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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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469:社会見学4/4 職権の正しい使い方とは


「大丈夫ですか? 一気にしゃべりましたが」

「……らしい」

「え? 」

「素晴らしい。こんな事が現実に起こりえるなんて。観測する事が出来ない他次元! さらに他次元の文明! そこからのアクセス! 誰も知らないダンジョン知識! ダンジョン庁長官になって良かった!! こんなにも世界はファンタジーに満ち溢れていたなんてッ!!! 」


 両手を広げてプラトーンのポーズで天を仰ぎながら真中長官は叫び出した。


「ギルマス、大丈夫ですかこの長官」

「長官、感極まると凄いオーバーになる人なんだよね。初めてダンジョンマスターが観測された日もこんなんだったよ」


 どうやらこれが平常運転らしい。


「……ふぅ、ありがとう安村さん、あなたが掘り当てた鉱脈はとても大きく魅力的だ。今の話は私の心の中にだけ留めておくよ。そして私の中で膨らませて、期待を大にして待つことにするよ。出来れば私もダンジョンマスターと会話がしたい。出来るものならしてみたい。そしてその失われた文明の歴史について大いに語り合いたいッッ! 」


 興奮はまだ収まらないらしい。ビデオ通話越しに熱量が伝わってくるようだ。


「本当に大丈夫ですかこの人」

「大丈夫、優秀な人なことに間違いはないから」


 どうやらダンジョンが関わるとあんな感じらしい。安心して良いのかどうか迷うが、そのテンションの上がりっぷりは堅物をイメージさせる官僚という人種を柔らかくさせたことは確かだ。


「ちなみにダンジョンマスターとの会談はダンジョン内なら別に開催してもいいよとは言われてます」

「エクセレントッッッ!! 私もあれかね、ボス倒せば出会えるのかね? 」


 鼻息がマイクに入っている。スーハスーハーうるさい。


「どこで、という指定はしていませんが、少なくとも二十一層まで行けば私はいつでも会えますが」

「ちょっと安村さん、その報告私聞いてないよ。二十一層までエレベーターが繋がってるだろうことは薄々感じてはいるけど」


 坂野ギルマスから苦情が飛ぶ。確かに言わなかったな。聞かれなかったし。


「だってその話をする前にこの話やめようって言いだしたのギルマスですよ」

「あの後か……まあ今聞いても同じことか。で、真中長官。彼らをBランクに推薦しようと思うのですが」


 ギルマスからの軽い昇級提案がなされる。良いのかそんな軽くて。


「ああ、じゃあ今日からBランクね。小西ダンジョンの二十二層以降の優先探索権利も付けよう。その代わり定期的に情報を持ってきてくれることが条件だ。期日は問わない。また私が興奮できるような情報を頼むよ。滅んだ文明の歴史や遺産や、何なら現物でも構わんよ」

「その辺は確約できる事ではありませんが……解りました。Bランク昇級、素直にお受けします。私はそのまま繋ぎの役割を担っていけばいいわけですね」

「後数年ぐらいは現役で居てくれるんだろう? その頃には私もトップじゃなくなっているだろうし構いやしないさ。坂野課長、小西ダンジョンの探索許可を二十一層までに設定。それ以降は許可のあるパーティー以外は探索禁止を徹底してくれたまえ」

「解りました。早速今からそう通達してきます。あ、あと探索者証更新するから後でまた血ちょうだいね」


 どうやらBランクからは新しく作る必要があるらしい。また指先プチっと刺されて血が出るわけだな。あれ結構痛いんだよね。


「この探索者証もダンジョン側の技術だと聞いてるんですが」

「そうだよ。その時は彼らの歴史背景なんかは聞かなかったからね。ただ、ダンジョンの中で人が死んだときに解るようにしてほしい、とお願いしたら解ってるダンジョンの数だけ機械をくれてね。魔結晶と血を放り込むと探索者証になって出てくる仕組みなんだ」

「いわゆる魔道具って奴でしょうね。ハイファンタジーでも出て来る奴ですね」

「君はどっちでもいけるクチなんだな」

「まあ、雑食気味なもので」


 ファンタジー物としては定番だよな、ギルド証って。それが今手元にあること自体がすでにファンタジーであったりもするのだが。


「今後は色々と私から個人的に頼みごとをする可能性もあると考えておいてくれ。後レインあったら教えてくれる? それ以外に何か困ったことが有ったら教えてくれ。出来る限りのバックアップをしよう」

「そうですねー。じゃあ相棒の就職先でも世話してやってください」

「ちょっ、洋一さんいきなり何言いだすんですか」

「お、今の声が君の相棒かね。女性か。もう付き合ってるの? 」

「……初めまして、文月芽生です。大学生をやっています。まだ付き合っては、いないです」


 長官との個人通話になったからか、芽生さんがビデオ通話に顔を出す。長官はしばらく考えるとこう切り出してきた。


「就職先か……君、公務員試験受けるつもり、無い? 」

「え、どうしてですか? 」

「試験さえ合格してくれさえすれば何とでもポストを用意できるよ。何なら自衛隊から移管してきた部隊とは別で新しくダンジョン庁の編成部隊を新調する事も出来る。君がそこの第一号になって仕事はいつも通りのダンジョン巡り、という事だってできる。給料ももらってダンジョンのドロップ品も今まで通り分配して、二重に美味しい生活が出来るぞ。そういうの興味ない? 」

「とても興味がありますね。お金と実績は有って困る事は無いですから」


 相変わらず金の話には弱いな芽生さんは。彼女らしいからいいけど。


「割と真面目に考えておいてくれ。君が安村さんと共に仕入れてきた情報と技術は間違いなく国益になる。公務員試験という関門だけは設けさせてもらうが、ダンジョン探索者の意見を取り入れていく姿勢を見せるということもできるし、民間からの雇用も受け入れるというダンジョン庁としての実績を作る事も出来るからね」


 ちゃんと色々考えてるんだな。長官の後ろから「また勝手に仕事を増やしてるこの人」という声が漏れ聞こえてきたのは聞こえなかったフリをしておこう。


「坂野課長はまだ戻ってきてないみたいだね。その間に質問するが……君たち、何か特殊なスキル拾ってたりしない? 」

「こひゅ」


 心臓が止まるかと思った。このタイミングでその質問をぶち込んでくるか。


「……ないです」

「なるほど、微妙な沈黙は時に雄弁に語るね。今の質問は無かったことにしよう。では質問を変えて、今どんなスキル構成してるの? 」

「私が【雷魔法】と【魔法耐性】、芽生……文月さんが【水魔法】と【魔法耐性】と【索敵】ですね。索敵は覚えたばかりですが」

「ふーん、彼女のほうは三つかぁ……なるほどね」


 やばい、ロックオンされたな。これはバレたと考えたほうが良いだろう。


「ちなみに【索敵】は何処で拾ったの? 」

「拾ったというよりは貰いました。ダンジョンマスターに二十一層のボーナスとして。私十五層でボス倒した時何も貰わなかったのでその分も込みならスキルでもいいよって」

「なるほどね。有ると便利そうだね【索敵】」

「そうでもないです。人が多いところや満員電車だと、スキルをONにしたままだと頭が痛くなっちゃって、まだまだスキルの鍛え方が足りないです」

「その辺は頑張って訓練してモノにしてくれたまえ。小西ダンジョンは各ダンジョン比からしても狭いが、その分深くまで潜り込めている事も確かだ。きっと他のダンジョンは今頃大騒ぎだろう。誰が最初に鬼殺しになるかとか、二十一層まで潜れるのかどうかとか、自分のダンジョンがどこまで進捗を進めているのか把握するのに忙しいはずだ。他のダンジョンもエレベーターは欲しいだろうからねえ」

「そういう視点で見れば小西ダンジョンで良かったのかもしれません。清州ダンジョンや高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンで同じことが発生していたかもしれないと考えると、大混雑ではすまない状況になるでしょうし」


 坂野ギルマスが戻って来た。早速通達が出され、二十一層までは自由に探索できる、つまりCランク探索者は出来る限りの探索が出来ることになったらしい。


 二十二層以降立ち入り禁止となると、例のD部隊の人たちはどうするんだろうか。二十一層でキャンプ張りながら自己鍛錬に勤しむことになるんだろうか?


「そういえばお聞きしたいことがあります、真中長官」

「答えられる範囲ならなんでも」

「D部隊の人たち、小西ダンジョンに入るように指示したのは長官ですか? 」

「お、気づいたのかね。君の人となりや小西ダンジョンの風景を観測、記録して持ち帰って検証しようという話を出したのは私だ。尤も、今日のこの話し合いで不要になってしまったけどね」


 やっぱりか。結衣さんは良いように振り回されてしまったようだ。今レインに「沈黙は金なり」と返事が来ていた。肯定と捉えていいらしい。


「真面目な話、レイン交換しない? 私物のほうのスマホで申し訳ないけど」

「良いですよ。これからいろいろありそうですし、ダンジョン経由や人経由で情報が飛んでくるよりは多分そのほうが早く済みそうなので」

「さすがに機密情報は一切連絡できないけど雑談出来るしその程度なら問題ないよね」


 ダンジョン庁のトップとレインのアカウント交換。一気に俺の個人情報の値段が高くなった。今のところ登録者は芽生さんと真中長官と結衣さんたち新浜パーティー、それと布団の山本と、近所の天然温泉しかいない。当社比結構増えたな。


「あ、じゃあ私も交換しようか」


 坂野ギルマスが調子に乗って交換を始めた。これで合計十人。多ければいいというものでもないが、ウザがらみだけはしないように注意しないとな。


「じゃあ、今度こそお疲れ様。良い話し合いが出来たよ。この個人会話は数秒後に爆発したりはしないが、内容は一応国家機密という事にしておいてくれ。他次元他文明の話が公になればあっちやこっちでの大騒ぎになるからな」

「つまり、今まで通りで良いって事ですね」

「良い……のかなぁ」


 芽生さんは不思議がっているが、変に話を広めないのは前からの事なのでいつも通りで良いのだ。


「それじゃ、また何かあったら報告よろしく。坂野課長経由で何時でも受け付けるよ。じゃ、切りまーす」


 軽いノリを残して真中長官との話し合いは終わった。なんだかんだ結構話したが、とてもフランクな人だった。出来立ての省庁だからか、それとも民間への門戸の開き方を表しているのか。とりあえず、報告したら昇級した。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
21層の質問の条件を決めた時の目立ちたくないという方針と今回の仕事、今後の方針が全く合って無いと思うのですが心境の変化は何処にあったのでしょう?
[良い点] 長官は愉快な人ですね!
[良い点] そういやこの人オタク気質で適任もなんよわからんからダンジョン庁の長官にされた?みたいな話だったわ… 人間のドロドロ暗いところが出るかと思ったら普通にオタクの反応で逆に安心した。とてもIA …
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