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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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460:密談

 side:小西ダンジョンギルドマスター室


 時間は少し戻る。安村がダンジョンから出てくる少し前ぐらいの時間。まだ日は高く一般探索者ならギリギリまで粘って今日の稼ぎを大きくしようという時間帯だが、高橋達はそうせず、ギルドマスターである坂野と面会していた。安村が察した通り高橋達はD部隊、つまりダンジョン庁所属のダンジョン探索部隊五二一一分隊の一員であった。


「失礼します、清州ダンジョン方面所属の高橋一曹です。坂野課長でお間違いありませんか」


 高橋が姿勢を正して敬礼する。


「どうも、小西ダンジョン担当課長の坂野です。この度はご苦労様でした」


 坂野が頭を下げているのを見た高橋が大急ぎで止めようとする。


「どうか頭を上げてください。立場的に言っても坂野課長のほうが上なんですから」

「いやいや、わざわざ民間のダンジョンまで来てくださったのを無下にも出来ませんし、頭を下げて物事がうまくいくならこんな頭いくらでも下げますよ。どうぞお座りください」


 そういいつつ頭を上げる。高橋は事前に坂野に連絡を入れ、お忍びで小西ダンジョンの様子を自らの目で確かめるのが任務の一つだった。


 その為に清州ダンジョンでそこそこ顔が知れている新浜パーティーの伝手を使い、安村に案内してもらう形でダンジョン十五層に突入、そつなく慣れた行動でボスを倒して戻ってきたところだった。


 後ろには残りの三人が立ったまま控えていたが、坂野のさあどうぞという勧めもあり着席した。


「小西ダンジョンはここまで来る移動の難が無ければいいところですね。清州ダンジョンに潜っている探索者はみんなこっちに来てしまいそうなぐらいですよ」

「悪いねえ、駐車場も無くって。もう少しで何とか用地交渉が出来そうなんだ。敷地内という訳にはいかなかったが、近くに土地を貸してくれそうな人をようやく見つけて、いま交渉している最中なんですよ」

「それは何よりですね。成功される事を願っています。今日は目的の人物にも会えて十五層まで輸送してもらえましたし、そのおかげで一日かからず無事こっちでも鬼殺しになれました」


 五二一一分隊の目的は二つ。エレベーターをちゃんと使用できるかどうかを実際に確認する事。つまり十五層まで下りて行ってボス狩りをして、きちんとエレベーターを使って帰ってこれるか。


 そして、ダンジョン庁内では渦中の人となりつつある安村について断片でも情報を仕入れておく事だった。尤も接触している時間が短かったため、はっきりとした戦闘能力の確認という意味では情報不足の結果に終わってしまったことは否めない。


「安村さんは結構人がいいからね。お互いの利害が一致するなら断らないとは思っていたけど、どうやって口説き落としたんです? 」

「十四層に忘れ物の荷物があったとかで快く引き受けてくださいました。確認した所寝袋かそれに準ずるものだったように記憶しています。どうやら敷きっぱなしなのを快く思わなかったようです」

「確かに敷きっぱなしの寝床は休憩するにもあまり気持ちよくはないでしょうな。で、どうでした彼は」


 坂野は普段ダンジョンには入らない。ダンジョン内部での出来事やそれぞれの探索者がどのように探索しているか等は聞き取り調査を行わない限りは基本的にノータッチである。


 今回高橋たち五二一一分隊は小西ダンジョンでの鬼殺しになる事と同時に安村の戦闘能力を確認しておくという任務にあたっていた。当人は任務内容は知らないが、高橋達の正体はほぼバレていたということになる。


「もしかしたら我々の事には感づいていたかもしれません。中々に聡い方だと思いますよ」

「気づかれたとして、断るような人ではないとは思うけどね。そんなに長い付き合いという訳ではないけど、基本的に彼は人がいいから」

「戦闘中も我々の動きを観察する余裕がある様子でした。おそらく我々と同程度か、もしかしたらそれ以上の戦闘力を保有していると思われます」

「そこまで強いかね、彼は」


 坂野は少し驚きがちに聞いてみる事にした。高橋達からも情報を引き出しておいたほうが安村パーティーをBランクに推薦する材料になると考えているからである。


「強いですね。話によると安村氏はスキル持ちだと聞いていましたが、一切スキルを使用することなく戦っていましたし、動きも我々か、我々以上に戦い慣れていました。普通にモンスターと接して、我々が戦い終わった時には彼も戦い終えていた」

「ほう……Bランク探索者相当のあなた方と同レベルですか。戦力的には問題ないと」

「今日は一人でしたが、二十一層まで潜った実績が有るとすると、もう一人のパーティーメンバー、今日はお会いできませんでしたがその方も同レベルの戦闘能力を保有していると考えられるでしょう。パーティーメンバーとの約束で十層以降には潜らないという話でしたから、おそらく一人で回るには手数が足りないとかそういう理由なんだと推察します。それになにより、我々が通常四人で一パーティーで探索をしているところを二人でこなしている。その点からも下手なパーティーよりも単体戦力として上……もしかしたら私が試合をしたら負けるかもしれません」


 高橋は推察すると言いつつも、それだけの実力はあると言い切る。坂野の中で安村への信頼度が更に一ポイント上がった。


「彼、Bランクに推薦しようと思ってるんですよ。どう思います? 」


 坂野は高橋に尋ねてみる。高橋は少し考えるそぶりを見せた後、こう発言した。


「我々と一般の方ではランクのつけ方に違いが多少あると思いますので一概には言えませんし私にそんな権限はありませんが、二十二層以降の探索についても現状では許可を出しても問題ないのではないでしょうか」

「なら、もうちょっと彼らには稼いでもらいますか。その参考意見を添付してダンジョン庁のほうに上げることにしますかねえ。楽しみだねえ」


 坂野は嬉しそうである。なにしろ零細ダンジョンだった小西ダンジョンが黒字化し、おまけに初のBランク探索者まで出ることになるのだ。自分自身の査定にも響く事だろう。


「そこまで急いでランクを上げさせる理由かなにかおありなのですか? 」

「彼は小西ダンジョンで探索者登録をして、Dランクになって、Cランクになって、鬼殺しになった。そのままとんとん拍子でBランクにもなったとすれば、小西ダンジョンだけじゃなく他のダンジョンを含めて中々の快速ペースです。まあそれは私の個人的な理由としてですね、今彼らは二十一層以降に行けない理由が探索者ランクだけなんですよ。そこで足踏みさせるのはもったいないと思いましてね。せっかくそのまま階段を上っていけるだけの物を持っているなら早く邪魔な仕切りを取っ払って差し上げたほうがみんなの利益になると思っているんですよ」

「我々D部隊にはより良い人材が居るならより早く深く潜れるようサポートする体制を取れるように独自の探索者ランクがありますからね。それに近い対応をとろうという訳ですか」

「何せそこまで早く昇級する前例がありませんからね。前例がないからと言って無下にするのはもったいない。時間の損失だ。彼にはもっと深く潜ってもっと高いドロップ品をどんどん持ってきて欲しいからね」


 坂野の鼻息が荒くなっていく。若干の興奮に気づくとごほん、と咳ばらいをし再び落ち着いた口調で話し始める。


「まあ、そんなわけで小西ダンジョンとしても、私個人としても安村さん達にはあまり人には言えませんが応援しているところなんですよ。それに何より、下手するとダンジョンの秘密や歴史に最も詳しい人物であるかもしれませんし」

「それは我々が耳にしても良い情報ですか? 場合によっては機密情報に引っかかる可能性があるのであまり詳細なことを聞くことはためらわれるのですが」

「おっと、そうでしたな。ただ、これからも小西ダンジョンへこっそり潜り続けるような場合、これだけは覚えておいてください。彼らはおそらく、日本で一番ダンジョンマスターと仲がいいパーティーです」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日の更新有り難う御座います m(_ _)m [気になる点] 「日本で一番ダンジョンマスターと仲がいいパーティーです」 言っちゃうんだ~(゜∀゜) [一言] Bランクが近づいて来た! \(…
[一言] ギルマスもダンマスも零細ダンジョンになりかけてたから 面白くて攻略の早い潮干狩りおじさんを気に入ったんだろうね
[一言] おー、マジでD部隊の方達だったんですねえ そしてそこの精鋭から見ても安村さんは優秀と あんまり評価高すぎると無理難題吹っ掛けられそうだけども大丈夫かしら
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