463:オーク肉集めはエレベーターが有ってもやり辛い
休憩を終えて十一層を回り始める。時間的には二周できれば良い感じだろう。
「ここでは九層と似た数のジャイアントアントと、最大三体のオークが出てくるので外側を回らずに中側を回ろうか。せっかく来たんだし稼いで帰らないと」
「ですね。オークは試験の時に油断せずに倒せたので大丈夫だと思います」
十一層中級者コース、オークが常に三体現れる辺りを歩いていく。手持無沙汰になる時間が勿体ないし、何より確実に時間制限がある都合上、ザクザク敵を見つけてザクザク倒す方向性で探索を進めていく。
と、早速オーク三体との遭遇だ。酸が飛んでこないし臀力は測定済み。頭と急所以外なら殴られても大丈夫なので安心して向かっていられる。だが田中君は俺より軽装だ。喰らわない事が割と大事だ。
どんな動きをするか、まずは観察するために最大出力で二匹オークを吹き飛ばし、田中君と一対一の状況を作っておく。
田中君はオークの棍棒を確実に避けながら何回かプスプスと剣を差し込んでいく。何発刺せば倒せるかカウントしてるようで、口元がもごもごと動いている。
三十秒ほどのやり取りの後、心臓に一突きして抜く。それで致命傷まで達したのか、突き刺された後から黒い粒子になって徐々に消えていく。
「こんな感じでどうでしたか」
田中君が戦い方の感想を聞きたいらしい。
「相手の攻撃手段を減らすのを意識して戦ったほうが確実だと思うよ。腕飛ばしたり脚切り落としたり腱を切るとか……だけどその剣で通じるかどうかはちょっとやってみないとな」
「そうですね……そろそろ切れ味のいい重さのある奴に買い替えてもいいもしれません。やってみて、無理ならそれも考慮に入れておきます」
「まあ徐々に慣れていこうや」
次のモンスターを探しに歩く。残念ながら連続オークとはならなかったが、次に来たジャイアントアントはそれなりの収入をくれた。
そしてまたオークと出会う。今度は二匹。まず先にこっちが一体倒す配置に持ってきて、手本みたいなものを見せることにした。手本と言ってもいつもの狩り方、近寄ってオークに一発振らせて、空いた懐に潜り込んで棍棒を持ってるほうから順番に腕を斬り落とす。その後で心臓に一突きするか首を跳ね飛ばすか。
両腕さえ失くしてしまえばオークはほぼ戦闘力が無い上に、そのまま長時間放っておいても黒い粒子をまき散らしすぎて消えていく。それでは時間が勿体ないのでトドメはきっちりと刺す。
「俺は大体こんな感じ」
「なるほど、後の先を狙って懐に入って心臓一発でもいけそうですね」
コツの端っこを掴んだらしく、トレースするように田中君がオークに向かっていく。ほぼ同じパターンに入ったオークは棍棒を持った腕を斬られて痛みで棍棒を落とした。田中君はそのまま心臓付近に切り込みを入れ、グリグリと抉るように剣を捻じ込む。確実に致命傷を与えられたオークは後に肉を残して黒い粒子に還っていった。
「よし、オーク肉自力で手に入れたぞ」
オーク肉が手に入って少し自信がついたようだ。確実な戦果を得られるのは体験としてとてもいい。
「今ので良いんじゃないかな。より効率よく倒す手段を求めるなら他を模索するとして、必勝パターンが二、三個あれば良い感じだと思うよ」
「必勝パターンですか……武器に合わせるならちょっと切り落とすのは難しそうなので得物を変えるかやり口を変えるかが必要そうですね」
「何回か戦ってる間に良さそうなのがきっと浮かぶだろ。さあ次に行こう、時間が勿体ない」
考えこもうとする田中君を考えるより体を動かしながら観察するほうがいい案は浮かぶと思う、今はとにかく戦う回数をこなして慣れるのが先だと言い聞かせながら急かすように前へ進む。
オーク、ジャイアントアント、ジャイアントアント、オーク、オーク、ジャイアントアント、オーク。
流石に中級コース、割といいタイミングでモンスターが寄り付いてくるので休む暇はちょっとだけあるが次々に料理を運んできてくれる。二種類しかないけど。
田中君も複数回戦って慣れて来たらしく、避けるタイミングと攻撃を加えるタイミングに余裕が出始めた。型にはまるという奴かな。
半周するころには完全に攻撃パターンを読み切り、動きに無駄が無くなってきた。攻撃のほうはまだちょっと手探り感が残っているが、避けるほうは完璧にできてると思う。
「おーその調子その調子。これなら四体来ても行けそうだな」
「若干火力に難ありってところじゃないですかね。もっと切れ味のあるか重さのある武器のほうが良かったかもしれません」
「それだと素早く移動できなくなるから自分の持ち味を殺すことにならんか? たしかにそのほうが手早く狩れることに間違いはないだろうが」
「それもそうすね……もうちょっと試行錯誤してみます」
自分なりに色々考えながらオークと戦っているらしく、わざとギリギリ当たらないぐらいを避けたり、相手の腕が伸び切ったところで関節を切断しようとしたりしているようだ。
こっちは慣れたもので、単純に殴って来た棍棒を小盾で受け止めたら近寄って心臓にぶっ刺すだけで終わり。結局これが早いと考えた。小盾が無事ならというただし書きが付くが。
この小盾も長く使っているな。より軽くより頑丈な奴があるならそろそろ買い替えを考えてもいいかもしれない。そんな素材があれば、の話だ。これもモンスター素材を組み合わせた、直刀と同じような合金で縁取ったものがあったりはしないか。今度鬼ころしへ行って確かめてみるか。いや、ホームページから見つけられるかもしれんな。帰ったら探そう。
しばらく無言でハンドサインだけで戦い続ける。集中している、と言っていいと思う。戦いに集中している間は頭の中は戦い方のくみ上げをしているか、どうでもいいことを考えているかだ。今はどうでもいいことを考えている。金平糖ってなんであんな形になるんだろうな。
宇宙に意識が飛び去ったまま更に半周し、十層側の階段に戻って来た。もう一周ぐらいは余裕があるな。
「とりあえず一周してきたけど、感想は? 」
「攻撃に当たらない事に尽きますね。それ以外は割とどうでもなるというか、基本はジャイアントアントと変わらないというか。ここまで来てもらっておいてなんですけど、やっぱり一晩かけてゆっくり狩りたいところではあります」
「ここで一晩というと結構辛いぞ。上から来るにしても下から来るにしても、大体四時間稼働が限界だ。その後十四層なり七層なりへ帰る体力も必要になってくる」
「うーん……オーク肉への道は険しいですね」
田中君が悔しそうに唸る。気持ちは解る。
「俺としてはオーク肉よりもレッドカウの肉のほうが楽に取れるんじゃないかとも思っている。これはエレベーターが使える前提の話になってしまうんだけどね」
「エレベーター一つで環境も変わってしまいましたね」
「良い事か悪い事かと聞かれたら多分良い事なんだろうな。少なくとも移動にかかる時間を短縮できるし、その移動の道中に狩るはずだったモンスターを他の人が狩ることができる。ウィンウィンの関係が保てる」
俺の頭の中では主に茂君の事になっている。他人が居たら狩りづらいというか回収しづらい。七層や十五層に直接下りる人が増えればその分茂君で人に出会う可能性は下がる。
「人が増えて来たからこそそういう考え方もできますね。いいなぁエレベーター。僕もその内鬼殺しになれますかね」
「ボス狩りに付き合ってくれる人が居るかどうかじゃないかな。一緒にCランク試験受けた人同士でもいいし、タイミングが合えば俺達でもいいし」
「……考えておきます」
「さ、もう一周して帰ろうか。肉は待っててくれるけどこっちから取りに行かないと手元には来てくれないぞ」
「そうすね。考えるのは後にしましょう。今は貴重な稼ぎ時、もう一周稼いで帰りましょう」
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