473:ダンジョン素材の浸透戦術
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昼ご飯を食べ終え、胃が落ち着いてから行動を始めることにした。インターネット上を覗くと、スレでは早速金額に対して収入が減っただのダーククロウを確実に倒す方法はないかだの色々と議論がなされている。
大体結論は同じところへ行きつくようでスキルじゃないとまともに数が狩れない、という所に落ち着いたようだ。値上がったダーククロウを狩るためのスキルを買うための資金を貯めるためのダンジョン探索……という地獄のループに陥ろうとしている者、スキルオーブのドロップ法則に基づいて過疎ダンジョンへ潜りに行って無事にスキルを手に入れて帰って来た者、くたびれもうけで帰って来た者。
ダーククロウの羽根自体の持ち込み持ち出しが難しい現状だと価格が上昇してもそこまでの儲けにはならないんじゃないか? と冷静に分析する者も居る。むしろワイルドボアの革が値下がりしたことのほうが収入面でのダメージは大きいという見方が多い。七層近辺で活動できる探索者がボリュームゾーンとして存在する以上、そこの一番の儲け頭であるワイルドボアの収入が減る事は大きな問題なのだろう。
未来予測をして需要の多くなりそうなところは値段を上げ、下がりそうなところは下げる。市場原理に基づいた正しい金額ではあるんだろうな。スライムゼリーの値動きが無い事から、大きく需要を上下させる要因は今のところない、という事だろう。
ダンジョン庁もあらかじめ各業界に聞き取り調査をして今後の需要供給について学んでいるはずだ。その結果としてこうなった、なら納得するしかあるまい。
ワイルドボアの革にしても、食肉のように常に消費し続けるものではない。ある一定のところで頭打ちになるはずだ。それが今、という事ではないだろうか。世の中の革を使う業界でそろそろ需要を供給が上回りそうだぞという事なんだろうし、もしかしたら既に溢れているのかもしれん。今後はいろんな業界にアンテナを張って興味を持ったほうが良いのだろうか。
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色々考えた結果、今日の買い出しはショッピングモールまで行く事になった。いろんなものを見ていろんなものを聞き、自分の身の周りにどれだけダンジョン素材が出回っているのか。その調査も兼ねることとする。
出る直前に調べたが、どうやらダンジョン素材を主力製品としている会社も存在しており、そこではバトルゴートの毛で編み上げた布バッグが丈夫でものすげえと評判らしい。地方のテレビ局で朝から晩までやっているショッピング番組でよく見る、ムキムキマッチョメンが二人して引っ張り合いをしても破れないバッグというよくある光景みたいなプロモーションまで行っていた。
革製品や布製品、もしかしたら手芸用の糸にまで手を広げているかもしれない。そういう面を見てもっと自分の仕事について学ぶことが重要な気がする。後ダーククロウの羽根もだ。今のところ俺の周りには枕と布団しかないが、品質の低いものがクッションなどにも使われているという話を前に聞いたので、そういう製品があるなら目で見てみたいところだ。
家を出てショッピングモールに着く。買いだす品物はメモに残してあるので、後でアウトドア関連の店……ここにもあるかもしれないな、ダンジョン素材製品について調べて行こう。
買い物は後回しで良い、まずは商品だ。手近なところで革素材を扱っている店を探しフラフラと入っては、何の革を使っているかを確認。数軒巡ってみたが、各店に一種類あるかどうかというところだった。
革製品専門の店へ行けば、分厚い牛革と比べて薄くて丈夫な……という触れ込みでワイルドボアの革を推す説明などもあった。値段は……そこそこ。珍しさがあるわけでもなく、今はやりのダンジョン素材ですというポップが出ている訳でもなく、当たり前のように商品棚に並んでいる。
流通量がそれだけ多いという事だろうか、それとも他の革と比べても値段がそう変わらないからか。細かいことまでは解らないが、一般的な商品として馴染んではいるらしい。
次に革製品専門店に行ってみたが、加工前の革が普通に売っているし、単純に革を編んだ革ひももある。値段は流通を通っている分それなりの値段だが、牛革に比べて加工しやすくそれなりに丈夫らしい。ふむふむ。表にこれだけあるならバックヤードにはさらに量が用意してあるんだろう。供給が滞っているという事は無いように感じる。この店だけで断定する事は出来ないが、製品ではなく材料として販売するほど市場在庫に余裕があるんだろう。
革の市場調査はこのぐらいにしておくか。ダンジョン素材は物によっては結構馴染んできているという総評で良いだろう。この間の焼肉食べ放題にもウルフ肉はあったしな。化粧品……そういえば以前試しに買った化粧品、全く使ってないな。帰ったら使うか。
気を取り直してアウトドアコーナーへ行こう、必要なものを買いそろえないとな。いつもの店とは違うので同じ商品があるかどうかは解らないが、できるだけ同じもので揃えたいところだ。そのほうが俺が設置しました感が出る。いや、あえて違うものを用意する事で設置したのが他人ですというフリをする事も出来るな。
値段があまり高くなく、それでいて椅子とセットに出来てそこそこの高さがある机。狙いは絞れているので商品までたどり着くのはそう難しくなかった。というか同じメーカーの同じシリーズの製品が有ったのでそれを買う事にした。これも経費では落ちないだろうな。
メモ帳を見返し、後は文房具と小棚というか整理用の棚だな。百円ショップで全部取りそろえると、今日の買い物はこれぐらいか。いったん車に置きに行こう。
車に買った物を積み込むと再び戻り、ブラブラと歩き回る。革製品は見たからそれ以外のダンジョン素材を探してみよう。価格変更があった中で考えると、建材、刃物関係か。
刃物を扱っている店にフラフラと入り中をのぞいてみると、ここにもあったダンジョン関連品。ジャイアントアントの牙を混ぜ込んだ特殊合金でできているニッパーやラジオペンチが置いてある。細々とした製品にもちょっとずつ入り込みつつあるらしい。尤もジャイアントアントの牙は値上がりした事もあって、今後も需要は増え続けるんだろう。
そのシリーズの中で爪切りを購入しておく。爪切りは知らない間に移動して良く見失う事が有るので、家の中には三本ほどあるはずだが、普段見かける所には居ないので多分家の中をお出かけ中なのだろう。これが四本目だ。爪切りと耳かき棒とリップクリームは家に何本あっても問題ない。きっと家に帰ったら新しい子に嫉妬して三本ともすり寄ってくるだろう。
そういえば、万能熊手が一本ダメになってから予備を買ってないな。熊手にもダンジョン素材シリーズがあれば良いんだが、残念ながら万能熊手にまでは波及してないらしい。仕方がないので同じ品を買っておく。お前は予備だ、これからよろしくな。
後買うものは……水だな。ちょっと多めに仕入れておこう。二十一層の机を設置する予定の所に非常用として水も追加で置いておく。食糧はともかく水なら賞味期限も気にすることはないし、そもそもちょくちょくと観察する事になるんだ、四箱ぐらい買いこんでおいて二箱ほど二十一層のエレベーターホールに設置しておこう。
水以外にはいつものシーズニングを更に買い込む。こいつはいくら種類と数が有っても困らない。肉に振りかけて焼くだけで終わりシリーズはもっと色々増えて欲しい。炭焼き風にするために竹炭パウダーを混ぜ込んだ商品なんかもある。ダンジョン内で炭焼きをするには炭の処理が面倒だ。清州ダンジョンの七層でもない限りはちょっと難しいだろう。
トーストと卵とキャベツ、それから出来るだけいろんなお菓子と飲み物をいつも通り買い足していると、ボア肉の販売をしているのを見かけた。一パックぐらいの大きさで二千円。流通と加工と店の儲けの費用に千円もかけているらしい。どういうルートをたどってきているかは解らないが、値上がりした分も含めて今後ボア肉は厳しいかもしれないな。やはり二百円の値上げはデカい。
バラ肉風、すき焼き風、他の肉との合い挽きと、色々と加工はしてある物の、値段のせいか試食販売まではしていないようだったが、棚に並んでいる残りの量を見ているとそこそこ売れているらしい。これでオーク肉まで並ぶようになれば、少なくとも肉関係に関してはバラエティ豊かなラインナップになるだろう。
そうなるには今少し探索者のレベルアップが必要だな。持ち帰る人数と持ち帰る個数、そもそも持ち出しが出きるダンジョンと、エレベーターがあっても取り辛いオーク肉となれば、こうやって食肉コーナーに普通に並ぶには今少し時間がかかるだろう。
さて今日の買い物は終わりだ、家に帰る。帰ったら保管庫に入れる物入れない物、保管庫から出すもの、色々整理が必要だ。買った机や椅子も箱から取り出して組み立てておいてそのまま現地で出すほうが手間が無くて楽だ。要らんゴミも持ち込まずに済むしな。
夕食は……なににしようかな。帰ってから考えよう。意気揚々と車を転がし家に帰った。俺の胃袋に聞いた結果、夕食を作るのは面倒なのでコンビニ飯で済ませた。
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夕飯を食べ風呂に入り、寝るまでまだ少し時間が有るのでまた調べもの。D部隊について調べることにした。この間出会った人たちは悪い印象は抱かなかった。わざとそう接してきた可能性もあるが、そんな一手間をかける必要が有るかと言えば無いので、元々そういう人たちだったんだと思う事にした。
D部隊は大きく分けて九方面に分かれており、中部地方は第五方面部隊ということになる。市外局番で分かれていると考えれば解りやすいだろう。
北海道なら一〇〇〇、中部地区なら五〇〇〇、九州なら九〇〇〇といった感じだ。それぞれに大隊規模で戦力が存在し、各ダンジョン毎に分かれて中隊規模の部隊があり、更にその中に小隊があり、一小隊四分隊を一グループとして運用しているらしい。たとえば中部地区清州ダンジョン所属五三一四分隊……とかそんな感じだ。
どうやらダンジョン作戦群は民間と違って独自の評価で探索者ランクを決めており、何層まで行けたか、どれだけドロップを持ち帰ったか、等によって評価されるわけではないらしい。ダンジョン庁用特別部隊とはいえ軍人だし、軍内部の規律を保つ意味でも評価基準が民間と違っていても問題は無いんじゃないか。
少なくともその評価基準上現在潜っている層で活躍するだけの実力は持っているという事なんだろう。この間のチームTWYSはどれだけの戦力を保持していたのだろうか。ステータスブーストは使えるのだろうか。考え出すといろいろ気になってきた。
もしステータスブーストを知らずにBランク相当の実力がある人たちがステータスブーストを体得したら俺よりはるかに強いであろうことは想像できる。だが、手合わせしてみたいなぁという感想は出てこなかった。探索者同士争うという事は時にはあるんだろうが別に競争をしているわけでもないんだから、彼らは彼らなりに活躍してくれることを願おう。
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