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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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408:十七層リベンジ 3/3

 十七層に下りる。下りてすぐの戦闘は無かったが、視界内にはバトルゴートの姿が二匹見える。接敵するまで歩いて二分という所だろう。


「アレを倒す前に前回のおさらいだ。前回は向かって南西、その南西地点を基準にして更に南東方向に行って階段らしきものは見つけられなかった。という事は階段から見て北東側には何かあるかもしれない。もっと言うなら階段を基準にして南東、北西側も何かあるかもしれない。とりあえず今のところは南西側はパスして行こう。小西ダンジョンはそんなに広くないはずだから前回ほどうろうろしなくても、もっと手前に階段があっても良いと思うんだよ」


 ろくろを回すような手つきをしながら説明する。この手つきに意味はないがなんとなくそのほうが説明しやすいのでそうする。


「はーい先生。仮に北東側に行くとして、どのくらいの距離行って試してみますかー? 」

「とりあえず一時間分ぐらい。三十分ぐらいの距離に目標物があるかどうかを確認して、有ったらそれに向かって移動する、という形で行こうと思う」

「地図を埋める気は……埋める気になりませんよねこれ」

「まずは階段だな。必要なら……必要なら誰かが埋めるだろ。この階層までは誰でも潜れるんだし」

「それもそうですね。じゃあ北東方向に行くって事で、手始めにバトルゴートを倒しますか」

「倒すか。まずは駆けつけ三杯……いや二匹! 」


 バトルゴートに向けて歩き出す。ある程度近寄ったところでバトルゴートの探知範囲に入り、こちらへ向かって駆け寄ってくる。わーい久しぶりー……と油断できる相手でもないので冷静に対処する。


 突進してくるのをひらりと回避。回避ざまに刃を突き立てようとするも毛で刃が滑る。相変わらず硬い側面だ。やはり突き刺すべきか。それとも雷撃か。今回は両方だ。少し行き過ぎたところでくるっと回り再度こちらに向けて走り込んでくるところに雷撃を撃ち、相手の動きを鈍くさせる。その間にさっと近づき頭から一気に直刀を突き刺す。


 頭に剣を突き刺すと大抵の動物型モンスターは致命傷らしい。一発で黒い粒子に還る。やはり頭を狙うのが定石か。赤い魔結晶を落とした。小粒だがこいつが中々の高級品。大事に扱おう。


 芽生さんのほうは……槍だと側面にも突き刺さるらしい。これは得物の差かな。向こうも魔結晶を落としたらしい。


「両方ともアイテムドロップか、幸先は良いな。このまま続いてくれるとなお良いんだが」

「そうそう上手くいかないのが世の中というものです」

「まぁ、そうだな。とりあえずドローン起動……っと」


 ドローンを飛び上がらせてスマホの画面越しに操作する。行く先の北東方向には二本の木が並んで立っている。これは目印に良いな、早速そっちへ向かおう。


「目印発見……これに向けて歩こう」

「ここから見えない目印……一体このマップの曲率はどうなってるんでしょう」

「俺は考えない事にした。それが一番脳に優しい」


 地球と同じ曲率なら自分の身長からして見えてる先はおよそ四キロメートル。だが、見えている先は明らかに四キロより手前に感じる。実際の範囲は……一キロメートルぐらいかな? 道中にはバトルゴートが何体か確認されている。暇を持て余すことは無さそうだ。


 とりあえず方角を決めたことで歩き出し始める事は出来た。何もないサバンナとは違って草原エリアは草が生えている。自分たちが草を踏みしめる事により、どこから歩いてきたかの痕跡は残すことが出来ているが、これは時間稼ぎにしかならない。


 レッドカウが居て一切草が生えてない場所とかバトルゴートがリポップして倒れた草を喰い始めるとかするので倒れた草もあんまりあてにならない。そのことに気づいたのは今だ。やはりドローン頼みだな。これドローンを想定しなかったらどうやって攻略していけばいいんだろう?


 あれかな、階段が見えるギリギリの位置まで移動して、その先に何かがあるかを見ながらグルグルと階段の周りを円形に回って地図を作る感じになるのか。それに比べたらこっちはもうちょっと余裕があるな。


 北東方面に十五分ほど歩きながらバトルゴートを時々突き倒していくと、徐々に二本の木が見えてきた。ドローンが見せてくれたのはあれだな。木の根元が見えてくると、そこにはレッドカウ二匹がゆったりと横たわって食事中だった。どうやらドローンで見終わった後にポップしたらしい。


 お肉だ。あれは上等なお肉だ。そしてバトルゴートよりも刃が通りやすい分戦いやすい。前回は戦う回数が少なくてよりよい戦い方を模索できなかったが今回はそれを行う事が可能だろう。こっちも二人、あっちも二匹。一対一のバトルだ。


 こっちに気づいたレッドカウが細い金棒を振り回しながら走ってくる。直刀で受けると欠けそうなので素直に避ける。また金棒を振り回すので避ける。レッドカウのスタミナはそんなに持たない事は確認済みだ。しばらく避けつつ隙を見て直刀で殴りつける。お互いの得物の長さにそれほど違いは無い。避けるついでに切りつける事も雷撃する事も可能だ。そうやって相手の体力を削り取っていく。


 まだ殴られるのは怖い。盾でなら……なんとかなるか? オークよりも若干ムキムキであることは間違いないので当てられた時に来る衝撃は大きいものになるだろう。解っているダメージをわざわざ喰らう事もないか。相手の息切れを待とう。


 そのまま一分ほど戦い続けてレッドカウのスタミナが切れたのか、ちょこちょこ与えていた雷撃が効き始めたのか、膝をついてハァハァ言い出した。ここが攻撃に転じるチャンスだな。レッドカウの腕を狙って切りつけ、金棒を持ってるほうの腕を斬り飛ばした。そのまま心臓がありそうなところへ直刀を突き立てる。レッドカウは抵抗する力なく、黒い粒子へと還った。ドロップは魔結晶だった。


 芽生さんのほうも勝負がつき、槍で切り刻まれたレッドカウが消滅していくのを確認する。お肉が落ちた。どうやら当たりが良かったらしい。これで手持ちのお肉はへそくりを含めて二個。


「お肉ですよお肉。これで後のご飯が更に豪華になりますよ」

「後三つぐらいあっても良いな。だが今は階段探すのが先だ。早速次の目視できる目標を探そう」


 ドローンを飛ばしてまた周囲を見る。この位置から見渡すと、結構オブジェクトがある事に気が付く。大岩は……あるな。ここから東方向。もっと近づいて本当に階段かどうか確かめたいところだが少々難しい。しかし、大きさや形から階段である可能性は高い。そこまでにはいくつかのミステリーサークルとバトルゴートが存在する。


 とりあえず東だ。そこに決めた。芽生さんとドローンの視界を共有し、東に向かう事を伝える。


「道中にお肉有りますし丁度いいですね。あれが大岩だと進捗があっていいのですが」

「近寄ってダメならもう一段階調べてまた違う方向へ行こう。最終的に階段からどの方向にあったかを確定できればいい」


 ドローンを仕舞い歩き始める。頼りは方位磁石。たまの戦闘でどっちに行くか解らなくなった時に見て確認してまた歩く。十七層は瞬間瞬間の戦闘は慎重かつ冷静に対処しなければいけないが、それ以外の時間は周りにモンスターが居ないかを見ながら歩くだけだ。


 途中のレッドカウで更にもう一つお肉と魔結晶を補充。何回かのバトルゴートで毛をいくつかと魔結晶をさらにいくつか。戦闘回数そのものはそれほど多くないが一匹当たりの濃度が十六層とは違うので同じに考えることは出来ない。


 ペースとしては八層ぐらいの戦闘頻度に近い。十層や十六層が濃すぎるだけかもしれないが、戦闘で忙しくてなかなか前に進めないという事でもない。大岩らしき物体の頭が見えてきたが、同時にミステリーサークルも見えてくる。中心にはレッドカウが……一匹と小さいのが一つ。親子か?


 相変わらず草を毟っては口に運んでいる。このまま放置したら大きくなっていくのだろうか。とりあえずレッドカウには子供タイプも居るという事を認識。ゴブリンほどの大きさだが多分ゴブリンよりは強いだろう。


 レッドカウに近寄って戦闘開始。相変わらずスタミナ切れの一瞬を狙う戦闘だ。ここは一つ盾で受け止めるのではなく弾いて回避を試みる。盾に若干の凹みが発生したが機能には問題なさそうだ。全力で振りかぶったのか、盾で弾いた瞬間レッドカウはふらつき、そこに隙が出来る。その隙は見逃さないぞ。二歩踏み込んで心臓に一突き。レッドカウを黒い粒子に還す。


 子供のほうは……何やら芽生さんとチャンバラごっこをしている。楽しそう。しかし時間を取られて探索が進まないのは困る。余裕があるとはいえ遊んでデータを色々取るのは今では無い。


 芽生さんとチャンバラをしている後ろから一気に頭から下まで切り込みを入れてそのままバッサリと斬り落とす。ドロップした魔結晶はお父ちゃんたちと同じ大きさらしい。これはボーナスモンスターかもしれない。


「離れ離れは可哀想だから早めにお父さんと一緒の所に送ってあげないと」

「なんか言い方がサイコパスっぽい気がします」

「気のせい気のせい」


 レッドカウを始末して大岩に向かう。大岩には階段が……あった。長いようで短かったようで……目標物が無いので長く感じたのかな。歩いた距離は七層から八層への間と同じぐらいだろう。


 十七層から十八層への階段の前には何もいなかった。たまたまかもしれないが、ここで一服休憩してから下りることにする。


「これで十七層踏破、と。さぁ十八層はどんなんかいな」

「同じマップだとは思いますが、目印が一杯あると良いですねえ」

「モンスター密度ももう少し濃くなるはずだ。焦って怪我しないように気を付けよう」

「しかし、新しい階層というのは何回来てもドキドキしますね」

「探索者をやってる、って気分になれるのは確かだ。正直なところで言えば十七層は稼げなかったが、十八層の密度に期待しよう」

「お腹が一杯になるまでしゃぶしゃぶをしましょう。十八層到達記念に」

「そのためには……何回レッドカウ狩れば良いんだ? まぁいいか、やってるうちに溜まるだろう」


 階段前で水分とカロリーをしっかり取り休憩をした。まだまだ時間に余裕はある。意外と早く階段が見つかってくれてよかった。帰りは西南西に向かえば大岩に近づくはずだな。覚えておこう。


「さて、ちょっくら休憩してから階段を下りるか。ここまでまっすぐきたし、ちょうどお昼の時間でもあるしカロリーは必要だろう」


 残念ながら今はカロリーバーでの軽食となる。初めての階層でもあるし気合を入れる意味でも必要だろう。この後も順調に階段が見つかってくれると良いんだけどな。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします



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[良い点] 毎日の更新に感謝 (*´ω`*) [気になる点] しゃぶしゃぶは 次の次の次位かな?
[一言] 文明の利器、ドローン役立ってますねー 空の敵が出てくるまでは階段探しも捗りそうですわ
[気になる点] 前回は向かって南西、それから南東方向に行って階段らしきものは見つけられなかった。という事は北東側には何かるかもしれない。もっと言うなら南東、北西側も何かあるかもしれない。 南東に向か…
2023/08/13 08:17 退会済み
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