしていた話題だ、今度行けたら行く……となるとまたしばらく行かない可能性が出てくる。決めるなら早く決めてしまおう。


「そうですね……もしかしたらボス戦順番待ちしてる可能性もありますし、まず顔を見せに行って居るかどうか確認、居たら討伐するって事でどうでしょう」

「じゃあそれでいこう。今日の午後の予定は鬼狩りでということで」


 方針は決まった。時間が余ったらまた戻ってこれるしちょっとぐらいの寄り道は織り込み済みという事にしておこう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
毒ガス訓練を開始する!!
[一言] ゴブリンキング 「ゴキブリキング」に見えた。
[一言] 一瞬・・ゴキブリキングなんて恐ろしいもん倒しに行くんか~と思ったらゴブリンキングでした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ