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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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482:嫌なことはさっさと忘れたいけどどうにもならないこともある

 ひとまず二十層を一往復して帰って来て現在休憩中。稼ぎは……ざっと百万は超えているはずだ。やっぱり二人だと稼ぎの桁が一つ変わるな。


「もう一往復して時間的に良い感じですかね? 」


 水分を取りながら時計を見る。午後三時。確かにもう一往復して帰るのでちょうど良い感じだな。


「そうなるな。一往復して……ざっと百万。もう一往復するから合計二百万ぐらいは稼げるな」

「という事は宿泊で往復し続けたら……休憩込みでも六百万ぐらいは稼げることになりますね」

「ドロップ品持ち出しが大変そうだなあそれ。でも一度試してみるのもいいな」


 二十一層一泊修行ツアーはまだ企画したことが無い。一度やってみて、自分の体力の限界にチャレンジしてみるのもいいだろう。一晩で六百万か……今までにないレベルの収入だな。等分割してダンジョン税を払って二百七十万。週二で通って月二千万ちょい。年間二億四千万。半分税金に持っていかれると仮定しても一億以上手元に残るのか。それだけあればいつ探索者辞めても生活に困る事は無さそうだ。


「潜れば潜るほど人生設計の上方修正が必要になるのは嬉しくも有り悲しくも有り」

「収入が増えて悲しい事があるんですか? 」

「そうだなあ。いつ探索者辞めても良いという考えに行きつくことはできるが、より稼がなくてはいけないという謎の焦燥感に目覚めそうになる。どうしてだろう? 」

「稼いでから考えれば良いんじゃないですか? 今稼いだ後の事を考えても無駄でしょう」

「それもそうだな。とりあえずもう一周しておいくら万円になるか計算して、それからゆっくり考えればいいか」


 予想収入はあくまで予想、戦わない事には収入にならない。体をほぐしてカロリーも少し補給して、休憩は終わりだ。稼ぐ準備は出来た。


「さあ、もう一周行くか。一周目よりも数は少ないと思うが半分以下という事はないだろう。いくら稼げるか楽しみだ」

「まだ元気ですしね。何なら今日は宿泊でも良かったんですが」

「一泊してゴキに対して完全に慣れてくれると言う訳か」

「そ、それはちょっと厳しいかと。日帰りで良かったですね」


 すぐに撤回するあたり、また次回騒がしくなるんだろうなぁという事を考えながらさっさと周回作業に向かう。もう二十層のモンスターにも慣れた。先日ステータスブーストが一段階上がったのも大きいかもしれないが、避けるにも当てるにもかなりの余裕が生まれて来た。


 バトルゴートの戦いづらさは残るが、レッドカウは避けて当てれば二発ぐらいでダウンさせられるようになったし、ダンジョンハイエナは雷撃で終わりだ。そして手数が足りなくなるほど連戦もしないので十層よりも楽に戦闘が出来ているとも言える。


 階層の深さに似合わないかもしれないが、心持ちはのんびりだ。九層の中級コースを回っているような、戦闘との緩急をきっちりつけられている良い感じの探索っぷりだ。


 このまま何事もなく、しかし注意をしながら、そして楽に戦闘をしていこう。少なくとも索敵のおかげで奇襲を受ける可能性はないだろうし、もし複数のグループにリンクしたら芽生さんから注意の合図が送られてくるはずだ。


 ダンジョンハイエナが他のモンスターを襲っている時は別として、モンスター一グループごとに対処するほうが区切りもつけやすいし気持ちもステータスブーストもON/OFFがしやすい。


「索敵あると便利で良いですね。黄色い間は気が抜けます」

「いいもん貰ったな」


 ふと思い立ち、芽生さんにいたずらをしてやろうと殺気を飛ばしてみる。


「後ろから何するつもりですか? バレバレですよ」


 どうやら悪戯でも反応するらしい。


「電車内で使えるようになったら痴漢も捕まえ放題だな」

「今のところ痴漢に遭遇したことが無いので何とも言えませんが、他人が痴漢されてる時でも反応するんでしょうかねえ」


 試しに痴漢してみる訳にもいかないし立証しようがないな。今のところはあくまで自分に対する意識の向けられ方ってことか。


「ちなみにどんないたずらしようとしてたんですか? 」

「【索敵】が反応するかどうか試そうと考えた」

「単純ですけどそれで反応したという事はたいがいのいたずらには対応してくれそうですね」

「寝ている間に何かして警報が鳴るかどうかも今度試してみるか」

「本人がされるのを待ってる場合それに反応するかどうかもそれで区別できますね」


 出来るだけ嫌がりそうな悪戯を考えておくことにしよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 また一周して戻って来た。収入は上々だと思う。お肉も出た。合計二パックをへそくり分に回した。このぐらいなら抜いておいても問題ないだろう。ついでに予備として保持しておく魔結晶も同じ種類で統一しておこう。一個で七階層分でとても分かりやすい。


「さて帰りますか。今日の収入はいかほどですか」

「二往復半分ぐらい。時間の割には少なめだけどまあこんな感じかなーってところ。さすがに息抜きで丸一日潜った時に比べれば少ないな」

「それなり、ということですか」

「二十二層で好き放題狩れるようになったらそっちの方が効率は良くなるだろうな」


 二十一層に戻りマウンテンバイクにまたがる。そのままテントまで一旦戻ると荷物整理を始める。


 二十二層で好き放題出来ると言っても、しばらくは地図作りに時間を割かれそうだ。モンスターの一匹当たりの平均利益をざっと計算してみると、今のところダンジョンハイエナよりも二十二層の連中のほうが換金率は高い。ヒールポーションの落ちる確率が上振れているように感じられるが、おそらく上振れではなく実際出やすいのだろう。


 それに二十二層以降は狩り放題なのだ。他のBランク探索者、もしくはダンジョン攻略部隊が小西ダンジョンに来て探索許可をもぎ取っていくその間に稼げるだけ稼いでしまいたいのは本音だ。


 この廃墟マップは死角も多い。つまり視界外が多く存在するのでモンスターがリポップしやすい地形だ。戦ってる真横の建物内でリポップしても何ら不思議はない。そういう意味でも、索敵スキルの有無はこの先役に立ってくれるだろう。肝心の持ってる本人が役に立つかどうかはこれからの鍛え具合による。


 いつも通り種類ごとにエコバッグに詰め直して、バッグには予備の分の魔結晶だけを放り込んでおく。魔結晶で二つ、毛で一つ、肉とポーションと糸で一つ。量的に重いのは魔結晶だけだし、十七層以降のモンスターしか狩ってないので重さも金額の割りにそこまで重くはない。更に別袋で今までストックとして用意してあった赤くない黒いほうの魔結晶を一袋作った。帰る準備は出来たと言える。


 念のため、バトルゴートとレッドカウから落ちたキュアポーションのランク2を二本へそくりに突っ込んでおく。これでへそくりは四本。ランク1でゴキからの毒攻撃を防ぎきれる保証がない間は持っておいて損はないだろう。


「そろそろ帰るか。荷物整理も終わった」

「とっとと帰って収入にしてしまいましょう」


 エレベーターまで行って帰り道分の燃料を査定にかける袋から入れて動かす。そういえば、エレベーターの燃料費は経費に出来るんだろうか。


「エレベーター代、経費で落ちないかな……」

「使用したという証拠が出せないから難しいんじゃないですかね」


 査定なり販売するなり商品を卸すなりするまで、ダンジョンのドロップ品は金額としてお出しすることができない。だからきっとこのエレベーターの燃料費は経費として落とすことは難しいということか。


「一日往復して三万円。十日で三十万円。百日で三百万円になるから結構大きいんだけどな……」

「そう言われると経費にしたいところではありますね……これは確定申告する時に税理士に相談するべきでは? 」

「つまり、毎日のログを取っておけということか。今後は毎日メモって記録しておく事にしよう」


 とりあえず今日の日付と二十一層往復で三万円……交通費? としてメモを取っておく。今日からの分でも構わないのでちまちまと稼ぐために書いておこう。たかが三万円になりつつある日々の収入だが、されど三万円。今日の往復金額だけでマウンテンバイクがもう一台余分に買えてしまう。


 最終的な手取りを考えたらその半分ぐらいになるだろうが、滅多に使わない訳ではなく頻繁に使用するんだからダンジョンに通った日とその日何層まで潜ったかは記録とギルドで出されるレシートから確認してレシート毎に使ったかどうかも含めて記載しておこう。帰ったらやる仕事が増えたな。


 一層へ着き、今日はそのまま真っ直ぐ出入口へ。受付で退ダン手続きをすると、荷物の量を見て受付嬢がニッコリ笑顔になる。


「今日こそは大漁ですね」

「予定だともう少し多いはずだったんですけど問題が出まして……あたっ」


 後ろから足首を蹴られる。文句の一つも言いたいらしいが自分のせいなので文句を言えないといった具合か。


 そのまま後ろから蹴られつつ査定カウンターへ。仕分けられた物品を順番に渡していく。やがて査定金額がパパっと出た。百二十一万九千五百円。二十二層でまごついた割りに多い収入だったと言える。これは今後もっと稼いで行けるな。納品するドロップ品の種類は少なくなるけど金額は高くなる。


 ちなみに糸は一巻きで二万円だった。毛より高く質量は少ないが、すでに糸になってる分だけ手間賃がかかっているんだろうと思っておこう。


 レシートを芽生さんに渡し、そのまま支払いカウンターで振り込み。今銀行の口座いくらになってるんだろう。ここ最近確認しに行った覚えがないのでそろそろ一区切り記帳しておくことも必要かな。


 次の探索を二日後という事に決め、芽生さんとはバスを降りてそのまま別れた。明日はおひとりさまだ。二十一層の地図を埋めきってしまおうかな。


 さて、夕飯どうするかな……買い出しには行ったばかりだし何か適当にいつものコンビニで見繕うか。駅で芽生さんと別れると自宅近くのコンビニで適当に買い物をして帰った。調べものも無いし買い足すものも思い付かない。ゴミを片付けて風呂に入り、一通りやることを終えたら明日のレシピを考えながら寝るとしよう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >他人が痴漢されてる時でも反応するんでしょうかねえ ダンジョンハイエナが他のモンスターを襲っている時の色で判るのでは?
[良い点] >痴漢されたことない 処女性高めてくるなぁ
[一言] 命懸けで稼いだお金半分税金で取られるなんて。 仕事しない議員、無駄な箱物、 嫌日本と言いながら日本で生活保護金受け取り遊ぶ 隣国人。 泣けてくるよね。 ところで、故郷納税とか有るのかな?。
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