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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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421:待ちに待った出立

 今日も気持ちのいい朝をありがとうダーククロウ。もうすぐ会う機会も減る事を考えると寂しくなるな。布団の打ち直しとかする時はまたお世話になるだろう。その時まで元気で茂っていて欲しい。


 昨日一日は丸ごとオフだったので情報集めと料理研究に勤しんだ。料理本も保管庫に何冊か常備している事態になり、調味料なんかも増え、順調に保管庫を太らせることに成功した。この間整理したのはこのためだったのかとも思う。


 これでまたダンジョン内での食事事情が向上した。今後も進歩するよう研鑽を積んでいこうと思う。どこかで料理店が開けるようになりたいとまでは思わないが、あれが食べたいなーと思った時に材料さえあれば作れる程度には腕を上げたいものだ。


 流石に一日ひたすら料理ばかりしている訳にもいかないので、ニュースを見たりスレを読んだり色々としていた。しかし、料理以外にも何か趣味を持つべきだな。このままではしっかりリバウンドしてしまう。


 いつもの朝食を取ったところで今日は一日ダンジョンだ。昨日ゆっくりしたことで体調は最高に良い。今日はきっといい仕事ができるだろう。


 後は質問書がまとまってくれているとベストなんだが……こればかりは行って確認できるまで解らない。当たって後は流れで行くしかないな。


 出かける前に昼食に何を作るか。いくつかレシピを覚えたので応用を利かせて使えるものは使って行こうと思う。


 食べることになるだろうご飯は……今日はなんちゃってビビンバといこう。ナムルの代わりにパックのキムチともやし、肉はあらかじめ今薄切りにしておいてチーズを足して、後はパックライスと一緒に炒めて焼肉のたれで味付けして終わり。うん、お手軽で美味しそうだ。肉はちょっと多めにして……もう作ってしまうか。そのまま十九層や二十層に下りてまともに休憩が出来ない事態になるかもしれん。


 そうなった時用にあらかじめ作っておいて容器に入れといて混ぜて食べるだけの状態にしておこう。そうと決まれば早速準備と調理だ。出来上がったビビンバ風の何かを二人分、温めたパックライスと共に容器に詰めると保管庫へ入れて、いつでも食べられるようにしておく。


 後は……そうだな、冷蔵庫から適当に野菜を抜いておいて、材料を目の前にして二人で考えればいいか。とりあえずパックライスとチーズと肉だけは一杯用意してあるので最悪それとホールトマトを煮込んで一品、というのでもいい。というかそれにしよう。


 これで二品候補が決まった。三品目があるならそれこそ手持ちの食材と相談だ。食事についてはこれで良い。


 万能熊手、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 インナースーツ、ヨシ!

 防刃ツナギ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 枕、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 お泊まりセット、ヨシ!

 冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 ドローン、ヨシ!

 バッテリー類、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。特にドローンとバッテリーは大事だ。こいつの残量で活動時間が決まるようなものだ。金があるんだからもっと複数個あってもいいぐらいだな。十七層から二十層をメインに狩りを続けていく事を考えて、もっと買い足しておくべきだったか?


 行けるなら二十一層まで、不可能でも十九層までは潜りたい。ダンジョンハイエナと複数回戦っておいて、相手の強さを知っておきたい。スキルは何処まで通じるのか、動きのパターンが後いくつあるのか。どれくらいの頻度でヒールポーションをくれるのか。


 何はともあれ出勤だ。現地でしかわからない事は現地で悩もう。必要な情報はある程度仕入れてあるし前回の探索のおかげで十七層十八層はスムーズに通り抜けられる。


 念のためコンビニでおにぎりを四個適当に選ぶと、会計して電車に乗る。暑くなってきたからか、ちらほら薄着で通勤する社会人や学生も増えた。そんな中相変わらずツナギで出勤しているので少しだけ浮いている。ついでに言えば装備も持っているので異質と言えば異質だ。


 まだダンジョン探索者という職業が一般的になるには時間がかかるらしい。時々こちらをチラッと見ては視線を外す人がいる。ダイジョウブダヨ、コンナトコロデエモノヲヌイタリシナイヨ。


 バスに乗り換え小西ダンジョン前停留所へ。運転手さんの顔も覚えた。多分こっちの顔も覚えられているだろう。お互いに解り合っている、という感じだ。そもそもこの路線には道中に学校があるわけでもないので、通勤客がちらほら居るだけで後は大体探索者で埋めている。それでも座る余裕があるあたり、やはり赤字路線なのだろうか。


 ダンジョン前の停留所で降りると見慣れたいつもの光景。ダンジョン開場まではまだ時間があるので建物周辺で時間を潰す。芽生さんにはレインで着いたと連絡しておいた。遅刻しない限り後三十分ぐらいで到着するだろう。


 そのまま十七層十八層の地図らしきものを眺めつつボーっと時間を過ごしている間に時間が経ったらしい。芽生さんが到着した。


「待ったー? 」

「ううん、今着いたとこ」

「嘘ですよね。三十分前に連絡くれましたし」

「まあね。ちょっと早く来すぎた。さて、書類が出来てるなら受け取りに行くか」


 時刻は丁度九時。ダンジョン開場の時間だ。その前に、ダンジョンマスターへの質問集が出来ていればそれを受け取り、そのまま二十一層へなだれ込むという予定だ。纏まってくれてると良いんだが……


 支払い嬢がすでに待機していたので確認を取る。


「あのー、書類を受け取るという話が伝わってませんか」

「伝わってますよ。ギルマスが二階にいるはずなんで直接受け取ってください。多分ちょっとした話もあると思いますので」


 言われたまま二階へ行く。応接室の扉をノックし、中に入る。ギルマスは相変わらずパターの練習をしていた。この人の仕事は朝一には無いらしい。いや、今日は大事な用事があるか。でもそれ以外には仕事が無いって事だよな。やはり先行きが心配される。


「お、安村さん待ってたよ。これ、お待ちかねの質問集。軽く目を通しておいてくれると質問しやすいと思うのでとりあえず読んでおいて」


 ギルマスから紙束……というほどでもないがそれなりの厚みのあるマニュアル的なものを受け取る。こいつを待ってたんだ。これで二十一層まで直行できる。


「一つ質問なんですが、これ以外に質問したいことがあった場合それを追記事項として書き足してもいいんですよね? 」

「構わないと思うよ。もしかしたら我々が気づいてないだけで安村さんが気づいたダンジョンの不思議や疑問点を見つけられるかもしれないからね。ただ、すでに質問されて同じ答えが返ってくるような事が無いように過去の質疑応答の文章も載せてある。出来れば前のほうにある質問事項について質問してくれると嬉しいかな」


 パラパラっとめくる。ダンジョンはこれ以上増える可能性があるのかどうか、ダンジョンの最深層はどの辺にあるのか。ダンジョン毎に最深層には違いがあるのか。いくつかそういえば疑問だな、というような内容が纏められている。さすがに官公庁の仕事というべきか、要点はまとめられているようだ。


 ここに、俺が最近気になっている事項について確認の余地は……うん、過去問には載ってないな。是非質問するべき話だろう。回答が得られるかどうかは解らないが、聞いておいて損はないはずだ。


「大体わかりました。後はダンジョンマスターに直接会って話を聞くしかないようですね。まぁ、全部が全部答えてもらえるとは思ってないので今の段階で聞けることは聞いておこうと思います。この書類に直書きして後で報告できるように余白も作ってもらっているみたいなので、書類に不備はないと思います」

「そうかね、なら後は君たちに託すしかない。全て聞き取ってくる必要はない。この中で有用そうな回答が返ってくるという事が希望だ。できるだけダンジョン庁にとって有用な情報を持ってきてくれると願うよ」


 あくまでお願いする、という立場を取るらしい。これがいざ何かあった時にダンジョン庁に責任が及ばないための措置なのか、こっちのへそを曲げさせないためなのか、民間人に命令は出来ないからお願いする、という立場なのかは解らないな。


「そこは命令口調じゃないんですね。あくまでお願いという立場ですか」

「私らに上下関係があるわけじゃないからね。君が潜らないなら私が潜る! なんてことも言えないし」

「ちなみに普段のギルマスのお仕事は何されてるんです? 」

「まぁ、収入支出のまとめとかドロップ品の輸送とかその辺の手配は私がやってるからね。毎日やる事なんてその日の査定品の金額があってるかどうかを確認しておくぐらいさ。基本的に上司の仕事は少なければ少ないほどうまく運営が回っているという証拠でもあるからね。……あ、そういえば清州から来たパーティー、新浜さんだっけ? 彼らのおかげで黒字が確定したんだよ。長らく赤字だった分を補填するほどではないが、エレベーターの件が公表できるようになったらきっと黒字幅も増えるはずだ。ついにお荷物ダンジョンも汚名返上できるってものだよ」


 ギルマスは誇らしげだ。よほど嬉しいらしい。ここらでスキルオーブをドロップしてもう一歩前へ進めるようになれば良いんだろうが……正直自分たちで結構な数をドロップして使ってしまっている事は伏せておこう。


「じゃ、探索頑張って。良い結果を期待しているよ」

「善処します。では早速行ってきますね」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョン物を探していた時に見つけて、とても面白かったので1話から一気読みしました! 続きがめっちゃ気になります にしてもイレギュラーばっか起きててギルマスのストレスヤバそうですね!
[良い点] 黒字確定オメ! \(^o^)/ [気になる点] おっさんの趣味はお料理になりそう? [一言] 毎日の更新に感謝です (`・ω・´)ゞ
[気になる点] ドロップするのって食材はお肉ばっかりですよね。 お野菜はないのかな… ダンジョン内にお野菜とかハーブとか生えてたら、ご飯が更に美味しくなったり、安村さんとめーちゃんも更に強くなったりし…
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