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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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487:ゴキはゴキ、ソレはソレ

 今日も気持ちのいい朝を迎える。やはり寝ている間は冷房を切らずにつけっぱなしにしておくのは大事だ。電気代を気にすることなかれ、その分以上に稼いでいるぞ。ありがとう冷房、そしてありがとうダーククロウ。


 朝食を作る際に一晩寝かせておいた肉じゃがを温める。冷めていく間に汁を吸って味わいを増した肉じゃがを横目にいつもの朝食を作り、肉じゃがが温まったところで他の朝食を完成させる。


 いつもの朝食に肉じゃがを添えて食べる。半人分ほども無いが、味見をしてみる。うん、じゃがにも野菜にもしっかりと味が染み込んでいて、これはご飯もパンも進むだろう。昼食として責任をもって良い感じにお出しできるな。


 肉じゃがをタッパー容器に詰め、いつも通りパックライスを温め、お弁当を作り終えると意気揚々……いや、どっちかというとルンルン気分でダンジョンに出かける。おっと、忘れる所だった。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 インナースーツ、ヨシ!

 防刃ツナギ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 枕、お泊まりセット、ヨシ!

 ドローン、ヨシ!

 バッテリー類、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 地図の用意、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日も大事なのはお弁当。美味しくてまだ温かい肉じゃがが昼頃まで俺を待っている。時間になったらムシャムシャしてやるのだ。後は、芽生さんがゴキに慣れるまでにどれだけ時間がかかるかにかかっている。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 今日もバスで芽生さんと合流。今日の予定をあらかじめ話し、覚悟を決めさせておく。


「今日はゴキと蜘蛛が相手だ。まず先日の戦い方から始めて、可能なら二匹三匹と同時に相手していって、階層全体に慣れよう。索敵は任せた」

「索敵は任されました。ゴキが出たら任せた」

「芽生さんも戦うんだよ」


 芽生さんの頭をグリグリと回す。


「たーたーかーいーたーくーなーいー」


 頭を回されながらまだ芽生さんは抵抗している。だが本気で嫌がっているという感じではない。ヌルいテンションを保ちつつ、緊張せずに戦いに向かおうという感じだろう。


「まあ、やる気が無いわけじゃない事は伝わった。後は本番で頑張る事だな」

「あーい、それまではだらっとしてますー」


 と、バスの背もたれに全力を傾けて脱力する。


「あ、そういえば、相沢君達二十一層までたどり着いてたぞ」


 するとガバっと身を起こして話に興味を持ち始めた。


「ほうほう。初二十一層仲間ですか。ちゃんとエレベーターの位置教えてあげました? 」

「もちろん。なんか前に会った時より毒気が無かった気がする。何かあったのかな」

「一応二十一層パイセンに気を使ったってとこじゃないですかねえ」


 普段からあの位落ち着いているといいんだが。いや、跳ね返りっ気が強いのもパーティーの性格としてはありなんだからいつも通りで良いんじゃないだろうか。迷惑が掛かってるわけじゃないし問題ないな。彼らは彼らなりの探索をしていくのだろうし、そこに口を出すのは内政干渉だろう。


「どうかしたんですか? 」

「いや、なんでもない。とりあえず二十一層の地図は昨日仮提出しておいた。十七層から二十層は提出してない。その辺は他のパーティーに任せて是非ギルド貢献度を上げてもらおうと思う」

「なんかそんなパラメーターでも設定されてるんですか? 」

「どうもBランクになるためにはそのパラメーターが大事らしいぞ。ギルドからの依頼をこなすとか、最深層で探索するとか、色々上げる手段があるらしい」

「なんかゲームみたいな話ですね。ダンジョンもゲームみたいなもんだと言われればそれはそうなんですが」


 Cランク試験を受けるためにもある程度必要だったと思うのだが、もう忘れているんだろうか。とりあえずそのゲーム的パラメータを先に進めるために今日も頑張るとするか。


「ちなみに今日のお昼は味しみ野菜多めの肉じゃがだぞ」

「楽しみにしておきます。ちなみに肉は何を? 」

「ボア肉にしてみた。そっちのほうが美味しく出来そうだったから。味のほうは期待しておいてくれ」


 小西ダンジョンに着く。いつも通り日帰りで手続きを済ませると、一層で歩くのは時間の無駄だと言わんばかりに芽生さんは軽いランニングで通過しようとする。スライムとの対話は昨日済ませた。今は話し合う事はないだろうという事で俺もそれに従う。結果多少時間を短縮してエレベーターに着き、二十一層へ直行する。


 二十一層に到着するまでの十五分で探索の手順を確認する。


「最初は昨日と同じで一匹ずつ釣れるものは釣って、ゴキだったら芽生さんに頑張ってもらう。蜘蛛は俺がやる。ゴキをきっちり倒せるようになって欲しい」

「今度は……今度は何とかモノにしてみます」

「期待しておく。が、気負うと失敗するだろうからな。今大事なのは肩の力を抜いておく事だ。回数をこなせばその内強張らなくても良いようになる」


 いつも通りにやっていけばいいとなだめつつ、手順を確認していく。ゴキが出たら雷撃で痺れさせて置いておくので止めを刺してもらおう。蜘蛛が出たら交互に倒していく。


 二十一層に着いた。ここからマウンテンバイクで十分ほど走ったところに二十二層への階段がある。建物に階段が張り付いているところなので地下への階段と見分けがしづらい。本格的に二十二層の探索が行われるような時期になったら、ここに立て看板を設置するような事になるだろう。


 芽生さんを先に行かせる形で階段を下りる。まだおっかなびっくりだが、ちゃんと自分で降りて行けるのは偉いぞ。二十二層に下りて、早速索敵を開始したようだ。あちこち見回ると、一番近くに居そうな場所を指さす。


「あっちです、距離は十五メートルぐらい」

「あいよ、射出っと」


 パチンコ玉を近くに放り込んでモンスターを釣りだす。もしうまく反射して当たったとしても、ダメージにはならないだろう。だが一匹だけうまくつり出すという事に成功すればそれでいい。


 早速蜘蛛が一匹釣れた。とりあえず今日の一匹目だ、手を出したという事で俺が対応する。蜘蛛は射程十メートルぐらいあるらしい、そこまで近づくと糸を吐き出してくる。上手く躱し、蜘蛛が次の動作に入る前に近づいて頭に一発、そこから背中まで斬り広げる。


 蜘蛛はもう慣れたな。全身が弱点と言ってもいい。蓄積ダメージだけで倒せる蜘蛛は糸に武器を取られる事が無い限りは問題ないし、もし武器を取られた場合は武器に雷を帯電させて無理やり切る、という方法もある。出来るだけ使わないようにしておきたい手だが、手段は数多くあったほうが良い。


「次は? 」

「次はあの建物の中です。下層に一匹、上のほうに一匹」

「下のほうを釣ってみる。同時に来たらよろしく」

「ゴキじゃない事を願います」


 一階部分に向けて釣り餌を撒く。上手く一匹だけ連れてくれればいいんだが……


「あ、両方来ました。二匹になりましたよ」


 どうやら一匹だけ釣りだすのは失敗したらしい。どっちかがゴキだと解りやすいんだがさて……と、早速一階にいたほうが飛び出してきたらしい。ゴキだった。


 ある程度近寄ってきたところで雷撃一発、痺れさせる。


「トドメ任せた」

「あ、はい……」


 突然元気がなくなった。やる気の無さが露骨に態度に出てるが、とりあえずトドメを任せるうちにもう一匹のほうに集中しよう。もう一匹は……もう一匹もゴキだった。引き付けて雷撃してトドメ。この戦い方が一番無駄が無くていい。蜘蛛と違って糸を出してこないぶんだけ時間もかからない。


 芽生さんは……ちゃんと倒してるな、よしよし。ううう……といった表情でしきりに何かを我慢しているようにも見えるが、ちゃんと倒せてるだけ成長の兆しは見えていると言ってよいだろう。


「その調子その調子、さあ次」

「次は……進行方向九時、距離二十メートル高さほぼ同じ、一匹」

「あいよ……この辺かな」


 索敵も段々正確性が増してきたような気がする。索敵を鍛えるにもちょうど良い感じだな。一匹釣ると蜘蛛。ゴキと違い蜘蛛のほうが糸をくれる可能性があるだけちょっとだけ美味しい。ちゃんと丁寧に味わう事にする。蜘蛛の攻撃パターンも今のところではあるが学習できた。妙なパターンを引かない限り大丈夫だろう。後は芽生さん次第だな。

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― 新着の感想 ―
家ではゴキを黒い悪魔って呼んでますが、一度見たら夢に出てくるくらい嫌いです。 ちょっと黒い影がすぐにそれに見えるのでお金のためとはいえ、それを自ら狩りに行くのはストレスフルなんですわ。 読むのも無理な…
[良い点] 毎日の更新有り難う御座います m(_ _)m [気になる点] 「期待しておく。が、気負うと失敗するだろうからな。今大事なのは肩の力を抜いておく事だ。回数をこなせばその内強張らなくても良いよ…
[良い点] つい先日G先輩と激しい死闘を繰り広げたばかりだから、芽生ちゃんが嫌々戦う気持ちは少し理解出来るわぁ(笑)
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