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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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485:野菜を摂ろう

 鼻歌交じりに九層を回る。もう一歩森に近づいて濃密な時間を送る手もあったが、濃密すぎて歩みが遅くなり帰りの時間に間に合わなくなる可能性がある。今日は中級コースを二周するほうが確実に家に帰る余裕ができる。


 歩き慣れた道とモンスターを前にして、早くも意識は彼方へと飛んでいく。昼食のサンドイッチは定番だが美味しく出来ていた。今後どういう飯を持ち込んでいくか。ローテーションでもいい、毎日同じ飯でも問題は無い。何なら朝昼夜全部カレーでもいい。カレーならすべてが解決する。


 だが、俺一人で毎回食べるという訳ではないので、そっちの機嫌を取る意味でもレシピの数を増やすのは大事だ。ローテーションが組める程度には増やしていきたい。


 ジャイアントアントがキュアポーションをくれた。これでへそくりが一本増えた。この調子で順調にもう一つ頼むよ。十個くれてもいい。


 さて、今のうちに明日の昼ご飯をなににするか考えながら戦おう。何が良いかな……今日と同じものを作るのも面白みがないから揚げものはパスだ。生姜焼きは最近割と食い飽きて来た。そもそも肉をメインにするということから頭を離そう。ドロップされたワイルドボアの肉を見ながら考える。


 野菜……そう、最近野菜を摂れてない気がする。サンドイッチにした分の野菜はあるが、必要量からすれば大した量じゃない。もっと根本的に緑黄色野菜を摂らなければダンジョン内で脚気になってしまうかもしれない。そうならないための食事、そのための野菜、そのためのレシピ。


 何が良いだろう? 野菜炒めは定番すぎる。悪いとは思わないが今ひとつピンとこない。もやしとキャベツとピーマンの炒め物……それに肉を加えたらほぼ回鍋肉になってしまうな。結局肉にたどり着いてしまうか。


 回鍋肉も悪くはないな……一戦闘終わった区切りでメモ帳にメモっておく。こういうレシピをいくつか貯めていって心の中でランキングをつけていこう。さすがに現地で作る料理としては向いていないが、作り置きして持ってくるには悪くない。


 後は煮物もいいな。おでんでもいいし魚の煮つけでもいいな。大根と人参と椎茸と……うん、それもメモに……ああ、ジャイアントアントが鬱陶しい。まとめて雷撃で吹き飛ばしてからメモをする。


 少々手間をかけて筑前煮にするのもいいな。彩りも良いし野菜がしっかりとれる。これもメモしておこう。しかし、煮つけを作るなら前日から準備しておく必要があるな。朝起きて出かけるまでに料理……というわけにもいかない。


 鶏肉の代わりにボア肉を入れたらどうなるだろう? ちょっと脂肪分が多すぎるかもしれないな。でも油まみれの筑前煮も……いや、鶏皮を入れた筑前煮だって似たようなものなんだから案外行けるかもしれないな。メモ帳に更に書き記す。


 肉じゃがもいいな。肉とじゃがさえあれば肉じゃがと言い張れる名前だが、少なくとも人参と玉葱は野菜として入っているし、一晩寝かせれば汁を吸ったじゃがいもが良い感じになっているだろう。


 巻かないロールキャベツという手もある。ミンチを使えば肉を炒める時間は短くて済む。キャベツとトマトを煮込んで塩胡椒で味を調えたら完成する。もっと手が混んでもいい。前日に作っておいて保管庫へ放り込み、朝温めなおせばそれほど冷めることも味が落ちることなく持ってこれるはずだ。


 考えるだけでも色々浮かんでくる。その中には一度作ったレシピももちろんある。より改良を加える形で持ち込んでも良い。後は家に帰ってゆっくりしながら研究するとしよう。


 考え事をしているうちに九層を一周し、二周目に入る。一周してキュアポーションは三本取れた。もう一周すれば二本か三本手に入るだろう。それだけあれば予備としては充分だと言える。


 料理の話題はこのぐらいにして戦闘に集中しようか。でないと一日ボーっとして過ごしたことになってしまいそうだ。


 親指、六、六。任せる相手が居ないので来るモンスターは全部俺に来る。当たり前だがハンドサインを出しても見てくれる人は居ない。だがいつもの調子を掴んでおくために必要な成分でもある。


 ジャイアントアントが噛みつくために我先にと突っ込んでくる。とても短い時間単位で言えば、ジャイアントアントが同時に来ることはない。数秒単位だがずれて襲い掛かってくる。その数秒の間に一匹ずつ倒すことができるなら、実質一対一を複数回行う事になる。


 ステータスブースト中は時間の間隔も通常より長く感じられる。時間差が出来る数秒は体感では十数秒に感じられる。それだけあれば一対一を繰りかえすことも厳しくはない。


 そうして一時間の間、アイテムドロップで一喜一憂しながらひたすらに戦い続ける。よほど集中していたのか、気が付けば一周が終わり八層側の階段へ戻ってきていた。


 このまま七層まで走れば門限には充分間に合う。自転車が無い場合も考えて余裕をもって帰らなければならない。そうと決まれば早速ランニングだ。体力にはまだ余裕があるしそのまま階段まで走り切ってしまう事も出来る。


 八層のワイルドボアとダーククロウを相手にしつつ、三十分ほどで走り切る。階段のところに自転車が有ったので自転車で六層側まで戻り、エレベーターで一層へ。急いだおかげで少し時間がある。久々にスライムを潮干狩りしていくか。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 これから二十二層の探索も始める。芽生さんにはなるべく早く慣れてもらいたいところだが、時間は充分にある。休みなしに毎日通ってゴキ退治をし続けるというのも手としては有りだ。収入は中々に悪くない。一日潜り続ければ二十層を往復するのと大して変わらない収入を得ることができるだろう。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 しかし、廃墟マップの階段の探しにくさはこれまでで一番かもしれない。サバンナや草原では目印が少なくて苦慮したが、こっちは目印が多すぎる。怪しい場所が多すぎるのもいけない。何か法則的なものがあればいいんだが、今のところそういったものは見つけられていない。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 少なくとも後三階層分、同じ地図作り作業が待っている。戦いながらのマッピングという意味ではしづらいが、今回は索敵がある分メリハリをつけて行けると思う。ただ、気になるのは戦う場所の狭さだ。場合によっては建物の中で戦う事にもなるだろう。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 さて、このぐらいでいいかな。今日の夕飯は買い出しの後だ。追加で食べたいものがあれば見つけて食べる。そんな感じでいこう。出入り口に向かって走る。時刻は午後六時半といったところ。結構ギリギリになってしまったが、久々に潮干狩りが出来たので気分は晴れ晴れとしている。


 退ダン手続きをする。ギリギリで走り込んできたのでちょっと不満顔だ。


「久しぶりにギリギリで帰ってきましたね。儲けのほうは大丈夫ですか」

「時間の割には少ないかと。地図作りがメインだったので」

「なるほど、成果のほうは出せそうですか」

「とりあえず、という形にはなりますけどね」


 査定カウンターで査定をしてもらう。十七万七千二百九十五円。一日としては安い。半日としても……そう高くはないな。支払いカウンターで振り込みをお願いするついでに、二十一層の地図を提出する。


「これ、二十一層の地図です」

「はい、少々お待ちくださいね……できればもっと早い時間に持ってきて欲しかったところですが」


 定時ギリギリに仕事を持ってくるなと釘を刺された。申し訳ない、ついスライムが居たからしょうがなかったんだ。ともかく、地図を複製してもらった。ギルドとして問題が無ければ現状の最新地図として販売がされて行くだろう。


 地図を提出するのは十六層以来か。十七層から二十層は自分で頑張ってもらおう。相沢君達だって自力で抜けて来たんだ、そう厳しい話ではないだろうし、地図の更新でギルド貢献度を上げるというシステムを俺だけが独占するわけにはいかない。後から来る人の分も旨味を残しておかないとな。


 二十層の地図はあるけどあえて提出しないでおくことにしよう。さあ今日のお仕事は終わり、頭を切り替えて家に帰ったら買い出しだ。帰り道、保管庫の中の書籍を見ながらレシピをもう一度再考しよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日の更新有り難うございます m(_ _)m [気になる点] 食事が趣味なのは良い(๑•̀ㅂ•́)و✧ 個人的にパックライスは量が少ないと思うマス [一言] 芽生ちゃんは食べ専っぽいしなぁ…
[一言] おじさんは保管庫スキルのドロップ率を期待値に収束させる呪いにかかっているのだ
[一言] 食にこだわるようでいて パックご飯にコンフィに野菜炒めばかりで 手抜き料理感アリアリの主人公 珍しくカツサンドという手間暇かかる一品
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