42:裏方仕事
ダンジョンギルドでは今日の戦利品の精算の真っ最中だった。
「スライム大増殖したんだって?」
「多分進行形ですねー。二層から戻った人が一層に帰るだけでこのリストですからー」
支払い嬢がリストをひらひらさせる。安村達五人が提出した戦利品のリストだ。
「二時間頑張ってこれだけだそうですー。多分小西ダンジョン記録ですねー」
「早く帰ってきてくれたことだけは感謝ね。おかげで残業にはならなくて済みそう」
「誰なんですかねー、こんな過疎ダンジョンでスライム増やした犯人」
「一応入ダン履歴からこの人じゃないか?って人は割り出せたみたい」
「過疎ダンジョンだからばれるのも早いよねー」
「これが清州とか高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンで起きてたらと思うと」
出入り人数が多ければ多いほど個人の特定は難しい。最も、それだけ人の目に付くことになるのでしょっ引かれる可能性も上がるわけだが。
「人多いから大丈夫なんじゃ?過疎ダンジョンだから騒ぎになるのよ」
「まぁ、今日の入ダン人数十人ですからね十人。年間含めた平均入ダン人数十五人ですよ?私たちだけで維持できちゃってるんですよ?」
「七人しかいないからねこの職場。掃除のおばさん含めて八人ですよ」
「掃除のおばさんといえば潮干狩りのおじさん大活躍だったみたいですねー」
「一人で半分以上倒しちゃって、それでも報酬は等分割だったらしいわよ」
「ヒュー、かっこいい。これがスライムじゃなくてゴブリンだったらゴブリンスレイヤーですよ」
「スライムスレイヤーと潮干狩りおじさん、どっちのほうが見栄えいいんですかねー」
女性四人で姦しく騒ぎながらもリストの照合は進んでいく。
買い取った品数と支出額が一円でもずれていたら大騒ぎで、一から数え直さなければいけない作業をしながらの会話だが、手先は間違うことなく進んでいる。
「潮干狩りおじさんって本人そう呼ばれてる事知ってるんですかね?」
「知ってるよー。今日臨時パーティー組んでた人たちそう呼んでたしー」
「前は悪い意味も込みだったのに、すっかり仕事人みたいな意味になっちゃったわね」
「良いんじゃないですかー?本人も納得してるようでしたしー」
「本人が納得……心の広い人ね」
「あまり執着してないのでは。あの人ハローワーク経由ですよ?正直ハローワーク経由で頑張る探索者の人って居るだけで有り難いというか、そもそも使えない人ばっかり来るというか」
ハローワークで紹介されてそのまま探索者になる人の割合は低い。ほとんどの人は一週間持てばいいほうで、本業として続けていく人は数%に満たない。
年齢が上がるごとにその割合はさらに低くなっていく。四十代で一週間続きそうな人はこの小西ダンジョンでは安村ともう一人だけであった。
暫くとりとめもない話が続き、漸く数え終わる。きちんと数は合っていたらしく、精算作業は無事に終わった。残業は三十分で終わったらしい。
「さて帰り支度を始めますか。明日もスライム多いかもしれないからみんな覚悟しておいてね」
「はーい」
ダンジョン内は置いといて、小西ダンジョンギルドは今日はかろうじて平和に一日を終わることが出来た。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





