476:二十二層への階段
今日も涼しい朝だ。冷房さんありがとう。そして気持ちいい眠りを提供してくれたダーククロウにも感謝を。
いつものルーティンをこなしたところでゴキゲンな朝食。食べ終えると今日の昼食を考える。コンビニ弁当でも俺は構わないが、芽生さんがどう思うかを考えるとやはり料理は作って持っていったほうが良い。レンチンしたパックライスと……今日は何にしよう?
悩んだ結果、アヒージョを作って持っていくことにした。オリーブオイルとニンニクをたっぷり効かせて、キノコや鶏肉、ジャガイモなど家にある食材を適当に放り込んでいく。鷹の爪も混ぜ込んでピリリとした辛さも忘れない。良く煮えて出来上がったところで耐熱性の高いタッパー容器に詰め込むと、パックライスを二人分レンチンして保管庫へ。アヒージョはそれなりの量を作ったので足りない事はないだろう。それ以外に野菜が摘まめるようにちょっとレタスを生のままで適当に千切って入れておく。
今日は二十一層探索の続きだ。高速化のための機動力も確保した。そのまま二十一層に放置しても構わないが、今回は自転車台を用意していないので出しっぱなしなら路駐になるだろう。今のところその予定は無いが、使っていることがばれた時は路駐、バレなかったらそのまま保管庫、そういう事にしておこう。
そんなわけで今保管庫には普段用に一台、二十一層探索用に二台の自転車が放り込まれている。今日はこいつを使って可能な限り楽しようと思う。楽できなかったときは歩くしかないが、無いよりは活躍してくれるだろうと願う。
念のため昨日描き込んだ地図をコピーして二枚にしておく。それぞれが持って探し回って、後で合流して地図を確認すれば効率が良いからな。ペンも複数保管庫に入れて有るしその辺の準備はいいだろう。さて……
万能熊手二つ、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
インナースーツ、ヨシ!
防刃ツナギ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
枕、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
お泊まりセット、ヨシ!
冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
ドローン、ヨシ!
バッテリー類、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
マウンテンバイク、ヨシ!
地図の用意、ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。弁当とマウンテンバイクと魔結晶と地図があれば今日は充分だが、他も念のために確認しておいた。毎回の確認は形骸化しつつあるが、それでも忘れず確認できているので死ぬまで続けて行こう。
◇◆◇◆◇◆◇
途中のバスで芽生さんと合流。今日の予定を話す。
「今日は狩りじゃなく探索にしようと思う、二十一層の地図を完成させて二十二層への階段を探す旅だ」
「階段の場所の見当は付いてるんですか? 」
「昨日半日潜ってはみたが、少なくとも二十層への階段とエレベーターとの間に階段は無かった。ただ、休憩スペースというか、テントを張りやすいところは結構数あった。この辺は他のパーティーがテントを張りに来ると思う」
一息で説明して一旦呼吸をする。
「で、そのためのマウンテンバイクですか」
「うん、まだ誰も到着してないなら見られる心配は無いというか、今更エレベーターがある事が解ってるんだから別に持ち込んでも不思議はないと言える。少なくとも道は完成させよう。今のところ階段が建物の中にあるのか外にあるのかもまだ解ってない以上、すべての建物を虱潰しに探していくしかないと思う」
「なるほど。歩くだけなら辛いですが自転車があるならあの道なら多少楽が出来ますね」
「モンスターは出ない所だし、安心して転がしていけると思うよ」
バスがダンジョン前に到着する。
「ちなみにお昼は何ですか」
「野菜多めのアヒージョです。欲しければお肉を追加しましょう」
「アヒージョ好きですねえ。作るのが楽だからですか」
「それもある。とりあえずオリーブオイルとニンニクで何でも煮込めばいいというのはお手軽で良い。キノコの類は保管庫に何種類か入れてあるし、お手軽に具を足せるのもポイントが高い」
受付で日帰り申請する前に駐輪場でマウンテンバイクを取り出し、一台ずつ受付まで転がしていく。今日は二人そろっているところを見て受付嬢が安心するも、二人して自転車を持っているところに疑問がやはり出たようだ。
「今日はお二人ですね。今日こそ狩りですか……ってその自転車はどうするんですか? 」
「昨日の続きですよ。運が良ければそのまま先へ進んでモンスター狩りに行けるかもしれませんが。自転車は探索用、先に進む準備用です」
「先に進む準備ですか。納得しました、お気をつけて」
最初は残念そうだったが、先に進む準備だと告げるとパっと明るくなった。なんかダンジョンの先行きを左右しているみたいでちょっと重たい。
そのまま一層をマウンテンバイクで進んでエレベーターに入る、道中でスライムにちょっかいをかけられる可能性はあったが、雷撃したりして道をあけてもらった。不揃いの魔結晶からザラザラと放り込んでいき、二十一層へポチ。
「そういえば、二十二層以降のモンスターは調べたんですか? 」
「一応調べた。デカい蜘蛛とゴキらしい」
「ゴ……冗談ですよね? 」
「冗談なら良かったんだがなぁ」
ゴキは苦手らしい。そういえばどのくらいの大きさかや出現数まではサイトに書いてなかったな。もう少し調べておくべきだったな。手数で覆い尽くせない数だと保管庫の出番も結構あるかもしれない。その場合は保管庫が必要じゃなくなるまでしばらく鍛錬の時間だな。
「やる気が下がってきました。もう生涯二十層を延々歩き回るだけで良くありません? 」
「それもありだろうが、そうは問屋が卸してくれないだろうなぁ。どのくらいでかいかは解らないが、ある一定以上よりでかいと逆に可愛くなるかもしれんぞ」
「あーあー聞きたくないでーす」
「いずれ通る道だ、今のうちに覚悟を決めておいてくれ。それにダンジョンモンスターだからプチッとつぶれたり変な汁が飛び散ったりはしないと思うぞ。噛まれたら毒があるらしいけど、キュアポーションのランク1あれば治るかな」
「蜘蛛のほうはどうせ糸吐いてくるんですよね。グルグル巻きにされていっちょ上がりですか」
「蜘蛛の糸は張力は強いが断ち切るのはそう難しくないらしいと何かで読んだ。吐いてくる糸がモンスターの一部として設定されているなら、本体を倒せばきっと綺麗になるだろう。もし糸がドロップするならバトルゴートの毛とは少し違う分野で活躍しそうだな」
うだうだと次の階層の文句を言っている間にエレベータは二十一層へ到着。下りて外へ出る。どうやらまだ誰も到達してないのは同じらしかった。
「……うん、誰かが居る雰囲気じゃないな。いつもの二十一層だ」
「一昨日でしたっけ? 二十一層に潜れるようになったのは」
「正確には十八層から二十一層までかな。さすがに話題の小西ダンジョンとはいえ、一日二日で階層を一気にまくるパーティーは居なかったらしい」
自分達は十九層二十層をまとめて攻略してきたことは横に置いておく。十七層以降の地図は提出してないから、今頃は潜れるようになったパーティーが一生懸命地図化を進めている事だろう。
そのままマウンテンバイクの試し乗りをするが、どうやら機動力の面では活躍してくれそうだ。
「使えそうだな。早速こいつで地図を埋めて行こう。これ、予備のマップだから自由に描き込んでくれていいよ。建物の高さと地下があるかぐらいを書き込んでいけばいいと思う」
「解りました。慣れない地図作りですが出来る限りのことはしてみます」
「階段見つけたらトランシーバーで連絡頂戴。駆けつけるから」
「じゃ、二手に分かれて探索を開始しますか」
一日で済めばいいなぁ。階段がどこに潜んでいるのか、楽しみでもあり面倒でもある。これも下層へ行くための我慢と考えておくしかないな。
「とりあえずお昼になったら一旦エレベーターのところで集合しよう。そこで地図のすり合わせをしていってない所を絞り込んでいこう」
「じゃここからはお互い分かれて行動するという事で良いんですか」
「そのほうが効率よかろう? 階段見つけるにしても建物の中にあるのか階段として存在するかはまだ確定してないし、道を確認して後は順番に建物を虱潰しにしていくのが確実だと思う」
実際昨日一人で歩いて回った感想で言うと広すぎるし細かすぎる。最初に七層にたどり着いた人たちも同じことを思ったに違いない。
「こういう時パーティー人数が多いと手分け出来て良いんでしょうけど……やっぱり人手は欲しいですね」
「例えば田中君を無理やりボス戦まで連れ込んでエレベーターが使えるようにしてそのまま二十一層までブートキャンプするという方法もあるぞ。田中君もレッドカウの肉が取れて大喜びじゃないかな」
「そのまま田中君も二十二層以降まで連れて行くと? 」
「一応ほら、高ランク探索者権限でちょっと深い階層まで潜らせるって規定があるじゃん。それを使えば二十二層以降にも潜らせることはできるんじゃないかな」
色々手段はとれる。田中君ならゴキ相手でも戦える可能性が高い。二十層でブートキャンプしてから連れていくことが必要になるだろうが、彼なら結構頑張れる気もする。
ここまであまり大きな問題なく進んできた二人パーティーではあるが、ダンジョンの最深部に潜り込んでいくにはそれなりの対応が必要になるんだろうな。今後のダンジョン事情が気になる所だな。
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