472:価格改定
気持ちのいい朝だ。昨夜も冷房はつけっぱなしで寝た。光熱費? 一晩潜れば稼げるから大丈夫だって。余裕余裕。丸一日つけっぱなしという訳でもないんだから寝てる間位問題ない。
今日も心地よく起きれたところでいつもの感謝の祈りをささげる。ありがとうダーククロウ。今日はお前のすばらしさを伝道するために羽根を納品しに行くぞ。
ゴキゲンな朝食をとった後、店の開店までに時間があるため探索者関連のニュースを見る。今日のニューストピックは価格改定のニュースが流れている。公式に発表された金額をダンジョン庁のサイトへ確認しに行く。
ダーククロウの羽根は百グラム九百円から千五百円への大幅改定が行われた。やはり全国的に羽根が不足しているらしい。ほぼ倍額じゃないか。かなり大きい変更だな。
それからワイルドボアの革は逆に二割減の一枚三千二百円。こっちは探索者の増加と成長により五層から十層にかけて探索する機会が増えた分需要を供給が上回る可能性があるため、そのための事前措置という面もあるらしい。俺としては収入が減ってちょっとがっかりだ。
その分……というわけではないだろうが、ボア肉も千円から千二百円へのアップが決まった。ウルフ肉が定着したら次はボア肉……ということだろうか。革の買い取りが下がったことで中盤の探索者への対応という事なんだろうか。ドロップ率を考えるとワイルドボア一匹当たりの期待価格変化は十円の値上げという事になる。
後ジャイアントアントの牙が千五百円から千八百円になった。建材や武器材料としての人気に押されての事らしい。どうやらよほどの例外を除き、価格変更は二十パーセントが最大値動き幅らしい。ジャイアントアントの牙は半年後も値上がりしそうだな。次はスケルトンの骨も価格変更がかかるかもしれないな。
あっ、せっかくダンジョン庁の長官に会ったんだからその辺を聞いてみても良かったんだな。ちょっと惜しい事をした。しかし、これについて私用のレインに苦情を申し立てるのも違うな。今回の変更で俺は得しかしていない。
ダーククロウの羽根の直卸。今日のお仕事でもあるしダンジョン探索の副収入だ。なんだかんだで結構な付き合いになり、それなりの収入を確保してくれている。今日の卸す予定の量は五キログラム。
保管庫の中には全部で十四キログラムほどあるが、五キログラムだけ卸す。残りは間隔が空いてしまった時用の予備だ。何事も予備在庫は持っておくことに限る。
予備在庫と言えばこれからはキュアポーションの予備在庫も持っておいたほうが良いな。昨日の情報が確かならダンジョンコックローチからダメージを受けて毒効果を受ける事だってある。
今のところ予備のキュアポーションは四本ある。ランク1で治癒できるそうだが、これから苦戦する事も考えるともう少し持っておいても良いな。ソロで潜っている間に予備として溜めこんでおこう。
さて……まだ時間があるな。今のうちに昼食を作り置きしておくか。昨日一晩漬けこんでおいたウルフ肉の生姜焼き、どのぐらい味がしみているか楽しみだ。
早速タレから出し焼き始める。生姜と醤油の香りがキッチンに広がり、食べたばかりの胃袋を刺激する。ダメじゃこれは昼食なんじゃ……と言いつつ作った内の一枚をパクリ。……うん、よくできてる。皿ごと保管庫に放り込み保温しておく。
と、そういえばこの保管庫には時間経過を早める効果があったんだったな。普段全く使わないから忘れていた。しかし、漬け込みの為だけに荷物を全部取り出して切り替えてというのは非常に手間だな。何か上手い事できる方法を考えて……物品毎に時間経過が変更できるようになれば一番便利なんだが、そこまで使いこなせるほど俺の保管庫は成長していないらしい。成長トリガーはなんだろうな。
最近荷物の出し入れしかしていない保管庫、そろそろバラされる事も混みで成長するのかどうかも考える時期になってきたのかな。現状時間百分の一だけで困ってないし、百倍にして応用を利かせるような内容も思い浮かばない。梅酒作って時間をかけて漬け込むような趣味があれば別だったんだろうけども俺は飲めないからな。後は……パンを作りたくなった時に考えるか。きっと発酵時間が短くできるぞ。
◇◆◇◆◇◆◇
いい時間になったので布団屋へ早速連絡を入れる。今日尋ねても良いそうだ。早速保管庫から五キログラム分の羽根を取り出すといつものエコバッグにふんわりと詰めて車に積んでいく。
三十分して布団屋に到着。店に挨拶に行く。
「おはようございます、安村です」
「安村様、お待ちしていました。ではまず早速品物のほうから確認させてもらってよろしいですか? 」
「どうぞ、いつも通りお願いします」
店長が出てくる。車に案内し、次々と運び出してもらう。奥で確認をしてもらっている間に、店長と価格改定について話をする事にしよう。
「実は、この度ダンジョン素材の査定価格の改定が行われまして」
「お聞きしております。ダーククロウの羽根はかなりの金額アップになったとも」
「で、ですね。次回以降の買い取りについては相応の値上げをお願いしたいと思いまして」
現在ですら査定価格よりも高く買い取ってもらっているのだからこっちから値上げを依頼するのは少し厳しいかもしれないが、金額アップによる供給の上昇も考えたら茂君を狙う人が増えてもおかしくはない。その分俺が取る可能性は低くなるわけだが……
「よろしゅうございます。というのもこちらの予想になりますが、値段が上がった分供給が増えたとしても、安村様が持ち込んでくださる品質での買取が同じ価格で出来るとは思っておりません。ですので、値上がった分……いえ、より高く買い取る方向で考えさせていただきます」
どうやら今後の値上げ交渉に応じてくれるらしい。一つ良かった。収入は多いに越したことはない。
「ありがとうございます。すんなり受け入れていただいて正直ほっとしました」
「安村様には毎回お世話になっておりますし、おかげで商売のほうも順調でございます。ダーククロウ素材自体の知名度も上がっておりますし、素材はほぼ奪い合いみたいな事態になっていまして。それが今回の査定料金値上げで仕入れ価格上昇を商品価格に転嫁できないライバルが減ると考えると安村様以外からの仕入れも可能になってきますので」
「なるほど……価格転嫁できなくて商売が出来なくなる可能性もあるという事ですか」
「当店の場合は……まあ元々特注という部分でそれなりに儲けさせてもらっておりますのでまだ問題ないですし、素材の値上げがあったという理由で更に上がったとしてもご納得してもらえる可能性が高いと思いますので」
あっちはあっちなりで金を稼ぐ算段は整えているという事か。なら次回も普通に持ってきてもそれなりの金額を楽しみにして良いという事だな。
「それを聞いて安心しました。次回納品できるのを楽しみにしておきます」
その後軽い雑談をしている間に品質確認と金額が出て来た。いつもと同じ、五キログラムで十三万円。七対三に分けてもらって三は芽生さん用。七は俺用。書面上は俺が全額支払ってもらっていることになっている。
「では、また次回いいお取引をお願い申し上げます」
「今回もお世話様でした。それでは」
軽く挨拶をし、店を出る。昼食は決まっているから寄り道をするわけではない。時間的に先にお昼、昼から買い出しだ。買い出しが終わったら……たまには家でゴロゴロしよう。
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