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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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433:ダンジョンマスターへの質問 3/3

 ダンジョンと【保管庫】のスキルについては大体わかった。俺が監視対象なことも含めてこれは俺の懐に、いや記憶の保管庫に放り込んでおくことにしよう。


「話がずれたが本道に戻ろう。魔素を持ち出すことが目的といったが、どのくらいの期間をかけて排出していくかを見越して計画を立てているんだ? 」

「そうだね、今のペースだと数千年かかるんじゃないかな。探索者が増えれば増えるだけその時間は短くなるし、その分スキルも出るだろうし攻略も進むだろうが、大気中の魔素が増え始めると人間の体にも影響が出始めるかもしれないね」

「数千年か……気の遠くなる時間だし俺が死んだずっと後の話になるんだろうな。で、体に影響が出始めるっていうのは具体的には? 」

「まず、魔力を操る体質……つまり生まれながら魔法を行使できる人類が誕生する可能性がある。これはもしかしたら現状の探索者でも起こる可能性はゼロではない。この場合スキルを生まれつき持っているという形ではなく、純然たる自然現象の結果だ。僕らでもそこからスキルを……いや魔力行使する能力を取り上げたりすることはできなくなるね」


 今の探索者でもゼロではないということは、魔力を行使できる能力者同士の子供なら親のそのスキルの体質が受け継がれる可能性があるって事か?


「つまりスキル持ちの探索者同士の子供だとその可能性が上がる、と考えていいわけですか」

「そうなるね。でもまぁ意図的にそうする必要性があるなら別だが、仮に今生まれたとしてもやはり大気中の魔素が少ないのだから魔法を行使できるのは実質ダンジョン内だけということになるから心配はしなくていいと思うよ」

「そうだな、俺たちの世代の後の事は後の人が考えるからいいか」

「君自身は子を産み育てるという望みは無いのかい? この星の生物からしたら子供が居ても何ら不思議はない歳だろうに」

「生憎そっちには全く縁が無くてな。縁があったら肖りたいもんだな」


 ピクッと芽生さんが反応したのは見なかったことにしておこう。


「ダンジョンの目的については解った。かなりぼやけた話として伝えようと思う。具体的にはそうだな……ダンジョンから物資を持ち帰ってもらう事が目的。ダンジョン側から意図的に危害を加えるような意思はない。そんなところかな」

「ボヤッボヤだね。まあ君がそれで良いと思うならそうすれば良いと思うよ。後で他のダンジョンマスターに他の誰かが同じ質問をして本質が返って来た時の君の立場が危うくはなるだろうけど」

「その時はコミュニケーション能力の不足だと言ってごまかすさ。実際人付き合いは得意じゃないんだ」

「僕は人じゃなくて君たちの言う所の神様に近いんだけどね。まぁいいよ。次の質問は何だい? 」

「スキルついでの質問だ。スキルオーブでスキルを覚えることでの副作用はあるか、という質問が来ている」


 スキルを覚える副作用。俺自身もう三つもスキルを覚えている。これについて副作用があるなら是非聞いておかなければいけない事だ。


「副作用というものは無いが、しいて言うなら何かの拍子でうっかりスキルを発動してしまう事があるかもしれない。それが副作用かな。例えば君なら、突然飛んできた……そう、ボールとかそういうものを保管庫に収納してスキル保持がばれてしまう、とかね」

「なるほど。特筆するべき副作用はない、と。後はスキルオーブをもっと量産する事は出来ないか、だそうだが」

「あんまりたくさんスキルを持ちすぎるのも見てて面白くはないだろう? スキルを持たない探索者が頑張る姿を見るのも僕らの楽しみでもあるし、彼らの成長の証だろ? 」

「なるほど……そういえばスキルとは関係ないが、俺がステータスブーストと呼んでいる現象について何かわかるか? 」


 今思い出したが、ステータスブーストだ。こいつは一体どういう原理で働いているのか。


「あれはね、君らの概念で言う所の【身体強化】スキルだ。こいつはスキルオーブ無しでも魔素を体内に取り込むことによって自然に使えるようになっている。実際は生まれつきスキルを一個持っているという事だね。他の文明では使えない種族も居るらしいから、君らは運が良いね」


 これもスキルの一種か……まぁそれを知れただけでも儲けものかな。


「次はそうだな……『ダンジョンに存在する名称スライムに当文明圏の廃棄物を処理させることは可能か』……これは要するにゴミ捨て場に使わせてもらっていいですか? という質問みたいだ。ゴミ捨てに来てるのにゴミ捨て場にしてもいいか? という質問はなんだかおもしろい話だな」

「スライムの溶解吸収機能を使って何らかのゴミを捨てても良いかって事かな。可能かどうかと言えば可能だが、是非正規の取り扱いにしてほしいところだね。時々探索者の中にはゴミをスライムに食わせて処分している者も居るようだけど、許容できるのはそこまでかな。おそらく君らの文明で産出されるごみを全てダンジョンで消化吸収しきる事は不可能だと思うよ」

「丁重にお断りする……と。ざっと聞くことはこのぐらいだな。ありがとう。結構色々聞いたけど良かったのか」

「本当に言えない事は言えないし、確実じゃない事は話してないからね。君もいくつか質問を飛ばしたんじゃないのかい? たとえばそうだな。今占有している土地について元々の土地の所有者へ補償などを得ることはできるか、とか」


 有るにはあったが見ない事にした。後は答えて貰えた質問と答えてもらわなかった質問を分けて……これで良し。質問集をまとめることが出来たぞ。


「後は他の人に任せよう。全部答えてもらえという訳でも無し、あくまでできるだけ聞いてこい、だからね。それについては充分な収穫があったと思っているよ。コーラもう一本飲む? 」

「もらおうかな。シュワシュワしてて美味しいねこれは」


 新しいポテチももう一袋開けて、しばしおやつタイムを楽しむ。省略した質問は他の誰かが他で聞くときにまた聞いてもらおう。探索者は俺一人じゃないんだ。何でもかんでも俺一人で解決していたら体がもたない。もっと若い奴らに働いてもらおう。


「さて、俺は一足先にうろうろ回って来るよ。エレベーター設置してもらう場所も探さないとな」

「僕はもう少しこのおやつを楽しむとするよ。決まったら教えてね」

「あ、私も行きます。色々と見て回りたいので」

「いってらっしゃい~。用事がある時は虚空に向かって僕の名前を呼んでくれたらそこに駆け付けるよ」


 ミルコを残して二人この階層をうろうろする。しかし、どっちを向いても残骸と廃墟だ。こういう時は高さ。建物の高さを基準にしよう。後、下への階段も見つけておかないとな。


 三十分ほどグルグルと回ってみたが、階段は見つからなかったが一番高いであろう建物を特定する事は出来た。これを基準にしてもらおう。建物の中に入ると、半地下に空間があるだけだ。学校にもこういう空間あったな。階段を上ってみたが、風化したのであろう家具の残骸や開けた天井を見るばかりで特徴らしい特徴を見かけることはなかった。


 よし、この建物にするか。半地下があったからそこにエレベーターを設置してもらおう。


「聞こえるかミルコ。エレベーターを設置して欲しいところを特定した。ここに是非お願いしたい」


 暫くするとミルコが転移してくる。やっぱり便利だな、転移。


「ここは……確かこのマップで一番高い建物だね。悪くない選択じゃないかな」

「解りやすいところに作るのが一番だからな。頼めるか」

「任せてくれ。その間に、二十一層初到達ボーナスで何をもらうか考えておくといいよ」


 どうやらエレベーター以外にも何か融通してくれるらしい。


「芽生さんに任せる。俺はエレベーターがあればいいや。芽生さんは前回何も貰わなかったし、何か考えておくとも言っていただろ? そっちの都合で決めてくれていいよ」

「そうですねえ……何が良いでしょうねえ……」


 芽生さんは考え込んであれでもないこれでもないと考え始めた。そういえばふと思い出してミルコに尋ねてみる。


「探索者証。死んだら赤くなるってのは本当なのか? 」

「ファンタジーではよくあるんだろう? 原理は秘密だが、君たち文明側に最初に託したこちらからの技術供与でもある」


 なるほど、やはりダンジョン側からのダンジョンなりのアプローチだったわけか。これで謎が一つ解明された。そして、割と最初の時期からダンジョン庁……いや、世界中のダンジョンと、か。つながりみたいなものはあったのだという一つの根拠になった。


「エレベーターがこのダンジョン産のゴブリンキングの角じゃないと動かない事も納得した。君らダンジョンはそれぞれ独立してるわけなんだな」

「そういう事。だから他所のダンジョンで鬼殺しだっけ? ボスを倒してもこちらでは知らないって事になっている。その代わり君らはある程度情報共有しているみたいだし、ボスを倒したという実績自体はボスの黒い粒子を吸い込むことで君たちの体に直接インプットされている。余所のボスを倒した実績でエレベーターが視認できたのはそのおかげさ」

「ボスと言えば、ゴブリンキング退治の手伝いをしたときに【水魔法】をぶつけて水に濡れた状態で【雷魔法】で攻撃したらダメージが通ったんだ。でも、こちらの常識だと純粋な水は電気を通さない。あれはどういう現象なんだ? 」

「あぁ、あの時かい。見ていたよ、いい援護攻撃だったね。答えは、【水魔法】で生成した水には魔素が含まれている。その魔素に対して【雷魔法】が反応して感電効果をより強化させた、という感じかな。ちなみに魔素に味は無いよ。そこを誤解したんじゃないかな? 」

「なるほど、ミネラルや成分じゃなくて魔素に通電させて通り抜けてダメージを与えたって事か……細かい事は良いんだよって事で良いのか? これは」

「君がそう思うなら良いんじゃないかな。【水魔法】には通電効果も期待できる、それが結果論になってしまうけど」


 これでまた二つ謎が解明された。やはり適当に散歩する事は頭を整理するのに役立つらしい。さっきの質疑応答では思いつかなかった疑問がいくつか出てくる。


 ミルコは相変わらず俺には見えないコンソールらしきものをいじりながら虚空を眺めて色々といじくりまわしている。【保管庫】の中身を閲覧している時と同じみたいだ。


「私、決めました。スキルが欲しいです」


 芽生さんがようやく決意を固めたらしい。どんなスキルだろう。


「生命探知……モンスター探知でもいいです。自分から見てどっちにモンスターが居るか、そういう気配を探知できるスキルが欲しいです。」

「わかった、文月の報酬はそれだね。早速用意しよう。安村は何かあるかい? 」

「俺は……正直エレベーターだけあれば後は特になかったからな。しいて言えば……また会えるか? 下層じゃなく、もしかするとここで」

「それは面白い特典だね。そうだな……条件を付けよう」


 条件か。一階層潜るたびにとかか? だとしたらしばらく会えないぞ。俺たちはここより下には潜ってはいけない事になっている。


「条件は……またお菓子を持ってきてくれ。さっき食べたポテチとかはとても美味しかった。後コーラだっけ? シュワシュワする飲み物もだ。ここでは手に入らないものだからね。こういう嗜好品を持ってきてくれるなら会談も歓迎するよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  あー、工業用に水魔法で超(完全)純水は駄目でしたか……。  素粒子が当たった時の光電効果とかは発生しうるのでしょうか……夢がひろがりんぐでござる。
[一言] 将来の鍋仲間になる可能性?
[一言] いやー、うん、いいとか悪いとかではないんですが、そこそこ有能なおじさんがなんでクビになったのか疑念だったのですが、そりゃこんな裁量飛び越えた判断する人材だったらクビになるわと深く納得しました…
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