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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第一章:四十代から入れるダンジョン

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47:激闘の成果

 

 査定カウンターへ来た。スライムの密度が低くなった分、さっきまでとは比べてはいけないのだろうが、アイテムを拾うという作業を文月さんが代わってくれたので、それなりの速度は出たはずだ。


 バッグからザラザラとドロップ品を提出する。


「相変わらずすごい量持ってきますね。数えるのが大変そうです」

「ご苦労様です。頑張ってください」

「まぁ、頑張ってくれたのは安村さんたちですし、自分の仕事はまっとうしようと思います」

「お世話かけます」

「少々お待ちくださいね。さすがにこの量は時間がかかりますので」


 十五分ほどで査定結果が出た。あの量を十五分でこなすのは相当の技量が必要なはずだ。

 過疎ダンジョンとは言え、職員の仕事っぷりには頭が下がる。


 今回の査定額は一万八千円ほどだった。スライム千二百匹ほどすりつぶした計算になるか。

 今日だけで六千匹ぐらいスライムを退治した計算になる。


「六千匹か。頑張ったな」

「なら私は二千個ほどドロップを拾ったってことですかね」

「俺が計算したのが合ってるならそのぐらいかな」


 スライム一匹期待値十五円。塵も積もればなんとやらだ。分け前はともかくここまでで六万も稼いだか。

 これは中華屋で打ち上げするのも焼肉屋でちょっとお高い肉を食べるのもいけるな。


「なんか、早速豪遊することを考えてませんか?」

「なんで解った」

「よだれよだれ」

「*おおっと*」

「大人しくためておくほうがいいですよ。でないと確定申告の時えらい目にあいますよ」

「確定申告か……そういえば自分でやるのは初めてだな」

「支払いカウンターでもらった領収書、ちゃんと全部保管してます?」


 領収書? たしか全部保管庫に入れてあるな。最初の頃のはどうだっただろう?


「保管庫に突っ込んであるはず」

「なら大丈夫ですね。それ、確定申告する時に全部提出して金額あわせておかないとえらい目にあいますよ。一枚でも足りなかったら脱税ですよ脱税」

「詳しいな。大学で何専攻してるんだ? 」

「一応これでも経営学部なんですよ。だから自分の稼ぎは把握してます」

「納税は今まで会社だよりだったからなぁ。これからは自分でやらなきゃならんのか」

「納税は国民の義務ですからね。後、装備品はある程度経費で落とすことが出来ます」


 経費とな? その分収入申告しなくていいって事か?


「じゃぁホムセンとかで買ったレシートは」

「経費で落とせるものとそうでないものがありますが、食料なんかは経費になりませんね。ダンジョン用品の中でも必需品は経費として落とせます。装備とか生理用品とかなんかですね」

「今後は経費で落ちそうなものは分けて買い物するかぁ」


 面倒事が一つ増えた。でも収入に直結するならしっかり管理しないといけないな。


「これ、保管庫の中身って私でも見ることが出来ますか?」

「やってみたことないからわからんな。(保管庫)」


 俺の視界にリストが表示される。


「これ、見える?」

「見えませんね。どれのこと言ってます?」

「他人には見えないかー。今度中身全部出して確認してもらう必要があるな」

「今なら格安で計算してくれる可愛い女の子がオプションでついてきますが」

「よろしくお願いします」


 頼りがいのある仲間がいてくれて助かる。


「じゃぁ今度お願いするわ。場所はバレにくい俺の自宅か何かで」

「……変なことしませんよね? 」

「そんな事したらバラされちゃうかもしれないだろ。しないよ」

「わたし、そんなに魅力ないですか? 」


 めんどくせえ。


「十分魅力的だよ。今のところ税務関係に関しては」

「まぁ、それで今のところは納得しておきましょう」

「そういえば大学のほうはちゃんと行ってるのか? 」

「行ってますよ。講義が無いときにこっちへ来てますから」

「単位足りてる? 」


 結構頻繁にダンジョン来るよね。専門職でもないのに。


「最初の二年でとれる講義は全部取ったんで、今は結構余裕があります」

「とりあえず、このスライムの一件が片付いたらゴブリン狩りにでも勤しもうじゃないの」

「遠距離攻撃手段もありますし、更に楽に狩れそうですね」

「人の居ないところ限定な。そうだな、遠距離攻撃用に棒手裏剣とかパチンコ玉とか買い込んでおくか」

「経費で落とせるでしょうからそこそこ買い込んでおくといいかもですね」


 そんな事を小声で話していると、救援班が帰ってくる。報告を聞きに行きたいのでそっちへ向かう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「救援班、帰還しました。一層から二層への道は完全に駆除できましたが、それ以外の道についてははっきりしたことは言えません」

「あぁ、俺もさっき側道や袋小路なんかを見回って千体ぐらい処理してきたのですり合わせしましょう。地図で言うとどの辺がまだ確定じゃないんです?」


 救援班あわせて六人で、お互いが通った経路を確認し合う。全体の七十%ぐらいは俺と救援班と、午後から参加した探索者で巡り終わったようだ。


「残りの三十%のところに異常増殖の原因がいるなら、また明日増えてる可能性があります」

「確か異常増殖を始めたのは一層と二層の境界のところだから、そこを駆除できているなら明日には落ち着いている可能性が高いんじゃないか?」

「そう願いたいですね。自分の家からここまで来るの、結構時間かかるのでまた増えてたら入口までみっしり詰まってる可能性はゼロじゃないですね」

「なら明日はみんなで潮干狩りすることになるのかな」

「潮干狩り……って、あなたが入り口でやってたあれですか?」


 救援班がちょっとキョドった。どうやらあれが異質な狩り方に見えたらしい。まぁ、外部から見たら踊りながら高速でスライムを退治してるように見えたのかもしれない。


「あれです。熊手一本あれば事足りるんでみんなでやります?慣れてくるとだんだん気持ちよくなってきますよ」

「ちょっと真似したくないのですが、それが最短方法ならやってみるしかないでしょうね」

「じゃぁ、二、三本熊手を用意してきますよ。それでみんなでやってみましょう」

「手段の一つとして検討してみます」


 あまり乗り気じゃないようだ。楽しいのに……


「私、明日は講義あるので朝早くからは参加できませんよ」

「じゃぁ臨時でアイテム拾う人をその場で募集することになるかな。エコバッグでも用意しておくか」


 五枚ぐらいあれば足りるだろう。


「小西ダンジョンを臨時で二十四時間営業にして原因判明するまでやるというのは?」

「利用者がそんなに多くないので二十四時間戦うとしても人員が足りません。後、スライム退治にそんなに躍起になってくれる人材が残念ながらそう居ないので。後何より……」

「何より?」


 会議に参加していた職員が答える。


「職員の人数が足りないですね。今日のドロップ品の精算だけでも残業確定ですので、私たちが先に過労で倒れるかもしれません」

「大変ですねぇ」

「なら、明日また来ることにするよ。今日はここまでだ。明日またみっしり詰まってるようなら、職員込みで応援を要請する必要があるでしょうね」

「とにかく、職員七人でこのドロップ数を管理するのは無理があります。探索者の皆さんには重ねてお願いします。早めの事態終息にむけてご協力をお願いします」

「今のうちに二、三名職員を臨時で派遣してもらうことはできますか?」

「課長に大至急報告してきます」


 そういうと職員さんは二階へ駆けていった。


「しかし、一日でいったいいくら稼いだんだ?アンタ」


 救援班の一人が俺に話を振る。


「ざっくりだが、スライム六千匹ぐらい倒したと思う」

「六千……スライムとはいえそんな数倒した奴聞いたことねえな。アンタ名前は」

「安村という。なぜか潮干狩りおじさんと呼ばれている」

「ハッハッハ、たしかにあの様子は潮干狩りだな。面白い人に出会ったぜ。明日も来ると思うが、あんたも明日来るならよろしくな」

「今日は稼ぎが良かったんでな。筋肉痛で動けないんじゃない限り明日も参加させてもらうぜ」

「スライムで生計立ててる人はそんなに多くない。よっぽど稼いだみたいだな」

「それは個人情報なんで教えられないが、まぁ普段の四倍ぐらいかな」

「そいつぁ上々だ。俺もアンタにご教授願えばそのぐらい稼げるのかね?」

「無心でスライムと向き合う才能があればだれでもできるさ」


 ガッチリと握手した。そういえば名前聞いてないが顔は覚えた。明日ぐらいまでは覚えてると思う。


 帰りにホームセンターによって同じタイプの熊手を三本ほど買うとバッグに放り込んでおいた。


 使わないことを祈りながらも明日も一杯潮干狩りできるんだといううれしさとともに就寝した。



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― 新着の感想 ―
十中八九研究者のせいだろうけれど 実は主人公がここ数日スライムを狩りまくったせいで ダンジョンの防衛反応みたいなものがスライムの発生率を上げている可能性があってもおかしくないか
[一言] 10個の重さ計り、全部の重さ計って 10の重さで割れば良い?
[気になる点] 何で43話で税金関係のこと調べて支払いカウンターで貰う領収書のことも確認してたのに47話で記憶無くしてるの??
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