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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第六章:盛況小西ダンジョン

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451:ショッピングモールデート 1/2

 早速ファッション関連のエリアへ向かった。女性服専門の店も含めて三十店舗ほどがひしめき合っている。何処の店舗も自分の店の服を売り込もうと店員が声を張り上げている。


 女性のファッション合戦も大変だな、と思いながら店を横目に見つつ結衣さんと二人ウィンドウショッピングへと向かう。


「そういえば苦手な服装とかあるの? ざっくり服装を選ぶと言っても色々あるし」

「そうだなあ。首元が窮屈なのは苦手だな、タートルネックとかああいうの。Tシャツも選べるならUネックよりVネックを選ぶ派。後はピッチピチの服も苦手だ」

「なるほど、ゆったりタイプ。だとすると大き目の服が置いてある店が良いね。結構背丈も肩幅もあるから」


 俺の頭に手を当てて自分との身長差を測っている。結衣さんとは顔半分ぐらいの身長差がある。


「スーパーサイズが必要って程でもないから、その点は少し安心できるかな。ただ店によってXLとLLと2XLが同じサイズだったり違うサイズだったり、その辺の規格統一が為されてれば解りやすいんだけど。肩幅が変わってくるから割と大事だったりする」

「更に選択肢が減ったね。二、三店舗回ってみてそれっぽいのを探しますか。後紳士服店が一軒あるからそこも回りましょう」

「スーツの店か。ワイシャツ二、三枚見繕ってもらうかな。スーツに合わなくても普段着として着られる奴を……と、悪いね、先に用事を済まさせてもらって。さっと決めて後は結衣さんの用事に付き合おう」

「わ、私の用事はついでで良いよ、ついでで」

「せっかく選んでもらうんだから結衣さんにもらしい服装を色々見せてもらおうかな」


 とりあえずワイシャツを簡単に調達するために紳士服の店へ。肩幅と首回りを測ってもらい、体に合うワイシャツを柄別に三枚購入する。これで普段着の着回しは出来るな。


「男の人はさっと決めてさっと買いますね。もうちょっと悩んだりしないんですか」

「インナーだしそこまで拘って着るならきっちりスーツに合わせるだろうしなあ。今回はそこまでの物を求めてないんだよね」

「内側にこだわってこそファッションよ? 」

「そういうもんかなあ」

「そういうものです」

「次に活かしてみることにするよ」


 買った物は残らず着まわす。購入してからやっぱり返品というのも有りなんだろうが、せっかくサイズを測ってくれてまで対応してくれたのだからその分の礼儀はわきまえておかないと。


 二軒目、ショッピングモール直営の普段着売り場に来た。普段着用のインナーを見繕おうとする。今までは黒一択だったが、今回はそういう訳にはいかないだろう。Tシャツでサイズがありそうなものをまず探し、着合わせのジャケットと見比べる。


「そのジャケットに着合わせるなら派手なのは多分ダメね。さっきのYシャツでも良いけど、この辺のストライプとかどう。後このデニムも良いね。捗る」


 何が捗るのかはさておき、メーカーのロゴデザインがちょっとだけが入ったシンプルな奴を合わせに来た。シンプルなのは良いと思う。


「あとはパーカーもありね。これも色がシンプルになってしまいがちだけど柄物だとアウターになるから……この辺」


 外からは見えないがジャケットを脱いでも違和感のないタイプの背中にだけはしっかりと描かれているタイプをお勧めしてきた。これならジャケットを着なくても普通に使えるな。


 上に合わせるパンツも二着ほど選んだ。デニムとチノパンと二種類になった。太ももが入るサイズを基準にして選んで、履いてみて、屈伸して、足伸ばしして、膝を上まであげて、違和感がないことを確認する。


 色々試させて結衣さんはニコニコしている。普段適当に服を選んでいるが、ナナちゃん人形の気持ちになってみよう……彼女も仕事は選んでやるべきだな。


「足が細く見えるやつとかもあるよ。そっちはどう? 」

「なるほど……太ももは太くても足先に向かって細くなってるからふくらはぎが入ればなんとかなるタイプか。それもありだが……いざという時に動けるようにはしたいな」

「いざという時って? 」

「火事とか、地震とか、津波とか、ひったくりとか、ダンジョンからモンスターが溢れた時とか」

「モンスターが溢れた時はツナギなんじゃ? 」

「それもそうだな。でもなんかこう、緊急時に走れない格好は落ち着かないんだ」


 ファッションよりも機能性、それは押さえておきたい。そうなるとアウトドアブランドに傾きつつあるのだが……なんかポケットが一杯あると嬉しくなるんだよな。普段どうでもいい時は薄手のビニール生地のカーゴパンツがだらっとするのに良い感じの部屋着として使われている。


 とりあえず結衣さんのおすすめを試着した後カゴに入れ、そのまま会計を済ませる。今までで一番服を買ったかもしれない。せっかく選んでくれた服装だし、次のデートにはそのコーディネートで行くとしよう。


 大体これで良い感じだな。さすがに女性の前で下着は選べないし、俺の愛用するロングボクサータイプは大抵店に並んでいない。ネットで注文するのがメインだ。ここで一旦荷物を車に置きに行き、結衣さんの用事を済ませよう。


「さて、マネキン交代。今度は結衣さんのファッションショーを見せてもらおうかな」

「私の出番きちゃったかー。とりあえずどうしようかなー」

「まずは好みの服装からだな。Tシャツ一枚とかキャミ一枚とかそういうのが好みでは無さそう」

「お、良いところつくねえ。あんまり薄着っぽいのは好きじゃないのよ」

「……とりあえずぐるっともう一回見て回りますか。なんか似合いそうなコーデを探しつつうろつこう。時間はあるし」


 二人でさっきまで通ってきたルートをもう一度歩きながら、結衣さんの動向を見守る。気になったコーデが有ったら何か変化があるはずだ。それを見逃さないようにしていこう。


 ヒラヒラの多い服装には目もくれず、順番に店を眺めて行き、時には足を止めて肩に合わせてみては少しがっくりする。


「これいいなぁとは思うけど、私肩幅あるからあんまり似合わないと思う。その分サイズも大きくなっちゃうし」


 なるほど、ネックは肩幅か。肩幅の目立たないデザインの服があればそういうのが似合うだろうな。


 ある店に立ち寄った時に一瞬足の歩みが遅くなる。ショーウィンドウを見る。ドロップショルダーって言うんだったか。肩の一番広い部分が腕辺りにきているデザイン。


「こういうの、どう? 」


 足を止めて指さして尋ねて見る。目がピクッとうごく。好みの範疇ではあるらしい。


「そうね。はっきり言うとこういうデザインなら誤魔化せていいわね。ちょっと着てみたいかも」

「じゃあどうぞ更衣室へ。しっかり目に焼き付けさせてもらおう」

「なんかやらしい言い方だなぁ」


 そういいつつ、他にも気になるらしい服を何着か見繕うと更衣室へ入っていった。さて、しばらく待ち時間だな。その間に結衣さんに似合いそうな服をいくつか目星をつけつつ、この位置から動かないようにしておこう。せっかく着替えたのに目の前に居ないじゃ失礼だからな。


 女性向けの店だからか、他に男は居ない。ちょっと居づらいな。しかしまだかと急かすのも違う。本人なりに急いで支度してくれてるはずだ。居心地の悪さはその分の料金だと思ってゆっくり待とう。


 しかし、本当に色々あるな。通路を挟んで反対側には下着の専門店。用事が出来ることは百パーセントないだろう。だが、ちょっと凝視してみる。


 セクシー系、可愛い系、大きく見せたい系とざっくり俺から見たら分かれる。エロエロな奴はさすがに表じゃなくて奥のほうじゃないと展示してないようだ。さすがに買うほうも表で堂々とエロい下着を選ぶというのは少々抵抗があるらしい……って、俺は何で下着のほうを見ているんだろう。


 店内に視線を戻す。店一軒で一ブランドという体裁のこの店は上から下までブランドで揃えることもできるらしい。よく見れば帽子から靴まである。いつもショッピングモールの備え付けでいろんなブランドから入りそうなものを適当に選んでいるのでちょっと新鮮かもしれないな。


 すると、シャッというカーテンの開く音が聞こえた。どうやら着替え終わったようだ。


「……どう? 」


 最初にこれはどう? と選んだ服を着て両手を広げてポーズしている。肩は上手く隠れているようで、一見細身のような感じ。


「肩も目立たないしゆったりしてるけど体のラインを完全に隠しきってるわけでも無し。いい、似合ってるよ」

「じゃあこれ買おう。せっかく選んでくれたし。後はちょっと待ってて」


 第一弾はお気に召した御様子だった。またカーテンが閉まっていき、俺の目線が暇になる。さて、次はどうして暇をつぶそうか……

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