410:十八層 2/2
ユニークアクセスの仕組みがよく解らないけど六百万越えてました。
さて……俺も張り切らないとな。負けないように歩みを進めるとバトルゴートに向けて雷撃を放ち、最初の突進の勢いを失わせつつ頭に直刀を突き刺し黒い粒子に還していく。現状これが早いな。二匹までなら何の問題も無いが、三匹目が来た場合一匹を感電させて動きを鈍らせて時間差をつけて攻撃、という形になるか。
十五分ほど歩いて草マルハゲの場所に着いた。どうやらレッドカウは縄張りというか居場所みたいなものが決まっているみたいで、その範囲外へは動かないらしい。固定ポップなのかまでは解らないが、とにかくこの辺にはレッドカウがたくさん湧いている。
親子連れのレッドカウも居る。が、他のレッドカウとの距離があるのでこれらは同時に襲ってくることは無さそうだ。安心して肉祭りが開けるな。
「さぁ、肉祭りが始まりますよ。準備は良いですか洋一さん」
「行くでがんす」
手前のレッドカウから順番に飛びかかっていく。さっき凹んだスケ剣を取り出し、金棒を受ける準備は充分だ。こいつには盾代わりとして十分に活躍してもらおう。
レッドカウがこちらに気づき金棒を振り上げ迫ってくる。腕に身に着けている盾では受けずにスケ剣で受ける。がいんっ! という音共に金棒とスケ剣がぶつかり合う。金棒を受け止めてそのまま剣に沿って金棒を滑らせ、相手の体重移動を誘う。そしてバランスを崩したところにこちらから攻撃する隙が出来る。
直刀で心臓を一突き、レッドカウは黒い粒子に還る。うん、このほうが四倍ぐらい早く倒せるな。スケ剣はまた少し潰れた。これあと何回持たせられるかな。折れた時が問題だな。折れない事を祈りつつ戦いを進めよう。
近い順にレッドカウの塊を一つずつ解していく。スキルも織り交ぜながら、雷撃で動きを止めつつ戦うのも悪くない事が解った。スケ剣で受けるよりも消耗は少なくて済む。この階層の密度なら常にスキルで戦い続けても悪くない回復速度で使い続けることができると思う。
あと何回持ってくれるかは解らないが、スケ剣の在庫は充分にある。限界だと感じるか次一発食らったら折れるだろうと判断する段階でその辺に捨てていくか保管庫に供養するかして新しいスケ剣を取り出す。さすがに二回三回の受け止めで折れるほど軟な剣ではない事は解った。
レッドカウをシンプルに倒す方法が解ったところでペースも上がる。二十分ほどかけて周囲にいたレッドカウの群生地は全て処理された。レッドカウを倒した回数から逆算すると、肉が落ちる確率は二割から三割位だと推測される。魔結晶は五割位。
ちなみにバトルゴートの毛は魔結晶と同じかそれより少ないぐらいの確率で落ちる。そしてどっちもキュアポーションランク2をくれる。キュアポーションをくれる確率が他のモンスターと同じだと仮定すると、十七層以降のモンスターの一匹当たりの期待値は一万円を超えるぐらいになる。
肝心の肉がいくらなのかまだ査定に出したことが無いので解らないが、少なくとも五千円より安い事は無いだろう。一パック一万円だと仮定して……それでも一万円前後か。やはり美味しいな。ただスケルトン一グループと同じぐらいの感覚だ。
それほどモンスター密度が高くないので効率的には良いかどうかは解らないが、一匹当たりの重要さは高い。視界内に居るモンスターは出来るだけ狩って帰るのが大事だろうな。
さて、レッドカウを見える分全て狩ったところでドローンを飛ばして周囲を確認する。階段は……お、さらに南に発見。ここからはっきりとドローンで観察できる位置にあった。しかし、ちょっとした丘の向こうにあるのでドローンでなければ見つからなかったかもしれない。十七層への階段から見て南南西ぐらいの方角だ。
ここもサバンナマップと同じぐらいの広さがあるのか、実に探索のし甲斐がありそうではある。できれば六層ぐらいわかりやすく密度の濃いところと薄いところが分かれてくれていると回りやすくもあるんだが。リポップの早さも考えて十八層と十七層どちらが探索に向いているかも考える必要が出てくるだろうな。
「行く先は見つかった。とりあえず階段は見つけた。そこまではたどり着いて、その後帰るか。多分距離的にもあまり大きく変わりは無さそうだ」
「それは何よりです。行くまでにモンスターは居そうですか」
「どれどれ……それほど多くは無いけど居るな。退屈はしなさそうだぞ」
「それも何よりですね」
リポップと言えば、草はどのくらいの早さでリポップするんだろう。レッドカウが食いつくしても暫くリポップしていない事を考えると、モンスターと草どちらが先にリポップするのか。割と気になるな。草がリポップして草のある所にモンスターがリポップするのか、それとも全く無関係なのか。
流石に全くリポップしないという事は無いだろうから、この草が食べつくされた場所についてもしばらくすればリポップするということになる。どのくらいの時間かかるんだろう? と最初に狩りだしたほうを見てみると、明らかに円形ではなくなっている。どうやら草のリポップはかなり早いらしい。
やはり先に草がリポップして、モンスターはそれよりも時間がかかるという事なのだろう。
「なんかあちこちみて考え事してますが、どうかしましたか」
「草のリポップの早さを見てた。もう生え始めている。階段まで歩いて戻ってくるころにはモンスターも湧きなおしてそうだ。階段経由してグルグル回る形になれば理想的な狩場に使えそうな気がする」
「でももしかしたら次のマップのほうが儲かるんじゃないですか? 」
「次のマップではハイエナが出てきて、そいつがヒールポーションのランク3をくれるらしい。買い取りは二十四万だそうだ」
「そこから値段は三倍に上がるんですか。何処まで効果があるんでしょう」
「指一本飛ばしたぐらいなら治るんじゃないかな。値段なりの性能はあるって事だろう」
「常備薬にするにはちょっと躊躇する値段ですね。数が出るならまた別でしょうけど」
一本二十四万の薬を常備か。仕事柄有りっちゃ有りだろうけども……まぁ本数稼げるようになってからでも問題ないだろうな。ダンジョンハイエナがどれほどの狂暴性や攻撃力を持っているかは解らないが、出るという事は出るだけの必要性があるとも考えられる。出たとしてもしばらくギルドに卸すのは無しだな。
ドローンを回収する。バッテリーは思ったよりは使っていない。が、今回はここまでの探索としよう。階段まで最短距離を使って帰って、地図をより確実なものにしていく。草原マップもループしているなら、必要なのは階段までの最短距離とモンスターが湧いてそうな地域だ。
「とりあえず階段まで行こう。それから最短距離で帰って地図の正確性を確かめて、修正するところは修正する。モンスターがどれだけ湧いているかは後でまた来て確認、そんな感じかな」
今回偶々固まってレッドカウが湧いていたのかもしれない。もう一回次来る時に同じように湧いているかどうか確かめるのは今は難しいからな。また後で来る時に確認して、同じように湧き直してたらここにレッドカウ牧場が有るという確信が持てる。
階段までには合計十グループほどのバトルゴートとレッドカウが確認できた。道という道があるわけではないが、草をサクサクと踏みつけながら行程途中に居るモンスターは全て狩り尽くしていく。レッドカウもバトルゴートもかなり戦いやすくはなってきた。
レッドカウに会うたびに破損したスケ剣で金棒を受けているため、消耗度合いがだんだん激しくなっていく。目に見えて剣が曲がってきた。そろそろ限界か。限界を越えて折れる前に新しいのと交換してしまおう。
「さようなら一本目。お前はちゃんと働いてくれたよ」
「な~む~」
スケ剣を地面に置き、そっと手を合わせる。後はこの階層にも居るはずのスライムが溶かしてくれるだろう。新しいスケ剣を片手に次のレッドカウへ向かう。
「ようやく消耗品らしい消耗品を使っている気がする。今までに消耗したものと言えば生活用品を除けば曲がったマチェットと研ぎ過ぎてそろそろ使い物にならないグラディウスぐらいのものか」
「一応ドロップ品ですからそれなりのお値段で買い取ってもらえると思うんですが……まぁ今更まとめて査定にかけるのも変な話ですし、今まで通りしっかり保管庫に溜めておくと良いと思います」
「許可が出たことだしこれからも拾った分は溜めておこう」
今までしっかりスケルトンを倒してきたおかげか、スケ剣はあと三十四本ある。レッドカウと戦って全部ぶち折るとして、その間にはかなりの量のドロップを蓄えられているはずだ。また、十六層を通り抜ける間にまた増える。どんどん使い捨てて行こう。
道中のモンスターを全て倒し、階段までやってきた。十九層を覗いて帰るかどうか悩みどころだ。
「覗いて帰ります? それとも次回のお楽しみにします? 」
「とりあえず休憩しよう。階段を見つけて若干気分が高揚してるが、多分疲れてると思うんだよ。その状態でうっかり集団戦になったりすると対応しきれないかもしれない。一応階段の下だけ覗いて帰る事にしよう」
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